2020年代
| 25年 | 24年 | 23年 | 22年 | 21年 | 20年 |
2026年(第98回)
( 26年 | 25年↓ )
【主要8部門】
作品賞 、
監督賞 、
主演男優賞 、
主演女優賞 、
助演男優賞 、
助演女優賞 、
脚本賞 、
脚色賞
【ジャンル別3部門】
アニメ賞 、
国際映画賞 、
ドキュメンタリー賞
作品賞
■ 受賞予想(有力度ランキング)
作品賞の受賞予想(有力度ランキング)です。前哨戦でリードする「ワン・バトル・アフター・アナザー」と、16ノミネートというオスカー史上最多記録を打ち立てた「罪人たち」の2強による大接戦。
【ノミネート】
「罪人たち」▼
「ワン・バトル・アフター・アナザー」▼
「マーティ・シュプリーム」▼
「センチメンタル・バリュー」▼
「ハムネット」▼
「フランケンシュタイン」▼
「トレイン・ドリームズ」▼
「シークレット・エージェント」▼
「F1/エフワン」▼
「ブゴニア」▼
順位
候補
1位
「罪人(つみびと)たち」
【配信:アマゾン 】
ブルース音楽劇
1930年代のアメリカ南部の黒人兄弟の挑戦を、ブルースの源流や軌跡と絡めて描く音楽ドラマ活劇(フィクション)。西部劇やホラーの要素を取り入れ、新鮮なアプローチで米現代史の一面を切り取った。興行も大成功し、停滞気味のハリウッド映画業界に一つの方向性を示した。
天才クーグラー監督初の完全オリジナル
アカデミー作品賞ノミネート「ブラックパンサー」(2018年公開)を若干31歳で撮った天才ライアン・クーグラー監督が、初めて手掛けた完全オリジナル作品。ストーリーや構成の独創性に加えて、映像や音楽の卓越したクオリティの高さが絶賛された。クーグラー監督のデビュー作から出演し、二人三脚でハリウッドの王道を走り抜いてきたマイケル・B・ジョーダンが、一人二役(双子の兄弟)の大主演。
批評家の97%、観客の96%が肯定派
米国内での評価の高さは、2025年上半期に公開された主要作品の中で圧倒的トップ。映画館の観客の評価を聞き取り調査する「シネマスコア」でホラー映画(実際には半 ホラー映画だが)として史上初の「A」を獲得。ロッテン・トマトのスコアは批評家支持率97%、観客支持率96%という鮮やかな「両立」ぶり。
怒涛のロングラン
公開2週目の週末の落ち込みが初週比でわずか6%の下落という驚異的な維持率を達成し、その後も怒涛のロングランを続けた。
重みのあるスケール感
オスカーで重視される社会的テーマ性やスケール感という点において、過去の作品賞受賞作と比べて全く見劣りしない。とりわけ前年の作品賞「アノーラ」が軽めの路線だったことを勘案すると、米国史のダークサイドとそこから這い上がろうとする民衆パワーを生々しくあぶり出した本作の重厚感は無視し難い。
早期公開だった「エブエブ」の再来なるか
米国では4月に公開されており、選考までの期間が長いという点で不利。ただ、3年前のオスカーでは「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(エブエブ)」が3月公開ながら作品賞などを獲った例もある。
史上最多16ノミネートの衝撃
批評家系を中心とする前哨戦の序盤では、「ワン・バトル・アフター・アナザー」の後塵を拝した。
しかし、過去の映画話法の延長線上ではなく、革新的な「攻め」が魅力の本作は、どうみても「批評家向き」というより「創り手向き」。それを裏付けるように、オスカーでは、資格のある部門全てでノミネートされ、史上最多16ノミネートを達成。高技能映画人たちからの全方位的な支持が裏付けられた。
【ノミネート部門(16個=史上最多)】
部門
作品賞
監督賞 ライアン・クーグラー
脚本賞 ライアン・クーグラー
主演男優賞 マイケル・B・ジョーダン
助演男優賞 デルロイ・リンドー
助演女優賞 ウンミ・モサク
撮影賞
編集賞
配役賞
作曲賞
歌曲賞
視覚効果賞
衣装デザイン賞
美術賞
メイク&ヘア賞
音響賞
【前哨戦での受賞】
・ワシントン批評家賞
・ボストン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ロンドン批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
【評点】
メタクリティック
84点
最新→
ロッテン・トマト
97% (観客96%)最新→
IMDB
7.6
最新→
シネマスコア
A
レターボックス
4.1
最新→
監督:ライアン・クーグラー(ブラックパンサー、クリード)
主演:マイケル・B・ジョーダン(ブラックパンサー、クリード)
脚本:ライアン・クーグラー
公開日:2025年6月20日(日本)
製作国:アメリカ
制作会社:米プロキシミティ・メディア(ライアン・クーグラーの会社)
米国配給会社:ワーナー
長さ:2時間17分
影響を受けた作品「フロム・ダスク・ティル・ドーン」
【興行収入】
北米:2.8億ドル
世界:3.6億ドル
(→ )
【製作費】
9000万ドル
【物語の背景】
1932年のアメリカ南部ミシシッピ州を舞台とする本作では、「奴隷解放」後の黒人たちの苦悩、希望、躍動が克明にあぶり出される。
「奴隷解放」後の黒人
南北戦争(1861~1865年)で南軍が敗れ、奴隷解放宣言が行われた後も、黒人たちは農園主から住居や農具を与えられ、収穫した綿花の約半分の収益を支払う小作人として働くことになった。ところが彼らは衣類や食料を買うため生活費を農園主から前借りしなければならず、経済的に支配され続けた。
続き▼
綿摘みのメッカ「デルタ地域」
主人公の黒人兄弟が生まれたデルタは、ミシシッピ川とヤズー川に挟まれた肥沃(ひよく)な地帯で、19世紀からプランテーションが広がり、黒人奴隷が綿摘み労働を担ってきた。
黒人の起業
本作の物語は、故郷デルタを離れシカゴで荒稼ぎしてきた双子の黒人兄弟が、地元に戻ってきたところからスタートする。蓄えた資金で「ジューク・ジョイント」と呼ばれる酒場の開業を計画する兄弟。立ち上げに必要な場所や人材の確保へと動き出す。
演奏小屋「ジューク・ジョイント」
ジューク・ジョイントは、当時アングラ的に流行した黒人の社交場(ダンスホール)で、1930年代にデルタ地域の農園近くや街道沿いに点在していた。歌やギターが得意な農夫たちは、仕事の後にジューク・ジョイントで腕前を披露したという。演目はもちろん、黒人の農園労働者らに歌い継がれてきた「ブルース」。初期ブルース(デルタ・ブルース)を代表する伝説的な奏者兼歌手として知られ、本作でも言及されるチャーリー・パットンも、綿摘みなどの農作業をしながら、ジューク・ジョイントでブルースを演奏していた。
見事な音楽シーン
ブルースはジューク・ジョイントを媒介に、デルタ地帯からメンフィス、セントルイス、シカゴへと北上。ジャズやロックなど現代ポピュラー音楽の源になるのだが、本作ではその歴史的な広がりが、卓越した音楽シーンで鮮やかに表現されている。
黒人霊歌
もともと米国の黒人音楽といえばゴスペルが主流だった。アフリカ大陸から奴隷船で運ばれてきたアフリカ系アメリカ人たちは、自らの土着文化を否定されたが、奴隷として暴力や絶望に苦しむなかで独自の黒人霊歌を生み出し、天国での救済を唄うようになった。それがゴスペル(聖歌)として発展した。
世俗的で快楽的な「悪魔の音楽」
南北戦争で奴隷制度が撤廃された後も、人種差別は終わらず。黒人たちに失望が広がり、その憂うつ(ブルー)な気分を世俗的な歌詞とサウンドで正直に表現したのが「ブルース」だった。神にささげるゴルペルとは対局をなす世俗的な歌詞と快楽的なリズムやノリ。プロテスタントなどの信仰深い人たちからすると、音楽による陶酔は悪魔の誘惑であり、「悪魔の音楽」「罪人たちの歌」と呼ばれた。禁酒法による統制も加わり、酒場でブルースにのって足を踏み鳴らしたり、踊り狂ったりするような人々は堕落の象徴とされた。
少年ミュージシャンと吸血鬼
本作は、そんな「堕落文化」に胸を躍らせる人々の姿を活写する。その象徴として、牧師の息子ながらブルース音楽家を志す少年ミュージシャン(主人公の従弟)が準主役として登場。父親から「悪魔の音楽をやめろ!」と叱責されつつも、天才的なギター演奏と歌声で人々を熱狂させる。そのサウンドの魔力が、招かれざる客(吸血鬼)を引き寄せることとなり、大きな騒動へと発展する。少年の成長物語としても魅力たっぷりだ。
【予告編▼】
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<伝説のブルース奏者兼歌手、バディ・ガイのライブ映像▼>
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2位
「ワン・ バトル・アフター・ アナザー」
名匠ポール・トーマス・アンダーソン(略称:PTA)監督10作目にして初のアクション系大作。大手スタジオ(ワーナー・ブラザース)が投じた200億円以上の予算を、自らの作家性や職人的センスをフルに発揮する方向で使い切り、圧倒的な「映画的快楽」を実現。同時に、自己陶酔型の語り口に陥り過ぎることなく、活劇としてのスリルや政治サスペンスとしての展開も堪能できる娯楽作に仕上げた。コミカルな掛け合いや寓話的なキャラクター群像も魅力。
追跡と逃走の家族劇
レオナルド・ディカプリオ演じる政治テロ犯が、同じ組織内の女性と恋仲になり、娘をもうけて家庭人に。やがてその娘の身が危険にさらされ、救出へと向かう、という逃走&追跡の家族劇。
批評家の評価ナンバー1
米国で「満点」のレビューを出す批評家が続出。主な評者の得点を平均するメタクリティックのスコアは驚異の95点で、あの「オッペンハイマー」(90点)を軽く乗り越え、PTA自己最高だった「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(93点)を凌ぎ、「ソーシャル・ネットワーク」(96点)、「それでも夜は明ける」(96点)、「パラサイト 半地下の家族」(97点)といった神作レベルの域に迫った。ちなみに、さらに上には「ムーンライト」(99点)や「6才のボクが、大人になるまで」(100点)などがある。いずれにせよ、本年の主要作品では断トツの批評家ウケの良さ。
<批評家の絶賛ポイント>
・没入感、緊張感、迫力(とくに後半)
・現代政治風土の描写の鋭さ。豊かな寓話性、風刺。
・主役から端役(はやく)に至るまで全キャストの高度な演技と、それを引き出し、巧く見せる演出
一般支持率も「マグノリア」以来の高さ
一般層の反応もおおむね良好で、米映画館の出口調査シネマスコアで「A」を獲得。ロッテン・トマトの観客支持率は「85%」で、クセが強めのポール・トーマス・アンダーソン作品としては2作目「ブギーナイツ」(89%)、3作目「マグノリア」(89%)以来の高水準となった。ただ、競合相手「罪人たち」(96%)に比べると、一定割合の否定派が存在する。劇中に感情を揺さぶるようなシーンは多々あるが、個々のパーツでなく物語全体としてどれだけ芯に刺さる作品なのかという点が、気になる。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
・米国映画評議会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー/NBR)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・サンフランシスコ批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・フロリダ批評家賞
・オースティン批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・米南東部批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
・トロント国際映画祭
・ゴッサム賞
【ノミネート部門(13個)】
部門
作品賞
監督賞
主演男優賞 レオナルド・ディカプリオ
助演男優賞 ベニシオ・デル・トロ
助演男優賞 ショーン・ペン
助演女優賞 テヤナ・テイラー
脚色賞
撮影賞
編集賞
配役賞
作曲賞
音響賞
美術賞
監督&脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
主演:レオナルド・ディカプリオ&チェイス・インフィニティ
助演:ショーン・ペン、ベニシオ・デル・トロ、テヤナ・テイラーほか
製作国:アメリカ
配給会社:ワーナー
長さ:2時間42分
公開日:2025年10月3日(日本)
【興行収入】
北米:7061万ドル
世界:2億220万ドル
(→ )
【製作費】
1億3000万~1億7500万ドル
【評点】
メタクリティック
95点
最新→
ロッテン・トマト
95%
最新→
IMDB
8.4
最新→
シネマスコア
A
レターボックス
4.3
最新→
【予告編▼】
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<「ビスタビジョン」の魅力▼>
<劇伴のアルバム再生リスト▼>
<挿入歌:スティーリー・ダン「ダーティ・ワーク」▼>
<ディカプリオ氏らのレッドカーペット談▼>
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3位
「マーティ・シュプリーム」
米国の伝説的な卓球選手(マーティ・リースマン)の人生から着想を得た物語。これまで兄弟コンビで「アンカット・ダイヤモンド」などを手掛けてきたサフディ・ブラザーズの兄のほうであるジョシュ・サフディの初の単独監督作。本年度のA24イチオシ。製作費もA24として「シビル・ウォー」を上回り過去最高。
成功への妄執を描く心理劇
単なるスポーツ選手のサクセス・ストーリーではなく、主人公の成功への妄執や自己神格化の暴走までを射程に入れた野心的なキャラクター心理劇として称賛された。『自分は特別だ』という確信に取りつかれた人物を、魅力と危険性の両面から描き出す。「ピンポン版『ウルフ・オブ・ウォールストリート』」とも評された。主人公が何をしでかすか分からないという意味ではスリラー的で、その緊張感が多くの批評家に支持された。
シャラメへの称賛
ティモシー・シャラメの演技も称賛された。魅力・嫌悪感・哀しさを同時に抱かせる主人公の複雑なキャラクター造形に成功。
技巧面も高評価
テンポの良い編集、試合シーンにおけるカメラワークの切れ味、音楽とリズムの一体感といった技巧面も高く評価されている。
卓球ハスラー(勝負師)
着想元となったマーティ・リースマン選手(1930年~2012年)は、1949年と1952年の世界選手権シングル部門で銅メダルに輝いた人物。12歳のころから卓球クラブに通い始め、年上の選手を相手に金を賭けてプレーするギャンブル試合を展開。「卓球ハスラー」として有名になった。
【ノミネート部門(9個)】
部門
作品賞
監督賞
主演男優賞 ティモシー・シャラメ
脚本賞
撮影賞
編集賞
配役賞
衣装デザイン賞
美術賞
監督:ジョシュ・サフディ
主演:ティモシー・シャラメ
助演:グウィネス・パルトローほか
脚本:ロナルド・ブロンスタイン、ジョシュ・サフディ
公開日:2026年3月13日(日本)
製作国:アメリカ
米国配給会社:A24
製作費:7000万ドル
(A24配給作品としては2024年「シビル・ウォー」の5000万ドルを上回り過去最高)
長さ:2時間30分
【評点】
メタクリティック
88点
最新→
ロッテン・トマト
93% 最新→
IMDB
8.1
最新→
レターボックス
4.2
最新→
【予告編▼】
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<モデルとなったマーティ・リースマンのインタビュー▼>
<試合(1949年、世界選手権)▼>
<劇伴アルバム▼>
