受賞結果の一覧

【主要8部門】作品賞監督賞主演男優賞主演女優賞助演男優賞助演女優賞脚本賞脚色賞 【ジャンル別部門】国際映画賞アニメ賞ドキュ賞 技術系9部門短編部門

部門 受賞 ノミネート
作品賞 「コーダ あいのうた」

コーダ あいのうた

【配信:アマゾン

監督:シアン・ヘダー

涙と笑いあふれる感動作。漁師一家の中でただ1人耳が聞こえる女子高生を主人公に、家族の絆や成長を描く。

2014年のフランス映画のリメイクながら、米国らしい陽気でエネルギッシュな脚色・演出により、突き抜けた一本になった。 コロナ禍で多くの人が辛い目にあっていた時代。温かみのあるストーリーが支持された。

役者たちの演技も絶賛された。主人公の家族のろう者3人は、いずれも聴覚にハンディのある俳優が演じた。

独立系(インデペンデント)の作品であり、当初は有力視されていなかった。 しかし、作品の知名度が高まるにつれて応援ムードが盛り上がり、前哨戦の終盤で急浮上。 大本命「パワー・オブ・ザ・ドッグ」を破った。
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<投票方式が有利に>
前哨戦で圧倒的に強かったパワー・オブ・ザ・ドッグは、芸術性は高いものの、好き嫌いが分かれる傾向にあった。

候補作10本に順位を付けさせる独特な投票方式が、「みんなに好かれる映画(嫌われない映画)」の典型といえる本作に有利に働いたようだ。

アート系の「ROMA/ローマ」が、大衆系の「グリーンブック」に敗れた2019年と類似する結末といえる。

<サンダンス映画祭>
本作の製作費は11億で、オスカー受賞映画としてはかなり小規模だった。(それでも前年の作品賞の「ノマドランド」の2倍ではある)。米インデペンデント系映画賞「サンダンス映画祭」で史上最多となる4冠を達成。ネット配信に参入して間もない米IT企業アップルが、これまたサンダンス史上最高となる26億円で配給権を買い取った。

サンダンス映画祭の出品作としても初の作品賞。ろう者が主な出演者となっている映画としても初めて。

配給元アップルは1999年にネット動画配信に参入したばかり。 アップルとして初の作品賞。ネット配信会社のオリジナル作品としても初めて。 先発組のNetflixとアマゾンの先を越した。

<90年ぶり>
なお、3個以下のノミネートしか得ていない映画の作品賞受賞は、1932年(第5回)の「グランド・ホテル」以来90年ぶりとなった。

<受賞結果>
受賞部門 作品賞
助演男優賞
 トロイ・コッツァー
脚色賞


<受賞スピーチ▼>


<挿入歌▼>


<予告編▼>


(日本公開:2022年1月21日)
  • 「ドライブ・マイ・カー」
    【日本映画】
     ドライブ・マイ・カー
    監督:濱口竜介
    ※日本映画として史上初の作品賞ノミネート
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    受賞 国際映画賞
    ノミネート 作品賞
    監督賞
    脚色賞
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    ドライブ・マイ・カーは、濱口竜介監督の2作目の商業映画。

    濱口監督は熱心な映画ファンから長年にわたって高い評価を得てきた。
    大学院の卒業制作から早々に注目を集め、その後も、自主制作で手掛けた作品が、コンスタントに海外や国内の小規模インデペンデント向け映画祭で紹介された。ネットで資金を集めながら完成させた実験的な作品「ハッピーアワー」(2015年)が海外で様々な賞を獲得。続く「寝ても覚めても」(2018年)により、満を持しての商業デビューを果たした。

    村上春樹を短編を、3時間の超大作に

    本作の原作は村上春樹の短編小説。妻を失い、喪失感を抱えて生きる男の悲しみと再生を、緻密な脚本で描く。上映時間はなんと3時間。

    多言語の芝居を題材に取り入れ、言葉の壁を越えた意思疎通の深さに迫った。

    ストーリー

    主人公は舞台の演出家。俳優でもある。車を運転するのが好きな男で、自分の車に愛着を持っている。

    東京で妻と満ち足りた日々を送っていたが、突然、妻がこの世を去る。

    その2年後、広島で行われる国際演劇祭で芝居の監督を務めることになった。愛車を運転して現地入りしたが、主催者から「車を自分で運転してはいけない」と告げられ、若い運転手を紹介された。このドライバーは寡黙な女性で、ある過去をもっていた。

    原作・村上春樹

    濱口監督は映画化の許諾を得ようと村上春樹氏に手紙を送った。その際に、脚本で独自の解釈を加える意向も伝えたという。脚本づくりにおいて最も重視したのは出演者の“感情の移ろい”だったという。

    製作費1億5000万円

    製作費1億5000万円。日本映画の平均製作費3.5億円と比べても低予算だった。数十億円の製作費が相場のハリウッドと比べると、圧倒的に小規模。

    プロデューサーは山本晃久(てるひさ)

    製作会社は「TSUTAYA」グループのC&Iエンタテインメントなど。

    プロデューサーは山本晃久(てるひさ)(40歳)。村上春樹ファンであり、濱口監督のポテンシャルに早くから目をつけてきた山本プロデューサーが「村上の短編小説の映画化」を濱口に提案したことから、企画が立ち上がった。

    日本の独立系映画会社「ビターズ・エンド」

    配給と制作幹事を担当した「ビターズ・エンド」(東京、社長:定井勇二社長)は、小規模のアート作品を日本の映画ファンに届け続けてきた貴重な存在。ミニシアター文化を支える柱の一つとなってきた。

    文化的な価値にこだわった地道な取り組みが、世界で大きく花開いた。


    オスカーまでの道のり

    カンヌでデビュー

    ドライブ・マイ・カーは2021年7月のカンヌ国際映画祭で日本映画初の脚本賞を受賞。その他のマイナーな賞も含めて計4冠に輝き、世界に華々しくデビューした。

    米国の評論家たちが火をつけた

    その数か月後にスタートした米国の映画賞レースに参戦。映画専門のジャーナリストや評論家から大絶賛を浴びた。 とくにニューヨーク・タイムズ、LAタイムズ、バラエティ誌など、影響力の大きい有力メディアの映画担当記者が猛烈にプッシュした。

    「3大批評家賞」で全勝

    権威の高い全米映画批評家協会、ニューヨーク、ロサンゼルスの「3大批評家賞」では、いずれも作品賞(国際映画賞でなく作品賞!)を獲得。これは、英語以外の映画として初の快挙だった。ハリウッドの有力作を差しおいての日本映画の最高賞獲得は、驚きをもって迎えられた。

    地味な日本語の会話劇

    とはいえ、ストーリーは地味で、上映時間も3時間という長尺。日本語による会話劇ということもあり、コアな映画通(シネフィル)だけの熱狂にとどまるかと思われた。

    目の肥えた映画人も大納得

    しかし、深層心理に訴えるような普遍性、独創的な語り口、観客を温かく包み込むような人間味は、目の肥えたハリウッドの映画人たちの心も動かした。最高峰のアカデミー賞において、日本映画として史上初の作品賞ノミネートを達成。監督賞、脚本賞、国際映画賞と併せて4部門での候補入りという歴史的偉業を成し遂げた。

     予告編→
    【配信:アマゾン
    (2021年8月公開)

  • 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
     パワー・オブ・ザ・ドッグ
    監督:ジェーン・カンピオン
    ※最多ノミネート(11部門12個)
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    <受賞結果>
    受賞 監督賞
    ノミネート 作品賞
    主演男優賞
    助演男優賞
    コディ・スミット・マクフィー
    助演男優賞
    ジェシー・プレモンス
    助演女優賞
    脚色賞
    撮影賞
    作曲賞
    編集賞
    音響賞
    美術賞
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    心理ドラマ兼スリラー。モダン西部劇。1920年代の米国の牧場を舞台に、生々しい愛憎ストーリーを静かなタッチで描いた。

    優れた物語構築

    優れた物語の構築力と深い人物描写、そして濃密な映像表現が絶賛された。 「完璧さ」と「独創性」を徹底的に追及した作家路線の傑作として、全米の評論家が選ぶ各賞で圧倒的な勝率を達成。 さらに、記者が投票するゴールデングローブ賞でも強敵「ベルファスト」を破り、オスカー前哨戦を完全にリードした。

    革命的な女性監督

    ジェーン・カンピオン監督は、女性として3人目となる監督賞を受賞した。ニュージーランド出身。 「ピアノ・レッスン」で1994年アカデミーの作品賞、監督賞などにノミネートされ、革命的な女性監督として注目を集めた。 このときは「シンドラーのリスト」(スピルバーグ監督)があまりにも強力だったため、作品賞、監督賞ともに逃した(脚本賞は受賞)。 それから28年後となる本年度は、再びスピルバーグ監督(ウエスト・サイド・ストーリー)と作品賞、監督賞を争った。

    10年ぶりの映画

    本作の製作は、2017年にカンピオン監督が義母からもらった原作小説にハマったのが発端だった。 活動の場をテレビドラマに移し、映画づくりから10年ほど遠ざかっていた彼女は、再びリスクの高い映画製作に臨むことを決意。 個人的に信頼する英、豪、カナダのプロデューサーらを巻き込み、「新生カンピオン組」の布陣をつくった。 さらに、母国ニュージーランド政府や豪・英の政府系機関からの資金支援も取り付けた。

    世界の英才とNetflixマネー

    しかし、革命家カンピオンが思うがままのビジョンを映像化するためには、まだ資金が足りなかった。 そこに登場したのが、米Netflix(ネットフリックス)だった。 野心的な構想に飛びついた同社が巨額資金の提供を申し出たことで、プロジェクトは一気に動き出す。 撮影中にコロナ禍に見舞われたが、Netflixは追加支援を惜しまなかったという。 世界の英才と潤沢なNetflixマネーの組み合わせは、まさに今日的といえる。

    精緻な作り込み

    テーマがややダークで、一見ストーリー展開が地味。このため、一般のNetflixユーザーの反応は当初は少し鈍かった。 しかし、「見返せば見返すほど精緻な作り込みに圧倒される」という人も多く、着実に支持を広げた。

    「万人受け」のコーダに敗れる

    アカデミー作品賞の獲得に向けて最大の難関になったのが、その独特な投票システムだ。 ベストの作品を一つ選ぶのでなく、全ノミネートに順位を付ける方式が採用されているため、 多数の投票で2位、3位以上に入らなければ勝てない。 その点、万人受けしやすいコーダより不利だったといえる。
     予告編→
    【配信:ネトフリ
    (日本公開:2021年12月Netflix配信)

  • 「ベルファスト」
     ベルファスト
    監督:ケネス・ブラナー
    作品説明を開く▼

    監督の半自伝

    北アイルランド出身のケネス・ブラナー監督が、自らの少年期に基づいて描いた半自伝。白黒映画(一部カラー)。

    紛争下の少年の日常

    社会を二分する北アイルランド紛争下の首都ベルファスト(1969年)を舞台に、日常を生きる少年と家族を描く。 政治的・宗教的な対立に揺れる地域や大人たちを、子供の純心な視点から写し出す。

    3世代家族の絆

    チャーミングな家族物語でもある。 少年、両親、祖父母の3世代の絆が、温かくノスタルジックな映像とともに語られる。

    トロントで好スタートだったが・・

    オスカー前哨戦のトップを切って行われたトロント国際映画祭で観客賞を受賞。 以来、ややマニア的な「パワー・オブ・ザ・ドッグ」に対抗しうるハート・ウォーミング系作品として期待を背負ってきた。 しかし、トロント以後は目立った勝利がなかった。

    ROMAより入りやすい?

    2019年の作品賞にノミネートされた「ROMA(ローマ)」と同じく監督自身の回想劇であり、かつ白黒映画という共通点もある。 ただ、淡々とした作風で、ストーリー展開が退屈だと感じる人も多かったROMAに比べると、入り込みやすい大衆作品。

    映画愛のシーンも

    「映画愛」を感じさせるシーンもあり、オスカーとの相性も良好。 高齢アカデミー会員へのアピール度も強いと見られていた。 弱点は、強烈なインパクトに欠けること。

    監督・俳優・脚本家として候補歴

    映画監督兼俳優のブラナー氏は、過去5度アカデミー賞にノミネートされている。 監督デビュー作「ヘンリー五世」(1989年)で監督賞と主演男優賞にダブルノミネート。 そのあと短編映画賞と脚色賞で候補になり、直近では「マリリン 7日間の恋」(2011年)で助演男優賞にノミネートされた。

    新記録「1人で累計7つの異なる部門でノミネート」

    今回は作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされ、「1人で累計7つの異なる部門でノミネート」というアカデミー賞の新記録を樹立した。そして、ついに脚本賞で受賞を果たした。マーベル映画「ソー」の1作目(2011年)の監督としても有名。
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年3月25日)

  • 「ドリームプラン」
     ドリームプラン
    監督:レイナルド・マーカス・グリーン
    作品説明を開く▼

    観客支持率トップの98%

    大多数の観客が称賛する一作。ロッテン・トマトの一般観客の評価スコアは候補作の中でトップの98%。

    ハリウッド・スタジオ製の王道

    オスカーになじみやすい家族物語であり、スポーツもの。 本年度の作品賞ノミネートの中で、最もアメリカン・ドリーム的なストーリーでもある。 ハリウッド大手スタジオ(ワーナー)による王道作品といえる。

    実在の父親がモデル

    テニスの世界トップに君臨した姉妹(姉ビーナス・ウィリアムズ、妹セリーナ・ウィリアムズ)の父親の姿を描く。 実話をベースにしている。

    主人公リチャード・ウィリアムズはテニスの素人ながら、娘2人に幼少期からテニスを徹底指導。 娘が力をつけてくると、 経済的に貧しかったにもかかわらず、強引なやり方で超一流のコーチをつけることに成功し、鮮烈なプロデビューへと導いた。 伝説的な姉妹の大活躍の土台をつくった熱血パパとして知られる。 裕福な白人層が中心だった米国テニス界に風穴を開けた存在でもある。

    「王様」のような立ち振る舞い

    本作は、リチャードの独特な「子育て法」に焦点があてられている。 目先のゲームや一時的な活躍よりも、娘たちの長期的な成功を優先させ、学問や人格形成を重視した教育に邁進する。 一方で、破天荒で独善的な態度により、周囲と様々な軋轢(あつれき)を起こしていく。 その立ち振る舞いはまるで「王様」。映画の原題も「王様リチャード(King Richard)」になっている。

    低所得層の苦闘

    少数派人種や低所得層の苦労・努力がテーマの一つ。 家族の団結や厚い信仰心もしっかりと描写されている。 米国で重視されがちな価値観が前面に出ており、 変化球のかたまりのような「パワー・オブ・ザ・ドッグ」とは対照的。一般観客が入りやすい作品であることが、作品賞レースで有利に働く可能性がある。 ただ、称賛の嵐の中で、「ややありがちな映画」との声も。

    監督は無名の若手

    主演ウィル・スミスの熱演ぶりが、見どころの一つ。 3度目のノミネートにして初の主演男優賞を獲得した。 助演女優賞ノミネートの妻役アーンジャニュー・エリスも、限られた見せ場で観客の心をわしづかみにする。 監督はほぼ無名の若手レイナルド・マーカス・グリーンが務めたが、名演出と堅実なまとめぶりが光る。 臨場感のあるテニスシーンも好評。

    ワーナーの「配信重視」路線

    米国では劇場公開と同時にネット配信された。 配給会社ワーナーが自社の配信サービス「HBOマックス」の加入者を増やすため、 2021年のすべての映画を「ネット同時公開」としたためだ。 この方針をめぐっては、映画界から強い反発が出た。 このため、本作は「親劇場派(反ネット配信業者派)」の票の受け皿としてやや説得力に欠ける面があった。

    【あらすじ】

    米国ロサンゼルス近郊の貧困地区コンプトンで暮らすリチャードはある日、 テレビで女子テニス選手が巨額の賞金を受け取るのを見て、 自分たちも娘をもうけ、彼女たちをプロテニス選手に育てることを決意する。 独自の教育論に基づく約80ページの「プラン(計画書)」を作成。 そのプランに基づいて夫婦で娘たちにテニスを教え始める。
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年2月23日)

  • 「ウエスト・サイド・ストーリー」
     ウエスト・サイド・ストーリー
    監督:スティーブン・スピルバーグ
    作品説明を開く▼
    巨匠スピルバーグ監督の映画として、11作目の作品賞ノミネートとなった(※過去の作品賞ノミネートは「ジョーズ」「ET」「カラーパープル」「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」「ミュンヘン」「戦火の馬」「リンカーン」「ブリッジ・オブ・スパイ」「ペンタゴン・ペーパーズ」)。

    原版は作品賞など10部門独占

    原作は、1957年初演の傑作ミュージカル劇。 今回が2度目の映画化となる。 最初の映画版となった1960年の「ウエスト・サイド物語」は、アカデミー賞で作品賞を含む10部門を独占。 ミュージカル映画史に残る絶対的な名作として語り継がれてきた。 それだけに、今回の2度目の映画化については、「何故また作るのか」という懐疑的な声が多く聞かれた。

    最高級の映画テクニック

    しかし、いざ公開されると「最高に眩(まぶ)しく、ゴージャス」などの称賛の声が相次いだ。 今の映画界が持ちうる最高級のテクニックを結集。オリジナル版を現代風に洗練させつつ、その精神をビビッドに蘇らせたことで、往年のファンから若い世代に至るまで幅広い支持を得た。 踊りの振り付けもバージョンアップされており、躍動感あふれるダンスシーンは圧巻。

    劇場マジック

    スピルバーグ監督にとって初めてのミュージカル。10歳のときに両親が買ってきたミュージカル版のレコードをボロボロになるまで聴いて以来、この劇を愛し続けてきたという。 それだけに、パワフルな演出や1シーンごとの徹底した仕上げぶりはかつてないほどの情熱を感じさせる。スペクタクル作品ならではの劇場マジックも存分に味わえる。

    助演女優賞を受賞

    ヒロインのマリア役を演じたレイチェル・ゼグラーは新人ながら高い評価を得た。 それを上回る大絶賛の嵐となったのが、アニータ役のアリアナ・デボーズ。助演女優賞を受賞した。
    オリジナル版でアニータを演じ、今回90歳にして別の役柄で再出演したリタ・モレノも見事。

    リメイクは不利

    作品賞レースでは、オスカーらしい華々しさがあるという点で有利だが、リメイクである点はやはり不利だと見られた。 オリジナル版をリアルタイムに体験している高齢アカデミー会員の心をどれだけ掴むかが焦点だった。

    貧困街の愛の物語

    ニューヨークの下町「ウエスト・サイド」で、イタリア系とプエルトリコ系の不良少年グループが対立。その中で生まれる愛の物語。 恋愛悲劇の最高傑作として知られるシェークスピアの「ロミオとジュリエット」を、1950年代の貧困街に置き換え、アメリカ社会の抱える不満や苦悩を描き出した
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年2月11日)

