アカデミー賞【2027年】

2027年(第99回)アカデミー賞のノミネート予想の一覧。「オデュッセイア」(クリストファー・ノーラン監督)などが有力候補。日本・フランス等の合作映画「急に具合が悪くなる」で再び濱口竜介旋風なるか。ノミネート発表は1月21日。授賞式は3月14日(日本時間3月15日)です。(アワードウォッチ編集部)

ノミネート予想

※既に公開済み(試写や映画祭含む)の作品の中から予想。「ディガー」(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)など未公開の注目作は予想に入れていません(視覚効果賞など一部の技術部門除く)

作品、監督、主男、主女、助男、助女、脚本、 脚色、アニメ、ドキュ、 国際、撮影、視覚効果、編集、配役、歌曲、作曲、衣装、美術、メイク、音響
部門 ノミネート予想 詳細
作品賞 オデュッセイア

  【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
    ※クリストファー・ノーラン監督。「アラビアのロレンス」「ロード・オブ・ザ・リング」のような古典的大作に連なる「壮大な叙事詩」として称賛されており、肯定的な反応が圧倒的に多い。大冒険映画としての快感が強く、スケール、映像技術、演技などがそろった総合力が評価されている。
    また、古い神話(ホメロス)に基づきながら、「戦争後の心の傷・罪責」を掘り下げ、現代的な道徳劇として成立させた点も好評。優れたホラー要素を称賛する声も相次いでいる。
    全般的に、例えば「新しい映画文法に遭遇した」というような『未知の衝撃性・革新性』を強調する賛辞は、「オッペンハイマー」のときより少ない。一方で、娯楽性や面白さについての評価は「オッペンハイマー」の上をいっているようだ。
    メタクリティック 88点
    最新→
    ロッテン・トマト 97%
    最新→
  • 「急に具合が悪くなる」(濱口竜介監督)
    メタクリティック 87点
    最新→
    ロッテン・トマト 100%
    最新→
  • 「ブラック・ボール」
  • 「プロジェクト・ヘイル・メアリー」
  • 「The Invite」
※今回のオスカーの注目点の一つは、濱口竜介監督旋風が再び起きるかどうか。とりわけ、「ドライブ・マイ・カー」(2021年)に続く作品賞ノミネート入りの成否が、最大の焦点となる。
ドライブ・マイ・カーは、濱口監督の独特の話法が一部のアカデミー会員に熱烈に支持された。
今回の「急に具合が悪くなる」は、アート作品としてのインパクトはドライブ・マイ・カーに及ばないかも知れない。実際、メタクリティックの点数は今のところ「87」で、「91」だったドライブ・マイ・カーに比べて若干劣る。
とはいえ、今作は「テーマの切実さ(身近さ)」「普遍性」という強みがある。老い、病、介護、死、看取り、友情、ケアという、誰にとっても避けられない問題を扱い、誰にでも響きやすい。
「素直に感動できる」「普通に泣ける」という点でも、ドライブ・マイ・カーより勝るとの声が多い。3時間16分という長尺なのに、一般観客のスコアが極めて高いのもその証左。それでいて、芸術性や独創性を犠牲にしているという受け止めは少ない。
難点は「理想主義」「知的エリート主義」的な傾向がやや鼻につくとされる点か。認知症介護の過酷な現場を知る人にとっては「呑気すぎる」「上から目線」と受け止められかねず、前半部分の資本主義批判も少なからず教条的。
とはいえ、進歩的思想が片隅に追いやられつつある昨今、あえて理想論を掲げて現実社会にぶつかっていく登場キャラ及び制作陣の姿勢が、むしろ高評価につながる可能性もある。
監督賞

  【ノミネート予想】
  • クリストファー・ノーラン
    「オデュッセイア」
    クリストファー・ノーラン
  • アンドレイ・ズビャギンツェフ
    「ミノタウロス」
    アンドレイ・ズビャギンツェフ
    ※対ウクライナ侵略戦争下のロシアの徴兵や腐敗を背景にした「告発的犯罪劇」と位置づけられている。夫婦の不貞疑惑と家庭崩壊を描きながら、国家の欺瞞と暴力へとテーマを広げていく演出力が評価された。
    ロシアきっての名匠として知られるズビャギンツェフ監督(「裁かれるは善人のみ」「ラブレス」)は2021年にコロナに感染し、重症に。ドイツの病院に転院し、歩行や食事動作を学び直した後、2022年に車椅子の状態でフランスに転居した。プーチン政権下のロシアからの退避が転居の目的と見られている。
    「ラブレス」以来9年ぶりの新作で、復帰第一弾となる本作は、フランスやドイツなどから出資を受けた。カンヌ国際映画祭で2位となるグランプリを受賞した。
  • 濱口竜介
    「急に具合が悪くなる」
    濱口竜介
主演男優賞 ジャファー・ジャクソン

