シカゴ7裁判のアカデミー賞

受賞

受賞 なし

ノミネート

ノミネート 作品賞
助演男優賞
サシャ・バロン・コーエン
脚本賞
アーロン・ソーキン
編集賞
撮影賞
歌曲賞

映画「シカゴ7裁判」とは

「表現の自由」や「平等」をテーマにした法廷映画。 フィクション化された部分もあるが、基本的には実際に起きた事件や裁判をベースにしている。

1968年の米大統領選挙に向けた民主党全国大会がシカゴで行われた。 この大会にあわせて反戦運動グループが結集してデモを行ったところ、 リーダーたち7人が「暴動を企てた」として逮捕された。 さらに、保守系のニクソン政権はこの7人を刑事裁判にかけた。 本作は、この裁判を題材にした映画である。

脚本家アーロン・ソーキンの監督2作目

監督は、米国を代表する脚本家として活躍してきたアーロン・ソーキン。59歳。 傑作映画「ソーシャル・ネットワーク」の脚本でオスカー(脚色賞)を獲得したことがある。 同じく名作の「マネーボール」での優れた台本も有名。 実話をベースとした脚本づくりの天才である。 監督としては「モリーズ・ゲーム」(2017年)でデビューを果たした。 今回は監督として2作目。もちろん脚本も自身で手掛けた。

実力派の俳優たちによるアンサンブル演技

出演は映画「ボラット」などのコメディアンとして有名なサーシャ・バロン・コーエンなど。 実力派の俳優陣によるアンサンブル演技も高い評価を得た。

全米での大規模公開を断念

当初は米大手配給会社ユニバーサルが、大規模に劇場公開する予定だった。 しかし、コロナウイルス感染拡大で全米の映画館が閉鎖され、 収益が見込めなかったため、断念。 ネットフリックス(Netflix)に売却した。 ネットフリックスは、ネット配信を開始する前に、一部の映画館で小じんまりと上映。 これによって、アカデミー賞の選考対象になるための条件をクリアしたうえで、 全世界に向けてネット配信を行った。

シカゴ7裁判の被告7人(及び8人目の黒人被告)の一覧

名前、裁判のときの年齢 役者 当時の役割とその後の人生
トム・ヘイデン
(Tom Hayden)
29歳
エディ・レッドメイン 学生運動のリーダー。

後に政治家となり、カリフォルニア州の地方議員(州上院)に当選。 1992年から2期8年を務めた。所属は民主党。 政治家としては穏健な現実路線に転じた。ベトナム戦争時代からの民主党内の路線対立を乗り越えるべく、「党の融和と団結」を呼びかけた。

私生活では、オスカー女優ジェーン・フォンダと結婚。1973年から17年間夫婦だった(1990年に離婚)。

2016年、76歳で亡くなった。
アビー・ホフマン
(Abbie Hoffman)
32歳
サシャ・バロン・コーエン 反戦運動、ヒッピー系左翼運動のリーダー。 お笑い芸人のようにしゃべりが上手なことから、 人気を集めた。

後に「この本を盗め」という本を執筆した。 政府や大企業に対抗するなど、1960年代のカンターカルチャー的な生き方を示すガイドである。 1971年に出版され、25万部を超えるヒット作になった。

精神的な病である「バイポーラ―(双極性障害)」を患っていたという。1989年死亡。自殺とされた。
ジェリー・ルービン
(Jerry Rubin)
31歳
ジェレミー・ストロング アビー・ホフマンの子分のような存在。 FBIの女性の内偵捜査員に引っかかった。