  • 「DUNE/デューン 砂の惑星」
     DUNE/デューン 砂の惑星
    監督:ドゥニ・ビルヌーブ
    作品説明を開く▼
    未来の宇宙を舞台とするSF大作。 現在も絶大な人気を誇る原作小説の独創的な世界観を、驚くべき精密さで映像化した。 ドゥニ・ビルヌーブ監督。 主演はティモシー・シャラメ。

    原作となった伝説的なSF小説『デューン 砂の惑星』(フランク・ハーバート作)は、1965年に出版された。 これまで多くの監督が映画化に挑戦しながら、プロジェクトが途中で頓挫したり、出来栄えがいま一つだったりと、成功には至らなかった。 そんな歴史的な難題に、「ブレードランナー2049」「メッセージ」で知られるドゥニ・ビルヌーブ監督が挑んだ。

    本作は、何よりも映像の美しさが称賛の的となった。 洗練された視覚デザインと描写により、ユニークな世界観を構築。 別の惑星にいるかのような錯覚を観客に覚えさせる。 砂漠のスペクタクルも見事。中東の砂漠で挑んだ撮影が、驚愕の映像体験へとつながった。

    日本では興行的に伸び悩んだが、欧州で大ヒット。中国でも堅調だった。 母国アメリカでは、劇場公開と同時にネット配信されたこともあって当初は伸び悩んだものの、1か月かけて1億ドルの大台を突破。 コロナ禍という悪条件のなか、最終的には全世界で400億円以上を稼ぎ、本年度の作品賞ノミネートの中で唯一の「特大ヒット作」となった。

    本作は2部構成のシリーズの第一弾と位置づけられている。 このため、ストーリーの進展が序盤の段階にとどまったという印象を持つ人も多い。 次作でどのようにまとめる上げるのか、監督の手腕が注目されるところであり、「1作目だけで作品賞を与えるのは時期尚早」との声もあった。 あの大傑作シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング」でさえ、「パート1」と「2」では作品賞ノミネートにとどまり、完結編の「3」でようやく受賞を果たした。

    10ノミネートのうち、視覚効果賞、撮影賞、作曲賞、編集賞、美術賞、音響賞の6部門で受賞を果たした。断トツの本年度最多受賞。 2016年のオスカーで、作品賞を逃しながら技術系6部門を制した「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を彷彿とさせる。

    主人公は、銀河を支配する「皇帝」に仕える大物一族の息子。未来をぼんやりと予見する力を備えている。豪華なオールスターキャストが登場する超大作。
     予告編→
    【配信:アマゾン(字幕版)
    【配信:アマゾン(吹替版)
     メイキング映像→
    (日本公開:2021年10月15日)

  • 「リコリス・ピザ」
     リコリス・ピザ
    監督:ポール・トーマス・アンダーソン
    作品説明を開く▼
    ノスタルジックな青春映画。 1970年代のカリフォルニアが舞台。 15歳の少年と、25歳の女性の恋を描く。

    ポール・トーマス・アンダーソン監督(51歳)の9作目。 自らが生まれ育った街とその時代を題材にしたパーソナルな一作。 登場人物や出演者にも、自分になじみのある人を多く起用した。過去作と比べ、心温まる作風。

    本作が作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたことで、 アンダーソン監督のアカデミー賞ノミネート数は通算11になった。 しかし、今回も受賞は逃し、受賞は通算ゼロのままとなった。
    ノミネート歴(wiki)→

    主演のクーパー・ホフマンは、本作でデビューとなる新人。 アンダーソン監督の数々の名作に出演してきた故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子である。 ホフマンの相手役となる主演女優アラナ・ハイムも元々はロック歌手で、俳優としては新人。2人の好演と相性の良さも称賛されている。

    題名の「リコリス・ピザ」は、カリフォルニアに実在していたレコード店の店名。 無料のリコリス(キャンディ)、快適なソファ、音楽雑誌を提供していたことでも知られていた。
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年7月1日)

  • 「ドント・ルック・アップ」
     ドント・ルック・アップ
    監督:アダム・マッケイ
    作品説明を開く▼
    本年度の作品賞ノミネートの中で、最も賛否両論が激しく分かれている一作。肯定派からは強い支持を得た。

    社会風刺コメディ。現代の扇動的な大衆政治や、事実を軽視する「反知性主義」を嘲笑のネタにしている。

    「マネー・ショート 華麗なる大逆転」「バイス」という社会派ノンフィクション系傑作でアカデミー作品賞にノミネートされたアダム・マッケイ監督。超豪華キャストと先端のSF技術を駆使した大作で、製作費80億円。

    当初パラマウントが配給権を持っていたが、Netflixが買い取った。配信スタート直後からNetflixの記録を塗り替えるような人気ぶりとなった。

    彗星が地球に接近し、人類が破滅の危機に瀕していることを察知した2人の天文学者が、米大統領らに対策を講じるよう求めていく。地球温暖化への警鐘にもなっている。

    レオナルド・ディカプリオらの演技も好評だったが、俳優部門でのノミネートはゼロだった。
     予告編→
    【配信:ネトフリ
    (日本公開:2021年12月10日、2021年12月Netflix配信)

  • 「ナイトメア・アリー」
     ナイトメア・アリー
    監督:ギレルモ・デル・トロ
    作品説明を開く▼
    スリラー映画。「シェイプ・オブ・ウォーター(2017年)」で作品賞と監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督作の新作とあって、公開前から期待が膨らんでいた。興行的には失敗したが、熱心な映画ファンやマニアからは厚い支持を獲得。 技術的なレベルの高さも称賛された。

    オスカー争いの最強集団として君臨する米映画会社サーチライトの作品。 サーチライトは本年度、有力作に恵まれず、作品賞レースではナイトメア・アリー1本に注力した。 その甲斐あってか、「チック、チック…ブーン!」(Netflix)をさしおいて、作品賞ノミネート入りを果たした。

    巡回ショーの芸人が主人公。 この芸人が、女性精神科医と出会う。 そして、危険な道へと走っていく。 主演はブラッドリー・クーパー。 危ない女性精神科医を、オスカー女優ケイト・ブランシェケイトが演じる。

    トロ監督はメキシコ人。日本の怪獣をこよなく愛する天才的オタクとして知られる。 ハリウッド業界内でも「愛されキャラ」として親しまれている。
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年3月25日)

戦評・解説↓
歴代の作品賞→

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監督賞 ジェーン・カンピオン
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

ジェーン・カンピオン

1994年に「ピアノ・レッスン」で脚本賞を受賞して以来、2度目のオスカー獲得。

女性の監督賞は史上3人目。前年の「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督に続いて2年連続。

ニュージーランド出身のベテラン。しばらくテレビドラマに専念していたため、13年ぶりの映画製作となった。Netflixの資金を得て、細部にまでこだわり抜いた末に完成させた渾身の一作。

人間の深層心理を静かに掘り下げる西部劇。極めて精緻で完成度の高いドラマであり、かつスリラーとしても上質。前哨戦で圧勝し、最多12個のノミネートを獲得。作品賞も有力視されていたが、逃した。結局、受賞は監督賞のみだった。

説明↓

作品紹介↓

 予告編(監督版)→

 作品一覧(wiki)→

<受賞スピーチ▼>

戦評・解説↓
歴代の監督賞→

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主演男優賞 ウィル・スミス
「ドリームプラン」

ウィル・スミス

3度目のノミネートにして初の受賞。過去に「ALI アリ」(2001年)、「幸せのちから」(2006年)でノミネートされた。黒人の主演男優賞は5人目。

テニスの世界トップに君臨したウィリアムズ姉妹の実在の父親を演じた。アクの強い破天荒オヤジになりきった。

53歳。「インデペンデンス・デイ」「メン・イン・ブラック」などの歴史的ヒット作を含め、 長年の超ドル箱スターとして業界への貢献度は申し分ない。 オスカーはベテラン勢が有利であることを加味すれば、受賞は確実と予想されていた。

ただし、授賞式でコメディアンのジョークに立腹し、殴打する暴行事件を起こした。人間としての評判が一気に悪くなった。(事件の動画と概要↓

説明↓

作品紹介↓

配信:アマゾン

 予告編→

 インタビュー付き予告→

 作品一覧(wiki)→

<受賞スピーチ↓>

戦評・解説↓
歴代の主演男優賞→

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主演女優賞 ジェシカ・チャステイン
「タミー・フェイの瞳」

ジェシカ・チャステイン

3度目のノミネートにして初のオスカー獲得。過去に「ヘルプ」(2011年)で助演に、「ゼロ・ダーク・サーティ」(2012年)で主演女優賞にノミネートされた。

テレビで派手な布教活動を展開した実在の著名伝道師タミー・フェイを演じた。自らプロデューサーも務めた。

自分らしさをすっかり消し去り、別人に成りきる演技。 容姿、声、しぐさ、雰囲気、歌いぶり、ミネソタ訛りのしゃべり方に至るまで、米国民によく知られる個性的な人物像を見事に再現させた。

配給会社サーチライトの巧みな宣伝活動と、自らのキャンペーン活動が功を奏し、前哨戦で競り合ったニコール・キッドマンら他候補を抑えた。

44歳。父親は消防士。

説明↓

 予告編→

 プレビュー→

 作品一覧(wiki)→

<受賞スピーチ↓>

戦評・解説↓
歴代の主演女優賞→

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助演男優賞 トロイ・コッツァー
「コーダ あいのうた」

トロイ・コッツァー

ろう者の俳優としては2人目のオスカー受賞。1人目は本作で共演した女優マーリー・マトリンだった。男優としては初。

情熱的でやや破天荒なろう者の父親役をコミカルに演じた。 作品の中で最も笑わせ、泣かせる存在。 手話が分からない人にも喜怒哀楽をしっかりと豊かに伝える迫真の演技が、多数の観客の心をつかんだ。

今回の「コーダ旋風」の最大の立役者。助演賞争いの前哨戦の中盤までは「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のコディ・スミット・マクフィーの独走を許していたが、終盤のSAGアワード(全米俳優組合賞)で大勝利。

このときの手話によるエネルギッシュで濃密なスピーチが反響を呼び、さらに支持が広がった。その猛烈な勢いが、作品賞レースにも飛び火した。

53歳。生活費に苦慮しながらも、俳優業をやめなかった努力の人。

説明↓

作品紹介↓

 予告編(トロイ・コッツァー版)→

 作品一覧(wiki)→

<受賞スピーチ↓>

戦評・解説↓
歴代の助演男優賞→

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助演女優賞 アリアナ・デボーズ
「ウエスト・サイド・ストーリー」

アリアナ・デボーズ

1961年のオリジナル版で同じ役を演じたリタ・モレノに続く二代での受賞。

優れたキャスト陣の中でもひときわ輝く存在感。圧巻のダンスシーンは映画で最大の見せ場の一つとなり、挿入歌「アメリカ」の伝説を新しいステージへと引き上げた。

希望から悲しみへの感情の移ろいを見事に表現するとともに、本作のテーマの一つである「女性のたくましさ」を体現した。

31歳。これまでは主に舞台で活躍。本作が本格的な映画デビューとなった。

性的少数派(クィア)を公表している有色人種の女性として初めての受賞という。アフロ・ラテン系としても貴重な勝利となった。

作品紹介↓

 予告編(デボーズ版)→

 作品一覧(英語wiki)→

<受賞スピーチ▼>

戦評・解説↓
歴代の受賞者(助演女優賞)→

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脚本賞 「ベルファスト」

 ベルファスト

配信:アマゾン

(脚本家:ケネス・ブラナー)
 作品一覧(wiki)→

キリスト教の宗派間闘争で荒れる北アイルランドを舞台に、日常を生き抜こうとする一般家族を描く。 9歳の少年を主人公に、両親、祖父母が織りなす3世代ファミリーの物語。ノスタルジックな白黒映像作(一部カラー)。

北アイルランド出身のケネス・ブラナー監督が、自らの少年期に基づいて脚本を書いた。 コロナ禍で自宅にこもっている間に執筆したという。

無邪気な子供の目線で身の回りの出来事をとらえつつ、大人たちの想いや苦悩も織り込み、普遍性の高いシナリオとなっている。とりわけ祖父母のさりげないセリフに重みがあり、胸を打つ。

ケネス・ブラナーは今回、脚本賞に加えて、作品賞、監督賞(2度目)にもノミネート。 過去には主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、短編映画賞にもノミネートされたことから、「累計7つの異なる部門でノミネート」という新記録をつくった。 受賞は今回が初めて。

作品紹介↓

歴代の脚本賞→

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脚色賞 「コーダ あいのうた」

 コーダ あいのうた

(脚本家:シアン・ヘダー)
 作品一覧(IMDB)→

フランス映画「エール!」(2015年)のリメイク。 女性監督シアン・ヘダーが自ら脚本を書き、受賞を果たした。

原作では主人公一家は酪農家という設定だったが、漁師に変更。 大まかなストーリーの流れを踏襲しながらも、細部をより丁寧に描き、完成度の高いシナリオとなった。

人間味あふれる人物像の描写や、手話と口頭での会話のかけあいも見事。

作品紹介↓

歴代の脚色賞→

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ジャンル別映画3部門

国際映画賞アニメ賞ドキュメンタリー賞

<ジャンル別作品3部門>
部門 受賞 ノミネート
国際映画賞 「ドライブ・マイ・カー」
【日本】

 ドライブ・マイ・カー

(濱口竜介監督)

日本映画として2009年の「おくりびと」以来13年ぶりの受賞。通算5作目。(過去の日本映画の受賞作→

作品賞、監督賞、脚色賞の主要3部門にもノミネートされており、国際映画賞での受賞は確実視されていた。

妻を亡くし、喪失心を抱える男の物語。同じく過去の傷を背負う若い女性運転手との友情ストーリーでもある。 コロナ禍で身近な人を失った世界の人たちの心をつかんだ。

アップテンポなコミック映画やアクション映画がハリウッドを席巻するなか、 静かにじっくりと、かつ深みのある言葉で伝える作風が称賛された。

仏カンヌ国際映画祭での脚本賞を皮切りに、英国アカデミー賞など海外の賞を次々と制覇した。

同じく2021年公開の濱口映画「偶然と想像」はベルリン国際映画祭の審査員グランプリに輝いており、世界の賞レースを席巻することとなった。

濱口監督は43歳。東日本大震災のドキュメンタリー映画を自主制作で3本撮るなど社会派として活動してきた。神戸の映画講座の一環として製作した「ハッピーアワー」(2015年)は、海外の映画賞を獲得した。(濱口監督のプロフィール↓

本作は、「寝ても覚めても」(2018年)に続く商業映画2本目。

作品の紹介↓

受賞歴↓

<受賞スピーチ↓>

 予告編→

動画配信(アマゾン)→
  • 「わたしは最悪。」
    【ノルウェー】
     わたしは最悪。
     予告編→
    説明↓
    (日本公開:2022年7月1日)
    ※人生の方向性が定まらないまま30歳を迎えた女性の仕事や恋を映し出すラブ・ストーリー。

  • 「FLEE フリー」
    【デンマーク】
     フリー
     予告編→
    説明↓
    (日本公開:2022年6月10日)

  • 「Hand of God -神の手が触れた日-」
    【イタリア】
     Hand of Gpd -神の手が触れた日
     予告編→
     Netflix→

  • 「ブータン 山の教室」
    【ブータン】
     ブータン 山の教室
     予告編→

戦評・解説↓
歴代の国際映画賞→

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長編アニメ賞 「ミラベルと魔法だらけの家」
(ディズニー)

 ミラベルと魔法だらけの家

ディズニーの60作目の長編アニメ。傑作「ズートピア」の監督コンビによるミュージカル。米ミュージカル界の第一人者・リン・マニュエル・ミランダが音楽を手掛けた。

ディズニーらしい映像の質の高さ。本格ミュージカルとしての良質さも評価された。

説明↓

 吹替版(Amazon)→

 字幕版(Amazon)→

<予告編↓>

(公開:2021年11月26日)
  • 「ミッチェル家とマシンの反乱」
     ミッチェル家とマシンの反乱
    (ソニー)
    説明↓
     予告編→
     Netflix→
    (公開:2021年4月23日からNetflix配信)
    ※斬新さあふれる一作。ストーリーの面白さや独創性を重視する人たちに支持され、アニメ界の最高峰・アニー賞でも作品賞を受賞した。「スパイダーマン:スパイダーバース」でアニメ賞を獲得した米ソニー・ピクチャーズ アニメーション製作。

  • 「あの夏のルカ」
     あの夏のルカ
    (ピクサー)
     説明↓
     予告編→
     字幕版(Amazon)→
     吹替版(Amazon)→
    (公開:2021年6月18日)

  • 「FLEE フリー」
     フリー
    【デンマーク】
     予告編→
     説明↓
    ※ アニメ・ドキュメンタリー。デンマーク作品。アフガニスタンからデンマークへ難民としてやってきた男性の実話に基づく。アヌシー国際アニメーション映画祭で、作品賞(長編グランプリ)を受賞。
    (公開:2022年6月10日)

  • 「ラーヤと龍の王国」
     ラーヤと龍の王国
    (ディズニー)
     予告編→
     吹替版(Amazon)→
     字幕版(Amazon)→
    (公開:2021年3月5日)

戦評・解説↓
歴代のアニメ賞→

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ドキュメンタリ賞 「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」

 サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)

1969年に米ハーレム近郊で開催された伝説的な黒人音楽フェスティバル。未公開だったコンサート映像がついに解禁された。

<予告編↓>

(公開:2021年8月27日)
  • 「FLEE フリー」
     フリー
    【デンマーク】
     予告編→
    ※アニメによる記録映画。デンマーク在住のアフガン難民が結婚を目前に控え、過去を明かさざるを得ない状況に追い込まれる。
    (公開:2022年6月)

  • 「Ascension(アセンション)」
     Ascension(アセンション)
     予告編→
    ※現代・中国の人々が生産性を追及しながら願望を達成しようとする姿を撮った。

  • 「アッティカ刑務所(Attica)」
     アッティカ刑務所(Attica)
     予告編→
    ※多くの黒人が服役する米国の刑務所。1971年に起きた5日間の暴動の記録

  • 「燃え上がる記者たち」
     Writing with Fire
    【インド】
     予告編→
    ※インドの被差別民の記者たちが運営する新聞についての実録

歴代のドキュメンタリー賞→

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技術・アート9部門

視覚効果賞撮影賞歌曲賞作曲賞衣装デザイン賞編集賞美術賞メイク&ヘア賞音響賞

<技術・アート系9部門>
部門 受賞 ノミネート
視覚効果賞 「DUNE/デューン 砂の惑星」

 DUNE/デューン 砂の惑星

(視覚効果監修:ポール・ランバート)

作品紹介↓

 オスカー受賞歴(Wiki)→

 動画「ビルヌーブ監督とジェームズ・キャメロン監督(アバター)の対談(英語)」→

 字幕版(Amazon)→

 吹替版(Amazon)→

歴代の視覚効果賞→

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撮影賞 「DUNE/デューン 砂の惑星」

 DUNE/デューン 砂の惑星

(撮影監督:グレッグ・フレイザー)

作品紹介↓

 作品一覧(Wiki)→

 字幕版(Amazon)→

 吹替版(Amazon)→

 メイキング映像→

歴代の撮影賞→

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歌曲賞 「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」

 歌手:ビリー・アイリッシュ

 曲名:ノー・タイム・トゥ・ダイ

  • 「ミラベルと魔法だらけの家」
     歌手:セバスチャン・ヤトラ
     曲名:2匹のオルギータス(イモ虫)

  • 「ドリームプラン」
     歌手:ビヨンセ
     曲名:ビー・アライブ

  • 「ベルファスト」
     歌手:ヴァン・モリソン
     曲名:ダウン・トゥ・ジョイ

  • 「フォー・グッド・デイズ」
     歌手:リーバ・マッキンタイア
     曲名:Somehow You Do

歴代の歌曲賞→

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作曲賞 「DUNE/デューン 砂の惑星」

 DUNE/デューン 砂の惑星

作曲家:ハンス・ジマー



作品紹介↓

 ハンス・ジマーの作品一覧(Wiki)→

 試聴(Amazon)→

 字幕版(Amazon)→

 吹替版(Amazon)→

歴代の作曲賞→

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衣装デザイン賞 「クルエラ」

 クルエラ

(衣装デザイナー:ジェニー・ベバン)

 オスカー受賞歴(英語Wiki)→

 配給:ディズニー

 予告編→

(日本公開:2021年5月27日)

歴代の衣装デザイン賞→

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編集賞 「DUNE/デューン 砂の惑星」

 DUNE/デューン 砂の惑星

作品紹介↓

 字幕版(Amazon)→

 吹替版(Amazon)→
  • 「ドリームプラン」
     ドリームプラン

  • 「チック、チック…ブーン!」
     チック、チック…ブーン!