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4位
「センチメンタル・バリュー」
美しく内省的な家族劇
ノルウェーを舞台とする家族劇。疎遠になっていた父と娘2人の再会と確執を描く。美しくじんわり染みる内省的な一作。アカデミー賞脚本賞にノミネートされた「わたしは最悪」と同じ監督&脚本&主演。
「撮りたい」父と「演じたくない」娘
かつて映画監督として名声を高めた父親(ステラン・スカルスガルド)が、自分の家族の歴史を映画化しようとする試みが、物語の起点となる。父親は、舞台俳優である娘に主役を演じてもらいたいと申し出るが、娘(レナータ・ラインスヴァ)は拒絶する。家族について「語りたい(撮りたい)」父と、「演じたくない」娘の溝は埋まるのか。「親子関係」をテーマに据えつつ、「映画(創作活動)を通じて自らの人生を語る」あるいは「語り直す」ことの価値や是非を、物語の命題に取り込んだ。
主要キャスト4人の演技パワー
主要キャスト4人の演技の力を最大限に引き出しながら、パーソナルな題材を普遍的な物語として静かに紡いでいく手法が高い評価を得た。内省的でありながら、描かれる葛藤は鋭利で生々しい。「心の内側で静かに爆発する映画」などと絶賛された。
監督の自伝的な要素も
なお、ヨアキム・トリアー監督は本作で自伝的な要素も取り入れたという。父は音響技師、母は短編映画作家、そして何より祖父のエリック・ローシェンは、ノルウェー映画史に名を残す巨匠監督だった。ステラン・スカルスガルド演じる「かつての巨匠監督」という設定には、トリアー監督が見てきた祖父や親の世代が持つ「芸術への絶対的な信念と、それゆえの独善リスク」が色濃く反映されている。同時に、娘役が抱える「巨星すぎる父への複雑な感情とプレッシャー」は、自身の若い頃の心情が投影されているという。
【ノミネート部門(9個)】
部門
作品賞
監督賞
主演女優賞 レナータ・ラインスヴァ
助演男優賞 ステラン・スカルスガルド
助演女優賞 インガ・イブスドッテ・リレオス
助演女優賞 エル・ファニング
脚本賞
国際映画賞
編集賞
監督:ヨアキム・トリアー(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )
脚本:エスキル・フォクト(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )、ヨアキム・トリアー
主演:レナータ・ラインスヴァ(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )
助演:ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテ・リレオス、エル・ファニング(「名もなき者」「マレフィセント」など)
公開日:2026年2月20日(日本)
製作国:ノルウェー、仏、独、デンマーク
言語:ノルウェー語(一部英語)
米国配給会社:ネオン
長さ:2時間15分
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 2位(グランプリ賞)
・ボストン批評家賞 非英語作品賞
・ワシントン批評家賞 国際映画賞
・ダラス批評家賞 外国語映画賞
・ジョージア批評家賞 国際映画賞
・サンフランシスコ批評家賞 脚本賞
【評点】
メタクリティック
86点
最新→
ロッテン・トマト
97% 最新→
IMDB
7.9
最新→
レターボックス
4.2
最新→
【予告編▼】
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<カンヌのレッドカーペット▼>
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5位
「ハムネット」
大泣きの観客が続出
2021年オスカーの作品賞&監督賞に輝いた「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督の4年ぶりの新作。大泣きの観客が続出。
シェイクスピアの妻アグネス
英国の劇作家シェイクスピアの妻アグネス(アン)を主人公とするフィクション物語。2020年に発表された作家マギー・オファーレルの小説が原作。
シェイクスピアは18歳のときに8つ年上の女性アグネス結婚。双子の子供(長男ハムネットと長女ジュディス)をもうけたが、ハムネットは12歳で夭逝(ようせい)する。
この史実をベースに、豊かな想像力と大胆な再解釈を加え、長年にわたり「悪妻の典型」と見られてきたアグネスの生き様や夫婦愛、母子愛を全く新たな視点で描く。ジャオ監督が原作者と共同で脚本を書いた。
喪失の痛みと、芸術への昇華
主人公アグネスが、愛する息子ハムネットを失い、深い悲嘆に沈む姿は、単なる悲劇の再現に留まらない。五感を揺さぶるような生々しい描写と、言葉にならない母の情念を徹底して掘り下げることで、逃げ場のない没入感を生み出す。彼女と夫の癒えない傷跡が、創造的なエネルギーへと変わり、一大芸術へと昇華されていくプロセスが強烈な救済感をもたらすとして、絶賛された。トロント国際映画祭で観客賞。女性からの支持が圧倒的に厚い。
【ノミネート部門(8個)】
部門
作品賞
監督賞
主演女優賞 ジェシー・バックリー
脚色賞
配役賞
作曲賞
衣装デザイン賞
美術賞
監督:クロエ・ジャオ
主演:ジェシー・バックリー
助演:ポール・メスカルほか
脚本:マギー・オファーレル(兼原作者)、クロエ・ジャオ
原作:小説『ハムネット』(2020年、マギー・オファーレル著)
公開日:2026年4月10日(日本)
製作国:イギリス、アメリカ
言語:英語
米国配給会社:フォーカス
長さ:2時間5分
【前哨戦での受賞】
・トロント国際映画祭 観客賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
【評点】
メタクリティック
84点
最新→
ロッテン・トマト
86% 最新→
IMDB
8.1
最新→
レターボックス
4.2
最新→
【予告編▼】
動画集を開く▼
<テルライド映画祭での監督挨拶▼>
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6位
「フランケンシュタイン」
【配信:ネトフリ 】
「世界初のSF小説」とも評されるメアリー・シェリーの怪物物語『フランケンシュタイン』(1818年刊)を、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞している名匠ギレルモ・デル・トロがリメイクした。
「神話的・オペラ的な壮大さ」が高い評価を得た。ややメロドラマ的ではあるが、近年のホラーやSFが「リアリズム」や「ひねり(意外性)」を重視するなか、あえて19世紀文学の「大仰な感情表現(悲嘆、絶望、愛)」をストレートに映像化した点が、称賛された。
『ヘルボーイ』や『シェイプ・オブ・ウォーター』などで、「異形の者への愛」を見せてトロ監督の一つの集大成とも位置づけられている。
デル・トロ監督は、7歳の頃に1931年の映画「フランケンシュタイ」を見て衝撃を受け、それ以来、怪物(クリーチャー)に感情移入し、この物語に取り憑かれてきたという。何年もかけてクリーチャーのデザイン画を描きためたり、脚本の構想を練り続けたりしており、準備期間は実質20〜25年に及ぶとされる。
その構想を実現につなげたのは、Netflixマネーだった。
2018年、デル・トロ監督はNetflixの経営者(テッド・サランドス共同CEO)に対して、自身の「死ぬまでにやりたいことリスト」を提示。開発途中で頓挫していた「ピノッキオ」の完成と、構想段階だった「フランケンシュタイン」の2つを挙げ、協力を求めた。
Netflixはまず「ピノッキオ」計画の救済・再開のための資金を提供。2022年に公開にこぎつけ、オスカーでアニメ賞を受賞するなど成功を収めると、ついにフランケンシュタインの契約を締結。ストリーミング配信作品としては破格の製作費(約180億円)を投じた。
巨大なセット、精巧なアニマトロニクス(機械仕掛けの人形)、特殊メイクなどの物理的な美術造形に多額の資金が充てられ、重厚な映像美が構築された。
なお、監督の過去作と比べた米国での評点の高さは、「パンズ・ラビリンス」「シェイプ・オブ・ウォーター」よりはだいぶ劣り、「ナイトメア・アリー」「ヘルボーイ」と同じくらい。
【ノミネート部門(9個)】
部門
作品賞
助演男優賞 ジェイコブ・エロルディ
脚色賞
撮影賞
美術賞
衣装デザイン賞
メイク&ヘア賞
作曲賞
音響賞
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ノア・オッペンハイム
主演:オスカー・アイザック
助演:ジェイコブ・エロルディ(怪物役)ほか
公開日:2025年11月7日(Netflix配信)
製作国:アメリカ
配給会社:Netflix
長さ:2時間30分
【製作費】
1.2億ドル
【前哨戦での受賞】
・トロント国際映画祭 観客賞2位
【評点】
メタクリティック
78点
最新→
ロッテン・トマト
85% 最新→
IMDB
7.5
最新→
【予告編▼】
7位
「トレイン・ドリームズ」
【配信:ネトフリ 】
前年「シンシン」で絶賛された監督&脚本家による静かな一作。制作会社もシンシンと同じBlack Bearだが、今回はNetflixがサンダンス映画祭で配給権を獲った。
鉄道敷設や森林伐採に汗を流し、家族を愛しながら、19世紀終盤から20世紀のアメリカを静かに歩み続けた「普通の労働者」の生涯を描いた。
大きな時代のうねりに対して無力でありながらも、ただ誠実に生き、働き、そして老いていく人間の「尊厳」が表現されている。
内容的に地味ではあるが、味わい深さや詩的な魅力が評価された。「監督が静寂を恐れずに時間をたっぷり使って描いた演出(長回しなど)が、観客を没入させる」(米コライダー)などと批評家もほぼ称賛一色。
【ノミネート部門(4個)】
監督:クリント・ベントリー(「シンシン」など)
脚本:クリント・ベントリー&グレッグ・クウィダー(「シンシン」の脚本コンビ)
主演:ジョエル・エジャトン(「ラビング 愛という名前のふたり」「ゼロ・ダーク・サーティ」など)
助演:フェリシティ・ジョーンズ、ウィリアム・H・メイシーほか
公開日:2025年11月21日(Netflix配信)
製作国:アメリカ
配給会社:Netflix
長さ:1時間42分
【評点】
メタクリティック
88点
最新→
ロッテン・トマト
95% 最新→
IMDB
7.5
最新→
【予告編▼】
8位
「シークレット・エージェント」
国:ブラジル
監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ
主演:ヴァグネル・モウラ
製作国:ブラジル+独仏蘭
言語:ポルトガル語、ドイツ語
米国配給会社:ネオン
長さ:2時間38分
【ノミネート部門(4個)】
部門
作品賞
主演男優賞 ヴァグネル・モウラ
国際映画賞
配役賞
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭【4冠】監督賞&主演男優賞&国際映画批評家連盟賞&フランスアート系映画館協会賞
・クリティック・チョイス賞 非英語作品賞
・ニューヨーク批評家賞 外国語映画賞(&主演男優賞も)
・ロサンゼルス批評家賞 外国語映画賞
・オースティン批評家賞 国際映画賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め 非英語作品賞(&作品賞3位)
・ゴールデングローブ賞 非英語作品賞
【評点】
メタクリティック
92点
最新→
ロッテン・トマト
99%
最新→
IMDB
7.9
最新→
レターボックス
3.9
最新→
【予告編▼】
9位
「F1/エフワン」
映画スター(ブラッド・ピット)が輝き、大画面でレースのスピードに酔いしれる体験型作品。「古き良きハリウッド文化」が、最新の映像・音響技術と融合し、「トップガン マーヴェリック」で感じたようなノスタルジーと高揚感をもたらす。世界興行収入1000億円。
カンヌ映画祭の最高賞やNY批評家賞の監督賞に輝いたイラン発(欧州出資)の「シンプル・アクシデント/偶然」などの強豪をおさえ、ノミネート10枠入り。「ウィキッド 永遠の約束」「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」といった続きものより、アカデミー会員はオリジナル・ストーリーの本作を選んだ。
【ノミネート部門(4個)】
監督:ジョセフ・コシンスキー(トップガン マーヴェリックなど)
主演:ブラッド・ピット
助演:ダムソン・イドリス(若手選手)、ハビエル・バルデム(チーム所有者)、ケリー・コンドン(車の開発者)ほか
脚本(書下ろし):アーレン・クルーガー(トップガン マーヴェリックなど)
公開日:2025年6月20日(日本)
製作国:アメリカ
製作会社:アップル
配給担当:ワーナー
長さ:2時間15分
10位
「ブゴニア」
「女王陛下のお気に入り」(2018年)を起点として、「哀れなるものたち」(2023年)、「憐れみの三章」(2024年)と続いてきたヨルゴス・ランティモスとエマ・ストーンの協働プロジェクトの一環。
社会的に疎外された労働者が、圧倒的な富と権力を持つ製薬会社の女性CEOを、「隠れ宇宙人」として認識することから始まるブラックコメディ。「この男は狂った陰謀論者か、それとも救世主か」という問いを、観客に突きつけたまま物語が進行する。
原作は、カルト的な人気を誇る韓国のブラックコメディ映画「地球を救え!」(2003年)。「パラサイト 半地下の家族」を手掛けた韓国エンタメ大手「CJ ENM」が、地球を救えのハリウッド版リメイクを目指して2020年ごろ企画を始動させた。原作映画のファンだった「ヘレディタリー」「ミッドサマー」のアリ・アスター監督がプロデューサーとして参加し、テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」で注目を集めたウィル・トレイシーが脚本を執筆。ランティモスがこの脚本を気に入り、監督を引き受けた。原作の韓国版を撮ったチャン・ジュナン監督(大ヒット作「1987、ある闘いの真実」で有名)は、エグゼクティブ・プロデューサーに回った。
歴代のランティモス作品の中では比較的ストレートに観やすく、一般観客の支持率も高め。ただ、「哀れなるものたち」に比べると、映像面の華やかさや、圧倒的な別世界体験がやや弱め。また、緻密さの面で「女王陛下のお気に入り」より劣る。
配給会社「フォーカス」(ユニバーサル系)にとっては本年度オスカーにおいて「ハムネット」に次ぐ二番手の有力作品となる。
【ノミネート部門(4個)】
部門
作品賞
主演女優賞 エマ・ストーン
脚色賞
作曲賞
監督:ヨルゴス・ランティモス(「哀れなるものたち」「女王陛下のお気に入り」など)
脚本:ウィル・トレイシー(テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」シーズン2・第5話の脚本を書き、エミー賞脚本賞を受賞)
主演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンズ
公開日:2026年2月13日(日本)
製作国:アイルランド、韓国、米国
配給会社:フォーカス
長さ:1時間58分
【製作費】
5000万ドル
【評点】
メタクリティック
72点
最新→
ロッテン・トマト
87% 最新→
IMDB
7.7
最新→
【予告編▼】
※
歴代の作品賞→
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【ノミネート発表後の雑感】作品賞争いの構図は変わった?