  【ノミネート予想】
  • ジャファー・ジャクソン
    「マイケル」
  • マット・デイモン
    「オデュッセイア」
主演女優賞 ビアジニ・エフィハ

  【ノミネート予想】
  • ビアジニ・エフィハ
    「急に具合が悪くなる」
    ※抜群の実在感。介護施設の責任者として実際に働いている人間の疲労、使命感、苛立ち、優しさを表現した。認知症患者の存在をしっかりと受け止める立ち振る舞いが、作中で描かれる独特な認知症ケア技法(ユマニチュード)に説得力を持たせる。同時に、理想主義の危うさ、孤独、死に向き合う怖さもにじませる。岡本多緒(たお)と共に、カンヌ国際映画祭で女優賞を獲得した。
  • アン・ハサウェイ
    「オデュッセイア」
助演男優賞 バリー・キオガン

  【ノミネート予想】
  • ロバート・パティンソン
    「オデュッセイア」
  • トム・ホランド
    「オデュッセイア」
  • バリー・キオガン
    「クライム101」
    ※頭脳の弱いチンピラを好演。衝動、劣等感、承認欲求、暴力性で動くサイコぶりが全開。抑制された犯罪ドラマで「異物」として機能し、登場するとスクリーンの空気感が変わる。
  • 長塚京三
    「急に具合が悪くなる」
    ※フランスの劇場で一人芝居をする俳優を演じた。表現者として妥協しない断固な芸術肌だが、自閉症の孫をとことん気遣う優しい役柄。普通なら「一人芝居で日本語ばかり使って観客に通じるの?」「こんな立派なおじいちゃんいるの?」と思ってしまうところだが、違和感が全くない。限られた時間で強い存在感を放ち、要所要所で見せ場を作る。
    フランスでの留学や仕事の経験があるだけあって、流暢なフランス語も見事。脚本の執筆前から配役が固まった「あて書き」。
助演女優賞 ペネロペ・クルス

  【ノミネート予想】
  • ペネロペ・クルス
    「The Invite」
  • ペネロペ・クルス
    「ブラック・ボール」
    ※1937年のスペイン内戦下のキャバレー芸人を演じた。出番は長くないが、歌と踊りで兵士たちを魅了するシーンが、観客に強いインパクトを与える。
  • サマンサ・モートン
    「オデュッセイア」
  • ザンドラ・フラ
    「プロジェクト・ヘイル・メアリー」
  • 岡本多緒(たお)
    「急に具合が悪くなる」
脚本賞 フィヨルド

  【ノミネート予想】
  • 「フィヨルド」
    ※複雑な道徳的ジレンマを提示する脚本が評価された。宗教的原理主義、国家介入、家族、文化衝突を、一方を悪役にせず描いた。主題を「正解」ではなく、「極端な立場同士が衝突すると何が起きるか」を考えさせることに置いている。そのうえで、家族のドラマとして成立させている。カンヌ国際映画祭で最高賞(パルムドール)。
  • 「クラブ・キッド」
    ※ストーリーや人物の実在感が強い脚本として評価されている。台詞が鋭く、クィア・ナイトライフの空気感が生々しい。父性、成熟、後悔、自己破壊からの再生という普遍的テーマを、軽さと感動の両方で描いている。カンヌ国際映画祭の「ある視点部門」に出品され、新人監督による力作として称賛されたが、無冠に終わった。
脚色賞 急に具合が悪くなる