  • 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
     パワー・オブ・ザ・ドッグ

  • 「ドント・ルック・アップ」
     ドント・ルック・アップ

歴代の編集賞→

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美術賞 「DUNE/デューン 砂の惑星」

 DUNE/デューン 砂の惑星

作品紹介↓

(美術監督:パトリス・ヴァーメット、装飾監督:Zsuzsanna Sipos)

 字幕版(Amazon)→

 吹替版(Amazon)→
  • 「ナイトメア・アリー」
     ナイトメア・アリー
    作品紹介↓
    (美術監督:タマラ・デヴェレル、装飾監督:シェーン・ヴィア)

  • 「ウエスト・サイド・ストーリー」
     ウエスト・サイド・ストーリー
    (美術監督:アダム・ストックハウゼン、装飾監督:Rena DeAngelo)
    作品紹介↓

  • 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
     パワー・オブ・ザ・ドッグ
    (美術監督:グラント・メイジャー、装飾監督:アンバー・リチャーズ)
    作品紹介↓

  • 「マクベス」
     マクベス
    (美術監督:シュテファン・デシャント、装飾監督:Nancy Haigh)

歴代の美術賞→

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メイク&ヘア賞 「タミー・フェイの瞳」

 タミー・フェイの瞳

歴代のメイク&ヘア賞→

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音響賞 「DUNE/デューン 砂の惑星」

 DUNE/デューン 砂の惑星

作品紹介↓

 字幕版(Amazon)→

 吹替版(Amazon)→
  • 「ウエスト・サイド・ストーリー」
     ウエスト・サイド・ストーリー
    作品紹介↓

  • 「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」
     007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

  • 「ベルファスト」
     ベルファスト

  • 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
     パワー・オブ・ザ・ドッグ

歴代の音響賞→

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短編3部門

短編アニメ短編ドキュメンタリー短編実写

部門 受賞 ノミネート
短編アニメ賞 「The Windshield Wiper」

 The Windshield Wiper

(監督:スペインのアルベルト・ミエルゴ)

 予告編→
  • 「ことりのロビン」
     ことりのロビン
    (Netflix)
     予告編→
     Netflixページ→

  • 「Bestia(ベスティア)」
     Bestia
    (監督:チリ人のヒューゴ・コバルビアス)
     予告編→
     Vimeoレンタル→

  • 「ボクシングバレー(Boxballet)」
     Boxballet
    (監督:ロシアのアントン・ディヤコフ)
     予告編→

  • 「Affairs of the Art」
     Affairs of the Art
    (監督:ジョアンナ・クイン)
    【英国、カナダ】
     予告編→

歴代の短編アニメ賞→

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短編ドキュメンタリ賞 「The Queen of Basketball」

 The Queen of Basketball

 動画(公式)→

米女子バスケ選手ルシア・ハリスの物語。女性で唯一NBAドラフト指名を受けた。ニューヨーク・タイムズなどが製作。
  • 「ベナジルに捧げる3つの歌」
     ベナジルに捧げる3つの歌
     (原題:Three Songs For Benazir)
     Netflix→

  • 「オーディブル:鼓動を響かせて」
     オーディブル:鼓動を響かせて
    (原題:Audible)
     Netflix→

  • 「私の帰る場所」
     Lead Me Home
     テーマ:米国のホームレス問題
     Netflix→

  • 「When We Were Bullies」
     When We Were Bullies
     予告編→

歴代の短編ドキュメンタリー賞→

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短編実写映画賞 「The Long Goodbye」

 The Long Goodbye

 動画→

「サウンド・オブ・メタル」で2021年主演男優賞にノミネートされたリズ・アーメッド主演。
  • 「Ala Kachuu: Take and Run」
     Ala Kachuu: Take and Run
     予告編→

  • 「The Dress」
     The Dress
     予告編→

  • 「Please Hold」
     Please Hold

  • 「On My Mind」
     On My Mind

歴代の短編映画賞→

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(集計元:株オンライン 評判

受賞数ランキング

<受賞の数と順位>
順位 作品名 受賞数 部門
1位 「デューン 砂の惑星」 6個 視覚効果賞
撮影賞
作曲賞
編集賞
美術賞
音響賞
2位 「コーダ あいのうた」 3個 作品賞
助演男優賞
脚色賞
3位 「タミー・フェイの瞳」 2個 主演女優賞
メイク&ヘア賞

ノミネート数ランキング

パワー・オブ・ザ・ドッグが12個で最多

<ノミネートの獲得数と順位>
順位 ノミネート数 作品名
1位 12個 パワー・オブ・ザ・ドッグ
2位 10個 DUNE/デューン 砂の惑星
3位 7個 ベルファスト
ウエスト・サイド・ストーリー
5位 6個 ドリームプラン
6位 4個 ドライブ・マイ・カー
ドント・ルック・アップ
ナイトメア・アリー

主要部門の解説・戦評

作品賞国際映画賞監督賞主演男優賞主演女優賞助演男優賞助演女優賞アニメ賞

作品賞

前哨戦で先頭を走った「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

2022年の作品賞レースは「ノマドランド」が圧倒的な「1強」だった前年に比べてやや混戦となりました。 前哨戦で勝率が圧倒的にトップだった「パワー・オブ・ザ・ドッグ」は作家系でテーマも暗めなため、なかなか独走状態になり切れませんでした。

心温まる系の「コーダ」が大逆転

こうしたなか、2年前の作品賞「パラサイト 半地下の家族」のように、 賞レース終盤で急速に浮上したのが、「コーダ あいのうた」です。 コーダは、感動的なストーリーと温かみあふれるユーモアが持ち味。 技術的な到達度の高さでなく、人間味に満ちた作風が勝因となった3年前の作品賞「グリーンブック」のように、大衆派の推す一作となりました。 SAGアワード(全米俳優組合賞)などの勝利で勢いに乗ったころの絶妙なタイミングでオスカー投票期間に突入。過去の統計データやセオリーをことごとく打ち破り、見事に栄冠を手にしました。

「デューン」は技術系部門を席巻

パワー・オブ・ザ・ドッグに次ぐ10ノミネートを獲得したSF映画「DUNE/デューン 砂の惑星」は、芸術的な評価と商業的な成功を両立させた秀作。 作品賞は逃したものの、技術系部門を席巻し、最多受賞となりました。

ノミネート10作品の内容・評価・戦評

コーダ あいのうた【受賞】
パワー・オブ・ザ・ドッグ
ベルファスト
ウエスト・サイド・ストーリー
ドリームプラン
ドライブ・マイ・カー
DUNE【最多受賞】
リコリス・ピザ
ドント・ルック・アップ
ナイトメア・アリー

<作品賞の候補作>
作品賞の受賞結果に戻る↑
題名 説明
「コーダ あいのうた」

コーダ あいのうた

<受賞結果>
受賞 作品賞
助演男優賞
トロイ・コッツァー
脚色賞


(日本公開:2022年1月)

ロッテントマト評価:
94%(最新スコア→

【動画】
配信:アマゾン

<予告編>


<挿入歌>

好感度ピカイチ

涙と笑いあふれる感動作。幅広い層に深く愛されやすい一作であり、好感度ナンバーワン。作品の知名度が高まるにつれて支持の裾野が広がり、賞レース終盤で「反パワー・オブ・ザ・ドッグ」派の受け皿として浮上した。

インデペンデント映画

もともとは中小規模のインデペンデント映画として製作された。 しかし、2021年1月のサンダンス映画祭で4冠に輝いたのを受けて、 巨大企業アップルが26億円で買い取り、「Apple TV」でネット配信された。 米国内では、極めて限定的な劇場公開しか行われなかった。

終盤で浮上

当初、大方のオスカー作品賞予想では7,8番手くらいの候補と思われていた。 しかし、終盤戦のSAGアワード(俳優組合賞)で最高賞「キャスト賞」を受賞。 さらに、数ある前哨戦の中でも最も重要とされるPGA(全米プロデューサー組合賞)で作品賞を獲得し、流れを引き寄せた。 サンダンス映画祭のグランプリ作品として初めてのオスカー作品賞となった。

仏映画のリメイク

聴覚障害を持つ家族(両親と兄)と共に暮らす女子高生の青春物語。 彼女だけ耳が聞こえるため、いつも家業である漁師の仕事を手伝い、手話通訳として大活躍している。 そんな彼女に、卓越した歌唱の才能を活かすチャンスがやってくる――。 2014年のフランス映画のリメイクながら、米国らしい明るくエネルギッシュな脚色・演出により、突き抜けた一本になった。

ろう者のキャスト陣に称賛集まる

役者たちの演技も絶賛された。主人公の家族のろう者3人は、いずれも聴覚にハンディのある俳優が演じた。そのうちの一人(母親役)は、1987年アカデミー賞で主演女優賞に輝いたマーリー・マトリン(愛は静けさの中に)。
父親役トロイ・コッツァーは助演男優賞を受賞した。 当初はコディ・スミット・マクフィー(パワー・オブ・ザ・ドッグ)の受賞が有力視されていたが、SAGや英国アカデミー賞などでコッツァーが相次いで勝利。手話による感動的な受賞スピーチも好感された。

日本では嬉しい劇場公開

ネット配信業者アップルが買い取ったため、米国では劇場公開は極めて限定的にしか行われなかった。 しかし、日本では洋画配給の大手ギャガが権利を取得し、全国で大規模公開した。 音楽・歌唱映画としても優れている本作は、やはり映画館で見たいところ。 コロナ禍で洋画の興行不振が続くなか、逆風に屈することなく全国のスクリーンへこの感動作を届けたギャガの功績は大きい。 劇場公開時の宣伝文句「アカデミー賞最有力」は当初誇大広告かと思われたが、見事に予言通りになった。

ランキング式投票で有利

オスカー作品賞の投票に用いられるランキング方式(ノミネート作品に順位を付ける)は、本作のように大多数に愛されやすい作品に有利。 同じ投票方式を採用しているPGAでの大金星も、それを裏付けている。

▲作品賞候補の一覧へ
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

パワー・オブ・ザ・ドッグ

<受賞結果>
受賞 監督賞
ノミネート 作品賞
主演男優賞
助演男優賞
コディ・スミット・マクフィー
助演男優賞
ジェシー・プレモンス
助演女優賞
脚色賞
撮影賞
作曲賞
編集賞
音響賞
美術賞


(日本公開:2021年11月19日劇場公開、2021年12月1日からNetflix配信)

ロッテントマト評価:
94%(最新スコア→

【動画】
配信:Netflix

<予告編>
心理ドラマ兼スリラー。モダン西部劇。1920年代の米国の牧場を舞台に、生々しい愛憎ストーリーを静かなタッチで描いた。

優れた物語構築

優れた物語の構築力と深い人物描写、そして濃密な映像表現が絶賛された。 「完璧さ」と「独創性」を徹底的に追及した作家路線の傑作として、全米の評論家が選ぶ各賞で圧倒的な勝率を達成。 さらに、記者が投票するゴールデングローブ賞でも強敵「ベルファスト」を破り、オスカー前哨戦を完全にリードした。

革命的な女性監督

ジェーン・カンピオン監督は、女性として3人目となる監督賞を受賞した。ニュージーランド出身。 「ピアノ・レッスン」で1994年アカデミーの作品賞、監督賞などにノミネートされ、革命的な女性監督として注目を集めた。 このときは「シンドラーのリスト」(スピルバーグ監督)があまりにも強力だったため、作品賞、監督賞ともに逃した(脚本賞は受賞)。 それから28年後となる本年度は、再びスピルバーグ監督(ウエスト・サイド・ストーリー)と作品賞、監督賞を争った。

10年ぶりの映画

本作の製作は、2017年にカンピオン監督が義母からもらった原作小説にハマったのが発端だった。 活動の場をテレビドラマに移し、映画づくりから10年ほど遠ざかっていた彼女は、再びリスクの高い映画製作に臨むことを決意。 個人的に信頼する英、豪、カナダのプロデューサーらを巻き込み、「新生カンピオン組」の布陣をつくった。 さらに、母国ニュージーランド政府や豪・英の政府系機関からの資金支援も取り付けた。

世界の英才とNetflixマネー

しかし、革命家カンピオンが思うがままのビジョンを映像化するためには、まだ資金が足りなかった。 そこに登場したのが、米Netflix(ネットフリックス)だった。 野心的な構想に飛びついた同社が巨額資金の提供を申し出たことで、プロジェクトは一気に動き出す。 撮影中にコロナ禍に見舞われたが、Netflixは追加支援を惜しまなかったという。 世界の英才と潤沢なNetflixマネーの組み合わせは、まさに今日的といえる。

精緻な作り込み

テーマがややダークで、一見ストーリー展開が地味。このため、一般のNetflixユーザーの反応は当初は少し鈍かった。 しかし、「見返せば見返すほど精緻な作り込みに圧倒される」という人も多く、着実に支持を広げた。

「万人受け」のコーダに敗れる

アカデミー作品賞の獲得に向けて最大の難関になったのが、その独特な投票システムだ。 ベストの作品を一つ選ぶのでなく、全ノミネートに順位を付ける方式が採用されているため、 多数の投票で2位、3位以上に入らなければ勝てない。 その点、万人受けしやすいコーダより不利だったといえる。

▲作品賞候補の一覧へ
「ベルファスト」

(日本公開:2021年3月25日)

【受賞部門】
 脚本賞

【ノミネート部門】作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、歌曲賞、音響賞(以上、7部門)

ベルファスト

ロッテントマト評価:
86%
最新スコア→

【動画】
配信:アマゾン

<予告編>

監督の半自伝

北アイルランド出身のケネス・ブラナー監督が、自らの少年期に基づいて描いた半自伝。白黒映画(一部カラー)。

紛争下の少年の日常

社会を二分する北アイルランド紛争下の首都ベルファスト(1969年)を舞台に、日常を生きる少年と家族を描く。 政治的・宗教的な対立に揺れる地域や大人たちを、子供の純心な視点から写し出す。

3世代家族の絆

チャーミングな家族物語でもある。 少年、両親、祖父母の3世代の絆が、温かくノスタルジックな映像とともに語られる。

トロントで好スタートだったが・・

オスカー前哨戦のトップを切って行われたトロント国際映画祭で観客賞を受賞。 以来、ややマニア的な「パワー・オブ・ザ・ドッグ」に対抗しうるハート・ウォーミング系作品として期待を背負ってきた。 しかし、トロント以後は目立った勝利がなかった。

ROMAより入りやすい?

2019年の作品賞にノミネートされた「ROMA(ローマ)」と同じく監督自身の回想劇であり、かつ白黒映画という共通点もある。 ただ、淡々とした作風で、ストーリー展開が退屈だと感じる人も多かったROMAに比べると、入り込みやすい大衆作品。

映画愛のシーンも

「映画愛」を感じさせるシーンもあり、オスカーとの相性も良好。 高齢アカデミー会員へのアピール度も強いと見られていた。 弱点は、強烈なインパクトに欠けること。

監督・俳優・脚本家として候補歴

映画監督兼俳優のブラナー氏は、過去5度アカデミー賞にノミネートされている。 監督デビュー作「ヘンリー五世」(1989年)で監督賞と主演男優賞にダブルノミネート。 そのあと短編映画賞と脚色賞で候補になり、直近では「マリリン 7日間の恋」(2011年)で助演男優賞にノミネートされた。

新記録「1人で累計7つの異なる部門でノミネート」

今回は作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされ、「1人で累計7つの異なる部門でノミネート」というアカデミー賞の新記録を樹立した。そして、ついに脚本賞で受賞を果たした。マーベル映画「ソー」の1作目(2011年)の監督としても有名。

▲作品賞候補の一覧へ
「ウエスト・サイド・ストーリー」

【受賞部門】
 助演女優賞

【ノミネート部門】作品賞、監督賞、撮影賞、衣装賞、音響賞、美術賞(以上、7部門)

ウエスト・サイド・ストーリー

(日本公開:2022年2月11日)

ロッテントマト評価:
91%(最新スコア→

【動画】
<予告編>


 予告編→
巨匠・スティーブン・スピルバーグ監督の映画として、11作目の作品賞ノミネートとなった(※過去の作品賞ノミネートは「ジョーズ」「ET」「カラーパープル」「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」「ミュンヘン」「戦火の馬」「リンカーン」「ブリッジ・オブ・スパイ」「ペンタゴン・ペーパーズ」)。

原版は作品賞など10部門独占

原作は、1957年初演の傑作ミュージカル劇。 今回が2度目の映画化となる。 最初の映画版となった1960年の「ウエスト・サイド物語」は、アカデミー賞で作品賞を含む10部門を独占。 ミュージカル映画史に残る絶対的な名作として語り継がれてきた。 それだけに、今回の2度目の映画化については、「何故また作るのか」という懐疑的な声が多く聞かれた。

最高級の映画テクニック

しかし、いざ公開されると「最高に眩(まぶ)しく、ゴージャス」などの称賛の声が相次いだ。 今の映画界が持ちうる最高級のテクニックを結集。オリジナル版を現代風に洗練させつつ、その精神をビビッドに蘇らせたことで、往年のファンから若い世代に至るまで幅広い支持を得た。 踊りの振り付けもバージョンアップされており、躍動感あふれるダンスシーンは圧巻。