(1月24日、アワード・ウォッチ編集部・Hitomi AI )
「視覚効果賞は落選」の予想を跳ね返した「罪人たち」の勢い
「罪人たち」が対象となる全ての部門でノミネートされた。史上最多16部門。
この「全制圧」の凄い点は、「境界線上」あるいは「次々点くらいで落選」すると予想されていた部門でも滑り込んだことだ。
まず、助演男優賞のデルロイ・リンドーが、ポール・メスカル(ハムネット)をおさえてノミネート入りを果たした。
また、視覚効果賞については、8番手くらいの候補と位置付ける声も多かったが、「フランケンシュタイン」「スーパーマン」「ウィキッド 永遠の約束」「トロン:アレス」といった強豪を次々と弾き飛ばしてみせた。
これらの逆転劇は、「『罪人たち』を作品全体として押し上げたい」というアカデミー会員たちの意識が働いていると見るべきだろう。
例年なら、いくら強い候補であっても、多数の有力部門を抱えていれば、どこかしらで1,2個は落とすものだ。しかし、「罪人たち」にはそれがなかった。
これがNetflix作品でれば、圧倒的な資金力と、オスカー・キャンペーンを仕切るリサ・タバック副社長の戦術で、強引に「最多ノミネート」をさらっていったのだろう、と解釈しておしまいだ。しかし、本作の配給会社は、いわば「普通のメジャースタジオ」であるワーナー。過度にトリッキーなことはしないはず。
罪人たちに関しては、年明けから勢いが増している傾向も顕著に見られる。例えば助演女優賞のウンミ・モサクも秋口まで圏外と見られていたが、12月ごろから各賞でのノミネート確率がぐんぐん上がり、はたから見れば、やや余裕の状態でノミネート発表の朝を迎えた。
「春(4月)」という早すぎる時期に劇公開された「罪人たち」は、人々の意識の中に強烈かつフレッシュな形で戻ってきた。
9月から単独トップを走り続けたワン・バトル
一方の「ワン・バトル・アフター・アナザー」も、決して勢いがないわけではなく、むしろ非常に快調だ。「13ノミネート」という数字は、例年なら楽勝で「当年度最多」となる水準である。
ノミネートを逃した部門は、主演女優賞(チェイス・インフィニティ)、衣装デザイン賞、視覚効果賞、メイク&ヘア賞、歌曲賞。このうち主演女優賞はギリギリ入るという声が多く、メイク&ヘア賞も4、5番手くらいでノミネート入りすると予想されていた。
それでも、このくらいの「取りこぼし」はよくある話。むしろ強豪ぞろいの美術賞でノミネートを外さなかったのは立派と評価すべきだ。
ただ、全体として「罪人たち」のような加速の勢いがあるのかというと、そうでもないだろう。昨年9月上旬の最初の試写会から、極めて鮮やかなスタートダッシュを批評面で見せ、予想屋の間でいきなり「最有力候補」に躍り出たワン・バトル・アフター・アナザー。前哨戦でも、最有力説を裏付ける結果を出し続けてきた。しかし、今回のノミネート発表で、外野の「受賞確実ムード」にとりあえず「待った」がかけられたのは間違いない。
「作品賞・監督賞」棲み分け説の浮上
「罪人たち」による史上最多ノミネート・ショックが起きた後も、「監督賞はポール・トーマス・アンダーソン以外にあり得ない」との見方はゆるぎない。あれだけ実績のあるベテランで、しかも、オスカー受賞歴はゼロ。作品賞、監督賞はおろか、脚本・脚色でも獲ったことがないのだ。ノミネート回数ばかりが積み重なってきている。
そこで、今回のオスカーの落としどころのイメージとして浮上しているのが「棲み分け説」。
監督賞はポール・トーマス・アンダーソンで、作品賞は「罪人たち」という、スプリットである。
ワーナー経営陣の采配は?
この棲み分け説に一定の説得力がある理由の一つは、両作品がいずれもワーナー・ブラザースの配給だからだ。
ワーナーのような大手スタジオのオスカー・キャンペーンは、同じ会社であっても、作品ごとに別のチームが組まれ、ガチンコで競い合うと言われている。監督ら制作陣は、自分たちの作品がスタジオの「二の次」にされることを嫌うため、スタジオ側は、チームを分けることで、「私たちはあなたの作品のために100%の力を注いでいますよ」という姿勢を見せ、クリエイターとの信頼関係を保つのだ。
それでも、各チームの上に立つのは、ワーナーの映画部門のトップ(マイケル・デ・ルカ&パメラ・アブディ)だ。全体の戦略を決め、「予算」と「着地点」をコントロールする。どの作品にどれだけの宣伝費を投じるか、どの作品を「作品賞」の大本命にするかといった大局的な判断を下せる立場にいる。
天才クーグラーに愛されたい
「罪人たち」と「ワン・バトル・アフター・アナザー」を比べた場合、どちらがワーナーに利益をもたらしたかは一目瞭然。製作費1億ドル以下に対して興行収入3.7億ドルの「罪人たち」。製作費1.5億ドルに対して興行収入2億ドルの「ワン・バトル・アフター・アナザー」。ワーナーは、「罪人たち」のライアン・クーグラー監督と「クリード」シリーズでもタッグを組んできた経緯もある。
「罪人たち」の契約を結ぶ際、ワーナーは「25年後にライアン・クーグラーの会社に著作権に移管する」という異例の条件を呑んだ。彼らはそれほど、稀代の天才クーグラーに愛されたいのだ。
天王山「PGA」
前哨戦はこれからが山場。例年以上にひときわ注目されるのが、PGA(米製作者組合賞) だ。興行的な成功度を重視するプロデューサー集団が、「罪人たち」でなく「ワン・バトル・アフター・アナザー」を選んだら、上記の「棲み分け説」も一気にしぼむだろう。「トップガン マーヴェリック」がPGAで「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」に敗れ、オスカー作品賞の希望がほとんどなくなった時と同じように。
天王山に向けて、ワーナー経営陣は、PGAを構成するプロデューサーたちに、どのようなナラティブを用意するのだろうか。
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監督賞
部門
監督賞
ノミネート
ポール・トーマス・アンダーソン
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※過去に11回ノミネートされたが受賞はゼロだった。
若干26歳で長編2作目「ブギーナイツ」(1997年)を撮り、大当たり。
天才的な若手として注目され、オスカー脚本賞ノミネート。
マーク・ウォールバーグ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジョン・C・ライリーらの新進俳優を世界に知らしめた。
それ以来、卓説した演出力も称賛され続けた。
本作は大手スタジオ(ワーナー)が出資する超大作ながら、撮影や編集などの技術面にも自ら全面的に参加。高度な芸術性を追求した。若手のチェイス・インフィニティからベテランのショーン・ペンまで、俳優の魅力を最大限に引き出す魔力も相変わらず。
55歳。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞
・米映画評議会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・サンフランシスコ批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・オースティン批評家賞
・フェニックス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
<ノミネート歴>
作品
部門
1997
「ブギーナイツ」
脚本賞
1999
「マグノリア」
脚本賞
2017
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
作品賞
監督賞
脚色賞
2014
「インヒアレント・ヴァイス」
脚色賞
2017
「ファントム・スレッド」
作品賞
監督賞
2021
「リコリス・ピザ」
作品賞
監督賞
脚本賞
ライアン・クーグラー
「罪人(つみびと)たち」
※「ブラックパンサー」「クリード」シリーズで絶賛されたヒットメーカーの初のオリジナル作品。2021年「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」の共同プロデューサーとして作品賞にノミネートされた。
1986年5月生まれ。加州オークランド出身。
2013年、地元近くの黒人青年の射殺事件を描いた「フルートベール駅で」で長編デビュー。当時27歳。企画を気に入った俳優フォレスト・ウィテカーらの支援で完成させた。サンダンス映画祭にて、最高の栄誉である「審査員グランプリ」と「観客賞」の2冠を制した。わずか90万ドルの製作費で、1740万ドルの興行収入を稼ぎだした。
主役に起用したマイケル・B・ジョーダンも称賛を浴びる。
「ロッキー」シリーズの新作「クリード」の監督に大抜擢。メジャーな大成功を収めた。さらに若干31歳で傑作「ブラックパンサー」を撮り、マーベル映画初のアカデミー作品賞ノミネートへと導いた。
【前哨戦での受賞】
・ボストン批評家賞
・ワシントン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・米南東部批評家賞
・テキサス北部批評家賞
ヨアキム・トリアー
「センチメンタル・バリュー」
※ノルウェー人。1974年生まれ。前作「わたしは最悪」で2022年オスカーの国際映画賞と脚本賞にノミネートされたが、いずれも濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」に敗れた。
クロエ・ジャオ
「ハムネット」
※中国出身。アメリカに移住。低予算「ノマドランド」で2021年の作品賞、監督賞に輝く。マーベル大作「エターナルズ」を経て、本作が4年ぶりの新作。
ジョシュ・サフディ
「マーティ・シュプリーム」
※
歴代の監督賞→
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主演男優賞
部門
主演男優賞
ノミネート
ティモシー・シャラメ
「マーティ・シュプリーム」
※野心あふれる卓球選手役。過去の貴公子的なイメージを完全に封印し、あえて「鼻持ちならない、自己中心的な男」を演じきった。徹底したナルシシズムを押し出し、観客に強い拒絶感を抱かせる。それでも、シャラメ自身の持つ圧倒的なエネルギーとカリスマ性がキャラクターに注ぎ込むことで、「破滅的な熱狂から一瞬たりとも目を離せなくなる」という奇妙なトランス状態へと導く。中毒性の高い演技。
卓球シーンで見せる、文字通り「命を削るような」激しい動きと集中力は圧巻。ジョシュ・サフディ監督特有の、追い詰められた人間の熱量を完璧に体現。ピンポン台の前で放つ生々しい輝きが、抗(あらが)いがたい魅力となる。
「内面の空虚さ」の表現も高評価ポイント。頂点に登りつめればつめるほど、周りから人が去っていき、自分自身が壊れていく「孤独な狂気」を、ふとした瞬間に伝える。
前年の「名もなき者」でボブ・ディランを好演し、主演男優賞レースで先頭を走っていたエイドリアン・ブロディ(ブルータリスト)を猛追。SAGアワード(俳優組合賞)で勝利するも、オスカーでは敗れた。「今度こそ」の期待がかかる。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・ラスベガス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・オースティン批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
マイケル・B・ジョーダン
「罪人たち」
※双子の兄弟を一人二役で演じた。厳格で引率力のある兄スモークと、陽気で脇の甘い弟スタック。しぐさ、目つき、声を巧みに使い分けた。双子としての共通項を持たせつつ、別人として観せる演技が巧妙。
怒り・後悔・希望・恐怖・連帯など、複数の感情が時間経過とともに積み重なり、観客を引き寄せる。多層的なテーマへと拡張していく本作において、太い縦串として機能する。
【前哨戦での受賞】
・ワシントン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・米南東部批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ジョージア批評家賞
レオナルド・ディカプリオ
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※左翼活動家の役柄。
脱力感のあるコミカル表現で笑わせる。
シリアスとコメディの境界をあいまいにし、「理想主義」の空回りを観客に痛々しく見せる役割を果たした。
後半は、薬物や酒に溺れたジャンキーとしてのダメぶりを体現。ミドルエイジの疲弊感をリアルに感じさせる。
その一方で、娘思いなお父さんぶりが温かい。
過去作「ディパーテッド」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「レヴェナント」等では、精神や肉体の極限状態におかれたキャラを築いてきた。本作では、狂気と正気、真面目とユーモアを滑らかに行き来する均衡力を発揮。「ディカプリオはもはや狂気の縁で“演じる”のではなく、その上で“踊っている”」(英ガーディアン紙のピーター・ブラッドショウ記者)と評されるような熟練のバランス演技で魅せた。(Hitomi AI )
【前哨戦での受賞】
・米映画評議会議(NBR)
・アトランタ批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ダラス批評家賞
イーサン・ホーク
「ブルー・ムーン」
※作詞家ロレンツ・ハート(Lorenz Hart)を演じた。
細かなタッチや余白を大切にした演技。軽やかな言葉遣いながら、身体的にはやや控えめ・縮んだ感じという対比的な演技設計を採用。
才能あるが自己破壊的で、性的な抑圧もあり、プロとしても人間としても苦悩している複雑な人物像をとらえた。
本来の発声・動き・外見などすべてを変え、別人になりきった。
ロレンツ・ハートはアメリカ音楽史でもっとも重要な作詞家の一人とされ、作曲家リチャード・ロジャースとの名コンビで1920年代から1940年代初頭まで、ブロードウェイ黄金期の礎を築いた人物。
作品自体も高評価を得た。ソニー・ピクチャーズ・クラシックス配給。
【前哨戦での受賞】
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・ロサンゼルス批評家賞
・ボストン批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・トロント批評家賞
ヴァグネル・モウラ
「シークレット・エージェント」
※ブラジルの人気俳優。Netflixのドラマ「ナルコス」で麻薬王パブロ・エスコバルを演じたことで有名。
1970年代の軍事政権下のブラジルを舞台に、逃亡中の中年男性を演じた。ゆるやかな進行するドラマの中で、深みの漂う眼差しや身体のわずかな揺れなどで緊張感を表現。政治的恐怖と人間的脆さを併せもった人物像を丁寧に描いた。
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 男優賞
・ニューヨーク批評家賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
※
歴代の主演男優賞→
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主演女優賞
部門
主演女優賞
ノミネート
ジェシー・バックリー
「ハムネット」
※シェイクスピアの妻アグネスを演じた。
過去のオスカーでは、2022年に「ロスト・ドーター」で助演女優賞ノミネート。アイルランド出身。1989年生まれ。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・ワシントン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・フェニックス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・米南東部批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
・サンディエゴ批評家賞(タイ)
・英国批評家賞
ローズ・バーン
「If I Had Legs I'd Kick You」
「病気の娘の看病」「ストレスフルな仕事」「自宅の損壊」といった難題に対処できず、精神が摩耗していく母親を演じた。顔のアップのシーンが長く続くなかで、表情の痙攣などで爆発寸前の危うさを描き出した。
かなり身勝手で、嫌悪感を与えるキャラクター像だが、欠陥を正当化せず、開き直って醜態を晒す演技に徹したことで、「多くの俳優が陥る『観客に好かれたい』という誘惑を完璧に断ち切った」(英ガーディアン紙)などと批評家に評価された。
オーストラリア出身。「ブライズメイズ」「ネイバーズ」などのコメディ映画で有名。
【前哨戦での受賞】
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・米映画評議会議(NBR)
・ボストン批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ダラス批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・サンディエゴ批評家賞(タイ)
・トロント批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
・ベルリン国際映画祭 主演俳優賞
レナータ・ラインスヴァ
「センチメンタル・バリュー」
ダークで、鋭利で、かつ壊れそうな繊細さを見事に体現した。
父親(ステラン・スカルスガルド)に対して、「嫌悪感」と「認められたい渇望」という相反する感情を抱く役柄。その複雑な心理状態が、切実に伝わる。
精神的な不安定ぶりも巧みで、いつ崩れるか分からないような危うさを見せる。時折、「うつ」や「怒り」の表現が「演技」のような熱量を帯びているため、観客側は、実は私生活という劇を演じているのではないか(つまり劇中劇を見せられているのではないか)という感覚に陥る。
一方で、演劇の舞台に立った時のシーンなどで放つカリスマ性が華やかで、そのスイッチの切り替えが凄い。
同じヨアキム・トリアー監督の「わたしは最悪。」(2021年)で世界的に大ブレイクし、英国アカデミー賞の主演女優賞ノミネート。1987年ノルウェー生まれ。
エマ・ストーン
「ブゴニア」
カリスマ的なCEOとしての自信に満ちた姿から、陰謀論者に責められるときの痛々しい姿まで、その感情の機微を的確に表現している点が称賛された。「結局、どんな人物なのか」という疑問を、観客に抱かせ続ける絶妙さが光る。
2度目のオスカーに輝いた「哀れなるものたち」では、生まれたての子供のような純粋さと力強い好奇心を「目」で表現していたが、今作では、危機状態下での恐怖感の一方で、それでも失われない冷静さ・洞察力・コミュニケーション力などの多彩なスキルを、目力で見事に表現した。
エキセントリックな「哀れなるものたち」のときよりも、現実に根ざした生々しさがある。
ケイト・ハドソン
「ソング・サング・ブルー」
※
歴代の主演女優賞→
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助演男優賞
部門
助演男優賞
ノミネート
ステラン・スカルスガルド
「センチメンタル・バリュー」
疎遠だった娘たちと対峙する父親を演じた。かつて名声を得たベテラン映画監督という設定。
普段はあまり感情を表に出さず、むしろ冷淡さが目立つ人物像だが、時折見せる思慮深さ、優しさ、茶目っ気が絶妙で、観客の共感を静かに手繰り寄せる。
映像作家として時代の潮流に取り残された焦燥と、それでも手放せないクリエイターとしての矜持(きょうじ)を、「頑固な老人」というステレオタイプに陥ることなく、生々しい実存感を伴って具現化した。
主要キャスト4人による息を呑むような本作の演技の応酬において、重鎮らしい「アンカー(碇)」としての役割を果たし、美しいアンサンブルを完遂へと導いた。
スウェーデン出身のベテラン。世界的な名脇役として活躍してきた。ハリウッド映画では「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ、「アベンジャーズ」「マンマ・ミーア」「ドラゴン・タトゥーの女」などの大作に出演。近年では「デューン 砂の惑星」シリーズの変態悪役(ハルコンネン男爵)でおなじみ。HBOの傑作ドラマ「チェルノブイリ」(2019年)でエミー賞の助演男優賞(リミテッド・シリーズ部門)ノミネート。1951年生まれ。
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞
・ボストン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ダラス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
ベニシオ・デル・トロ
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※空手の指導者役。「センセイ」と呼ばれ、生徒だけでなく、地域のラテンコミュニティのリーダー格として慕われる存在。さりげないカリスマ性や賢者ぶりをユーモラスに表現。ひょうひょうとした立ち振る舞いながら、脳に確かに響く名セリフを連発する。「茶目っ気」が最大限に引き出され、ふとした瞬間にこぼれるあの笑顔もあいまって、とにかくチャーミング。特異なキャラクターが多い中で、作品世界への親近感をもたせてくれる。