  【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
  • 「急に具合が悪くなる」
    (濱口竜介、レア・ル・ディム)
    ※哲学者・宮野真生子と医療人類学者・磯野真穂の2人の学者が交わした「往復書簡」という、およそ劇的なプロット(物語の起伏)を持たない原作から、現代社会の急所(高齢化社会における人間の尊厳)を突く知的でエモーショナルな人間ドラマを生んだ。「言葉の可能性」を極限まで押し広げようとした濱口氏の姿勢が称賛された。
    会話劇としての強さがピカイチ。一つ一つのセリフが単なる情報伝達ではなく、人物同士の関係を変え、世界の見方を変える力として機能。言葉とコミュニケーションが人間を「変革し、慰める力」を持っていると信じ込ませる。英誌「サイト&サウンド」は、本作を「濱口のダイアローグ映画の集大成」と位置づけ、米誌「ニューヨーカー」のジャスティン・チャンは、濱口をロメール、リチャード・リンクレイター、ホン・サンスらと並ぶ「会話の劇的リズムと変容力を知る監督」と称賛した。
    また、多くの批評家が、2人の主人公(マリー=ルーと真理)が出会ってすぐにシンクロし、国籍や言語を超えて「もう一人の自分」を見い出すプロセスについて、脚本上の説得力の強さを指摘した。
    緻密な物語設計や描写も称賛された。介護施設の労働環境や職員、入居者、家族の関係を丁寧に描きつつ、「後期資本主義における少子高齢化・人口減少のサイクル」というマクロ的なテーマへと展開。さらに「病気の友人の手を握る」というミクロで私的なケアへと引き付ける。
  • 「The Invite」
  • 「ブラック・ボール」
アニメ賞 トイ・ストーリー5

  【ノミネート予想】
  • 「トイ・ストーリー5」
国際映画賞   【ノミネート予想】
  • 「急に具合が悪くなる」
    (日本代表?)
    急に具合が悪くなる
  • 「ブラック・ボール」
    (スペイン代表)
    ブラック・ボール
  • 「ミノタウロス」
    (フランス代表?)
    ミノタウロス
  • 「フィヨルド」
    (カンヌ国際映画祭パルムドール枠)
    フィヨルド
  • 「ファーザーランド」
    (ポーランド代表)
    ファーザーランド
ドキュメンタリ賞 アメリカン・ドクター

  【ノミネート予想】
  • 「アメリカン・ドクター」
撮影賞

  【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
    ※全編IMAX撮影(70mm)。IMAXでの到達点、スケール、映像体験が高評価。
  • 「ファーザーランド」
  • 「ブラック・ボール」
視覚効果賞 プロジェクト・ヘイル・メアリー

  【ノミネート予想】
  • 「プロジェクト・ヘイル・メアリー」
    ※異星人「ロッキー」の表現などが高評価。実物の人形やロボットやアニマトロニクスを現場に置き、それを基礎にして、あとからCGで動き、表情、質感を加えた。主演ライアン・ゴスリングは、常に実在するロッキーの人形に向かって会話をしていた。
    作品全体で約2000ショットのVFXがあったという。
  • 「オデュッセイア」
  • 「ゴジラ-0.0(マイナスゼロ)」
  • 「デューン 砂の惑星3」
編集賞 オブセッション 災愛

  【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
  • 「オブセッション 災愛」
    ※大絶賛され、特大ヒットとなったホラー。優れたペースとリズムが高評価。序盤から観客を不安にさせ、緊張と惨劇をエスカレートさせ、最後まで緩ませない作り。主役ニッキの身体の動きが不気味に見える場面では、動きを速めたり、逆再生的に見せたりする「編集の魔法」が効果的。カリー・バーカー監督が自ら編集も担当した。
  • 「ブラック・ボール」
配役賞 オデュッセイア

  【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
  • 「急に具合が悪くなる」
  • 「ブラック・ボール」
  • 「フィヨルド」
  • 「クライム101」
歌曲賞 「トイ・ストーリー5」
 曲『I Knew It, I Knew You』

(歌手:テイラー・スウィフト)

  【ノミネート予想】
  • 「トイ・ストーリー5」
  • 「プラダを着た悪魔2」
作曲賞   【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
  • 「ブラック・ボール」
  • 「ディスクロージャー・デイ」(ジョン・ウィリアムズ)
衣装デザイン賞 ブラック・ボール

  【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
  • 「ブラック・ボール」
  • 「Michael/マイケル」
美術賞 オデュッセイア

  【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
  • 「ブラック・ボール」
メイク&ヘア賞 マイケル

  【ノミネート予想】
  • 「Michael/マイケル」
    ※主演ジャファー・ジャクソンを、時代ごとのマイケルに変化させるうえで、重要な役割を果たした。顔、髪型、肌の見え方、衣装との一体感などを評価する声が出た。「スリラー」「Bad」のミュージックビデオの再現も好評。一方で、「鼻の処理が不自然だ」との批判もある。オスカー受賞歴のあるビル・コルソが担当。
  • 「オデュッセイア」
音響賞 オデュッセイア

  【ノミネート予想】
  • 「オデュッセイア」
  • 「プロジェクト・ヘイル・メアリー」
  • 「ブラック・ボール」
  • 「Michael/マイケル」


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他の賞

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  • キネマ旬報ベストテン
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