劇場マジック

スピルバーグ監督にとって初めてのミュージカル。10歳のときに両親が買ってきたミュージカル版のレコードをボロボロになるまで聴いて以来、この劇を愛し続けてきたという。 それだけに、パワフルな演出や1シーンごとの徹底した仕上げぶりはかつてないほどの情熱を感じさせる。スペクタクル作品ならではの劇場マジックも存分に味わえる。

助演女優賞を受賞

ヒロインのマリア役を演じたレイチェル・ゼグラーは新人ながら高い評価を得た。 それを上回る大絶賛の嵐となったのが、アニータ役のアリアナ・デボーズ。助演女優賞を受賞した。
オリジナル版でアニータを演じ、今回90歳にして別の役柄で再出演したリタ・モレノも見事。

リメイクは不利

作品賞レースでは、オスカーらしい華々しさがあるという点で有利だが、リメイクである点はやはり不利だと見られた。 オリジナル版をリアルタイムに体験している高齢アカデミー会員の心をどれだけ掴むかが焦点だった。

貧困街の愛の物語

ニューヨークの下町「ウエスト・サイド」で、イタリア系とプエルトリコ系の不良少年グループが対立。その中で生まれる愛の物語。 恋愛悲劇の最高傑作として知られるシェークスピアの「ロミオとジュリエット」を、1950年代の貧困街に置き換え、アメリカ社会の抱える不満や苦悩を描き出した

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「ドリームプラン」

(日本公開:2022年2月23日)

【受賞部門】
 主演男優賞

【ノミネート部門】作品賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞、歌曲賞(以上、6部門)

ドリームプラン

ロッテントマト評価:
90%(最新スコア→

【動画】
配信:アマゾン

<予告編>


 予告編→

観客支持率トップの98%

大多数の観客が称賛する一作。ロッテン・トマトの一般観客の評価スコアは候補作の中でトップの98%。

ハリウッド・スタジオ製の王道

オスカーになじみやすい家族物語であり、スポーツもの。 本年度の作品賞ノミネートの中で、最もアメリカン・ドリーム的なストーリーでもある。 ハリウッド大手スタジオ(ワーナー)による王道作品といえる。

実在の父親がモデル

テニスの世界トップに君臨した姉妹(姉ビーナス・ウィリアムズ、妹セリーナ・ウィリアムズ)の父親の姿を描く。 実話をベースにしている。

主人公リチャード・ウィリアムズはテニスの素人ながら、娘2人に幼少期からテニスを徹底指導。 娘が力をつけてくると、 経済的に貧しかったにもかかわらず、強引なやり方で超一流のコーチをつけることに成功し、鮮烈なプロデビューへと導いた。 伝説的な姉妹の大活躍の土台をつくった熱血パパとして知られる。 裕福な白人層が中心だった米国テニス界に風穴を開けた存在でもある。

「王様」のような立ち振る舞い

本作は、リチャードの独特な「子育て法」に焦点があてられている。 目先のゲームや一時的な活躍よりも、娘たちの長期的な成功を優先させ、学問や人格形成を重視した教育に邁進する。 一方で、破天荒で独善的な態度により、周囲と様々な軋轢(あつれき)を起こしていく。 その立ち振る舞いはまるで「王様」。映画の原題も「王様リチャード(King Richard)」になっている。

低所得層の苦闘

少数派人種や低所得層の苦労・努力がテーマの一つ。 家族の団結や厚い信仰心もしっかりと描写されている。 米国で重視されがちな価値観が前面に出ており、 変化球のかたまりのような「パワー・オブ・ザ・ドッグ」とは対照的。一般観客が入りやすい作品であることが、作品賞レースで有利に働く可能性がある。 ただ、称賛の嵐の中で、「ややありがちな映画」との声も。

監督は無名の若手

主演ウィル・スミスの熱演ぶりが、見どころの一つ。 3度目のノミネートにして初の主演男優賞を獲得した。 助演女優賞ノミネートの妻役アーンジャニュー・エリスも、限られた見せ場で観客の心をわしづかみにする。 監督はほぼ無名の若手レイナルド・マーカス・グリーンが務めたが、名演出と堅実なまとめぶりが光る。 臨場感のあるテニスシーンも好評。

ワーナーの「配信重視」路線

米国では劇場公開と同時にネット配信された。 配給会社ワーナーが自社の配信サービス「HBOマックス」の加入者を増やすため、 2021年のすべての映画を「ネット同時公開」としたためだ。 この方針をめぐっては、映画界から強い反発が出た。 このため、本作は「親劇場派(反ネット配信業者派)」の票の受け皿としてやや説得力に欠ける面があった。

【あらすじ】

米国ロサンゼルス近郊の貧困地区コンプトンで暮らすリチャードはある日、 テレビで女子テニス選手が巨額の賞金を受け取るのを見て、 自分たちも娘をもうけ、彼女たちをプロテニス選手に育てることを決意する。 独自の教育論に基づく約80ページの「プラン(計画書)」を作成。 そのプランに基づいて夫婦で娘たちにテニスを教え始める。

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「ドライブ・マイ・カー」

ドライブ・マイ・カー

<受賞結果>
受賞 国際映画賞
ノミネート 作品賞
監督賞
脚色賞


(日本公開:2021年8月)

ロッテントマト評価:
97%(最新スコア→

【動画】
配信:アマゾン

▼濱口監督の受賞スピーチ



<予告編>
濱口竜介監督の日本映画。

海外でこれほど高い評価を得た日本映画は、 宮崎駿監督のアニメ「千と千尋の神隠し」(2001年)以来。 実写では、巨匠・黒澤明監督の「乱」(1985年)以来といえる。

サムライのような日本独自の世界観や異国情緒で引き付けるのでなく、多様性や普遍性をテーマにした点で、 過去に海外で評価された日本映画とやや異なる。

米国ではまず、原作者・村上春樹の小説になじむインテリ層や、LAタイムズ紙など有力メディアから圧倒的な支持を獲得。早々に「作品賞ノミネートの有力候補」として太鼓判を押された。

それを裏付けるように、米国の映画ファンが注視する3大批評家団体(全米映画批評家協会、ニューヨーク、ロサンゼルス)の映画賞で、いずれも作品賞を獲得。英語以外の作品としては初の快挙だった。仏カンヌ国際映画祭では最高賞(パルムドール)や次点(グランプリ)を逃したことを考えると、むしろアメリカで火がついた作品だった。

アート系映画が強い欧州や近隣の東アジアはともかく、米国でここまで称賛を浴びるとは、製作した当人たちも想像していなかったようだ。

ロッテン・トマトが集計する評論家レビューのスコアは97%(2022年3月21日時点)という驚異的な高さ。ただ、一般の観客の評価は79%で、 専門家とは温度差がある。

詩的、哲学的な内容であり、スローな会話劇が3時間続く。 その点、スリリングな展開で娯楽的な要素がふんだんに盛り込まれていた「パラサイト 半地下の家族」と比べると、商業的な広がりという面では開きがあった。

それでも、「喪失と再生」というテーマは、コロナで身近な人を亡くした米国の観客にも深く響いた。演劇の稽古などのモチーフを斬新な形で取り上げていることも、アカデミー会員から共感を得やすい要素となった。

濱口竜介監督(43歳)が海外メディアの取材に積極的に応じ、自らの言葉で作品について語っていることも、浸透度アップにつながった。

ドライブ・マイ・カーとは↓

ドライブ・マイ・カーの受賞歴↓

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「DUNE/デューン 砂の惑星」

【受賞部門】
 視覚効果賞
 撮影賞
 作曲賞
 編集賞
 美術賞
 音響賞


【ノミネート部門】作品賞、脚色賞、衣装賞、メイク&ヘア賞(以上、10部門)

DUNE/デューン 砂の惑星

(日本公開:2021年10月15日)

ロッテントマト評価:
83%(最新スコア→

【動画】
配信:アマゾン(字幕版)
配信:アマゾン(吹替版)

<予告編>


 予告編→
未来の宇宙を舞台とするSF大作。 現在も絶大な人気を誇る原作小説の独創的な世界観を、驚くべき精密さで映像化した。 ドゥニ・ビルヌーブ監督。 主演はティモシー・シャラメ。

原作となった伝説的なSF小説『デューン 砂の惑星』(フランク・ハーバート作)は、1965年に出版された。 これまで多くの監督が映画化に挑戦しながら、プロジェクトが途中で頓挫したり、出来栄えがいま一つだったりと、成功には至らなかった。 そんな歴史的な難題に、「ブレードランナー2049」「メッセージ」で知られるドゥニ・ビルヌーブ監督が挑んだ。

本作は、何よりも映像の美しさが称賛の的となった。 洗練された視覚デザインと描写により、ユニークな世界観を構築。 別の惑星にいるかのような錯覚を観客に覚えさせる。 砂漠のスペクタクルも見事。中東の砂漠で挑んだ撮影が、驚愕の映像体験へとつながった。

日本では興行的に伸び悩んだが、欧州で大ヒット。中国でも堅調だった。 母国アメリカでは、劇場公開と同時にネット配信されたこともあって当初は伸び悩んだものの、1か月かけて1億ドルの大台を突破。 コロナ禍という悪条件のなか、最終的には全世界で400億円以上を稼ぎ、本年度の作品賞ノミネートの中で唯一の「特大ヒット作」となった。

本作は2部構成のシリーズの第一弾と位置づけられている。 このため、ストーリーの進展が序盤の段階にとどまったという印象を持つ人も多い。 次作でどのようにまとめる上げるのか、監督の手腕が注目されるところであり、「1作目だけで作品賞を与えるのは時期尚早」との声もあった。 あの大傑作シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング」でさえ、「パート1」と「2」では作品賞ノミネートにとどまり、完結編の「3」でようやく受賞を果たした。

10ノミネートのうち、視覚効果賞、撮影賞、作曲賞、編集賞、美術賞、音響賞の6部門で受賞を果たした。断トツの本年度最多受賞。 2016年のオスカーで、作品賞を逃しながら技術系6部門を制した「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を彷彿とさせる。

主人公は、銀河を支配する「皇帝」に仕える大物一族の息子。未来をぼんやりと予見する力を備えている。豪華なオールスターキャストが登場する超大作。

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「リコリス・ピザ」

(日本公開:2022年7月1日)

【ノミネート部門】作品賞、監督賞、脚本賞(以上3部門)

リコリス・ピザ

ロッテントマト評価:
91%(最新スコア→

【動画】
<予告編>
ノスタルジックな青春映画。 1970年代のカリフォルニアが舞台。 15歳の少年と、25歳の女性の恋を描く。

ポール・トーマス・アンダーソン監督(51歳)の9作目。 自らが生まれ育った街とその時代を題材にしたパーソナルな一作。 登場人物や出演者にも、自分になじみのある人を多く起用した。過去作と比べ、心温まる作風。

本作が作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたことで、 アンダーソン監督のアカデミー賞ノミネート数は通算11になった。 しかし、今回も受賞は逃し、受賞は通算ゼロのままとなった。
ノミネート歴(wiki)→

主演のクーパー・ホフマンは、本作でデビューとなる新人。 アンダーソン監督の数々の名作に出演してきた故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子である。 ホフマンの相手役となる主演女優アラナ・ハイムも元々はロック歌手で、俳優としては新人。2人の好演と相性の良さも称賛されている。

題名の「リコリス・ピザ」は、カリフォルニアに実在していたレコード店の店名。 無料のリコリス(キャンディ)、快適なソファ、音楽雑誌を提供していたことでも知られていた。

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「ドント・ルック・アップ」

【ノミネート部門】作品賞、脚本賞、編集賞、作曲賞(以上4部門)

ドント・ルック・アップ

(日本公開:2021年12月10日、Netflixで2021年12月24日配信)

ロッテントマト評価:
55%
最新スコア→

【動画】
配信:Netflix

<予告編>


 予告編→

出演:
レオナルド・ディカプリオ
ジェニファー・ローレンス
ケイト・ブランシェット
メリル・ストリープ
ジョナ・ヒル
タイラー・ペリー
ティモシー・シャラメ
ほか
本年度の作品賞ノミネートの中で、最も賛否両論が激しく分かれている一作。肯定派からは強い支持を得た。

社会風刺コメディ。現代の扇動的な大衆政治や、事実を軽視する「反知性主義」を嘲笑のネタにしている。

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」「バイス」という社会派ノンフィクション系傑作でアカデミー作品賞にノミネートされたアダム・マッケイ監督。超豪華キャストと先端のSF技術を駆使した大作で、製作費80億円。

当初パラマウントが配給権を持っていたが、Netflixが買い取った。配信スタート直後からNetflixの記録を塗り替えるような人気ぶりとなった。

彗星が地球に接近し、人類が破滅の危機に瀕していることを察知した2人の天文学者が、米大統領らに対策を講じるよう求めていく。地球温暖化への警鐘にもなっている。

レオナルド・ディカプリオらの演技も好評だったが、俳優部門でのノミネートはゼロだった。

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「ナイトメア・アリー」

【ノミネート部門】作品賞、撮影賞、美術賞、衣装賞(以上4部門)

(日本公開:2022年3月25日)

ナイトメア・アリー

ロッテントマト評価:
80%
最新スコア→

【動画】
配信:アマゾン

<予告編>
スリラー映画。

「シェイプ・オブ・ウォーター(2017年)」で作品賞と監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督作の新作とあって、 公開前から期待が膨らんでいた。 しかし、興行的には失敗。観客のレビューも普通どまりだった。 それでも、熱心な映画ファンやマニアからは厚い支持を獲得。 技術的なレベルの高さも称賛された。

オスカー争いの最強集団として君臨する米映画会社サーチライトの作品。 サーチライトは本年度、有力作に恵まれず、作品賞レースではナイトメア・アリー1本に注力した。 そのかいあってか、「チック、チック…ブーン!」(Netflix)をさしおいて、作品賞ノミネート入りを果たした。

巡回ショーの芸人が主人公。 この芸人が、女性精神科医と出会う。 そして、危険な道へと走っていく。 主演はブラッドリー・クーパー。 危ない女性精神科医を、オスカー女優ケイト・ブランシェケイトが演じる。

トロ監督はメキシコ人。日本の怪獣をこよなく愛する天才的オタクとして知られる。 ハリウッド業界内でも「愛されキャラ」として親しまれている。

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【批評家の評価ランキング】作品賞ノミネートのロッテン・トマトのスコア

映画評論家のレビューを集計する「ロッテン・トマト」(Rotten Tomatoes)の評価(スコア)のランキングです。 2022年のアカデミー賞作品賞のノミネート作について、評価の高い順に並べています。(2022年6月現在)


順位 作品 スコア
1位 「ドライブ・マイ・カー」 97%
2位 「コーダ あいのうた」 94%
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
4位 「ウエスト・サイド・ストーリー」 91%
「リコリス・ピザ」
6位 「ドリームプラン」 90%
7位 「ベルファスト」 86%
8位 「DUNE/デューン 砂の惑星」 83%
9位 「ナイトメア・アリー」 80%
10位 「ドント・ルック・アップ」 55%
参考 「ノマドランド」
 ※前年の作品賞
93%
「パラサイト 半地下の家族」
 ※2020年の作品賞
98%
「グリーンブック」
 ※2019年の作品賞
77%
「スパイダーマン: ノー・ウェイ・ホーム」
 ※2021年最大のヒット作
93%

【観客の評価ランキング】作品賞ノミネートのIMDbスコア

「IMDb」による一般観客の評価(スコア)のランキングです。 2022年のアカデミー賞作品賞のノミネート作について、評価の高い順に並べています。(2022年6月現在)


順位 作品 スコア
1位 「DUNE/デューン砂の惑星」 8.1
詳細→
2位 「コーダ あいのうた」 8.0
詳細→
3位 「ドライブ・マイ・カー」 7.6
詳細→
4位 「ドリームプラン」 7.5
詳細→
5位 「リコリス・ピザ」 7.3
詳細→
「ベルファスト」 同上
詳細→
7位 「ウエスト・サイド・ストーリー」 7.2
詳細→
「ドント・ルック・アップ」 同上
詳細→
9位 「ナイトメア・アリー」 7.1
詳細→
10位 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」 6.9
詳細→
参考 「ノマドランド」
 ※前年の作品賞
7.3
詳細→
「パラサイト 半地下の家族」
 ※2020年の作品賞
8.5
詳細→
「グリーンブック」
 ※2019年の作品賞
8.2
詳細→
「スパイダーマン: ノー・ウェイ・ホーム」
 ※2021年最大のヒット作
8.3
詳細→

国際映画賞

ドライブ・マイ・カーが余裕の勝利

       
<事前予想の有力度ランキング>
国際映画賞の受賞結果に戻る↑
有力順位 受賞結果と作品名
1位 【受賞】
「ドライブ・マイ・カー」【日本映画】
説明↑
2位 「わたしは最悪。」【ノルウェー】
説明↓
3位 「Flee(フリー)」【デンマーク】
説明↓
4位 「Hand of God~神の手が触れた日」【イタリア】
5位 「ブータン 山の教室」【ブータン】
<有力候補の紹介>
(◎最有力、○有力、△大穴)
作品 事前予想 説明
「ドライブ・マイ・カー」
(日本映画)


受賞
説明↑
「わたしは最悪。」
(ノルウェー映画)

【ノミネート部門】脚本賞、国際映画賞

(日本公開:2022年7月1日)

わたしは最悪。

ロッテントマト評価:
98%
最新スコア→

【動画】
<予告編>
ノルウェー作品。医学部の女子学生を主人公とするブラック・ユーモア的な恋愛コメディ兼ドラマ。

ノルウェーを代表する映画監督ヨアキム・トリアーの作品。 前哨戦では「ドライブ・マイ・カー」に次ぐ成績を出した。

アカデミー賞では国際映画賞に加えて、脚本賞にもノミネートされた。 有力作「愛すべき夫妻の秘密(脚本:アロン・ソーキン)」をおさえて予想外の候補入りとなった。

ロッテン・トマトのスコアは98%で、ドライブ・マイ・カーと同じく最高レベル。 アート性が高く上映時間が長いドライブ・マイ・カーよりも、幅広い層が楽しみやすいと指摘する声もあった。

物事が長続きしない意志の弱い女性の話。30歳。ルックスは良いため、男性運はある。そんな彼女はある夜、招待されていないパーティに紛れ込み、魅力的な青年に遭遇。 そして、最近「安定したい」と言い出した作家の彼氏と別れ、新たな恋愛に身を委ねようとする。

主演のレナート・レインスベはカンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞した。

配給担当の米ネオンは、「パラサイト 半地下の家族」をオスカー4冠に導いた実績がある。
「FLEE フリー」
(デンマーク映画)

【ノミネート部門】国際映画賞、アニメ賞、ドキュメンタリー賞(以上3部門)

(日本公開:2022年6月10日)

FLEE フリー

ロッテントマト評価:
97%(最新スコア→

【動画】
<予告編>
アニメ作品であり、ドキュメンタリー映画でもある。 「国際映画賞」「長編アニメ賞」「長編ドキュメンタリー賞」というジャンル別の長編作品部門すべてにノミネート。 史上初の快挙となった。