「トラフィック」(2000年)で文句なしの助演男優賞に輝いたときを想起させる、四半世紀ぶりの超絶ハマリ役。
【前哨戦での受賞】
・ニューヨーク批評家賞
・シカゴ批評家賞
・米映画評議会議(NBR)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・ワシントン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・オースティン批評家賞
・フェニックス批評家賞
・米南東部批評家賞
・トロント批評家賞
・ジョージア批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
ショーン・ペン
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※ディカプリオ氏演じる主人公と対峙する悪役。とにかく狂気的で不気味。差別主義者ぶりや変態男ぶりを滑稽かつ大げさに演じつつ、屈折した内面や脆弱性を丁寧に表現した。近年のハリウッド作品の中でも際立つヴィラン造形との高評価も。
過去2度、主演男優賞を受賞(「ミスティック・リバー」「ミルク」)。その前にも3回主演ノミネートという輝かしいオスカー歴を誇る。ただ、ここ16年間はノミネートから遠ざかっていた。
【前哨戦での受賞】
・セントルイス批評家賞
・フロリダ批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・英国批評家賞
ジェイコブ・エロルディ
「フランケンシュタイン」
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
デルロイ・リンドー
「罪人たち」
※「語り部」としての深い味わい。
【前哨戦での受賞】
・テキサス北部批評家賞
駅前の路上パフォーマーとして登場。いい感じのおじいちゃんぶりをコミカルに発揮するとともに「大物感」を漂わせる。即興感が漂うハーモニカ演奏ぶりも魅力的。雑談の中で過酷な人生経験を吐露する場面は見どころで、本作の重みを決定づけている。
※
歴代の助演男優賞→
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助演女優賞
部門
助演女優賞
ノミネート
エイミー・マディガン
「ウェポンズ」
「燃えてふたたび」で1986年に助演女優賞ノミネート。それ以来、オスカーには縁がなかった。今回、大ヒットホラー作で強烈なインパクトを与え、全米の映画ファンが猛プッシュ。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・ニューヨーク批評家賞
・ボストン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・米南東部批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
テヤナ・テイラー
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※「革命闘士」を名乗るテロリスト役。強烈な演技で前半を盛り上げる。獰猛かつ無慈悲に暴れ回るシーンや、敵の幹部をサディスティックに挑発する場面などが印象的。
【前哨戦での受賞】
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・ワシントン批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ダラス批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
インガ・イブスドッテ・リレオス
「センチメンタル・バリュー」
※家族劇における娘(次女)の役を演じた。家庭から離れていった父親(ステラン・スカルスガルド)と、それを恨む長女(レナータ・ラインスヴァ)の間に立ち、調停役(バランサー)のような役割を担う。自身の感情を静かに抑制する演技が光る。
あくまで「一般の人」に見えるところが高評価のポイント。主要キャスト4人のうち、他の3人は表現者(俳優や映画監督)という設定で、唯一の家庭人として登場するリレオスは、役者臭さを微塵も出さず、多くの批評家から「光り輝く自然体(Luminous Naturalism)」などと称えられた。
観客を「日常」へと繋ぎ止める架け橋となり、作品のリアリズムを一段と格上げした。
1989年生まれのノルウェー。Netflix「ビューティフル・ライフ」(2023年、デンマーク)などに出演。
【前哨戦での受賞】
・米映画評議会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー)
ウンミ・モサク
「罪人たち」
【前哨戦での受賞】
・ミシガン批評家賞
・英国批評家賞
・ゴッサム賞
子供を失った悲しみを抱えながらも、マイケル・B・ジョーダン演じる「スモーク」を精神的に支える聖母のような慈愛を見せる。その母性には「演技を超えた真実味がある」と称賛された。なお、撮影時、自身が出産後7ヶ月だった。
冒頭のナレーションも担当。その呪術や信仰に関する言葉は、作品に深い神秘性を与える。低く、深く響く声は、観客を異世界へと誘う「オラクル(神託者)」のようだと評された。
エル・ファニング
「センチメンタル・バリュー」
北欧の映画監督とその娘たちが織りなす家族劇に、「人気ハリウッド俳優」という設定で静かな波乱をもたらす役柄を演じた。内省的な空気感の中に「アメリカ的」なエネルギーとダイナミズムを持ち込み、単なる華やかさを超えて世界観の広がりをもたらした。
「スター性」と「真面目な職人気質」を融合させたキャラ造形が素晴らしい。圧倒的なオーラを放ちながらも、仕事に対して真摯なプロとしての顔を見せる。自分が関わる芸術に対して倫理的な責任を持とうとする表現者としての苦悩を演じ切ったことで、物語に独特な緊張感が加わった。
過去のオスカーノミネート歴はなし。前年の作品賞ノミネート「名もなき者」でボブ・ディランの恋人役を演じた。1998年、米南部ジョージア州生まれ。有名子役ダコタ・ファニング(宇宙戦争)の4歳下の妹。
※
歴代の助演女優賞→
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脚本賞
部門
脚本賞
ノミネート
「罪人たち」
脚本:ライアン・クーグラー
「マーティ・シュプリーム」
脚本:ロナルド・ブロンスタイン&ジョシュ・サフディ
「センチメンタル・バリュー」
脚本:エスキル・フォクト(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )、ヨアキム・トリアー
「シンプル・アクシデント/偶然」
脚本:ジャファール・パナヒ
「ブルー・ムーン」
脚本:ロバート・カプロウ
※
歴代の脚本賞→
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脚色賞
部門
ノミネート
脚色賞ノミネート
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
※現代アメリカを代表する小説家の一人、トマス・ピンチョンの「ヴァインランド」(1990年刊)から着想を得た。小説は、1980年代を生きる父娘の物語を通じて、1960年代の政治闘争を振り返る内容。アンダーソン監督はピンチョン本人(88歳)の了承を得たうえで、小説の中の「親子関係の構築」に焦点を当て、現代の物語としてシナリオ化した。
「ハムネット」
脚本:マギー・オファーレル(兼原作者)&クロエ・ジャオ
「トレイン・ドリームズ」
脚本:クリント・ベントリー&グレッグ・クウィダー
「ブゴニア」
脚本:ウィル・トレイシー
「フランケンシュタイン」
脚本:ギレルモ・デル・トロ
※
歴代の脚色賞→
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ジャンル別映画3部門
アニメ賞 、国際映画賞 、ドキュメンタリー賞
アニメ賞
部門
アニメ賞
アニメ賞ノミネート
「K-Popガールズ!デーモン・ハンターズ」
(Netflix)
Netflixの英語映画で史上1位の視聴回数を記録した。制作は、『スパイダーマン:スパイダーバース』でアニメーションの歴史を塗り替えたソニー・ピクチャーズ アニメーションが手掛けた。3DCGでありながら、あえてキャラクターの輪郭線を描き、手描きアニメのような温かみやメリハリを出した。K-POPのミュージックビデオのようなスタイリッシュな視覚と、日本のアニメのような可愛らしさが融合し、世界中の視聴者を釘付けにした。
音楽が映画の付随物ではなく、物語の核として最大限に機能。キャッチーな劇中歌「Golden」などが現実のビルボード・チャートで首位を獲得し、劇中の架空グループ「ハントリックス(HUNTR/X)」が本物のスターのような存在に。
さらに、個性を消して完璧を求められる業界のプレッシャーや、ファンの期待に応えようとする葛藤など、アイドルの裏側にある人間ドラマが、大人たちの共感も呼んだ。
続編やリメイクが続く映画界において、全く新しいキャラクターと設定による「完全オリジナル」のヒットだったことも、オスカー的に大きなプラス材料。
監督:マギー・カン(韓国出身のカナダ人)&クリス・アップルハンズ
※マギー・カン氏は、本作が監督デビュー作。原案を考案し、ソニーに提案した立役者。故郷の音楽(K-Pop)への深い愛着を込めてストーリーを創造したという。
ソウルで生まれのカン氏は、5歳のときに両親と共にカナダに移住。父親は熱心な映画ファンで、VHSやDVDなどの映画ソフト5万本以上を買い集め、娘のマギーに黒澤明、チャップリン、キューブリックなどの名作を紹介したという。
幼少期から自分で物語をつくってイラストを描くのが好きだったこともあり、アニメ学で有名な「シェリダン・カレッジ」に入学。古典アニメを学んだ。
学生時代のポートフォリオが評価され、米ドリームワークス・アニメーションに就職。「マダガスカル2」などで絵コンテ作家として活躍した。その後、イルミネーションやワーナーアニメなどに在籍。「カンフー・パンダ3」(2016年)、「レゴニンジャゴー ザ・ムービー」(2017年)等の脚本づくりに参加し、その手腕が高い評価を得た。
2018年に本作のコンセプトを思いつき、ソニー・ピクチャーズ・アニメーションに提案。直ちに採用された。プロジェクトのリーダーとして企画・制作を引っ張った。
公開日:2025年6月20日(Netflix配信)
※配信スタートに先立ち、ニューヨークとカリフォルニアの映画館で限定的な劇場公開を行い、アカデミー賞の選考基準を満たした。その後、配信での大成功を受けて、2025年8月23日と24日の週末、米国、カナダ、オーストラリアなどで2日間限定の劇場公開(声出し上映)が行われ、大ヒットを記録した。
制作会社:ソニー・ピクチャーズ・アニメーション
製作国:アメリカ
言語:英語
【評点】
メタクリティック
77点
最新→
ロッテン・トマト
96%
最新→
IMDB
7.6
最新→
【製作費】
1億ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<挿入歌「ゴールデン」▼>
<カン監督インタビュー▼>
<両監督インタビュー▼>
「ズートピア2」
(ディズニー)
【評点】
メタクリティック
73点
最新→
ロッテン・トマト
91%
最新→
IMDB
7.7
最新→
<予告編▼>
「アルコ」
(フランス)
※アヌシー国際アニメーション映画祭2025 最高賞(クリスタル賞)
【評点】
メタクリティック
75点
最新→
ロッテン・トマト
93%
最新→
IMDB
7.6
最新→
<予告編▼>
「アメリと雨の物語」
(フランス)
色使いや世界観が、幼児期の視覚体験や感覚的な記憶を表現するために工夫されており、「視線が世界を捉える絵画的手法」とされる。
主人公のアメリは、ベルギー人の家族のもと、日本で暮らしている設定。 日本の文化・風景(例:池の鯉、霧、雨、幼児期の感覚)などが物語に登場する。「言語・文化・記憶」というテーマを抽象的かつ感覚的に描いている点が注目されている。
公開日:2026年3月20日(日本)
言語:フランス語
長さ:1時間17分
※アヌシー国際アニメーション映画祭2025 観客賞
【評点】
メタクリティック
80点
最新→
ロッテン・トマト
98%
最新→
IMDB
7.7
最新→
<予告編▼>
「星つなぎのエリオ」
(ピクサー)
【評点】
メタクリティック
66点
最新→
ロッテン・トマト
83%
最新→
IMDB
6.7
最新→
<予告編▼>
※
歴代のアニメ賞→
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国際映画賞
※
歴代の国際映画賞→
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ドキュメンタリー賞
部門
ドキュメンタリー賞
ノミネート
「パーフェクト・ネイバー:正当防衛法はどこへ向かうのか」
(Netflix)
【配信:ネトフリ 】
※フロリダ州で起きた隣人トラブルの顛末録。警察官のボディ・カメラ(身体装着型カメラ)映像など、第三者が撮影した素材や公的機関の記録を編集・構成して映画に仕立てた。再現映像やナレーションはなし。製作陣は「素材をつなぐ」作業ではなく「観客に事件の流れと社会的文脈を体験させる」設計にこだわったという。強烈な没入感と緊張感が高い評価を得た。
「正当防衛」の範囲の過度な拡大といった米社会の制度上の問題点を浮き彫りにする。
「あかるい光の中で」
「アラバマ・ソリューション」
(HBO)
※全米で最も過酷と言われるアラバマ州の刑務所の汚職や虐待、隠蔽工作を告発する。受刑者たちが密かに施設内に持ち込んだスマホで撮影した内部映像がふんだんに使われている。
「ミスター・ノーバディ・アゲインスト・プーチン」
※ロシアの地方に住む一人の小学校教師が、ウクライナ侵攻後に変貌していく教育現場を命がけで隠し撮りし、亡命するまでを記録した。
「Cutting Through Rocks」
※
歴代のドキュメンタリー賞→
※2026年の全部門はこちら→
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2025年(第97回)
( 26年↑ | 25年 | 24年↓ )
作品賞は「アノーラ(Anora)」。監督、主演女優賞、脚本、編集の計5部門を受賞し、圧勝。ショーン・ベイカー監督は自ら脚本、編集、プロデューサーを兼ねており、個人として一晩で4冠を単独作にて獲得。オスカー新記録となった。
日本から3本ノミネート(いずれも受賞ならず)
日本からは、伊藤詩織氏が自らへの性暴行事件とその後の裁判闘争の記録をまとめた「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」で長編ドキュメンタリー賞にノミネート。日本の児童教育の特徴をとらえた山崎エマ監督(神戸出身)の「心はずむ楽器たち」が、短編ドキュメンタリー賞ノミネート。東映アニメーション制作「あめだま」(西尾大介監督)が短編アニメ賞にノミネート。いずれも受賞は逃した。
【主要8部門】
作品賞 、
監督賞 、
主演男優賞 、
主演女優賞 、
助演男優賞 、
助演女優賞 、
脚本賞 、
脚色賞
【ジャンル別3部門】
アニメ賞 、
国際映画賞 、
ドキュメンタリー賞
作品賞
インディー映画「アノーラ」大勝利
インディー映画一筋のショーン・ベイカー監督の現代コメディ「アノーラ(Anora)」が大勝利。優れた作家性と深みのある娯楽性を両立させ、メジャースタジオの超大作や重厚な歴史ドラマを打ち破った。
部門
受賞
作品賞
「アノーラ(Anora)」
【配信:アマゾン 】
※作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の5冠
作家性+面白み
ニューヨークのストリッパーが、ロシア財閥一族の放蕩(ほうとう)息子と恋に堕ちる。それを聞いた息子側ファミリーが結婚阻止へと動き、ドタバタ劇に発展する。「フロリダ・プロジェクト」(2017年)など庶民社会のコメディを得意とするベイカー監督の真骨頂。作家性に満ちているが、テンポが良く、気軽に吸収しやすい。会話劇としての魅力もたっぷり。何よりエネルギッシュで、普通に面白い。
カンヌから先頭を走る
賞レースでは、仏カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲得。米国映画として2011年の「ツリー・オブ・ライフ」以来13年ぶりの快挙となった。続くトロント国際映画祭で次点。オスカー前哨戦としての価値が低いゴールデングローブ賞を落としたものの、最も重要なPGA(全米プロデューサー組合賞)とDGA(米監督組合賞)をダブルで制した。クリティック・チョイス賞の受賞スピーチで訴えた「地域の映画館への支持」も共感を呼んだ。
批評家レビュー平均点が驚異の「91」
展開、人物造形、絵作り等がユニークでセンスが良いことなどから批評家がこぞって絶賛。米メタクリティックが集計したレビュー平均点は「91」で、本年度オスカー関連作の中で「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」に次ぐナンバー2。
労働者階級の悲哀
「格差婚」というありがちな設定だが、物語が進むにつれて新鮮味がアップ。風変わりなシンデレラ・ストーリー的ノリがある一方で、労働者階級の悲哀が心にしみる。実直で感情表現豊かなヒロインを生き生きと演じたマイキー・マディソン(主演女優賞)が、最大級の賛辞を集めた。
「重みがない」との声も
とはいえ、オスカー作品賞としては「軽すぎる(重みがない)」との声も出ていた。社会テーマ性が弱め。露骨な性的描写が過剰気味で、とくに前半は「ソフトポルノ」と位置づける人も。娼婦やロシア経済マフィアといった登場人物たちに本質的に共感できないとの反応も出た。
全体のまとまり感
それでも、高い作家性を発揮しつつストーリー全体に「まとまり」があり、エンディングの納得感も高い本作は、俳優&脚本家のストライキの影響でやや貧弱になった本年度ラインナップの中で稀有な存在。リピート鑑賞が容易で、とくに後半部分のダイアログなどは見るたびに味わいが深まりやすいのも強み。
製作費10億円とは思えない良質さ
ベイカー監督(完成時53歳)はこれが長編8作目で、初のオスカーノミネート。過去作と同様、脚本(オリジナル)、配役、編集まで自ら手掛けた。製作費600万ドル(約10億円)の低予算(「コーダ」より安い)ながら、前作(レッド・ロケット)までの粗っぽさがなくなり上質感が増した。マディソンだけでなく、ユーラ・ボリソフ(助演男優賞ノミネート)らマイナーな役者陣の魅力を引き出した演出力も際立つ。
個人4冠を達成し、「インディー映画万歳!」
本作でベイカー監督は個人として一晩で4個のオスカー(作品、監督、脚本、編集)を獲得。個人の単独作での受賞数として新記録を樹立した。4回登壇した授賞式では、最後の作品賞の受賞スピーチを「インディペンデント映画万歳!(Long live independent film!)」と言って締めくくった。
【アノーラ全結果】
受賞部門
作品賞
監督賞
主演女優賞 マイキー・マディソン
脚本賞
編集賞
監督:ショーン・ベイカー
主演:マイキー・マディソン
脚本:ショーン・ベイカー
公開日:2025年2月28日(日本)
製作国:アメリカ
配給:ネオン
長さ:2時間18分
【前哨戦での受賞】
・PGA(全米プロデューサー組合賞)
・DGA(米監督組合賞)
・クリティック・チョイス賞
・カンヌ国際映画祭 パルムドール(最高賞)
・ロサンゼルス批評家賞
・ボストン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・ベイエリア批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・米南東部批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・オンライン批評家賞
・インディー・スピリット賞
【評点】
ロッテン・トマト
93% (観客89%)最新→
IMDB
7.7
最新→
メタクリティック
91点
最新→
【興行収入】
北米:1900万ドル
世界:4800万ドル
(→ )
【製作費】
600万ドル
【受賞スピーチ▼】
動画集を開く▼
<予告編▼>
<クリティック・チョイス受賞スピーチ▼>
<オープニング曲▼>
<監督インタビュー▼>
<マイキー・マディソンのジミー・キンメル番組出演▼>
部門
ノミネート
作品賞ノミネート
「ブルータリスト」
【配信:アマゾン 】
純シネマ的な風味
ナチスの迫害を生き延びたユダヤ系ハンガリー人が、米国に移住。建築家としてアメリカン・ドリームを追いかけるも、様々な苦悩が待ち受ける。3時間35分の超長尺。映像表現や音楽の質の高さが絶賛された。重厚・壮大で、純シネマ的な風味がたっぷり。フィクション。
新鋭監督の野心作
新鋭ブレイディ・コーベット監督(公開時36歳)の長編3作目で、7年という歳月を費やした野心的な一作。
ベネチア国際映画祭の監督賞(銀獅子賞)受賞後、A24が米国内での配給権を買い取った。
芸術性でアノーラに勝る?