後にビジネスマンになった。1980年、ニューヨークのウォール街にある証券会社に入社。株のブローカーの仕事をした。 その一方で、「スタジオ54」「パラダイム」といった超有名ディスコにおいて、若者の交流イベントを企画した。 その後、健康食品に目覚める。ロサンゼルスに転居し、食品のマルチ商法(ネットワーク販売)の販売員として稼いだという。 1994年に交通事故で死亡した。
デビッド・デリンジャー
(David Dellinger)
54歳
ジョン・キャロル・リンチ 穏健な大人の運動家。
レニー・デイビス
(Rennie Davis)
28歳
アレックス・シャープ
ジョン・フロイネス
(John Froines)
30歳
ダニエル・フラハティ
リー・ワイナー
(Lee Weiner)
30歳
ノア・ロビンス
ボビー・シール
(Bobby Seale)
33歳
ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世 ブラックパンサー党の創設者の一人。

映画の上映時点(2020年)も生存している数少ない重要人物の一人。

本人の動画→

弁護士や傍聴人

名前 説明
【弁護士】
ウィリアム・クンスラー
7人の弁護士を務めた。左翼系の辣腕弁護士として知られた。1995年に亡くなるまで、テロリスト、政治犯、マフィアの弁護人として活動した。

アメリカの多数の政治闘争事件で被告側の弁護に立った。法廷では型破りの激しい反政府アジ演説を展開することで知られた。巧妙、老練な弁護術を駆使して逆転勝訴にもち込んだケースも多い。検事の間では「全米で最も相手にしたくない弁護士」とされていた。

米ニュージャージー州で1988年4月、爆弾所持の現行犯で逮捕された菊村憂(当時36歳)の主任弁護士も務めた。

このほか、サウスダコタのインディアン保留地で米連邦捜査局(FBI)の捜査官2人を殺害したインディアン解放運動活動家レナード・ペルチェ事件、アティカ刑務所暴動事件(1975年)、フィラデルフィアの黒人居住区爆撃事件、モスクワ米大使館の海兵隊員によるスパイ事件などを担当した。過激グループ8人による連続放火、銀行襲撃事件などの弁護人も引き受けた。

大物マフィアであるジョゼフ・ボナノにかかわる刑事事件でも弁護をした。
【傍聴人】
フレッド・ハンプトン
黒人闘争組織「ブラックパンサー党」のシカゴ支部の幹部。

黒人の被告が希望していた弁護士は?

映画に登場する黒人の被告ボビー・シールは、弁護士チャールズ・ゲリー(Charles Garry)が代理人になることを望んでいた。 しかし、チャールズ・ゲリーは病気で入院中だったため、出廷することができなかった。 その結果、シールは弁護人が不在のまま法廷で裁かれるという不利な状況に追い込まれた。 チャールズ・ゲリーは映画には登場しないが、名前は何度も出てくる。

チャールズ・ゲリー弁護士とは

ゲリー弁護士は、アメリカの人権派弁護士である 1960年代、70年代に数々の政治的な裁判を引き受けた。 ブラックパンサー党の弁護人にもなっていた。 ベトナム反戦運動の抗議活動の弁護も務めた。 918人もの大量の死者を出した「ジョーンズタウン大虐殺」で知られるカルト教団「人民寺院(Peoples Temple)」も弁護した。 1991年に81歳で亡くなった。

悪役の裁判官:ジュリアス・ホフマン

悪役の裁判官ジュリアス・ホフマンは、シカゴ7裁判で悪名が知れ渡る前から、地元シカゴでは弁護士の間で評判が悪かったという。 1983年に87歳で死亡するまで裁判官の仕事を続けた。

オスカー前哨戦の結果

<主な前哨戦の受賞歴>
受賞した部門
SAGアワード(全米俳優組合賞)
 (歴代→
キャスト賞
ゴールデングローブ賞
 (歴代→
脚本賞
放送映画批評家協会賞(クリティック・チョイス)
 (歴代→
演技アンサンブル賞、編集賞

動画

Netflix

ネットフリックスの配信ページ→


映画の予告編

レビュー(シネコト)


日本公開日

劇場公開:2020年10月9日

動画配信開始:2020年10月16日(ネットフリックス)