社会派の作品。候補となった3部門の中では、ドキュメンタリーでの受賞の可能性が最も高いと予想されていた。しかし、残念ながら受賞ゼロに終わった。

デンマーク出身のヨナス・ポエール・ラスムセン監督。アフガニスタンからデンマークへ難民としてやってきた男性の実話をもとにした作品。結婚を目前に控えた彼が、隠し続けてきた過去を明かさざるを得ない状況に追い込まれる。

監督賞

カンピオンが独走

       
<事前予想の有力度ランキングと結果>
有力順位 結果と監督名
1位 【受賞】
ジェーン・カンピオン
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
説明↓
2位 スティーブン・スピルバーグ
「ウエスト・サイド・ストーリー」
説明↓
3位 濱口竜介
「ドライブ・マイ・カー」
説明↓
4位 ケネス・ブラナー
「ベルファスト」
5位 ポール・トーマス・アンダーソン
「リコリス・ピザ」
<有力候補の紹介>
(◎最有力、○有力、△大穴)
監督賞の受賞結果に戻る↑
候補者 事前予想 説明
ジェーン・カンピオン
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

 ジェーン・カンピオン

 予告編→

 作品一覧(wiki)→


受賞
3人目の女性監督の受賞となった。前年の「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督に続いて2年連続。

前哨戦で圧倒的な強さだった。作品賞を逃したアワードでも、監督賞は高確率で獲った。

28年前の1994年、「ピアノ・レッスン」で脚本賞を受賞した。39歳の若さだった。このときは監督賞、作品賞にもノミネートされたが、スティーブン・スピルバーグ監督「シンドラーのリスト」に敗れた。

その後の活躍はやや地味だったが、2010年代にテレビドラマ「トップ・オブ・ザ・レイク」などで再び称賛を浴びた。13年ぶりの劇場映画となる本作で、名監督ぶりをいかんなく発揮した。

本作では、「男らしさの呪縛」という古くて新しいテーマに挑戦。西部劇の伝統的な価値観を問い直すような意義深い一作となった。歴史的価値や重みが問われるオスカーにぴったりの仕事ぶりと評価された。
スティーブン・スピルバーグ
「ウエスト・サイド・ストーリー」

 スティーブン・スピルバーグ

 予告編→

 メイキング映像→

 インタビュー動画→

 作品一覧(wiki)→
監督歴50年。巨匠の中の巨匠であり、最強の映画人。監督賞ノミネートは今回で8度目。1998年の「プライベート・ライアン」以来3度目の受賞が期待されたが、及ばなかった。

子供のころからずっとミュージカルを作りたかったという。 中でも幼少期に音楽にひたった「ウエスト・サイド物語」は特別な存在だった。 2014年に自ら映画化の権利取得に乗り出し、キャスト集めにも奔走。 その並々ならぬパッションと信念は、本作の熱量や輝きとなって存分に現れた。

スクリーンから弾ける歌と踊りは圧巻。 原作の1950年代をノスタルジックに再現しつつ、テーマを今の社会問題にぐっと引き寄せた構築力も見事。 新人俳優を中心とするキャストに、最高級の演技をさせた力量も称賛された。

「21世紀に入ってからのスピルバーグ作品の中ではベスト」と評する人も多かった。
濱口竜介
「ドライブ・マイ・カー」

 濱口竜介
2020年に韓国ポン・ジュノ監督(52歳、a href="https://eigaz.net/review-picture/parasite.php">パラサイト)、2021年に中国出身のクロエ・ジャオ監督(39歳、ノマドランド)が受賞。アジア人が2年連続の栄冠に輝いていた。

そして、2022年は濱口竜介監督(43歳)が日本人として3人目のノミネートを果たした。日本だけでなく、アジアの映画界にとってもさらなる朗報となった。しかも、濱口の場合、ハリウッドで仕事をした経歴が全くない中での大躍進だった。

例年にも増してノミネート争いが壮絶を極めたと言われる本年度の監督賞。超大作「デューン 砂の惑星」でその手腕を絶賛されたドゥニ・ビルヌーブ監督をさしおいて、アカデミーはHamaguchiを選んだ。

演出や語り口(ストーリー・テリング)の革新性という点においては、大本命のジェーン・カンピオンを上回る高評価を得た。

黒澤明、溝口健二、小津安二郎らの世界的巨匠に続くホープとして、これからどんな作品を世に問うていくのか、各国の映画ファンが大注目している。

 プロフィール↓

 作品一覧・受賞歴↓

主演男優賞

本命ウィル・スミスが初受賞

<事前予想の有力度ランキングと結果>
有力順位 結果と俳優名
1位 【受賞】
ウィル・スミス
「ドリームプラン」
説明↓
2位 ベネディクト・カンバーバッチ
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
説明↓
3位 アンドリュー・ガーフィールド
「チック、チック…ブーン!」
説明↓
4位 デンゼル・ワシントン
「マクベス」
5位 ハビエル・バルデム
「愛すべき夫妻の秘密」
<有力候補の紹介>
(◎最有力、○有力、△大穴)
主演男優賞の受賞結果に戻る↑
候補者 事前予想 説明
ウィル・スミス
「ドリームプラン」

 ウィル・スミス

 予告編→

 作品一覧(wiki)→


受賞
2002年「アリ」、2007年「幸せのちから」に続いて3度目のノミネートで、ついに初受賞を果たした。

テニスのウィリアムズ姉妹の実在する父親リチャード・ウィリアムズになりきる演技で、絶賛の嵐に包まれた。 リチャードのアクの強さやひょうひょうとした立ち振る舞いを見事に再現。 同時に、スミスらしい茶目っ気を加えることで、観客に親しみやすいキャラクターを造形した。

自らプロデューサーの一人としても名をつらね、後見役のウィリアムズ姉妹らとともにプロジェクトを推進した。劇場公開と同時にネット配信されたことで、俳優たちの受け取る歩合報酬が減ったことから、自分のギャラの一部を他の出演者たちに回したという逸話もある。

前哨戦では、序盤の評論家系アワードでカンバーバッチに連敗していたが、記者系のゴールデングローブ賞で勝利。その後の映画業界人が選ぶ賞では連勝した。前哨戦での受賞スピーチも「さすがに上手い」と好意的に受け止められた。

「インデペンデンス・デイ」「メン・イン・ブラック」などの歴史的ヒット作を含め、 長年の超ドル箱スターとして業界への貢献度は申し分ない。 オスカーはベテラン勢が有利であることを加味すれば、受賞は当然。

53歳。俳優歴32年。ラッパーとして芸能活動を開始し、俳優業に進出した。

壇上ビンタ事件

オスカー授賞式では、別の部門の発表時に妻を揶揄(やゆ)したコメディアンに激怒。客席からステージに上がり、いきなり強烈なビンタを浴びせるという暴力事件を起こした。(動画↓)。
ベネディクト・カンバーバッチ
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

 ベネディクト・カンバーバッチ

 予告編→

 作品一覧(wiki)→
演じた役柄は、粗暴で残忍なカウボーイ。 同時に知的で教養があり、繊細な感性を持つ。 そんな屈折したキャラクターに挑み、見事にものにした。

微妙なニュアンスで感情や思惑を伝える演技はまさに芸術。 パワー・オブ・ザ・ドッグの独特の世界観と心理描写において、決定的に重要な役割を果たした。 「イミテーション・ゲーム」で天才数学者を演じ、初めてオスカーにノミネート(2014年)されたときよりも、スクリーン上での説得力は強い。

1年かけて乗馬、縄使い、動物の扱い方、バンジョーの演奏、モンタナ訛りをマスターしたという。 まさに完璧主義者。英国人ながら西部訛りも見事に身につけた。

45歳。両親も俳優だった。イギリス国立劇場などの古典舞台でキャリアを築いた演技派。 近年はマーベルの漫画映画「ドクター・ストレンジ」役として大衆的な大スターとなり、 2021年最大のヒット作「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でも重要な役割を担った。
アンドリュー・ガーフィルド
「チック、チック…ブーン!」

 アンドリュー・ガーフィルド

 予告編→

 作品一覧(wiki)→
人生に悩み、苦闘する30歳の青年を演じ、同世代から共感を得た。 喜怒哀楽たっぷりの人間味あふれる演技は好感度バツグン。

ミュージカル初挑戦ながら、いきなり優れた歌唱力を披露し、度肝を抜いた。 ゴールデングローブ賞でミュージカル&コメディ部門の主演男優賞を受賞。 さらに、本年度は「タミー・フェイの瞳」での主演も称賛された。

38歳。2016年に「ハクソー・リッジ」でも主演男優賞に初ノミネートされており、二度目のオスカー候補。 映画「スパイダーマン」の旧シリーズの主役としてもお馴染み。

主演女優賞

無冠の名優チャステインが大混戦を制す

     
<事前予想の有力度ランキングと結果>
有力順位 結果と女優名
1位 【受賞】
ジェシカ・チャステイン
「タミー・フェイの瞳」
説明↓
2位 オリビア・コールマン
「ロスト・ドーター」
説明↓
3位 ペネロペ・クルス
「パラレル・マザーズ」
説明↓
4位 ニコール・キッドマン
「愛すべき夫妻の秘密」(作品説明↓
説明↓
5位 クリステン・スチュワート
「スペンサー ダイアナの決意」のダイアナ妃役  (作品説明↓
<有力候補の紹介>
(◎最有力、○有力、△大穴)
主演女優賞の受賞結果に戻る↑
候補者 事前予想 説明
ジェシカ・チャステイン
「タミー・フェイの瞳」

 ジェシカ・チャステイン

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 プレビュー→

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受賞
1970年代~80年代、著名伝道師の夫とともにキリスト教系テレビ番組に出演。 エキセントリックなトークや歌唱で有名になった実在の女性タミー・フェイを演じた。

自分らしさを消し去り、役柄にすっかり成りきる演技。 容姿、声、しぐさ、雰囲気、歌いぶり、ミネソタ訛りのしゃべり方に至るまで、米国民によく知られる個性的な人物像を見事に再現させた。

自ら映画化権を取得し、プロデューサーの一人として製作に奔走。 コロナ禍もあって観客動員は少なかったが、メイク&ヘア賞とともに2部門ノミネートを果たし、いずれも受賞を果たした。

前哨戦では、ゴールデングローブ賞でキッドマンに負けたが、SAGアワード(俳優組合賞)で勝利。大混戦のなかで、終盤に勢いに乗った。

「ノマドランド」「シェイプ・オブ・ウォーター」で作品賞を獲得した最強の配給会社サーチライトが、巧みなキャンペーンを展開した。 同社は2019年の主演女優賞争いで、3番手候補と見られていたオリビア・コールマンを勝利へと導いた実績がある。今回も、卓越した手腕を発揮した。

過去に2度のオスカーノミネート。このうち2013年はジェニファー・ローレンスでなくチャステイン(ゼロ・ダーク・サーティ)が受賞すべきだったと考える人は少なくなかった。

今回争ったコールマン、キッドマン、ペネロペはいずれも既に受賞済み。もう一人のクリステンはまだ新顔。実績が豊富なのに未だ無冠であることが強みになった。

44歳。父親は消防士。
オリビア・コールマン
「ロスト・ドーター」

 オリビア・コールマン

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2019年に「女王陛下のお気に入り」で初受賞。 2021年に「ファーザー」でノミネート。 テレビドラマ「ザ・クラウン」シリーズでもエミー賞などを次々と獲得しており、 すっかり賞レースの常連になった。絶頂の48歳。

本作では、微妙な表情や口調で心理を伝える職人技的な演技が称賛された。見事な内面演技。 映画のストーリーも役柄も地味だが、緊迫感たっぷりの飽きさせないパフォーマンス。 Netflix経由でテレビ鑑賞する観客に対しても、しっかりとニュアンスを伝えた。

近年のオスカー俳優部門は、競り合いになればなるほど、候補者の知名度や話題性よりも演技力そのもののが勝負の分かれ目となる傾向が見受けられる。2021年の主演男優賞アンソニー・ホプキンス、主演女優賞マクドーマンド、そして、2017年の主演女優賞コールマンはその例。

今回も、チャステインやキッドマンのような派手さはないが、高度なメイクアップ技術を伴う実在人物の再現でなく、素の顔であそこまで魅せた職人芸は賛嘆の極み。

本作は脚色賞と助演女優賞にもノミネートされた。
ペネロペ・クルス
「パラレル・マザーズ」

 ペネロペ・クルス

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4度目のノミネート。ウディ・アレン監督「それでも恋するバルセロナ」で2009年に助演女優賞を受賞した。今回は、夫のハビエル・バルデム(愛すべき夫妻の秘密)とダブルで候補入りを果たした。

スペイン映画。長年にわたってアカデミー賞に候補を送り続けてきた巨匠ペドロ・アルモドバル監督の最新作。妊娠をきっかけに世代を超えた女性同士の友情を描く。作品として高い評価を得ていたが、なぜか国際映画賞でスペイン代表にならなかった。

47歳。スペイン人。
ニコール・キッドマン
「愛すべき夫妻の秘密」

 ニコール・キッドマン

 予告編→

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 インタビュー動画→

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前哨戦の序盤では、あまり注目されていなかった。しかし、ゴールデングローブ賞で勝利する番狂わせを起こし、勢いに乗った。

国民的番組「アイ・ラブ・ルーシー」のルシル・ボールを演じた。 公開前は、容姿や雰囲気の面で大きなギャップがあるとして懐疑的な声が多く聞かれたが、いざ公開されると称賛一色になった。キッドマンらしさを残しながら、ルシル・ボールの個性を再現したうまさに、往年のテレビファンからも喝采が送られた。

本作の配給を担当した米Amazonが今回のオスカーで最も力を入れているのが、この部門。 映画業界人が選ぶ賞であるだけに、親近感のあるハリウッド女優に扮したという点でも有利と見られた。

キッドマンはこれまで4度ノミネート。うち3回は主演、1回は助演。このうち2003年の「めぐりあう時間たち」で受賞を果たした。54歳。キッドマンの受賞歴→
クリステン・スチュワート
「スペンサー ダイアナの決意」

 クリステン・スチュワート

 予告編→

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英ダイアナ妃を演じた。評論家系の賞では圧倒的ナンバー1の勝率だった。当初は最有力候補と見られていたが、SAGアワードではノミネートを逃した。

オスカーでもノミネートを危ぶむ声も出たが、無事候補入りを果たした。31歳。映画「トワイライト」シリーズで有名。

助演男優賞

コーダ旋風の立役者コッツァーが受賞

         
<事前予想の有力度ランキングと結果>
有力順位 結果と俳優名
1位 【受賞】
トロイ・コッツァー
「コーダ あいのうた」
説明↓
2位 コディ・スミット・マクフィー
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
説明↓
3位 キアラン・ハインズ
「ベルファスト」
説明↓
4位 ジェシー・プレモンス
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
5位 JKシモンズ
「愛すべき夫妻の秘密」
<有力候補の紹介>
(予想:◎最有力、○有力、△大穴)
助演男優賞の受賞結果に戻る↑
候補者 事前予想 説明
トロイ・コッツァー
「コーダ あいのうた」

 トロイ・コッツァー

 予告編(トロイ・コッツァー版)→

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受賞
情熱的でワイルドなろう者の父親役をコミカルに演じた。 作品の中で最も爆笑させ、泣かせる存在。

自ら聴覚障害を持つ。 手話が分からない人にも喜怒哀楽をしっかりと豊かに伝える迫真の演技が圧倒的多数の観客の心をつかんだ。

前哨戦の中盤まではコディ・スミット・マクフィーの独走を許していたが、終盤のSAGアワード(全米俳優組合賞)で大勝利。 このときの受賞スピーチが感動的だったことで、さらに支持が広がった。(SAGの受賞スピーチ→

さらに、コッツァーの終盤での連勝が呼び水となり、作品自体もオスカー授賞式直前に急激に勢いを増した。

ろう者の俳優としては史上2人目のオスカー受賞。1人目は本作で共演した女優マーリー・マトリンだった。男優としては初。 53歳。
コディ・スミット・マクフィー
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

 コディ・スミット・マクフィー

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強いアジェンダを内側に秘めた特異なキャラクターを演じた。大胆なストーリー展開を支える重要な役どころ。ド迫力の怪演をみせる主演カンバーバッチを食ってしまうような絶妙なパフォーマンスだった。

オーストラリア出身。10歳くらいで子役として映画デビューし、早々に地元オーストリアで賞を獲得した。 その後、「猿の惑星: 新世紀」「X-MEN:アポカリプス」などのハリウッドの超メジャー作品でも活躍。年齢は26歳前後。

リウマチの一種である「強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)」という難病と闘いながら、精力的に俳優活動を続けている。父親は元プロレスラー。

前哨戦の評論家系の賞で連勝し、他の候補を寄せ付けない強さを見せた。 ただ、「まだ若いからチャンスはいくらでもある」という空気もあり、コッツァーに票が流れた面もあるようだ。

また、もう一人の脇役ジェシー・プレモンスもノミネートされたことで、票が割れたとの指摘もある。
キアラン・ハインズ
「ベルファスト」

 キアラン・ハインズ

 予告編→

 作品一覧(wiki)→
主人公の少年のおじいちゃん役を演じた。役者陣がトータルで称賛されたベルファストの中でも、ひときわ輝く存在。 孫とのやり取りで泣かせ、笑わせた。

ベテランらしい智や徳をさりげなくにじませる演技で、40年以上の長いキャリアの中でも最高レベルとの評価も。祖母役の大女優ジュディ・デンチとの相性もばっちりで、共にノミネートを果たした。

早くから本命候補の一角と見られていたが、コッツァーやマクフィー相手に苦戦を強いられた。

69歳。ベルファスト出身。過去のオスカー関連作品では「ミュンヘン」(2005年、スピルバーグ監督)などに出演している。
※予想元:AI Referee

助演女優賞

圧巻ダンスの新生デボーズが勝利

         
<事前予想の有力度ランキングと結果>
有力順位 結果と俳優名
1位 【受賞】
アリアナ・デボーズ
「ウエスト・サイド・ストーリー」
説明↓
2位 キアステン・ダンスト
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
説明↓
3位 アーンジャニュー・エリス
「ドリームプラン」
説明↓
4位 ジュディ・デンチ
「ベルファスト」
5位 ジェシー・バックリー
「ロスト・ドーター」
<有力候補の紹介>
(◎最有力、○有力、△大穴)
助演女優賞の受賞結果に戻る↑
候補者 事前予想 説明
アリアナ・デボーズ
「ウエスト・サイド・ストーリー」

 アリアナ・デボーズ

 予告編(デボーズ版)→

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受賞
アニータ役。優れたキャスト陣の中でもひときわ輝く存在感で、作品のインパクトを強めた。

カリスマ性あふれるダンスは前代未聞レベル。挿入歌「アメリカ」で新たな伝説をつくった。 さらに、ジェットコースターのような感情の浮き沈みを見事に表現するともに、本作のテーマの一つである「女性の強さ」や「ラテンパワー」を鮮やかに体現した。