批評家による評点は「アノーラ」とほぼ互角で本年度トップレベル。
娯楽性はアノーラより劣るが、芸術性では勝るとの評価が多かった。
長時間の鑑賞の最後に待つものは
一方で、「退屈」「冗長」「もったいぶり過ぎ」との批判が出た。作り手の野心の大きさや技術面での到達度に、肝心の物語力が追いついていないというのが否定派の主たる論調だ。せっかくの長時間の鑑賞体験が、終盤の盛り上がりとして結実しにくく、ガッカリ感や疲労感を訴える人も。暗めのテイストもあいまって、劇場公開の規模拡大とともに観客支持率がやや低下した。
主演エイドリアン・ブロディの演技は、ほぼ絶賛一色。
【ブルータリスト全結果】
受賞部門
主演男優賞 エイドリアン・ブロディ
作曲賞
撮影賞
他の候補部門
作品賞
監督賞
助演男優賞 ガイ・ピアース
助演女優賞 フェリシティ・ジョーンズ
脚本賞
編集賞
美術賞
監督:ブレイディ・コーベット
出演:エイドリアン・ブロディほか
脚本:ブレイディ・コーベット、モナ・ファストボールド
公開日:2025年2月21日(日本)
製作国:ハンガリー、英国、米国
配給:A24(米国内)
長さ:3時間35分
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞(ドラマ作品賞)
・ニューヨーク批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ネバダ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ベネチア国際映画祭 監督賞(銀獅子賞)
・ミネソタ批評家賞
・ハワイ批評家賞
・ポートランド批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
94% (観客80%)最新→
IMDB
7.6 最新→
メタクリティック
90点 最新→
【製作費】
960万ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<サントラ(再生リスト)▼>
<監督の男泣き(ベネチア映画祭)▼>
「名もなき者~A Complete Unknown」
【配信:アマゾン 】
若き日のボブ・ディラン伝
若き日の歌手ボブ・ディランの伝記ドラマ。異次元の天才ぶり、運命的な出会いの数々、先鋭的な挑戦を、数々の名曲の演奏シーンと巧みな演技で紡ぐ。歴史にインパクトを与えたとされる出来事や人物を、むやみにデフォルメすることなく歌と会話の力で渋くドラマ化。同時にカジュアルなエンタメ性もしっかりと備え、幅広い層にアピールした。1960年代の郷愁もたっぷり。
エレキ論争
ディランのキャリア初期の1961年から1965年までを描く。ギター1本を手に故郷ミネソタからニューヨークに到着するところからスタート。フォーク界の巨星となった後、1965年のアルバムで電子楽器(エレキギターなど)を採用したことをめぐる大論争 が、物語の一つの焦点となる。原題「A Complete Unknown(全くの無名人)」は、ディランの代表曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」のサビの一節。
音楽センスの良さ
監督は「ウォーク・ザ・ライン」(2005年)、「フォードvsフェラーリ」(2019年)などで手堅いスキルを見せ続けてきたジェームズ・マンゴールド。「ウォーク・ザ・ライン」で見せた音楽センスの良さが再び全開となった。ボブ・ディラン役を演じ、自ら歌唱もこなしたティモシー・シャラメら役者陣の奮闘も見どころ。
北米だけ100億円を突破
興行成績はたいへん良好で、北米だけ100億円を突破。観客の反応も良く、劇場公開時のリアルな評価を集計するシネマスコアで「ウィキッド」と同じ「A」が付いた。
批評家の評価は劣るが
評論家のレビューは際立って良いわけではなく、ロッテン・トマトの批評家支持率は81%。メタクリティックのスコアも70%で、作品賞ノミネート10本の中で最低。「革新性や野心の不足」が指摘された。それでも前哨戦のノミネート段階では予想以上の大善戦。英国アカデミー作品賞候補5枠、SAG(俳優組合賞)アンサンブル・キャスト賞5枠、DGA(米監督組合賞)候補5枠に入った。
無冠に終わる
巧みな賞レース・キャンペーンで知られる配給会社「サーチライト」の後押しもあって、オスカーでも8部門の候補に。「オスカーのマイナー路線化」を懸念する層から猛プッシュする声が出たが、結局無冠に終わった。
【ノミネート部門】
ノミネート部門
作品賞
監督賞
主演男優賞 ティモシー・シャラメ
助演男優賞 エドワード・ノートン
助演女優賞 モニカ・バルバロ
脚色賞
衣装デザイン賞
音響賞
監督:ジェームズ・マンゴールド(「ウォーク・ザ・ライン」「グレイテスト・ショーマン」など)
主演:ティモシー・シャラメ
助演:エドワード・ノートン、エル・ファニングほか
公開日:2025年2月28日(日本)
製作国:アメリカ
配給:サーチライト
長さ:2時間1分
【評点】
ロッテン・トマト
81% (観客96%)最新→
IMDB
7.5 最新→
メタクリティック
70点 最新→
【興行収入】
北米:1億1000万ドル
【製作費】
5000万~7000万ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<ライク・ア・ローリング・ストーンbyシャロメ▼>
<特別映像▼>
<デュエット「It Ain't Me, Babe」シーン▼>
<サントラ再生リスト▼>
VIDEO
<ティモシー・シャラメのSAGアワード主演男優賞スピーチ▼>
<バブル前夜の日本でディランが踊る「タイト・コネクション」(1985年)。なんと、あの偉大なポール・シュレイダー監督が唯一撮った音楽ビデオだという▼>
「エミリア・ペレス」
【配信:アマゾン 】
独創的な異色ミュージカル
異色ミュージカル。メキシコ麻薬組織のボスが逃亡のために性転換手術を受けるという奇抜な物語を、キャスト陣の実直な演技や個性豊かな歌の数々、詩的なビジュアルで魅せる。独創的で大胆。
外国語作品として史上最多ノミネート
フランス製作(言語はスペイン語)で、監督のジャック・オーディアール氏はフランス人。外国語の作品としてはオスカー史上最多となる13個(12部門)ノミネートを獲得した。2番手の「ブルータリスト」「ウィキッド」(いずれも10個)に水を開けた。
極端な賛否に二分
世界的に賛否が大きく分かれた。欧州の批評家は強く支持。米国以外 の評論家が選ぶゴールデングローブ賞で作品賞(コメディ・ミュージカル部門)を受賞し、最有力候補と見られていた「アノーラ」「ウィキッド」を破った。
クリエイターや表現者に響く
評論家以上に好意的だったのが、クリエイター層や表現者(俳優など)たち。斬新でラディカルな表現方法や自分たちの美意識を貫く徹底ぶり、そして感情・感性を揺さぶるシーンの連続に、世界の右脳が反応した。
メキシコで反発
一方、物語の舞台となったメキシコ及び周辺諸国では「マフィアに殺された人たちの現実を軽視している」「欧州人の上から目線」などと強い反発が出た。米国の観客も支持派と嫌悪派の真っ二つに割れ、トランスジェンダーの描き方についても賛否の論争が起きた。
観客支持率が急落
賞レースで脚光を浴びるにつれて、Netflixで鑑賞した人たちが厳しいレビューを続々と投稿。ロッテントマトの観客支持率が20%以下に急落した。さらに、主演カルラ・ソフィア・ガスコンの過去の反イスラム的なネット投稿が明るみに出て、印象が悪化。当初有力視されていたオスカー国際映画賞の争いでブラジルの「アイム・スティル・ヒア」に敗れた。
助演女優賞と歌曲賞の2冠
それでも助演女優ゾーイ・サルダーニャの演技は最後まで称賛一色で、助演女優賞を獲得。ユニークな楽曲への称賛もとだえず、歌曲賞にも輝いた。受賞曲「エル・マル」の作詞を自ら手掛けたジャック・オーディアール監督も、72歳で初のオスカー像をゲット。
Netflixは「最多候補」でも作品賞逃す傾向
北米の配給権はNetflixが取得。「ROMA/ローマ」「アイリッシュマン」「パワー・オブ・ザ・ドッグ」「Mank/マンク」など、Netflix配給作品が最多ノミネートを獲得しながら作品賞は逃す例が多いが、本作も同じパターンになった。
【エミリア・ペレス全結果】
受賞部門
助演女優賞 ゾーイ・サルダーニャ
歌曲賞 「エル・マル」
他の候補部門
作品賞
監督賞
主演女優賞 カルラ・ソフィア・ガスコン
脚色賞
国際映画賞
歌曲賞 「ミ・カミーノ」
作曲賞
撮影賞
編集賞
メイク&ヘア賞
音響賞
監督:ジャック・オーディアール
主演:カルラ・ソフィア・ガスコン
助演:ゾーイ・サルダーニャ、セレーナ・ゴメスほか
脚本:ジャック・オーディアール
公開日:2025年3月28日(日本)
製作国:フランス
言語:スペイン語
配給:Netflix(北米)
長さ:2時間10分
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞(コメディ・ミュージカル作品賞)
【評点】
ロッテン・トマト
75% (観客42%)
最新→
IMDB
6.8 最新→
メタクリティック
71点 最新→
動画集を開く▼
<予告編▼>
<挿入歌「エル・マル」byゾーイ・サルダーニャ&カルラ・ソフィア・ガスコン▼>
<挿入歌「ミ・カミーノ」byセレーナ・ゴメス▼>
「ウィキッド ふたりの魔女」
【配信:アマゾン 】
「オズの魔法使い」の前日談
アメリカの国民的童話「オズの魔法使い」の前日談。「良い魔女」と「悪い魔女」としてお馴染みとなる2人が少女時代に出会い、葛藤を乗り越えて友情を育む過程を描く。ニューヨーク・ブロードウェーの定番ミュージカルに、映画ならではの壮大なスケール感と豪華さを持ち込み、興行面・批評面ともに大成功を収めた。2部作の前半。
ミュージカルファンも納得
原作となるブロードウェー劇は2003年が初演。魅力的な歌の数々に加え、精緻(せいち)な台本や見せ場たっぷりの演出が称賛され、長年にわたり熱烈な支持を集めてきた。それだけに映画化のハードルは高いと思われていたが、「クレイジー・リッチ」「イン・ザ・ハイツ」のジョン・チュウ監督(45歳)が持ち前のセンスの良さで巧妙に映像化。舞台劇ファンからも「期待以上」との好反応が相次いだ。米国では劇場で思わず歌い出してしまう観客が続出。本年度ナンバー1のお祭りイベント的映画となった。
配役が大成功
なんといってもキャスティングが大当たり。緑の魔女役シンシア・エリーボの演技と歌唱は圧巻で、観客を高揚感や感動へと導く。そのルームメイト女子役に抜擢された歌手アリアナ・グランデも、トゲがあり高飛車なコミカル演技でキャラクターにどんぴしゃりハマった。
映像技術に高評価
背景映像、舞台装置、衣装などのテクニカルな面も超高評価。絢爛(けんらん)な世界観を構築し、美術賞と衣装デザイン賞の2冠に輝いた。
実写映画として年間トップの興収
北米興収は「デューン 砂の惑星2」を上回り、実写映画として年間トップ。オスカー前哨戦では、序盤の米映画評議会議賞(NBR)で作品賞を獲得し、「アノーラ対ブルータリスト」の2強争いに割って入るかに見えたときもあった。
悪い意味で漫画的
2部作のパート1という点で不利だった。クライマックスに大いに盛り上がるため消化不良感はないが、「続編も見ないと正当な評価が下せない」との声も。また、「冗長」との批判も出た。前半部分の「ミーン・ガールズ」的な学園イジメ劇などはやたらくどい。そもそも主人公の肌の色(緑)に対する周囲のリアクションがあまりに大げさで、みんなの態度が突如180度変わる点も含めて、悪い意味で漫画的。
【ウィキッド全結果】
他の候補部門
作品賞
主演女優賞 シンシア・エリーボ
助演女優賞 アリアナ・グランデ
メイク&ヘア賞
視覚効果賞
音響賞
作曲賞
編集賞
監督:ジョン・M・チュウ
主演:シンシア・エリーボ
助演:アリアナ・グランデ、ミシェル・ヨー、ジョナサン・ベイリー、ジェフ・ゴールドブラムほか
公開日:2025年3月7日(日本)
配給:ユニバーサル
長さ:2時間40分
【前哨戦での受賞】
・米映画評議会議賞(NBR)
・ワシントン批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
88% (観客95%)最新→
IMDB
7.6 最新→
メタクリティック
73点 最新→
【製作費】
1億4500万ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<アリアナ・グランデ「ポピュラー」▼>
※善魔女(グランデ)が、人気者になるコツを悪魔女に教える歌
<アリアナ・グランデ&シンシア・エリーボ「What Is This Feeling」フル▼>
<サントラ(再生リスト)▼>
<特別映像▼>
<ウィキッドとは(解説)▼>
<総まとめ(舞台版について)▼>
<オズの魔法使いとは▼>
<オズの魔法使いのあらすじ▼>
<撮影風景▼>
<オリジナル舞台版のサントラ▼>
<劇団四季の公演プロモ▼>
「デューン 砂の惑星 2」
【配信:アマゾン 】
SFの裾野を広げる
前作「パート1」で2022年オスカーで最多6部門を受賞したSF大作の続編。技術面が評価された「1」よりも娯楽性と物語性が格段に高まり、より幅広い層に響いた。日本を除く世界中で大ヒット。SFに馴染みのない人たちからも大歓迎され、批評家レビューもSFとして異例の高さ。
現代版「帝国の逆襲」
原作の世界観の壮大さや複雑さゆえに、「パート1」はお膳立てに時間をとられ、ストーリーが大きく進展しなかった。そらに比べて本作はテンポ良く話が進み、アクションの見せ場も急増した。「オッペンハイマー」のクリストファー・ノーラン監督は、パート2としての出来の良さに対する賛辞を込めて「現代における『スター・ウォーズ帝国の逆襲(初期3部作の2作目)』」と形容した。映像化の試みが何度も頓挫・失敗してきた伝説のSF小説を、巧みにまとめ挙げたビルヌーブ監督の手腕に称賛が集まった。
映像世界
鮮烈で緻密な映像美は圧巻。パート1では全体の約40%がIMAXカメラで撮影されたが、本作では全編で使用。IMAX劇場体験の到達点として称賛された。主役ティモシー・シャラメと、サイコ・キラーぶりが際立つオースティン・バトラーの決闘シーンなど見どころ満載。ただし、続編シリーズの途中であることと、そもそもSFだという点で、作品賞争いは不利だった。
【デューン2全結果】
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
主演:ティモシー・シャラメ
助演:オースティン・バトラー、ハビエル・バルデムほか
公開日:2024年3月15日(日本)
配給:ワーナー
長さ:2時間46分
【前哨戦での受賞】
・ラスベガス批評家賞
・セントルイス批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
92% (観客95%)最新→
IMDB
8.5 最新→
メタクリティック
79点 最新→
【興行収入】
北米:2億8214万ドル
世界:7億1184万ドル
日本:4170万ドル(約6億円)
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<予告編▼>
<劇伴(ハンス・ジマー)▼>
<悪役フェイドについて▼>
「教皇選挙」
【配信:アマゾン 】
大人向け娯楽ミステリー
スリリングな展開が楽しめる大人向けの知的ミステリー。アカデミーのベテラン会員の本流に響きやすい一作。
政治工作の行方
カトリックの教皇の死去に伴う後任選びの選挙(コンクラーベ )の舞台裏を描く。教皇に次ぐナンバー2だった主人公(レイフ・ファインズ)が選挙を取り仕切るなか、保守派、中道派、リベラル派が入り乱れて政治工作を展開。宗教家たちの本音と建前のギャップや、物静かで穏健な主人公が緊迫状態に置かれたときの行動などが見どころ。
