作品賞:ディパーテッド

ディパーテッド

<作品賞ノミネート>

ディパーテッド
バベル
硫黄島からの手紙
リトル・ミス・サンシャイン
クィーン
ディパーテッド

監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン

バベルに競り勝つ

2007年のアカデミー賞は、作品賞のレースが混沌としていました。

「本命不在」と言われるなかで、当初、有利と見られていたのが、菊地凛子が出演した『バベル』です。

『バベル』は、異なる4つの国の人たちを描いた人間ドラマです。

監督は、「21グラム」などのイニャリトゥ監督。

モロッコでの銃撃事件が日本、米国、メキシコへと飛び火する過程で、それぞれの国の人のストーリーが交差しながら描かれています。

『バベル』の対抗馬とされたのが、スコセッシ監督の『ディパーテッド』。

香港映画『インファナル・アフェア』のリメークです。

マフイアと警察に潜入した青年2人(ディカプリオとマット・デイモン)をめぐるサスペンス。

豪華キャストと大胆な脚色が評価を受けました。

優秀賞のノミネート作品で『ディパーテッド』だけが1億ドルを超えていました。

通常、リメイク作品は作品賞レースでは不利とされますが、それを見事吹き飛ばし、見事、作品賞を受賞しました。

まずクリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』は、硫黄島の激戦を日本側から描いた感動的な戦争映画です。

渡辺謙ら日本人キャストが日本語で演じました。

英語以外の作品が作品賞にノミネートされたことは、それだけでも十分に評価に値します。

次いで『クィーン』は、現英国女王エリザベス2世の苦悩をヘレン・ミレンの名演で描いた純イギリス映画。

ダイアナ元皇太子妃の事故死の時に沈黙を守った女王の真相を明らかにしました。

そして、低予算でつくられた独立系映画の『リトル・ミス・サンシャイン』のノミネートも喝采を浴びました。

美少女コンテストに娘の出場が決まったアリゾナの一家が、車でカリフォルニアへ向かうロードムービー。

低予算の作品ながら、質の高いコメディとして支持を得ました。

監督賞 マーティン・スコセッシ『ディパーテッド』

マーティン・スコセッシ

<監督賞ノミネート>

マイティン・スコセッシ
「ディパーテッド」
クリント・イーストウッド
「硫黄島からの手紙」
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
「バベル」
スティーブン・フリアーズ
「クィーン」
ポール・グリーングラス
「ユナイテッド93」

スコセッシ氏、6度目のノミネートでついに栄冠

監督賞では、巨匠・マーティン・スコセッシが6度目のノミネートとなり、初めて受賞しました。

スコセッシ監督は、「タクシードライバー」(1976年)、「レイジング・ブル」(80)、「グッド・フェローズ」(90)といった歴史的名作をつくり、アカデミー賞候補となってきました。

また、2000年以降も、レオナルド・ディカプリオを主演に迎えた「ギャング・オブ・ニューヨーク」(02)や「アビエイター」(04)で、アカデミー賞の監督賞にノミネートされました。

しかし、受賞には至りませんでした。

今回は、香港映画「インファナル・アフェア」のリメークである「ディパーテッド」でのノミネート。 切れ味の鋭さが光る名作でした。

一方、スコセッシ監督と同様、長年のキャリアを誇るイーストウッドも『硫黄島からの手紙』でノミネートされました。

日本語で撮った英断と確かな演出力が評価されていました。

しかし、イーストウッド監督はこれまで何度もアカデミー賞を受賞しています。

こうしたなか、「今回は、スコセッシ監督に」というムードが高まりました。

主演男優賞:フォレスト・ウィテカー『ラストキング・オブ・スコットランド』

フォレスト・ウィテカー

<2007年主演男優賞ノミネート>

フォレスト・ウィテカー
「ラストキング・オブ・スコットランド」
レオナルド・ディカプリオ
「ブラッド・ダイヤモンド」
ウィル・スミス
「幸せのちから」
ライアン・ゴスリング
「ハーフ・ネルソン」
ピーター・オトゥール
「Venus」