31歳。これまで主に舞台のミュージカルで活躍。今作が本格的なスクリーン・デビューとなった。 2006年にミュージカル「ドリームガールズ」で鮮烈デビューし、助演女優賞を獲得したときのジェニファー・ハドソンを彷彿とさせる。

性的少数派(クィア)を公表している有色人種の女性として初めての受賞という。アフロ・ラテン系としても貴重な勝利だった。
キアステン・ダンスト
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

 キアステン・ダンスト

 予告編→

 作品一覧(wiki)→
初のノミネート。

長年にわたり映画界の一線で活躍してきた。 12歳のときに子役で出演した「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」でゴールデングローブ賞にノミネート。 「若草物語」「エターナル・サンシャイン」「メランコリア」でも賞レースに多少なりとも絡んだ。 しかし、オスカーとは縁がなかった。

本作では、意地悪な主人公(ベネディクト・カンバーバッチ)と対峙する母親役を演じた。 仕事に追われるシングルマザーから富裕層の妻へと脱皮するも、精神的に脆弱な状態に置かれるキャラクター。 主役並みのスクリーン・タイムで、傑作映画の屋台骨を支えた。

夫役を演じ、助演男優賞にノミネートされたジェシー・プレモンスは、私生活でもパートナー。既に2児をもうけている。 39歳。
アーンジャニュー・エリス
「ドリームプラン」

 アーンジャニュー・エリス

 予告編→

 作品一覧(wiki)→
身勝手な夫役(ウィル・スミス)を正論で問いただすシーンで、観客の心をつかんだ。

実在のキャラクターの芯の強さを感じさせる演技。物語への親近感を高める存在にもなった。

アニメ賞

大衆人気の「ミラベル」 が、独創性の「ミッチェル家」に勝つ

   
<事前予想の有力度ランキングと結果>
有力順位 結果と作品名
1位 【受賞】
「ミラベルと魔法だらけの家」
説明↓
2位 「ミッチェル家とマシンの反乱」
説明↓
3位 「あの夏のルカ」
説明↓
4位 「Flee(フリー)」
説明↓
5位 「ラーヤと龍の王国」
説明↓
 
<作品紹介>
(◎最有力、○有力、△大穴)
アニメ賞の受賞結果に戻る↑
作品 事前予想 説明
「ミラベルと魔法だらけの家」

(日本公開:2021年11月26日)

ミラベルと魔法だらけの家

ロッテントマト評価:
93%
最新スコア→

【動画】
 吹替版(Amazon)→

 字幕版(Amazon)→

<予告編>


受賞
ディズニーの60作目の長編アニメ。傑作「ズートピア」の監督コンビによるミュージカル。 米ミュージカル界の第一人者・リン・マニュエル・ミランダが音楽を手掛けた。ディズニーらしい映像や美術面の質の高さが評価された。

米国でコロナ感染が一時期収まっていた2021年11月に劇場公開され、一定の興行収入を得た。 その点、ネット配信がメインだった他の候補作よりも有利だった。

ミランダがつくった挿入歌が次々とヒットし、全米の子供たちが歌いまくった。 とくに、サルサ調の「秘密のブルーノ」は流行歌となった。

ディズニーのネット配信でも大人気になった。 子供や孫とともに家庭で作品や歌に親しんだアカデミー会員も票を入れたと見られている。

南米コロンビアの魔法一家を描く。 奥地にある家に暮らすマドリガル家の子どもたちは、一人一人が家から異なる魔法の才能を与えられていた。

しかし、なぜか少女ミラベルにだけ、何の力も授けられていなかった。ある時、魔法の家が危険にさらされていることを知った彼女は家族を救うために立ち上がる。

監督:バイロン・ハワード&ジャレッド・ブッシュ。
「ミッチェル家とマシンの反乱」

(日本ネット配信:2021年4月)

 予告編→

 Netflix→

ミッチェル家とマシンの反乱

ロッテントマト評価:
98%
最新スコア→
斬新さあふれるファミリー映画。ネットフリックス(Netflix)で配信。ストーリーの面白さや独創性を重視する人に支持されており、アニメ界の最高峰・アニー賞でも「ミラベルと魔法だらけの家」をおさえて作品賞に輝いた。人間味あふれる手描き風の表現と、最新鋭の立体CGの組み合わせも見事。

「スパイダーマン:スパイダーバース」でオスカーのアニメ賞を獲得した米ソニー・ピクチャーズ アニメーションが製作した。 2020年に劇場公開される予定だったが、コロナ禍で上映が難しくなったため、Netflixがソニーから権利を買い取り、全世界で配信した。

2021年のアニメの中で最高のレビュー評価を獲得した。 ロッテン・トマトの評論家スコアは97%。 映画評論家系の賞では、「ミラベル」などのディズニー&ピクサー作品を次々と倒す快進撃を続けた。アニメファンの支持も厚い。

アカデミー賞争いでは、公開時期が早すぎたことと、 配信限定だったことが不利に働いたかも知れない。

「スパイダーバース」のときのように、常勝ディズニー&ピクサー連合に苦杯をなめさせることはできなかった。
「あの夏のルカ」

(日本公開:2021年6月18日)

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 吹替版(Amazon)→

 予告編→

あの夏のルカ

ロッテントマト評価:
91%
最新スコア→
「トイ・ストーリー」シリーズなどでCGアニメの新たな世界を開拓してきたピクサーの新作。前年アニメ賞と作曲賞の2冠に輝いた「ソウルフル・ワールド」に続くオスカーを狙う。

コロナの影響で、日米ともに映画館での公開が中止となり、ディズニー・プラスでの配信のみとなった。

海の底で暮らす「シー・モンスター」の少年ルカが主人公。 彼はある日、陸に上がるとウロコもヒレも消えて人間に変身できることを知る。
「FLEE フリー」

 予告編→

(日本公開:2022年6月10日)

ロッテントマト評価:
97%
最新スコア→
アニメ兼ドキュメンタリー映画。デンマーク作品

説明↑
「ラーヤと龍の王国」

(公開:2021年3月5日)

 吹替版(Amazon)→

 字幕版(Amazon)→

 予告編→

ラーヤと龍の王国

ロッテントマト評価:
94%
最新スコア→
ディズニーのオリジナル作品。冒険ファンタジー。人間を石にしてしまう怪物がはびこる古代アジアが舞台。主人公ラーヤが、神話の存在である龍シスーとともに、石の欠片(かけら)を探す旅に出る。

物語とアクションシーンで楽しませる。個性豊かな世界観とキャラクターも魅力的。

作品賞ノミネートは逃したが、他の部門で候補に入った作品

チック、チック…ブーン! | 愛すべき夫妻の秘密 | スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム | ハウス・オブ・グッチ | マクベス | スペンサー |

作品 説明
「チック、チック…ブーン!」

【ノミネート部門】主演男優賞、編集賞

チック、チック…ブーン!

(日本公開:2021年11月19日ネットフリックス配信)

ロッテントマト評価:
89%(最新スコア→

【動画】
 Netflixの配信ページ→

<予告編>
ミュージカル映画。 Netflixオリジナル作品。 ネットフリックスにとって、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」「ドント・ルック・アップ」に次ぐ第3の有力候補だった。 作品賞ノミネート10作品のうち3作品をネトフリが占める事態が起こるのか、 大いに注目されたが、作品賞候補には入らなかった。

主演アンドリュー・ガーフィールドが、激戦区の主演男優賞でノミネート入りを果たした。

傑作ミュージカル舞台劇「RENT(レント)」で知られる作曲家・脚本家ジョナサン・ラーソンの伝記。 30歳になったラーソンが、ニューヨークのブロードウェイで成功をつかもうと悪戦苦闘する姿を描く。 この年代の人たちが経験するとされる心理的危機「クォーターライフ・クライシス」がテーマの一つになっている。

監督は、米国ミュージカル界の超大物リン・マニュエル・ミランダ。本作が映画監督としてのデビュー作となった。 ミランダ氏はニューヨーク・ブロードウェイ劇場街で上演された傑作ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」と「ハミルトン」で作曲・作詞を担当。いずれもトニー賞を受賞した。 プエルトリコ系の41歳。
「愛すべき夫妻の秘密」

【ノミネート部門】主演女優賞、主演男優賞、助演男優賞

愛すべき夫妻の秘密

(日本公開:2021年12月21日からAmazon配信)

 Amazon配信ページ→

ロッテントマト評価:
69%(最新スコア→
「ソーシャル・ネットワーク」など現代ドラマの名脚本家として知られ、前年の作品賞候補「シカゴ7裁判」の監督でもあるアーロン・ソーキンの新作。

1950年代のアメリカで「視聴率70%」という驚異的な人気を誇ったテレビドラマ「アイ・ラブ・ルーシー」。 番組の主役を務める実在の俳優夫婦を描く。 ハリウッドに赤狩りの旋風が吹き荒れるなか、夫婦はキャリアを台無しにしかねないような危機に遭遇する。

妻役ニコール・キッドマンと夫役ハビエル・バルデムが、そろって主演賞にノミネートされた。 さらに、ベテラン名脇役のJKシモンズが助演男優賞で候補入りした。

米Amazonのオリジナル作品。ロッテン・トマトのスコアは68%とイマイチだったが、前哨戦の米プロデューサー組合賞(PGA)では作品賞にノミネートされた。 ハリウッドが舞台という親近感から、オスカーでも作品賞候補になると予想する声もあったが、「ドライブ・マイ・カー」「ナイトメア・アリー」などに競り負けた。
「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」

【ノミネート部門】視覚効果賞

(日本公開:2022年1月7日)

ロッテントマト評価:
93%
最新スコア→

【動画】
 字幕版(Amazon)→
 吹替版(Amazon)→

<予告編>

■配給:ソニー・ピクチャーズ
コロナ禍でアメリカの映画館の経営危機が続くなか、日本における「鬼滅の刃」のような救世主的な特大ヒットとなった。 ネット配信の時代においても劇場を連日満席にできることを立証するとともに、 他の映画ファンとスクリーン体験を共有する楽しさを大勢の人たちに再認識させた。

評論家と一般観客の両方から高い評価を得た。 ロッテン・トマトの評論家スコアは93%。「ブラックパンサー」より低いが、「アベンジャーズ/エンドゲーム」と同じ高水準。

マーベル・シリーズの一環として始まった新生スパイダーマン3部作の完結版となる。 さらに、初代「スパイダーマン」3部作(2002年~2007年)と、「アメイジング・スパイダーマン」2部作(2012年、14年)の世界観をも網羅する野心的な大作。 主人公の少年の成長物語としても良質な仕上がりになっている。
「ハウス・オブ・グッチ」

【ノミネート部門】ヘア&メイク賞

ハウス・オブ・グッチ

(日本公開:2022年1月14日)

ロッテントマト評価:
63%(最新スコア→

【動画】
<予告編>
公開前の試写の段階では、 映画評論家のレビューが「並」のレベルだった。 しかし、いざ公開されると、主演レディー・ガガのスター性や題材の興味深さもあって大ヒット。 コロナで大人向け映画が軒並み苦戦するなか、 数少ない劇場での成功例となった。 評論家とは異なり、一般観客の評判は上々だった。

オスカー前哨戦では、 事前予想を上回る好調ぶり。 主演女優賞(レディー・ガガ)と助演男優賞(ジャレッド・レト)で高いノミネート率となった。 しかし、オスカーでは俳優部門での候補入りを逃した。

名匠リドリー・スコット監督(84歳)夫妻が十数年以上にわたって温め、実現にこぎつけたプロジェクト。 イタリアの高級ファッションメーカー「グッチ(Gucci)」の創業一族の内部で起きた内紛や凶悪事件を描く。

ガガが演じる主人公(パトリツィア・レジアニ)は、庶民の出身ながらグッチ創業者の孫と結婚。 その強欲さによって一族を混乱へと導いていく。
「マクベス」

【ノミネート部門】主演男優賞、撮影賞、美術賞

マクベス

(2022年1月14日からアップルTVで配信)

ロッテントマト評価:
93%(最新スコア→

【動画】
<予告編>
白黒映画。 コーエン兄弟のジョエル・コーエンが、初めて弟イーサン抜きの単独監督を務めた。 シェークスピア劇が原作。 A24などが製作し、アップルTVが配信の権利を獲得した。

評価は高かったが、「アカデミー作品賞候補としてはあまりにも地味」という声も聞かれた。

デンゼル・ワシントンが主演男優賞にノミネートされた。 通算10個目のノミネート。 コーエンの妻フランシス・マクドーマンドも好演。
「スペンサー ダイアナの決意」

【ノミネート部門】主演女優賞

(日本公開:2022年秋)

スペンサー ダイアナの決意(Spencer)

ロッテントマト評価:
84%
最新スコア→

【動画】
<予告編>
英国ダイアナ妃と、チャールズ皇太子が離婚を決めたと言われる運命の数日間について、 憶測に基づいて描いたフィクション。

1991年12月、ダイアナとチャールズの結婚は冷え切っていた。 不倫や離婚の噂も出回るようになっていた。 それでも、2人は他の王族たちとともに、別邸「サンドリンガム・ハウス」において、恒例のクリスマス休暇を過ごしていた。

「トワイライト」シリーズで知られるクリステン・スチュワートがダイアナ妃を演じ、主演女優賞にノミネートされた。

監督は、「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」のパブロ・ラライン。 南米チリ人。チリ軍事政権下の国民投票を描いた「NO」でアカデミー賞の国際映画賞にノミネートされた経歴の持ち主。

「ドライブ・マイ・カー」とは

ドライブ・マイ・カー

濱口監督の2作目の商業映画

ドライブ・マイ・カーは、濱口竜介監督の2作目の商業映画。

映画ファンから長年にわたって高い評価

濱口監督は熱心な映画ファンから長年にわたって高い評価を得てきた。
大学院の卒業制作から早々に注目を集め、その後も、自主制作で手掛けた作品が、コンスタントに海外や国内の小規模インデペンデント向け映画祭で紹介された。ネットで資金を集めながら完成させた実験的な作品「ハッピーアワー」(2015年)が海外で様々な賞を獲得。続く「寝ても覚めても」(2018年)により、満を持しての商業デビューを果たした。

村上春樹を短編を、3時間の超大作に

本作の原作は村上春樹の短編小説。妻を失い、喪失感を抱えて生きる男の悲しみと再生を、緻密な脚本で描く。上映時間はなんと3時間。

多言語の芝居を題材に取り入れ、言葉の壁を越えた意思疎通の深さに迫った。

ストーリー

主人公は舞台の演出家。俳優でもある。車を運転するのが好きな男で、自分の車に愛着を持っている。

東京で妻と満ち足りた日々を送っていたが、突然、妻がこの世を去る。

その2年後、広島で行われる国際演劇祭で芝居の監督を務めることになった。愛車を運転して現地入りしたが、主催者から「車を自分で運転してはいけない」と告げられ、若い運転手を紹介された。このドライバーは寡黙な女性で、ある過去をもっていた。

原作・村上春樹

濱口監督は映画化の許諾を得ようと村上春樹氏に手紙を送った。その際に、脚本で独自の解釈を加える意向も伝えたという。脚本づくりにおいて最も重視したのは出演者の“感情の移ろい”だったという。

製作費1億5000万円

製作費1億5000万円(スナップアップ投資顧問推計)。日本映画の平均製作費3.5億円と比べても低予算だった。数十億円の製作費が相場のハリウッドと比べると、圧倒的に小規模。

プロデューサーは山本晃久(てるひさ)

製作会社は「TSUTAYA」グループのC&Iエンタテインメントなど。

プロデューサーは山本晃久(てるひさ)(40歳)。村上春樹ファンであり、濱口監督のポテンシャルに早くから目をつけてきた山本プロデューサーが「村上の短編小説の映画化」を濱口に提案したことから、企画が立ち上がった。

日本の独立系映画会社「ビターズ・エンド」

配給と制作幹事を担当した「ビターズ・エンド」(東京、社長:定井勇二社長)は、小規模のアート作品を日本の映画ファンに届け続けてきた貴重な存在。ミニシアター文化を支える柱の一つとなってきた。

文化的な価値にこだわった地道な取り組みが、世界で大きく花開いた。

受賞歴

ドライブ・マイ・カーの受賞歴↓

動画配信

動画配信(アマゾン)→

濱口監督とは

プロフィール

<濱口竜介>(はまぐち・りゅうすけ)

1978年12月16日、神奈川県川崎市生まれ。43歳。

はじめて映画館で見た映画は「ネバーエンディング・ストーリー」。

東京大学で映画研究会に入会。映画の知識と経験を蓄えた。

東京大学の文学部を卒業後、映画の助監督や番組助手(AD)などを経験した。

東京芸大大学院の映像研究科に入学。世界的に知られる黒沢清監督に師事するようになった。

2008年、大学院の卒業制作(修了制作)として作った「PASSION」が、いきなり東京フィルメックスなど国内外の映画祭に出品され、高評価を得た。

仙台へ移住し、東日本大震災のドキュメンタリー

東京を拠点にしていたが、東日本大震災後に仙台へ移住し、被災者らに取材したドキュメンタリー映画を3本製作した。自主制作だった。「東北記録映画3部作」などと呼ばれている。

神戸で講習会の講師に

その後、芸術家を神戸に招き、制作活動をしてもらう神戸市役所系プログラム「デザイン・クリエイティブセンター神戸」(KITTO)に参加。2013年春に神戸へ移住した。

素人を集めて作った「ハッピーアワー」で海外の映画賞

神戸プログラムの一環で、2013年9月から5カ月間、即興演技を教える講習会(ワークショップ)を実施した。そのうえで、講習を受けた老若男女17人が出演する「ハッピーアワー」を製作した。神戸を中心に撮影した。

「ハッピーアワー」は2015年に完成。5時間を超える長時間の作品となった。「ロカルノ国際映画祭」の国際部門で最優秀女優賞を受賞するなど、高い評価を得た。世界の映画通の間で名前を知られるようになった。日本でも称賛され、今や「2010年代の日本映画の最高傑作」と評価する専門家もいる。

2018年、商業作品としてのデビュー作「寝ても覚めても」で国内外から高い評価を獲得。ヨコハマ映画祭など日本の有力な映画賞でも多数の賞に輝いた。

世界が最も注目する監督

濱口監督はとりわけ2020年から、世界的な脚光を浴びるようになった。脚本を共同執筆した「スパイの妻」(黒沢清監督)が2020年秋のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。2021年3月のベルリン国際映画祭では監督作「偶然と想像」が第2席に当たる銀熊賞(審査員大賞)を獲得した。 さらに、ドライブ・マイ・カーでカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞したことで、関わった映画が世界三大映画祭すべてで連続受賞した。
その旋風は米国にまで波及し、ハリウッドの大作を抑えて有力な映画アワードで作品賞を獲得するという「事件」が何度も起きた。制作側の関係者たちも「まさかアメリカでここまで評価されるとは」という驚きがあったようだ。同時期に試写会が行われた「偶然と想像」も絶賛の嵐となった。
次代の日本映画界を先導する存在として大注目されている。