4冠「西部戦線異状なし」の次作
監督は、2023年オスカーで4部門(国際映画賞、撮影賞、美術賞、作曲賞)の受賞に輝いた「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー(ドイツ人)。英・米合作。
下馬評が高いが
一般観客の間では、終盤の展開をめぐり「オチがあまりに突拍子もない」「Woke的カトリック攻撃」という批判も一部で出たが、おおむね高評価が優勢となった。とはいえ、分かりやすい感動をもたらすようなタイプの作品ではなく、作品賞レースを勝ち抜くにはややパンチ力不足。下馬評が高いわりには前哨戦での勝利は英国アカデミー賞くらいだった。
中間に位置する良作
製作費30億円にして興行収入150億円(うち北米50億円)を稼いだ優等生。ブロックバスター(ウィキッド、デューン2)と小規模作(アノーラ、ブルータリスト)の中間に位置する良作として、古典的なオスカーファンたちからも期待を集めた。原作は2016年刊行のベストセラー小説。
【教皇選挙の全結果】
他の候補部門
作品賞
主演男優賞 レイフ・ファインズ
助演女優賞 イザベラ・ロッセリーニ
作曲賞
編集賞
美術賞
衣装デザイン賞
監督:エドワード・ベルガー(「西部戦線異状なし」など)
主演:レイフ・ファインズ
助演:スタンリー・トゥッチ、イザベラ・ロッセリーニほか
脚本:ピーター・ストローハン
公開日:2025年3月20日(日本)
製作国:英米
配給:フォーカス
長さ:2時間
【前哨戦での受賞】
・英国アカデミー賞
・SAGアワード(俳優組合賞)キャスト賞
【評点】
ロッテン・トマト
93% (観客86%)最新→
IMDB
7.4 最新→
メタクリティック
79点 最新→
【製作費】
2000万ドル
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<劇伴(再生リスト)▼>
「サブスタンス」
【配信:アマゾン 】
ジャンル映画ファン熱狂
グロテスクだが上質感もあるホラー。「見た目至上主義(ルッキズム)」の成れの果てを描くブラックコメディでもある。全米のジャンル映画ファンが熱狂し、年間ベストに挙げる人が相次いだ。
攻撃的な意欲作
人気に陰りが見えてきた中年女性タレントが、危ない「若返り薬」に手を出し、狂気へ発展する。フランスの女性監督コラリー・ファルジャの2作目。デミ・ムーアらハリウッドスターを起用しながらも、インディー作家として新境地に挑もうとする監督の攻撃的な姿勢がみなぎる。
おぞましいけどハイセンス
カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したことが示すように、衝撃性だけに依存しないユニークな物語性が特徴。映像面も、非常におぞましい場面の連続ながら、美術、メイク、視覚効果などの点で優れた美的センスを感じさせると好評。
ホラーへの偏見を乗り越える
米国の賞レースでは、シアトルやカンザスシティなどのローカル批評家賞で作品賞をサプライズ受賞。ホラー映画という決定的に不利な条件をはねのけてオスカー作品賞ノミネート入りを果たした。
デミ・ムーア敗れる
主演デミ・ムーアの怪演が絶賛され、SAGアワード(俳優組合賞)やクリティック・チョイス賞で主演女優賞を獲得。最有力候補へと躍り出たが、オスカーではマイキー・マディソン(アノーラ)に惜しく敗れた。
【サブスタンス全結果】
他の候補部門
作品賞
監督賞
主演女優賞 デミ・ムーア
脚本賞
監督・脚本:コラリー・ファルジャ(仏)
主演:デミ・ムーア
助演:マーガレット・クアリーほか
公開日:2025年5月16日(日本)
製作国:仏、英、米
配給:英Mubi(ムービ)
長さ:2時間21分
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 脚本賞
・シアトル批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
90% (観客75%)最新→
IMDB
7.4 最新→
メタクリティック
78点 最新→
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<メイキング▼>
<予告編▼>
<サントラ▼>
「ニッケル・ボーイズ」
【配信:アマゾン 】
差別と虐待に苦しむ黒人青年の試練を、詩的な映像と独特のカメラワークで描いたアート系作品。1960年代の米南部フロリダ州に実在した少年院が舞台。批評家の評価は極めて高いが、一般観客の支持率はそれほどではない。
無実の罪で施設に収容された青年と、そこで出会う青年の友情がドラマの軸。原作は、ピューリッツァー賞を受賞したフィクション小説。
共同脚本と監督を務めたラメル・ロス氏は2018年のデビュー作「Hale County This Morning, This Evening」でいきなり長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた注目株。本作が初の実写作。1982年生まれ。
多くのシーンが、主人公の一人称視点(主観カメラ)で撮られているのが特徴。人種差別の一端を体験しているかのような恐怖感や没入感が味わえる。ただ、会話相手のカメラ目線が気になって落ち着かない、集中できないという人もいる。
【ノミネート部門】
監督:ラメル・ロス
主演:イーサン・エリセ
助演:アーンジャニュー・エリス・テイラーほか
公開日:2024年2月27日(日本/Amazonプライム独占配信)
製作国:アメリカ
配給:アマゾンMGM
長さ:2時間
【前哨戦での受賞】
・ニューヨーク映画批評家賞 監督賞
【評点】
ロッテン・トマト
91% (観客75%)最新→
IMDB
7.1 最新→
メタクリティック
91点 最新→
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<予告編▼>
<監督インタビュー▼>
「アイム・スティル・ヒア」
ブラジル映画として初の作品賞ノミネート。1964年からブラジルを支配した軍事独裁政権によって幸せな日々を奪われた家族の実話。夫を軍部に連れ去られた妻が、夫を探しつつも一家の大黒柱となり、残された5人の子供たちを懸命に支える。
主人公の息子が書いた伝記(2015年刊)を、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス監督(ブラジル人)が映画化。
主役のフェルナンダ・トーレスが主演女優賞にノミネートされた。
【アイム・スティル・ヒア全結果】
他の候補部門
作品賞
主演女優賞 フェルナンダ・トーレス
公開日:2025年8月(日本)
製作国:ブラジル、フランス合作
配給:ソニー・ピクチャーズ・クラシックス(北米)
長さ:2時間15分
【前哨戦での受賞】
・ベネチア国際映画祭 脚本賞
【評点】
ロッテン・トマト
97% (観客97%)最新→
IMDB
8.7
最新→
メタクリティック
85点
最新→
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<予告編▼>
<フェルナンダ・トーレスのゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)受賞スピーチ▼>
※
歴代の作品賞→
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監督賞
実績豊かなベイカー監督の逆転勝ち
前哨戦では、作品賞こそ「アノーラ」がリードしていたが、監督賞は「ブルータリスト」のブレイディ・コーベット監督がトップを走っていた。しかし、終盤になって最も重要なDGA(米監督組合賞)でショーン・ベイカー監督が勝利。勢いに乗ってそのままオスカーを制した。過去の作品でも証明されてきた確かな手腕やインデペンデント作家としての実績も加味されたのだろう。
部門
受賞
監督賞
ショーン・ベイカー
「アノーラ」
現代社会の周縁の人たちをリアルに描いてきた米国インディー映画界の俊英が、ポップ性や緻密さなどの面で異次元レベルの秀作を生み出した。撮影時53歳。初のオスカーノミネートながら、監督賞だけでなく作品賞、脚本賞、編集賞まで獲り、個人として1回のオスカーで単独作により4冠という史上初の偉業を達成した。
自称「indie film lifer(生涯インディー映画人)」。売れっ子監督になった後も決して大手スタジオの資本を受け入れず、「独立系(インディー)」の立場を貫いてきた。自分が世に伝えたい物語を、自分が選び抜いたキャストとスタッフだけで作る、というのが信条。
本作でも、脚本を書く前の段階で抜擢した主演マイキー・マディソン(主演女優賞)をはじめ、知名度が低い俳優たちを起用。その才能・魅力を最大限に引き出した。従来作よりもリズム感やメリハリが良くなり、ドタバタ劇が目の前で現実に起こっているかのような没入型喜劇で、世界をあっと言わせた。
1971年ニュージャージー州生まれ。名門ニューヨーク大学の大学院(芸術学部)で映画を学んだ。
庶民目線のコメディ一筋。iPhoneのカメラだけで撮影した「タンジェリン」でインディー・スピリット賞の監督賞に初ノミネート。「フロリダ・プロジェクト」(2017年)では、ニューヨーク批評家賞やロンドン批評家賞を獲得。前作「レッド・ロケット」(2021年)は米国映画批評会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー)の年間トップ10に入り、着実に評価を高めてきた。
妻のスマンサ・クァンはNY大学の後輩でアジア系カナダ人。本作の共同プロデューサー。
【前哨戦の受賞(監督部門)】
・DGA(米監督組合賞)
・ボストン批評家賞
・シアトル批評家賞
・ダラス批評家賞
・アイオワ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・オースティン批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
監督賞ノミネート
ブレイディ・コーベット
「ブルータリスト」
36歳(公開時)の若手の3作目。15億円という予算規模とは決して思えない壮大・重厚で上質な映像作品を実現した。前哨戦では途中までトップを走ったが、終盤で失速した。
米南部アリゾナ州の母子家庭で育ち、12歳から子役俳優としてテレビ出演。ホリー・ハンターが助演女優賞にノミネートされた「サーティーン」(2003年)で銀幕デビュー。監督デビュー作となった「シークレット・オブ・モンスター」(2015年)で評論家から高い評価を得た。2作目「ポップスター」ではナタリー・ポートマンを主役に起用し、再び玄人筋に称賛された。
【前哨戦の受賞】
・英国アカデミー賞
・ベネチア国際映画祭
・ゴールデングローブ賞
・国際プレスアカデミー
・ワシントン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ネバダ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ユタ批評家賞
・ベイエリア批評家賞
・米南東部批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・ポートランド批評家賞
コラリー・ファルジャ
「サブスタンス」
過剰なアンチエイジングがもたらす狂気の世界を、優れた美的センスで滑稽に映像化。恐れを知らない表現方法やテーマ選択の勇敢さに称賛が集まった。デミ・ムーアの一世一代の熱演を引き出したことも高評価ポイント。
1976年パリ生まれ。17歳ごろに映画監督になることを決意。2003年に初の短編を制作。徹底的に質にこだわる寡作派とされ、今回でようやく長編2作目。前作「リベンジ」(2017年)は仏製復讐スリラー。
【前哨戦の受賞】
・インディアナ批評家賞
・オンライン批評家賞
ジャック・オーディアール
「エミリア・ペレス」
フランスを代表する名監督の一人。世界的な映画賞に30年にわたってコンスタントに絡んできた。父親は脚本家で、自身も監督になる前の20年間はひたすら脚本家に専念してきた。今作は、長いキャリアの中でもひときわ「冒険的」と評価された。すさまじい成長を続ける驚異の72歳。
ジェームズ・マンゴールド
「名もなき者」
「17歳のカルテ」「ウォーク・ザ・ライン」「ローガン」「フォードvsフェラーリ」など、長年にわたり質の高い娯楽映画を撮り続けてきた職人。アンジェリーナ・ジョリーにオスカー助演女優賞を獲らせ、リース・ウィザースプーンにオスカー主演女優賞をもたらすなど、演技指導にも定評がある。
音楽センスも抜群。ホアキン・フェニックスにジョニー・キャッシュを歌わせ、ウィザースプーンにジューン・カーターを歌わせて世界を熱狂させた「ウォーク・ザ・ライン」に続いて、今作では、ティモシー・シャラメに伝説の歌手ボブ・ディランの名曲の数々を歌わせたのをはじめ、出演者たちをかたっぱしからプロ歌手に変えてしまった。
これまで監督個人としてはメジャーな賞には恵まれてこなかったが、本作ではドゥニ・ビルヌーブ監督(デューン2)らの強豪をさしおいて初のオスカー監督賞ノミネート。1963年ニューヨーク生まれ。今作での優れた60年代のニューヨーク描写には、子供の時の記憶が反映されているという。
※
歴代の監督賞→
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主演男優賞
最年少記録保持者の交代ならず
エイドリアン・ブロディ(ブルータリスト)対ティモシー・シャラメ(名もなき者)の事実上の一騎打ちと見られた。ブロンディが受賞すれば2度目の受賞。シャラメが受賞すれば29歳での受賞で、ブロディが保持する最年受賞少記録(29歳)を、誕生月の差で数か月分上回るとして注目された。
終盤でシャラメ猛追
前哨戦では、ブロディがほぼ連戦連勝。それに辛うじて対抗していたのが、コールマン・ドミンゴ(シンシン)だった。だが、配給会社サーチライトの巧みなキャンペーンもあって「名もなき者」が賞レースをにぎわせるようになると、主演であるシャラメも勢いづいた。「デューン 砂の惑星」シリーズでも堂々たる主演を張るシャラメは時代の寵児。世論の盛り上がりも後押しして、前哨戦の最後を飾るSAGアワード(俳優組合賞)では、シャラメが勝った。
演技の芸術性が勝る
しかし、そう簡単に世論になびかないのがオスカーだ。無名の俳優たちが山ほど加盟するSAGとは違い、一流の実績を持つ映画人だけが投票するのがオスカーであり、とりわけ主要部門ともなれば、芸術的観点からの厳しい精査にさらされる。シャラメによるボブ・ディラン像の造形は確かに素晴らしいが、波乱万丈の移民の半生を満身創痍でグロテスクに演じきったブロディの生々しさには及ばなかった。
それにしても、ブロディのオスカー受賞スピーチはあまりにも長く、評判が悪かった。
部門
受賞
主演男優賞
エイドリアン・ブロディ
「ブルータリスト」
※2度目の受賞。2003年にオスカー主演男優賞を史上最年少(29歳)で獲って以降、映画賞から遠ざかっていた男が、51歳で再び運命的なハマリ役に出会った。ナチスの虐殺から逃れてきたユダヤ系移民の苦悩と挑戦を、自らの一族のルーツを重ねながら表現。トラウマを抱えた孤独な移民の脆弱さ、革新的な建築家としての気概や狂気性、持たざる者としての反骨精神などを、華奢な体と繊細で訛りの強い語り口で伝えた。その個性は、本作の特異な映像世界と一体化し、野放図になりかねないストーリーの説得力を高めた。
1973年ニューヨーク生まれ。
【前哨戦の受賞】
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ニューヨーク映画批評家賞
・シカゴ批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・ネバダ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ハワイ批評家賞