ウィテカーが、迫力の演技で栄冠

『ラストキング・オブ・スコットランド』でアフリカ・ウガンダの独裁者アミン大統領を演じたフォレスト・ウィテカーが男優賞を受賞しました。

狂気に満ちた独裁者像を熱演し、圧倒的な評価を受けました。ウィテカー氏はこの年の映画賞の男優賞はほぼ独占しており、予想通りの受賞となりました。

レオナルド・デイカプリオは『ディパーテッド』ではなく『ブラッド・ダイヤモンド』でノミネートされました。

ベテラン、ピーター・オトウールは24年ぶり、8度目のノミネートとなりました。『Venus』で老人を演じ、注目を集めました。

ウィル・スミスが『幸せのちから』で候補になったのも話題になりました。

インディーズ作品『ハーフ・ネルソン』で麻薬におぼれる教師を熱演したライアン・ゴズリングも、今後の活躍が期待されます。

主演女優賞:ヘレン・ミレン『クィーン』

ヘレン・ミレン

<主演女優賞ノミネート:2007年>

ヘレン・ミレン
『クィーン』マイティン・スコセッシ
メリル・ストリープ『プラダを着た悪魔』
ペネロペ・クルス
『ボルベール〈帰郷〉』
ジュディ・デンチ
『あるスキャンダルの覚え書き』
ケイト・ウィンスレット
『リトル・チルドレン』

女王ミレンが、「プラダ」のメリルに勝つ

受賞したのは、『クィーン』で現女王を堂々と演じて女優賞を総なめにしていたヘレン・ミレン。

ミレンは受賞スピーチで「女王万歳」と言いました。

一方、『フラダを着た悪魔』でファッション雑誌の編集長を演じたメリル・ストリープも、コミカルな演技が高い評価を得ましたが、今回はノミネートのみにとどまりました。

『ボルベール〈帰郷〉』のスペイン女優ペネロペ・クルスは、一人娘を守るたくましい母親に扮して歌まで聞かせる大奮闘を見せました。

レズビアンの老教師を演じた『あるスキャンダルの覚え書き』のジュデイ・デンチも貫禄のノミネート。

『リトル・チルドレン』で結婚生活に行き詰まった主婦に扮したケイト・ウインスレットも熱演でした。

ちなみに、『フラダを着た悪魔』のメリル・ストリープ以外は、すべてアメリカ以外の国の人になりました。うち3人はイギリス人でした。

助演男優賞 アラン・アーキン『リトル・ミス・サンシャイン』

アラン・アーキン

<助演男優賞ノミネート:2007年>

アラン・アーキン
『リトル・ミス・サンシャイン』
エデイ・マーフィー
「ドリームガールズ」
ジャイモン・ランスー 「ブラッド・ダイヤモンド」
マーク・ウォールバーグ
「ディパーテッド」
ジャッキー・アール・ヘイリー
「リトル・チルドレン」

本命エディ・マーフィーが逃す

本命視されていたエディ・マーフィーが落選。ベテランのアラン・アーキンがオスカーを手にしました。

マーフィーは、『ドリームガールズ』でぶっ飛んだ歌手を熱演。受賞が有力視されていました。

しかし、受賞したのはアーキン。麻薬中毒の爺さん役を軽妙に演じました。これまでの功績も加味されて、票を集めたのかも知れません。

受賞を逃したマーフィーは、式典から途中退場してしまいました。

子役から性格俳優へ成長したジャッキー・アール・ヘイリーのノミネートも注目に値します。

マーク・ウォールバーグ、ジャイモン・ハンスゥも、納得のノミネート。

助演女優賞:ジェニファー・ハドソン 『ドリームガールズ』

アラン・アーキン

<助演男優賞ノミネート:2007年>

ジェニファー・ハドソン
『ドリームガールズ』
菊地凛子
「バベル」
ケイト・ブランシェット
「あるスキャンダルの覚え書き」
アドリアナ・バラッザ
「バベル」
アビゲイル・ブレスリン
「リトル・ミス・サンシャイン」

菊地凛子がノミネート

日本人の菊地凛子がノミネートされました。

『バベル』で耳が不自由な女子高生を演じ、高い評価を得ました。

ナンシー梅木以来49年ぶりの受賞が期待されましたが、受賞はなりませんでした。

受賞したのは、『ドリームガールズ』圧倒的な歌唱力を見せ、観客の度肝を抜いたジェニファー・ハドソンです。

助演女優賞の候補は、年齢も国籍もバラバラで、正に今回のアカデミー賞を象徴していました。

菊地凛子と同じ『バベル』で乳母に扮したメキシコ人女優アドリアナ・バラッザ、2度目の受賞を狙うケイト・ブランシェット、10歳の少女アビゲイル・ブレスリンは、いずれも受賞を逃しました。