濱口監督の作品一覧と受賞歴

作品名 説明
「偶然と想像」
(2021年)
【受賞歴】
<海外>
・ベルリン国際映画祭 審査員大賞(作品賞に次ぐ2位)
・国際シネフィル協会アンサンブル賞
・仏ナント三大陸映画祭 グランプリ(金の気球賞)、観客賞
・ハンガリーのCineFest ミシュコルツ国際映画祭 エメリック・プレスバーガー(最高賞)
・シカゴ国際映画祭 Outlook Competition部門 Qヒューゴ銀賞を受賞
・アジア映画賞:作品賞ノミネート、監督賞ノミネート
・米フロリダ映画批評家賞:監督賞ノミネート、脚本賞ノミネート、出演者アンサンブル賞ノミネート、外国語映画賞ノミネート
<国内>
・日本映画批評家大賞 作品賞
・日本映画プロフェッショナル大賞 作品賞
・キネマ旬報ベストテン日本映画3位
・東京フィルメックス 観客賞
・高崎映画祭 作品賞/主演俳優賞(河井青葉、占部房子)
「ドライブ・マイ・カー」
(2021年)
受賞歴こちら↓
「スパイの妻」
(2020年)

脚本のみ担当(野原位、黒沢清との共同脚本)
【受賞歴】
・キネマ旬報ベストテン脚本賞
「寝ても覚めても」
(2018年)
商業作品としてのデビュー作。

【受賞歴】
・ヨコハマ映画祭6冠(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、最優秀新人賞、撮影賞)
・TAMA映画賞最優秀(作品賞、最優秀男優賞、最優秀新進女優賞)
・キネマ旬報ベストテン日本映画4位
・カンヌ国際映画祭コンペ部門出品
・山路ふみ子映画賞映画賞・新人女優賞(唐田えりか)
・日本映画プロフェッショナル大賞(監督賞、ベストテン2位)
・おおさかシネマフェスティバル日本映画 音楽賞
「天国はまだ遠い」
(2016年)
「ハッピーアワー」のネット資金集め(クラウドファンディング)に対するリターンとして製作された。
「ハッピーアワー」
(2015年)
演技経験のない女性4人を主演に起用し、神戸で撮影した。上映時間が5時間を超える。

【受賞歴】
・キネマ旬報ベスト・テン3位
・ロカルノ国際映画祭(最優秀女優賞、脚本スペシャル・メンション )
・ナント3大陸映画祭(観客賞・銀の気球賞)
・シンガポール国際映画祭アジア長編映画コンペティション部門 最優秀監督賞
・文部科学大臣芸術選奨新人賞
・バルセロナ・オトゥール国際映画祭の観客賞
・グアナフォト国際映画祭最優秀作品賞
・アジア太平洋スクリーンアワード最優秀脚本賞
・キヨタノ現代日本映画祭金の大陽賞
・日本映画プロフェッショナル賞5位
・日本映画批評家大賞選考委員特別賞
・KINOTAYO現代日本映画祭ソレイユ・ドール観客賞(グランプリ)
「不気味なものの肌に触れる」
(2013年)
【受賞歴】
・PFFぴあフィルムフェスティバル出品
「うたうひと」
(2013年)
【受賞歴】
・山形国際ドキュメンタリー映画祭「スカパーIDEHA賞」
「なみのこえ 新地町」
(2013年)
【受賞歴】
・山形国際ドキュメンタリー映画祭2013出品
「なみのこえ 気仙沼」
(2013年)
【受賞歴】
・山形国際ドキュメンタリー映画祭2013出品
「親密さ」
(2012年)
共に芝居の演出を務める男女の毎日を見つめた創作部分の前半と、実際の舞台を撮影した後半部分の2部構成。
「なみのおと」
(2011年)
【受賞歴】
・ロカルノ国際映画祭出品
「THE DEPTHS」
(2010年)
【受賞歴】
・東京フィルメックス出品
「永遠に君を愛す」
(2009年)
【受賞歴】
・パリ国際映画祭出品
「PASSION」
(2008年)
東京芸大大学院・映像研究科の卒業制作(修了制作)。

【受賞歴】
・スペインのサン・セバスチャン国際映画祭の新人コンペ部門出品
・東京フィルメックスのコンペ部門出品
「何食わぬ顔(ショート・バージョン)」
(2003年)
何食わぬ顔の短縮版。43分。一部シーンが追加された。
「何食わぬ顔(ロング・バージョン)」
(2002年)
東京大学の映画研究会時代に制作した。全編8ミリフィルムで撮影された。監督自ら出演。1時間38分。

ドライブ・マイ・カーの受賞歴

カンヌでデビュー

ドライブ・マイ・カーは2021年7月のカンヌ国際映画祭で日本映画初の脚本賞を受賞。その他のマイナーな賞も含めて計4冠に輝き、世界に華々しくデビューした。

米国の評論家たちが火をつけた

その数か月後にスタートした米国の映画賞レースに参戦。映画専門のジャーナリストや評論家から大絶賛を浴びた。 とくにニューヨーク・タイムズ、LAタイムズ、バラエティ誌など、影響力の大きい有力メディアの映画担当記者が猛烈にプッシュした。

「3大批評家賞」で全勝

権威の高い全米映画批評家協会、ニューヨーク、ロサンゼルスの「3大批評家賞」では、いずれも作品賞(国際映画賞でなく作品賞!)を獲得。これは、英語以外の映画として初の快挙だった。ハリウッドの有力作を差しおいての日本映画の最高賞獲得は、驚きをもって迎えられた。

地味な日本語の会話劇

とはいえ、ストーリーは地味で、上映時間も3時間という長尺。日本語による会話劇ということもあり、コアな映画通(シネフィル)だけの熱狂にとどまるかと思われた。

目の肥えた映画人も大納得

しかし、深層心理に訴えるような普遍性、独創的な語り口、観客を温かく包み込むような人間味は、目の肥えたハリウッドの映画人たちの心も動かした。最高峰のアカデミー賞において、日本映画として史上初の作品賞ノミネートを達成。監督賞、脚本賞、国際映画賞と併せて4部門での候補入りという歴史的偉業を成し遂げた。

<受賞の一覧>
部門
全米映画批評家協会 作品賞
監督賞
※「偶然と想像」とのセットで
主演男優賞(西島秀俊)
脚本賞
英国アカデミー賞 非英語作品賞
クリティックス・チョイス・アワード 非英語作品賞
ゴールデングローブ賞 非英語作品賞
米ニューヨーク映画批評家協会 作品賞
米ロサンゼルス映画批評家協会 作品賞
脚本賞
米シアトル映画批評家協会 作品賞
監督賞
脚本賞
非英語作品賞
米ボストン映画批評家協会 作品賞
監督賞
主演男優賞(西島秀俊)
脚本賞
加トロント映画批評家協会 作品賞
脚本賞
国際映画賞
監督賞の次点
米インディアナ映画批評家協会 脚本賞
外国語映画賞
作品賞の次点
米オースチン映画批評家協会 脚色賞
国際映画賞
米アトランタ映画批評家協会 国際映画賞
年間ベスト映画6位
米シカゴ映画批評家協会 外国語映画賞
米ワシントン映画批評家協会 外国語映画賞
米サンフランシスコ映画批評家協会 国際映画賞
米ダラス映画批評家協会 外国語映画賞
米セントルイス映画批評家協会 外国語映画賞
米ノース・カロライナ映画批評家協会 外国語映画賞
米オクラホマ映画批評家協会 外国語映画賞
米カンザス・シティ映画批評家賞 外国映画賞
米ゴッサム独立系映画賞 国際映画賞
仏カンヌ国際映画祭 脚本賞
国際映画批評家連盟賞
AFCAE賞(フランスの独立系映画館のオーナーが選ぶ賞)
エキュメニカル審査員賞(キリスト教の関係団体が選ぶ賞)
アジア太平洋映画賞 作品賞
脚本賞
米シカゴ国際映画祭 審査員賞の2位
観客賞(国際映画部門)
米デンバー映画祭 キェシロフスキ賞

※名作「トリコロール」3部作で知られるポーランドの著名映画監督にちなんだ賞。観客賞に次ぐ栄誉とされる。
キネマ旬報(キネジュン)ベストテン

詳細→
作品賞
監督賞
助演女優賞(三浦透子)
脚本賞
読者選出 日本映画1位
読者選出 監督賞
毎日映画コンクール(日本) 作品賞
監督賞
高崎映画祭(日本) 主演俳優賞(西島秀俊)
助演俳優賞(三浦透子、岡田将生)
TAMA映画賞(日本) 作品賞
新進女優賞(三浦透子)
日刊スポーツ映画大賞 作品賞
主演男優賞(西島秀俊)
日本アカデミー賞

詳細→
作品賞
監督賞
主演男優賞(西島秀俊)
脚本賞
新人賞(三浦透子)
撮影賞
編集賞
録音賞
照明賞

ウィル・スミス「壇上ビンタ事件」

俳優ウィル・スミス(53歳)が授賞式で、妻の病気を揶揄(やゆ)するジョークを飛ばしたコメディアンのクリス・ロック(57歳)に激怒。 ステージに駆け上がってビンタを食らわすという事件が起きた。 アカデミー賞の歴史に残る残念な出来事となった。

10年間の出席禁止に

授賞式の後、スミスは映画芸術科学アカデミーから、今後10年間にわたる授賞式への出入り禁止処分を受けた。アカデミー会員の資格返上にも追い込まれた。 (ウィル・スミスの受賞について↑)

クリス・ロック

殴られたクリス・ロック(コメディアン)はこの日、「ドキュメンタリー賞」の発表者(プレゼンター)として登壇していた。ロックは全米トップ級の人気コメディアンであり、アカデミー賞の司会(ホスト)も過去2回務めている(歴代の司会者→)。毒舌系で知られる。

脱毛症をネタにする無神経ジョーク

ロックは受賞者を読み上げる前のトークで、招待席に座っていたセレブたちをいじるジョークを展開。その中で、スミスの妻ジェイダ・ピンケット・スミスに向かって「ジェイダ好きだよ。『GIジェーン 2』が楽しみだね」(Jada, I love you! "GI Jane 2", can't wait to see it. Alright?)と冗談を飛ばした。

ムッとするジェイダ

これは、ジェイダが脱毛症のため髪を短くしていることを揶揄(やゆ)するものだった。人の病気を笑いのネタにするという無神経なジョークであり、会場では笑いが起きたものの、聞いていたジェイダ本人がムッとするのがテレビ中継でも映し出された。隣のスミスは笑顔だったが、この後席を立ち、壇上へと向かった。身長188cmで強靭な肉体を持つスミスによる殴打シーンは、平手とはいえ、強いインパクトを与えた。

放送禁止用語を絶叫

スミスはクリス・ロックにビンタをした後、席に戻り、放送禁止用語を用いながら、壇上のロックに「妻の名前を出すな!」と叫んだ。 日本のWOWOWを含む一部の国のテレビ放送局は、この暴言を無音声に切り替えずそのまま放送。お茶の間に衝撃を与えた。

受賞スピーチにも批判

その後、スミスは主演男優賞を受賞した。受賞スピーチでは、ビンタ行為について泣きながら弁明した。しかし、自分の行為をむしろ正当化しようとする内容だったと受け止められ、米国内では批判が多く出た。殴ったクリス・ロックに対する謝罪も、この時点ではなかった。(スミスの受賞スピーチ動画→

退場を拒否

主催団体「映画芸術科学アカデミー」の声明によると、暴力行為の後、主催者側がスミスに退場を求めたが、スミスは拒否した。

警察が駆けつける

また、授賞式のテレビ番組プロデューサーが後日ABC放送のインタビュー(動画→)で語ったところによると、現場にはロサンゼルス市警察(LAPD)が駆け付けた。

被害届を出さず

警察は控室に戻ったクリス・ロックに対して、「スミス逮捕」を選択肢の一つとして提示した。そのうえで、被害届を出す意向があるか尋ねた。これに対して、クリス・ロックは被害届に否定的だったという。

映画の主人公キャラが非難声明

授賞式の後、スミスの受賞作となった「ドリームプラン」で主人公のモデルとなったリチャード・ウィリアムズ(テニスのウィリアムズ姉妹の父親)は「自衛でもない限り、人を殴る行為は許されない」とする非難声明を出した。 授賞式でのスミスの受賞発表時の拍手喝采(スタンディング・オベーション)とはうってかわって、他の芸能人からも批判的なコメントが相次いだ。

コメディアンに対する許容範囲が広い

アメリカでは、日本と比べてジョークに対する許容範囲がはるかに広い。 ふだんは問題視されるような発言でも、コメディアンがジョークの一環として口にすると、許される風潮がある。(ただ、人種差別などにつながるようなジョークは厳しく対処される)。

発言はあまり問題視されず

将来的には脱毛ネタのたジョークもデリケートに扱われるようになるのかも知れないが、この時点ではほとんど問題視されなかった。

授賞式への出席を10年間禁止

アカデミーはスミスに対して、10年間にわたって授賞式への出席を禁止する処分を下した。また、スミスはアカデミー会員を辞任した。

ショーのチケットがバカ売れ

事件を受けて、クリス・ロックの米国ツアーの人気はうなぎ上りとなった。アカデミーも声明でクリスに謝罪するとともに、異様な事態を冷静かつ巧みに収拾してくれたことに感謝の意を表わした。

前哨戦の結果

2022年の賞レースの星取表

2022年のアカデミー賞の前哨戦の結果一覧です。 作品賞は「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が圧倒的な強さでしたが、終盤に「コーダ あいのうた」が猛追しました。 国際映画賞は「ドライブ・マイ・カー」が圧倒的な勝率の高さを誇っています。
PGAアワード(全米プロデューサー組合賞)↓
クリティックス・チョイス↓
英国アカデミー賞↓
SAGアワード(俳優組合賞)↓
ゴールデングローブ賞↓
その他の組合別(ギルド系)の賞↓

<オスカー前哨戦の結果>
作品賞 監督賞 国際映画賞 主演 助演
PGA(プロデューサー組合賞) (歴代 コーダ あいのうた -- -- -- --
クリティックス・チョイス パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ウィル・スミス

【女優】
ジェシカ・チャステイン
【男優】
トロイ・コッツァー

【女優】
アリアナ・デボーズ
英国アカデミー賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ウィル・スミス

【女優】
ジョアンナ・スキャンラン
【男優】
トロイ・コッツァー

【女優】
アリアナ・デボーズ
SAG(俳優組合)アワード 【キャスト賞】コーダ あいのうた -- -- 【男優】
ウィル・スミス

【女優】
ジェシカ・チャステイン
【男優】
トロイ・コッツァー

【女優】
アリアナ・デボーズ
トロント映画祭

歴代
ベルファスト 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
ジェシカ・チャステイン
ゴールデングローブ賞

詳細
【ドラマ】パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー ■ドラマ部門■

【男優】
ウィル・スミス

【女優】
ニコール・キッドマン
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
アリアナ・デボーズ
【喜劇・音楽劇】ウエスト・サイド・ストーリー ■喜劇・音楽劇部門■

【男優】
アンドリュー・ガーフィールド

【女優】
レイチェル・ゼルガー
ナショナル・ボード・オブ・レビュー
リコリス・ピザ リコリス・ピザ 英雄の証明 【男優】
ウィル・スミス
(ドリームプラン)

【女優】
レイチェル・ゼルガー
(ウエスト・サイド・ストーリー)
【男優】
キアラン・ハインズ
(ベルファスト)

【女優】
アーンジャニュー・エリス
(ドリームプラン)
全米映画批評家協会 ドライブ・マイ・カー ドライブ・マイ・カー 【男優】
西島秀俊

【女優】
ペネロペ・クルス
【男優】
アンデルシュ・ダニエルセン・リー(わたしは最悪。)

【女優】
ルース・ネッガ(白い黒人)
ニューヨーク批評家賞 ドライブ・マイ・カー パワー・オブ・ザ・ドッグ わたしは最悪。 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ
(パワー・オブ・ザ・ドッグ)

【女優】
レディー・ガガ
(ハウス・オブ・グッチ)
【男優】
コディ・スミット・マクフィー
(パワー・オブ・ザ・ドッグ)

【女優】
キャサリン・ハンター
(マクベス)
ロサンゼルス批評家賞 ドライブ・マイ・カー パワー・オブ・ザ・ドッグ 秘密の森の、その向こう 【男優】
サイモン・レックス
(Red Rocket)

【女優】
ペネロペ・クルス
【男優】
ビンセント・リンドン
(チタン)

コディ・スミット・マクフィー

【女優】
アリアナ・デボーズ
シカゴ批評家賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
クリステン・スチュワート
【男優】
コディ・スミット・マクフィー
(パワー・オブ・ザ・ドッグ)

【女優】
ルース・ネッガ
(PASSING~白い黒人)
サンフランシスコ批評家賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
オリビア・コールマン
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
キアステン・ダンスト
ボストン批評家賞 ドライブ・マイ・カー ドライブ・マイ・カー 【男優】
西島秀俊
(ドライブ・マイ・カー)

【女優】
アラナ・ハイム
(リコリス・ピザ)
【男優】
トロイ・コッツァー
(コーダ)

【女優】
ジェシー・バックリー
(ロスト・ドーター)
独立系スピリット賞 ロスト・ドーター ロスト・ドーター ドライブ・マイ・カー 【男優】
サイモン レックス「レッド・ロケット」

【女優】
テイラー・ペイジ「ゾラ」
【男優】
トロイ・コッツァー

【女優】
ルース・ネッガ
カンザスシティ批評家賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ ウエスト・サイド・ストーリー ドライブ・マイ・カー 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
オリビア・コールマン
【男優】
キアラン・ハインズ

【女優】
アン・ダウド
オースティン批評家賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ニコラス・ケイジ

【女優】
アガス・ルーセル(チタン)
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
キアステン・ダンスト
オクラホマ批評家賞 リコリス・ピザ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
アラナ・ハイム
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
キアステン・ダンスト
ノース・カロライナ批評家賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
ジェシカ・チャステイン
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
アン・ダウド
ダラス批評家賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
クリステン・スチュワート
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
アリアナ・デボーズ
セントルイス批評家賞 リコリス・ピザ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ニコラス・ケイジ

【女優】
クリステン・スチュワート
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
アン・ダウド
(Mass)
ユタ批評家賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ Flee 【男優】
ニコラス・ケイジ

【女優】
エミリア・ジョーンズ
(コーダ)
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
アン・ダウド
(Mass)
ワシントン批評家賞 ベルファスト パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
アンドリュー・ガーフィールド

【女優】
クリステン・スチュワート
【男優】
コディ・スミット・マクフィー
(パワー・オブ・ザ・ドッグ)

【女優】
アーンジャニュー・エリス
(ドリームプラン)
アトランタ批評家賞 リコリス・ピザ パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
クリステン・スチュワート

アラナ・ハイム(リコリス・ピザ)
【男優】
ブラッドリー・クーパー

【女優】
キアステン・ダンスト
フィラデルフィア批評家賞 パワー・オブ・ザ・ドッグ パワー・オブ・ザ・ドッグ チタン 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
クリステン・スチュワート
【男優】
コディ・スミット・マクフィー