・ポートランド批評家賞
・米南東部批評家賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
主演男優賞ノミネート
ティモシー・シャラメ
「名もなき者」
※ハリウッド若手ナンバー1の超売れっ子が、伝説のシンガーソングライター、ボブ・ディランを演じた。
全ての歌唱シーンを、自身の声で歌い上げた。その数なんと40曲。特有の鼻声、ハーモニカの吹き方、しぐさなどを習得。往年のディラン・ファンをも納得させた。
見た目以上に凄いのが、醸し出す空気感。別格のカリスマ性、作家としての鋭敏さ、人間としての無頓着ぶりなどを、セリフのないシーンでもひしひしと伝える。それでいてティモシー・シャラメという俳優の存在が消えるのでなく、むしろ若きディランと思わず重ね合わせてしまう。プロデューサーの1人に名をつらね、役作りに5年という歳月を費やした成果が出た。
1995年ニューヨーク生まれ。2018年オスカーで「君の名前で僕を呼んで」により初ノミネート。それ以降、「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」「デューン 砂の惑星」などの大作でも引っ張りだこ。
【前哨戦の受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・ボストン批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
コールマン・ドミンゴ
「シンシン」
※刑務所内で演劇プログラムをつくるリーダー役。キャリアベスト級の迫真の演技により、実話をベースにしたドキュメンタリー的な物語に特別な高揚感をもたらした。本物の元囚人が出演者の85%を占めるアマチュア役者陣を引っ張り、熱度を高めた。前哨戦ではエイドリアン・ブロディに次ぐ勝率。
1969年11月フィラデルフィア生まれ。前年オスカーでも「ラスティン」により主演男優賞ノミネート。
【前哨戦の受賞】
・NSFC(全米映画批評家協会賞)
・米IPA(国際プレスアカデミー)
・ワシントン批評家賞
・シアトル批評家賞
・セントルイス批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ユタ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ベイエリア批評家賞
レイフ・ファインズ
「教皇選挙」
※新教皇の選考プロセスを取り仕切るカトリック教会の大幹部を演じた。ふだん穏やかで物静かだが、時折見せる大胆な行動や芯の強さがドラマを一気に盛り上げる。抑制された演技でサスペンスに一級の緊張感をもたらし、にじみ出る誠実性で親近感を覚えさせ、闊歩シーンだけでハラハラさせるベテラン技。
1962年英国生まれ。オスカーでは1993年「シンドラーのリスト」で助演ノミネート、1996年「イングリッシュ・ペイシェント」で主演ノミネート。
【前哨戦の受賞】
・オンライン批評家賞
・ダラス批評家賞
・ヒューストン批評家賞
セバスチャン・スタン
「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」
※ドナルド・トランプ大統領の若きビジネスマン時代を演じた。多くの米コメディアンらが行ってきたトランプの物まねとは明らかに一線を画す本物志向の演技。しぐさや表情などはそっくりだが、あくまで自身の役者としての存在感を残し、滑稽なパロディではないキャラクターを造形した。
トランプ支持者からもアンチからも批判されやすい難しい役柄を引き受け、最終的に双方をある程度納得させた技量はすごい。
※
歴代の主演男優賞→
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主演女優賞
ベテラン大スター、デミ・ムーアの初栄冠ならず
作品賞以外では、本年度オスカーで最も注目を集めた部門となった。前哨戦を通じてベテランのデミ・ムーア(サブスタンス)と若手のマイキー・マディソン(アノーラ)がデッドヒートを展開。還暦を過ぎてついに演技派として認められた大スター、ムーアの初オスカーに期待が集まった。
SAGはムーア、BAFTAはマディソン
SAGアワード(俳優組合賞)やクリティック・チョイス賞はムーアが制し、英国アカデミー賞(BAFTA)はマディソンが勝利。最後のオスカーでムーアが逃げ切るかと思われたが、作品の全般にわたって多彩な喜怒哀楽表現で見せ場を作り続けたマディソンに軍配が上がった。
最後は演技自体への評価
作品内で見せた演技の幅の広さやキャラ造形力ではマディソンに分があったことは、多くが認めていた。マディソンなくしてはアノーラが成立し得なかったことは間違いない。俳優本人の人生のストーリー性や過去の実績は、オスカーでもそれなりに重視されるが、やはり一義的には対象作品における演技への評価が勝負の分かれ目となる、ということを再認識させられた。
部門
受賞
主演女優賞
マイキー・マディソン
「アノーラ」
※大富豪の息子と恋に落ちるストリッパー役。
マフィア相手に物おじしない強さと、バカ男子を信じてしまう無垢さなどが混在した等身大キャラを、現実味たっぷりに演じた。喜怒哀楽を伝える目つき・しぐさから、派手に暴れまわるコミカルアクションまで、エネルギッシュかつ自然体。ダンスは未経験だったが特訓を重ねてプロ級に。
1999年LA生まれのユダヤ系。両親は心理学者。14歳で演技の仕事を開始。タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019年)に犯罪カルトのメンバー役として出た後、より目立つ脇役となった「スクリーム」(2022年)でショーン・ベイカー監督の目に留まる。監督は当時、本作の大筋を固めていたが、主演が見つからずに企画がストップしていた。マディソンを発掘してからスラスラと脚本を書き上がったという。
【前哨戦の受賞】
・英国アカデミー賞
・ロサンゼルス批評家賞
・ボストン批評家賞
・ワシントン批評家賞
・シアトル批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・オースティン批評家賞
・米南東部批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・オンライン批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
主演女優賞ノミネート
デミ・ムーア
「サブスタンス」
※若さへの執着から危ない美容術に手を出し、狂気の世界へと堕ちていく芸能人を怪演。自己嫌悪、嫉妬、執念といった負の感情の深化と、そこから生まれる破壊的行為をスリリングに表現した。61歳にして自らの心身をすべてさらけ出すような迫真ぶりで、「反加齢主義の歪み」という作品テーマに重みをもたらした。
1990年代の世界トップ級スター。「ゴースト」(1990年)、「ア・フュー・グッドメン」(1995年)といった傑作に次々と出演し、1990年代半ばには「世界一稼ぐ女優」に認定された。しかし映画賞とは無縁で、近年は役にも恵まれていなかった。
1962年生まれ。飲酒運転や放火の常習犯だった母親と、職を転々とする不安定な養父に育てられた苦労人。高校を中退して20世紀フォックスの受付係として働き始め、22歳で青春映画「セント・エルモス・ファイアー」(1985年)に抜擢されて大ブレイクした。
ブルース・ウィリスと結婚・離婚後、16歳年下のアシュトン・クッチャーと再婚し、2013年に離婚。
【前哨戦の受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・クリティック・チョイス賞
・ミネソタ批評家賞
・ユタ批評家賞
・ハワイ批評家賞
・ポートランド批評家賞
・インディアナ批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
・国際プレスアカデミー(コメディ部門)
フェルナンダ・トーレス
「アイム・スティル・ヒア」
※1998年の「セントラル・ステーション」で主演女優賞にノミネートされた母親フェルナンダ・モンテネグロに続いて、ブラジル人として史上2人目の主演部門ノミネート。
【前哨戦の受賞】
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・国際プレスアカデミー(ドラマ部門)
シンシア・エリーボ
「ウィキッド ふたりの魔女」
強い魔力と緑色の肌を持って生まれた少女を演じた。圧巻の演技と歌唱力。前半の繊細な感情表現で観客の心をつかみ、終盤に向けて躍動へと導く。ちょっとしたロマンスシーンでの切なさも絶妙。
1987年英ロンドン生まれ。映画初主演となった2019年の「ハリエット」でいきなりオスカー主演女優賞にノミネート。歌曲賞の候補にもなった。超本格派。
【前哨戦の受賞】
・ネバダ批評家賞
カルラ・ソフィア・ガスコン
「エミリア・ペレス」
公表済みトランスジェンダーとして初のオスカー俳優部門ノミネートとなった。
性転換手術を希望する麻薬マフィアのボス役。凄みたっぷりのマッチョな荒くれ者から、母性あふれる市民活動家への転換を見事に表現した。
1972年スペイン生まれ。いくつかのテレビドラマに出演した後、2009年にメキシコに転居。2018年に女性への転換手術を終え、名前も変えた。これまで脇役専門の地味な俳優だったが、本作で世界的に有名に。仏教徒。
※
歴代の主演女優賞→
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助演男優賞
カルキン独走
キーラン・カルキン(リアル・ペイン)が独走。リアル・ペインは作品賞ノミネートを逃したが、カルキンへの支持は不変だった。ブロードウェイの舞台のリハーサルが重なったため、大半の前哨戦の授賞式に出席できなかったが、ようやく出られたSAGアワードでのスピーチの巧さやコミカルさは秀逸。オスカーでも手際よく喜びを語り、スマートさを感じさせた。
部門
受賞
助演男優賞
キーラン・カルキン
「リアル・ペイン~心の旅」
※チャーミングで社交的な一方で、自己中な行動で周囲を振り回す不安定な中年男を演じた。言動にフィルターがかからない傍若無人キャラは、強烈だが天然。テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」で変態的な三男を演じたときの奔放さにも通じるが、本作ではメンタル面の脆弱性がより繊細に表現されている。黙って座っている冒頭シーンだけでやばさがにじみ出る。突出した存在感で終始物語を引っ張っており、実際は「助演」でなく「主演」だろう。
「ホーム・アローン」の子役スター、マコーレー・カルキンの弟。1982年ニューヨーク生まれ。兄の映画に子役として登場した後、20歳で出演した「17歳の処方箋」でゴールデングローブ賞の主演男優賞(コメディ部門)にノミネートされる。その後映像作品からは遠ざかり、主に舞台で活動していたが、2018年から始まったテレビドラマ「メディア王」で再度メジャー路線に。メディア王の最終シーズンではエミー賞(2023年)主演男優賞に輝いた。
本作の出演には当初難色を示したが、プロデューサーの一人である女優エマ・ストーンが説得にあたったという。
【前哨戦の受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・米映画評議会議(NBR)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ニューヨーク批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・ゴールデングローブ賞
・アトランタ批評家賞
・セントルイス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・アイオワ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ハワイ批評家賞
・フロリダ批評家賞(主演枠)
・ヒューストン批評家賞
・オンライン批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
助演男優賞ノミネート
ジェレミー・ストロング
「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」
※20代後半だったドナルド・トランプ氏(後の大統領)に対して非倫理的なビジネス流儀を教え、師匠的な存在となった辣腕弁護士ロイ・コーンを演じた。冷酷で攻撃的、野獣的なキャラクター造形に成功。作品の面白味を何倍にも高めた。
1978年生まれ。テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」の長男役としてシーズン2でエミー賞主演男優賞を受賞。「マネー・ショート」「シカゴ7裁判」「ゼロ・ダーク・サーティ」「グローリー」といった多数のオスカー作品賞候補に出演してきた名わき役。自身は初オスカー・ノミネート。
【前哨戦の受賞】
・フロリダ批評家賞
エドワード・ノートン
「名もなき者」
反戦歌「花はどこへ行った」などで知られる米フォーク界の先駆的歌手ピート・シーガーを演じた。ディランの才能にいち早く気づいた人物で、本作のストーリーでもカギを握る。
田舎から出てきたディランを迎え入れ、そっと押し上げる懐の深い兄貴のようキャラクターを、おおらかな表情とソフトな語り口で表現。古き良き米国の良心のようなものを伝えた。いぶし銀の演技。
オスカーノミネートは4回目。映画デビュー作となった「真実の行方」(1996年)で殺人容疑がかけられた少年を演じ、いきなり助演男優賞にノミネート。「アメリカン・ヒストリーX」(1998年)で狂った差別主義者を演じて主演男優賞ノミネート。「バードマン」(2014年)で助演男優賞ノミネート。
製作陣に遠慮なく意見をぶつける「物言う俳優」として名を馳せてきた。マーベル映画「インクレディブル・ハルク」主演の際には撮影前に自ら脚本を大幅に書き換えたことで監督らと対立。シリーズ1作目で早々に降板となった。
知日派としても有名。イエール大学時代に日本文化に興味を持ち、一年半日本語を勉強。建築家の祖父が滞在していた大阪に4か月間住んだ経験もあるという。
【前哨戦の受賞】
・ボストン批評家賞
ガイ・ピアース
「ブルータリスト」
建築家としての成功を夢見る主人公(エイドリアン・ブロディ)にお金を出す富豪を演じた。
1967年イギリス生まれ。「L.A.コンフィデンシャル」(1997年)の若手刑事役としてあまりにも有名。キャリアは長いが、これまで個人としてはメジャー映画賞とは無縁だった。
【前哨戦の受賞】
・国際プレスアカデミー
・ダラス批評家賞
・ネバダ批評家賞
・ミシガン批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・米南東部批評家賞
・ポートランド批評家賞
ユーラ・ボリソフ
「アノーラ」
ロシア富豪の息子の見張り番を演じた。経済マフィアの一味でありながら、真っ当な労働者階級としての良識やプライドをにじませ、静かながら強烈な印象を残す。
【前哨戦の受賞】
・ロサンゼルス批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ベイエリア批評家賞
※
歴代の助演男優賞→
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助演女優賞
波乱の中でも勝ち続けたサルダーニャ
本年度最多ノミネートとなった「エミリア・ペレス」だが、主演カルラ・ソフィア・ガスコンの過去の問題発言を筆頭に、様々な角度から論争を巻き起こした。助演ゾーイ・サルダーニャにとっても大きな逆風になりかねなかったが、彼女への厚い支持は変わらず、むしろレース終盤ではライバルのアリアナ・グランデを突き放した感があった。それだけ演技力と存在感は圧倒的だった。