【女優】
ルース・ネッガ
フェニックス批評家賞 ベルファスト ベルファスト ハンド・オブ・ゴッド 【男優】
ベネディクト・カンバーバッチ

【女優】
クリステン・スチュワート
【男優】
キアラン・ハインズ

【女優】
アリアナ・デボーズ
ラスベガス批評家賞 ベルファスト ウエスト・サイド・ストーリー 【男優】
ニコラス・ケイジ

【女優】
ジェシカ・チャステイン
【男優】
トロイ・コッツァー

【女優】
アリアナ・デボーズ
デトロイト批評家賞 シラノ チック、チック…ブーン! 【男優】
ピーター・ディンクレイジ
(シラノ)

【女優】
ジェシカ・チャステイン
【男優】
ジョン・バーンサル
(ドリームプラン)

【女優】
アリアナ・デボーズ
(ウエスト・サイド・ストーリー)
トロント批評家賞 ドライブ・マイ・カー パワー・オブ・ザ・ドッグ ドライブ・マイ・カー 【男優】
デンゼル・ワシントン

【女優】
オリビア・コールマン
【男優】
ブラッドリー・クーパー(リコリス・ピザ)

【女優】
ジェシー・バックレイ(ロスト・ドーターの主人公の若いころの役)
ゴッサム賞
ロスト・ドーター ドライブ・マイ・カー オリビア・コールマン
(ロスト・ドーター)

フランキー・フェイソン
(The Killing of Kenneth Chamberlain)
トロイ・コッツァー
(コーダ あいのうた)
ベネチア映画祭

歴代
あのこと パワー・オブ・ザ・ドッグ 【男優】
ジョン・アルシラ
「On the Job: The Missing 8」

【女優】
ペネロペ・クルス
「パラレル・マザーズ」
<米国の組合別の賞>
編集者組合賞
(エディー賞、ACE)
【ドラマ部門】
ドリームプラン
※敗者:パワー・オブ・ザ・ドッグ、ベルファスト、DUNE、007

【コメディ部門】
チック、チック…ブーン!
※敗者:リコリス・ピザ、ドント・ルック・アップなど

【アニメ部門】
ミラベルと魔法だらけの家
※敗者:ミッチェル家とマシンの反乱など
美術監督組合賞(ADG) 【時代劇部門】
ナイトメア・アリー
※敗者:ウエスト・サイド・ストーリー、リコリス・ピザほか

【ファンタジー部門】
DUNE/デューン 砂の惑星
※敗者:クルエラ、シャン・チーなど

【現代劇部門】
007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
※敗者:ドント・ルック・アップなど

アカデミー賞ファン投票の結果

順位 作品
1位 「アーミー・オブ・ザ・デッド」
監督:ザック・スナイダー
2位 「シンデレラ」
主演:カミラ・カベロ
監督:ケイ・キャノン
3位 「MINAMATA-ミナマタ-」
水俣病を世界に知らしめた米写真家のユージン・スミスとその元妻の写真集を題材にした伝記ドラマ。
主演:ジョニー・デップ
プロデューサー:ジョニー・デップほか
監督:アンドリュー・レヴィタス
4位 「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」
監督:ジョン・ワッツ
5位 「チック、チック…ブーン!」
監督:リン=マニュエル・ミランダ

誇大広告賞「英雄の証明」

配給会社:シンカ

アカデミー賞の冠を利用した大げさな広告や映画ファンに誤解を与えるような広告を編集部が選定し、ほぼ毎年、「誇大広告賞」として表彰しています。 日本国内での広告が対象です。 2022年の受賞作は「英雄の証明」です。

作品名 授賞理由
「英雄の証明」

 国内配給会社:
 シンカ
英雄の証明
(大きい画像はこちら→

チラシ等の広告で「米・アカデミー賞」と大々的に記載した。 一見すると、アカデミー賞を受賞したかの印象を受ける。 よく見ると、その下に小さい字で「国際長編映画賞 最有力」と書いてある。

実際の結果としては、誠に残念ながら、本作はアカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートすらされなかった。

アカデミー賞の投票権者の人数と内訳

投票権者(審査員)の職業別内訳(2022年1月現在)

職業
(所属する支部)
人数 割合
俳優 1336人 14%
監督 568人 6%
プロデューサー 634人 7%
脚本家 504人 5%
キャスティング(配役担当)ディレクター 150人 2%
マーケティング・広報 605人 6%
映画編集者 375人 4%
撮影技師 290人 3%
視覚効果 606人 6%
音響技術者 550人 6%
アニメ/短編映画 844人 9%
ドキュメンタリー制作者 618人 7%
メイクアップ&ヘアスタイリスト 231人 2%
衣装デザイナー 171人 2%
美術・装飾監督 387人 4%
音楽家 383人 4%
製作・配給会社の経営幹部 681人 7%
無所属 554人 6%
合計 9487人

授賞式・選考の日程

授賞式は3月28日(月)。例年より1か月遅かった

授賞式は3月28日(月)昼間(日本時間)に開催されました。 北京五輪とのダブりを避けるため、例年より1か月遅くなりました。 今回は4年ぶりに司会者(ホスト)がつきました。(歴代のホストと動画→

イベント 日時
主要部門のエントリー申請の期限 2021年11月15日
仮投票の開始 2021年12月10日
仮投票の終了 2021年12月15日
候補作の候補(ショートリスト)発表 2021年12月21日(火)
選考対象となる作品の公開日の期限 2021年12月31日
ノミネート投票開始 2022年1月27日(木)
ノミネート投票終了 2022年2月1日(火)
ノミネート発表 2022年2月8日(火)午後10時18分(日本時間)
最終投票開始 2022年3月17日
最終投票終了 2022年3月22日
授賞式(結果発表) 2022年3月28日(月)の昼間(日本時間)

話題になっていたが、ノミネートされなかった作品

作品 説明
「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」

 予告編→

日本公開:2022年1月28日

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

ロッテントマト評価:
75%
最新スコア→
ジャンルは、コメディ/ドラマ。 米国カンサス州の架空の新聞のフランス支局にスポットを当てている。 20世紀のフランスの架空の街が舞台。 ある記者が独立し、雑誌「ザ・フレンチ・ディスパッチ」を立ち上げることになる。 3つのストーリーで構成される。

脚本が高い評価を得た。

監督は、ウェス・アンダーソン。 アンダーソン氏は、「グランド・ブダペスト・ホテル」を大成功させたことで有名。同作は、2014年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされた。 その後、アニメ映画「犬ヶ島」を監督。ベルリン国際映画祭の監督賞(銀熊賞)を受賞し、アカデミー賞の長編アニメ賞にノミネートされた。 このほか、「ムーンライズ・キングダム(2021年)」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(2001年)」では、それぞれ脚本賞にノミネートされた。 「ファンタスティック Mr.FOX(2009年)」も長編アニメ賞にノミネートされている。

50歳を過ぎたばかりだが、多彩な実績を持ち、クオリティの安定度も高い。 アカデミー賞にノミネートされる確率が高い監督である。

なお、英BBCの2016年の投票では、 「グランド・ブダペスト・ホテル」 「ムーンライズ・キングダム」 「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」 の3作品が、「21世紀の最も偉大な映画ランキング」に入った。

アンダーソン監督は「ニューヨーカー誌」が大好きで、 同誌に対する愛情にインスパイアされたという。

大勢の有名な役者が出演する「アンサンブル・キャスト」である。 メインの俳優は、ビル・マーレイ、ベニチオ・デル・トロ、フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ、ティルダ・スウィントン、オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディなど。 実に豪華な顔ぶれだ。

配給は、オスカーで常連のサーチライト・ピクチャーズ(旧フォックス・サーチライト)。2019年にディズニーがFOXを買収したことで、サーチライトもディズニーの子会社になった。
「英雄の証明」
(イラン映画)

(日本公開:2022年4月1日)

 予告編→

英雄の証明

ロッテントマト評価:
96%
最新スコア→
イラン映画。2021年のカンヌ国際映画祭で2番目の賞である「グランプリ」を受賞した。 その後のアジア映画賞の作品賞争いでは「ドライブ・マイ・カー」に敗れて受賞を逃した。ただ、監督賞は獲得した。

アスガル・ファルハーディー監督は世界的な巨匠。 アカデミー賞では、2012年に「別離」で国際映画賞(当時は外国語映画賞)に輝いた。脚本賞にもノミネートされた。 さらに、2017年に「セールスマン」で2度目となる国際映画賞を受賞した。

公開前に有力視されていたが、実際にはそうでもなかった作品

作品 説明
「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール:報復の荒野」

(2021年、ネットフリックス配信)

 予告編→

 Netflixの配信ページ→

ロッテントマト評価:
87%
最新スコア→
黒人の西部劇映画。出演者の大半を、アフリカ系の俳優が占めている。

監督:ジェイムズ・サミュエル

出演:
ジョナサン・メジャース
イドリス・エルバ
ザジー・ビーツ
ラキース・スタンフィールド デルロイ・リンド
ー レジーナ・キング

プロデューサー:ジェイ・Zほか
「Blue Bayou(ブルー・バイユー)」

(米国公開:2021年9月17日、日本公開:2022年)


ロッテントマト評価:
76%
最新スコア→
韓国系アメリカ人の俳優ジャスティン・チョンが、監督と主演を務める。脚本も自分で書いた。

配給はフォーカス。

公開時期が早すぎたこともあり、ノミネートされなかった作品

作品 説明
「イン・ザ・ハイツ」

(日本公開: 2021年7月30日)

 予告編→

イン・ザ・ハイツ

ロッテントマト評価:
94%
最新スコア→
青春ミュージカル。群像劇。米ニューヨークに実在する中南米移民の街「ワシントン・ハイツ」が舞台。 逆境に立ち向かい夢を目指す若者たちを描く。2008年のトニー賞で4冠に輝いた歌劇を映画化した。

幕開けから高揚感にあふれる。 登場する移民たちの現実は過酷だが、支えとなるコミュニティーで共に歌い踊る。故郷から遠く離れ生きていても、ルーツとなる音楽が人々を強く結び付ける。 ブロードウェーで培われたミュージカルの手法と、情熱的なラテンのリズムが組み合わさった。 あらゆるジャンルの音楽とダンスで観客を魅了する傑作ミュージカル。

移住民の子たちは、挫折や失敗を繰り返しながら、それぞれの夢を追いかけていた。そんなある日、街の住人たちにとって最大の危機が訪れる。 猛暑のなか、街が一斉に停電に。若者たちの心の内側があぶりだされていく。

ノミネートから漏れた作品・人物

高い評価を得ていたものの、アカデミー賞のノミネートから漏れた作品・人物の一覧です。

作品賞から漏れた作品

監督賞ノミネートから漏れた人物

主演男優賞ノミネートから漏れた人物

主演女優賞ノミネートから漏れた人物

助演男優賞ノミネートから漏れた人物

助演女優賞ノミネートから漏れた人物

長編アニメ賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「SING/シング: ネクストステージ」
    (イルミネーション)
    (公開:2021年3月18日)
     予告編→
     SING/シング: ネクストステージ」

  • 「竜とそばかすの姫」
    【日本映画】
    (公開:2021年7月16日)
    監督:細田守
     予告編→
     説明
     竜とそばかすの姫

  • 「My Sunny Maad」
    【チェコ】
     My Sunny Maad

脚本賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「愛すべき夫妻の秘密」
    (脚本家:アロン・ソーキン)
     愛すべき夫妻の秘密

  • 「パラレル・マザーズ」
    (脚本家:ペドロ・アルモドバル)
     パラレル・マザーズ

  • 「カモン・カモン」
    (脚本家:マイク・ミルズ)
     カモン・カモン

  • 「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」
    (脚本家:ウェス・アンダーソン)
     フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

脚色賞ノミネートから漏れた有力作品


  • 「ウエスト・サイド・ストーリー」
    (脚本家:トニー・クシュナー)
     ウエスト・サイド・ストーリー

  • 「マクベス」
    (日本公開:2022年1月14日からアップルTVで配信)
     予告編→
     説明
     マクベス

  • 「ナイトメア・アリー」
    (脚本家:ギレルモ・デル・トロ&キム・モーガン)
     ナイトメア・アリー

  • 「チック、チック…ブーン!」
    (日本公開:2021年11月19日ネットフリックス配信)
     予告編→
     Netflix→
     説明
     チック、チック…ブーン!
    ※ミュージカル

国際映画賞ノミネートから漏れた有力作品

ドキュメンタリー賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「ザ・レスキュー(The Rescue)」
    (公開:未定)
     予告編(英語)→
    ※タイの少年サッカーチームが洞窟に閉じ込められた事故。その救出劇を追った。「フリーソロ」で2019年にドキュメンタリー賞を受賞した監督の新作。フリーソロと同じく、ディズニー傘下の「ナショナル・ジオグラフィック」が製作。
     ザ・レスキュー(The Rescue)

  • 「プロセッション -救済への行進-」
    (公開:2021年11月からNetflix配信)
     Netflix→
    ※カトリックの聖職者から子供のころに性的虐待を受けた被害者たちの物語
     プロセッション -救済への行進-

  • 「Julia(ジュリア)」
    (公開:未定)
    製作:CNNフィルムズほか
    配給:ソニー・ピクチャーズ・クラシックス
     予告編→
    ※米国の超有名シェフ、故ジュリア・チャイルドの生涯
     Julia(ジュリア)

視覚効果賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「マトリックス レザレクションズ」
    (日本公開:2021年12月17日)
     予告編→
     マトリックス レザレクションズ

  • 「ゴジラvsコング」
    (日本公開:2021年7月)
     特別映像→
     ゴジラvsコング

  • 「ゴーストバスターズ/アフターライフ」
     ゴーストバスターズ/アフターライフ

衣装デザイン賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「ハウス・オブ・グッチ」
    (衣装デザイナー:ジャンティ・イェーツ)
     ハウス・オブ・グッチ

  • 「スペンサー ダイアナの決意」
    (衣装デザイナー:ジャクリーン・デュラン)
     スペンサー ダイアナの決意

  • 「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」
    (衣装デザイナー:Milena Canonero)
     フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

撮影賞ノミネートから漏れた有力作品

歌曲賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「ドント・ルック・アップ」
     曲名:ジャスト・ルック・アップ
     歌手:アリアナ・グランデ
     動画→
     ドント・ルック・アップ

  • 「コーダ あいのうた」
     曲名:Beyond the Shore
     歌手:エミリア
     動画→

  • 「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野」
     曲名:Guns Go Bang
     歌手:キッド・カディ&ジェイZ
     動画→
     ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野

  • 「リスペクト」
     曲名:ヒア・アイ・アム:シンギング・マイ・ウェイ・ホーム
     歌手:ジェニファー・ハドソン
     動画→
     リスペクト

  • 「アネット」
     曲名:So May We Start
     歌手:アダム・ドライバー&スパークス&マリオン・コティヤール
     動画→

作曲賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」
    作曲家:アレクサンドル・デスプラ
     フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

  • 「スペンサー ダイアナの決意」
    作曲家:ジョニー・グリーンウッド
     作品一覧(wiki)→
     スペンサー ダイアナの決意

  • 「愛すべき夫妻の秘密」
    作曲家:Daniel Pemberton
     愛すべき夫妻の秘密

  • 「マクベス」
    作曲家:カーター・バーウェル

編集賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「ベルファスト」
     ベルファスト

  • 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
     パワー・オブ・ザ・ドッグ

  • 「リコリス・ピザ」
     リコリス・ピザ

  • 「ウエスト・サイド・ストーリー」
     ウエスト・サイド・ストーリー

  • 「チック、チック…ブーン!」
     チック、チック…ブーン!

  • 「ナイトメア・アリー」
     ナイトメア・アリー

  • 「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」
     007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

  • 「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」
    (公開:2021年8月27日)
     予告編→
     サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)

美術賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」
     フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

  • 「ベルファスト」
     ベルファスト

  • 「シラノ」
     シラノ

  • 「スペンサー ダイアナの決意」
     スペンサー ダイアナの決意

音響賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「チック、チック…ブーン!」
     チック、チック…ブーン!

  • 「クワイエット・プレイス2 破られた沈黙」
     クワイエット・プレイス2 破られた沈黙

  • 「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」
    (日本公開:2022年1月7日)
     予告編→
     説明↑
     スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

  • 「マトリックス レザレクションズ」
     マトリックス レザレクションズ

  • 「ラストナイト・イン・ソーホー」
     ラストナイト・イン・ソーホー

メイク&ヘア賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「シラノ」
    (日本公開:2022年2月25日)
     予告編→
    ※ミュージカル
     シラノ

  • 「ウエスト・サイド・ストーリー」
     ウエスト・サイド・ストーリー

  • 「ザ・スーサイド・スクワッド 極悪党、集結」
     ザ・スーサイド・スクワッド 極悪党、集結

短編アニメ賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「あの頃をもう一度」
    (原題:Us Again)
    (ディズニー)
     予告編→
     あの頃をもう一度

  • 「Step Into the River」
    (監督:Weijia Ma)
    ※中国とフランスの合作。中国語作品
     監督による説明→
     動画→
     Step Into the River

  • 「Namoo」
     Namoo

  • 「Only a Child」
     Only a Child

  • 「Mum is Pouring Rain」
     Mum is Pouring Rain

  • 「The Musician」
     The Musician

短編ドキュメンタリー賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「Coded: The Hidden Love of J.C. Leyendecker」
     予告編→
    ※米国の超有名イラスト作家JCライエンデッカーの物語。20世紀前半、雑誌の表紙やポスターなどの現代イラスト文化を創始した一人とされる。同性愛者としての苦悩など。
     Coded: The Hidden Love of J.C. Leyendecker

  • 「Terror Contagion」
     Terror Contagion

  • 「Day of Rage」
     Day of Rage

  • 「Camp Confidential: America's Secret Nazis」
     Camp Confidential: America's Secret Nazis

  • 「Lynching Postcards」
     Lynching Postcards

  • 「Sophie and the Baron」
     Sophie and the Baron

  • 「Takeover」
     Takeover

  • 「A Broken House」
     A Broken House

  • 「Aguilas」
     Aguilas

短編実写映画賞ノミネートから漏れた有力作品

  • 「When the Sun Sets」
     予告編→
    ※南アフリカの若い女性看護師が主人公。1985年、アパルトヘイト(人種隔離政策)下で起きた事件に着想を得た。
     When the Sun Sets

  • 「Tala'vision」
     Tala'vision

  • 「Censor of Dreams」
     Censor of Dreams

  • 「Frimas」
     Frimas

  • 「You're Dead Helen」
     You're Dead Helen

  • 「Les Grandes Claques」
     Les Grandes Claques

  • 「Under the Heavens」
     Under the Heavens

  • 「The Criminals」
     The Criminals

  • 「Stenofonen」
     Stenofonen

動画

▼ ノミネート発表のライブ配信(公式)

▼ 作品賞ノミネート作品の予告編