部門
受賞
助演女優賞
ゾーイ・サルダーニャ
「エミリア・ペレス」
※主人公のマフィアに雇われる弁護士役。交渉人としての有能な仕事師ぶりや、犯罪者を手伝うことへの葛藤を、生々しく表現した。
一つ一つの場面ごとの巧みな感情表現で観客の心をつかむ。日々の勤労の疲労感・挫折感から始まり、経済的苦悩から解放された喜び、修羅場での緊迫感、メキシコ社会の矛盾に対する怒りまで、いずれも実在感や共感性がたっぷり。絵空事へと上滑りしかねない奇抜なストーリーを、現実目線へとつなぎとめる重要な役割を果たした。
元ダンサーなだけあって劇中に何度も見せる踊りは極めてハイレベル。ラップから抑揚のあるバラードまで多岐にわたる歌唱パフォーマンスも超一流。その技術力の高さは、世界中で増殖した過激なアンチ・エミリアペレス勢力も認めざるをえなかった。
1978年ニュージャージー生まれのヒスパニック(ドミニカ共和国系)。一般的には「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズの緑色の戦士(ガモーラ)役や「アバター」のヒロイン役として有名。SF大作でしか彼女を知らなかった大半の人たちは、その本格派ぶりに驚いた。
【前哨戦の受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞
・ダラス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・ネバダ批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
助演女優賞ノミネート
アリアナ・グランデ
「ウィキッド ふたりの魔女」
※自己陶酔的な女子をコミカルに演じ、しぐさや立ち回りで観客を爆笑させた。ふだんのポップスとは大きく異なる歌唱法を特訓でマスター。大方の期待をはるかに上回る名演として喝采を浴びた。前哨戦でトップを走るゾーイ・サルダーニャを追撃。
2011年の歌手デビュー以来、出したアルバム7枚がほぼすべて全米チャート1位という世界トップ級シンガーとして知られている。ただ、歌手になる前にテレビドラマに出ており、実は俳優歴のほうが長い。
1993年フロリダ生まれのイタリア系。
【前哨戦の受賞】
・国際プレスアカデミー
・アトランタ批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・米南東部批評家賞
・ポートランド批評家賞
モニカ・バルバロ
「名もなき者」
米国フォーク音楽の先駆者の一人ジョーン・バエズを演じた。抜群の歌唱力を発揮し、透き通った声やカリスマ性を再現した。ティモシー・シャラメ演じるボブ・ディランとの出会いと関係構築、共演ステージでの感情表現は見事。
1990年桑港生まれ。NY大学バレエ専攻。「トップガン マーヴェリック」の女性パイロット役で世界的に有名に。本作で本格的な演技派としても名をとどろかせた。
イザベラ・ロッセリーニ
「教皇選挙」
カトリック総本山で実務を担う修道士チームのリーダー役。出演時間が短くセリフも少ないが、緊張感あふれる立ち振る舞いや重みのある言い回しで絶大な存在感を示した。並み居るベテラン俳優陣の中でも作風への溶け込み具合は秀逸。
大女優イングリッド・バーグマンの一人娘。父親は「戦火のかなた」などの巨匠監督ロベルト・ロッセリーニ。キャリアは長いが、メジャーな映画賞に絡むのは今回が初めて。
1952年6月、イタリア・ローマ生まれ。イタリア国営放送のレポータなどを経て、1976年に母バーグマンと共演した地元映画「ザ・スター」で女優デビュー。マーティン・スコセッシ監督の3人目の妻(1979年~1982年)だったことも。
1985年にハリウッド映画「ホワイトナイツ」で、グレゴリー・ハインズの妻役としてメジャーデビュー。デビッド・リンチ監督の怪作「ブルーベルベット」で主演を務め、高い評価を得た。
フェリシティ・ジョーンズ
「ブルータリスト」
「博士と彼女のセオリー」(2014年)でホーキング博士の妻を演じて主演女優賞ノミネートされて以来、10年ぶりのオスカー候補入り。
この間、スター・ウォーズ映画「ローグ・ワン」(2016年)の主役として、巨大な銀河帝国との対決に挑む戦士を演じたことでも有名になった。2018年には米最高裁判事ルース・ギンズバーグの伝記「ビリーブ」で主演。
英国生まれの41歳。11歳で芸能界デビューした後、オックスフォード大学で英文学を専攻した勉強家。
※
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脚本賞
前哨戦では「アノーラ」と「リアル・ペイン」が互角の戦いだったが、クリティック・チョイス賞で「サブスタンス」が勝つという波乱が発生。続く英国アカデミー賞を「リアル・ペイン」が、WGA(米脚本家組合賞)を「アノーラ」が獲り、最後まで目が離せない部門となった。
部門
受賞
脚本賞
「アノーラ」
脚本:ショーン・ベイカー
【前哨戦の受賞(脚本部門)】
・WGA(米脚本家組合賞)
・ニューヨーク批評家賞
・ボストン批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・オンライン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ベイエリア批評家賞
・シアトル批評家賞
・北テキサス批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
脚本賞ノミネート
「リアル・ペイン~心の旅」
脚本:ジェシー・アイゼンバーグ
現代人コメディ。「ソーシャル・ネットワーク」の主役として有名な俳優ジェシー・アイゼンバーグの2本目の監督作。
子供のころ兄弟同然に親しかった米国の従兄弟2人(ユダヤ系)が、先祖の故郷ポーランドで一緒に旅をする物語。亡き祖母が殺されかけたナチスの収容所跡地などを旅行ツアーで巡りながら、自分たちのルーツと向き合う。アイゼンバーグが自身のポーランド旅行に触発されて書いたオリジナル戯曲が元になっている。
物語の軸となるのは、性格が対照的な従兄弟2人の関係。真面目で常識的なデビッド(アイゼンバーグ)と、奔放で自己中心的なベンジー(キーラン・カルキン)がすれ違いを見せながらも、「おばあちゃんの追悼」という一つの目的に向けて行動を共にする姿が印象的。メンタル的なトラブルを抱えるカルキンをどう扱うか、他のツアー参加者が見せる大人の対応も、現代的で面白い。
評論家から全方位的な高評価を受け、ロッテン・トマトの批評家支持率は96%。そのわりに観客支持率は81%にとどまる。IMDbでも「7」「8」が中心で「9」「10」を与える人はあまり多くない。「教皇選挙」や前年の「アメリカン・フィクション」のレビュー得点構成を全体的に少し弱くしたような「マイルドな支持」を集めた。
【前哨戦の受賞(脚本部門)】
・英国アカデミー賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・豪州アカデミー賞
・ワシントン批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ハリウッド批評家賞
・ハワイ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・バンクーバー批評家賞
・サテライト賞
・インディー精神賞
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<予告編▼>
<監督のトークショー出演▼>
「サブスタンス」
脚本:コラリー・ファルジャ
【前哨戦の受賞(脚本部門)】
・カンヌ国際映画祭
・クリティック・チョイス賞
・カンザス批評家賞
「セプテンバー5」
脚本:ティム・フェールバウム
1972年ミュンヘン五輪の選手村を襲った人質テロ事件を報道するテレビクルーの姿を追う。
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<予告編▼>
<予告編(コメント入り)▼>
<助演リオニー・ビネッシュのインタビュー(ドイツ語)▼>
「ブルータリスト」
脚本:ブレイディ・コーベット&モナ・ファストボールド
【前哨戦の受賞(脚本部門)】
・ポートランド批評家賞
※
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脚色賞
「教皇選挙」が前哨戦から安定した戦いぶり。他の部門では事前の期待にこたえられなかったが、脚色賞だけは最後まで死守した。
部門
受賞
脚色賞
「教皇選挙」
脚本:ピーター・ストローハン
【前哨戦の受賞(脚色・脚本部門)】
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞
・南カリフォルニア大学(USC)スクリプター賞
・オンライン批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ワシントン批評家賞
部門
ノミネート
脚色賞ノミネート
「シンシン」
脚本:グレッグ・クウィダー&クリント・ベントリー
刑務所の囚人たちが施設内で劇団をつくり、芝居に挑戦する物語。凶悪犯が収容される「シンシン刑務所」の実在の劇団から着想を得た。
監督兼脚本家グレッグ・クウィダー(39歳)と脚本家クリント・ベントリー(38歳)によって自主制作的にプロジェクトが進行した。2人は刑務所内の劇団の物語に惹きつけられ、リハーサルや発表会に同行。劇団の出身者らにも丹念に取材しながら脚本を書き上げたという。
制作費も公開規模も小ぶりだが、骨太の感動作として絶賛された。本年度の主なノミネート作品の中で、ロッテン・トマト集計の支持率が批評家(97%)と観客(96%)ともにトップ。
企画段階で、キャスト(出演者)とクルーの全員が同じ日給で働く仕組みで合意。初期コストが抑えられたことで、「ダム・マネー」などの実績がある制作会社「ブラック・ベア社」が全額出資を申し出た。2023年秋のトロント国際映画祭で特別上映されて好評を博すと、すかさずA24が配給権を買い取った。
物語のモデルとなった実際の元囚人たちが加わったキャスト陣の演技も高評価。
【前哨戦の受賞(脚色・脚本部門)】
・米国映画批評会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー/NBR)賞
・サンディエゴ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ベイエリア批評家賞
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<予告編▼>
<挿入歌「ライク・ア・バード」▼>
<SIFF2024のインタビュー▼>
「ニッケル・ボーイズ」
脚本:ラメル・ロス&ジョスリン・バーンズ
【前哨戦の受賞(脚色部門)】
・WGA(米脚本家組合賞)
「名もなき者」
脚本:ジェームズ・マンゴールド&ジェイ・コックス
「エミリア・ペレス」
脚本:ジャック・オーディアール
※
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ジャンル別映画3部門
アニメ賞 、国際映画賞 、ドキュメンタリー賞
アニメ賞
「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」が日本の「君たちはどう生きるか」に敗れた前年に続いて、ハリウッド大作が敗北を喫した。ドリームワークス・アニメーション製「野生の島のロズ」は、近年のハリウッド産アニメ中でも突出した高評価を集め、批評家や一般観客の間の支持率も満点に近かった。それでも、唯一無二の独創的な輝きを放った東欧産「Flow」にはかなわなかった。Flowのシンプルな動物劇は、日頃アニメには無縁の大人たちの心にも響いた。
部門
受賞
アニメ賞
「Flow(フロウ)」
【国:ラトビア、フランス、ベルギー合作】
黒猫の漂流記
大洪水の世界を漂流する一匹の黒猫とその仲間たち。そのサバイバル劇を、ひたすら人間の言葉(セリフ)なしで描く。手作り感があふれる秀作。様々な動物たちの表情やしぐさが愛おしく、お互いを補完しあう異業種連携も感動的。東欧ラトビアで初のアカデミー賞となった。
東欧ラトビアの若手
ラトビアの若手アニメ作家ギンツ・ジルバロディス(30歳)の長編2作目。一人だけで作った無声アニメ映画「Away」(2019年)が国際的に高い評価を得た後、チームを組み、製作に5年半を費やして丹念に作り上げたのが本作。製作費5億円。ラトビア、ベルギー、フランス合作。
没入感・臨場感
動物たちの挙動、水、光などの自然を美しくリアルに描いた映像に加えて、鳴き声などの繊細な音作りにより、最高級の没入感・臨場感を実現した。自然に対する愛情と畏怖がたっぷり。オープンソースの無償2Dアニメソフト「Blender(ブレンダー)」だけで動画化したという。
NY&LA批評家賞を奪取
本年度の長編アニメ賞レースは当初「野生の島のロズ」の独走と思われていたが、海外から「Flow」が参戦し、権威のあるニューヨーク批評家賞とロサンゼルス批評家賞のアニメ部門を奪取。ゴールデングローブ賞もFlowに軍配を挙げ、激戦区となった。国際映画賞にもノミネートされた。
【ノミネート部門】
公開日:2025年3月14日
製作国:ラトビア、ベルギー、フランス合作
長さ:1時間25分
【前哨戦の受賞】
・ゴールデングローブ賞
・米国映画批評会議(NBR)
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ボストン批評家賞
・ネバダ批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ベイエリア批評家賞
・ラテン系批評家賞
・オンライン批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
97%
最新→
IMDB
7.9
最新→
メタクリティック
86点
最新→
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<予告編▼>
<短編アニメ「アクア」▼>
<ゴールデングローブ賞受賞スピーチ▼>
部門
ノミネート
アニメ賞ノミネート
「野生の島のロズ」
(ドリームワークス)
最高レベル評価を得た感動作
本年度最高レベルの高評価を得た感動作。美しいストーリー、愛らしいロボットのキャラクター、綺麗で優しい絵作りが称賛された。手描きの背景美術も目をみはる。音楽も好評。
シリーズものでないのにヒット
「シュレック」などのドリームワークス・アニメーションが、米作家ピーター・ブラウンの童話「野生のロボット」シリーズを映画化。嵐の夜に無人島に漂着したお手伝いロボットのロズが、野生動物たちと交流しながら、孤児の雁(がん)の親として成長していく。シリーズものや定番キャラクターものではないのに商業的な成功を収めたことが、今日の映画界にとって貴重だ。
監督は「スティッチ」の生みの親
監督は、ドリームワークスの代表作「ヒックとドラゴン」(2010年)で知られるクリス・サンダース氏。62歳のベテラン。1987年にディズニー入社し、「美女と野獣」(1991年)の絵コンテを担当。「ライオン・キング」(1994年)などの制作にかかわった。2002年には自ら創造した怪物キャラクター「スティッチ」が登場する「リロ&スティッチ」で初監督。手描きアニメーションによるシンプルなファンタジーで、オスカー長編アニメ賞にもノミネートされた(受賞はジブリの「千と千尋の神隠し」)。その後ディズニーからドリームワークスに移籍し「ヒックとドラゴン」「クルードさんちのはじめての冒険」などを成功させたたが、初めて挑戦した実写映画「野性の呼び声」で商業的に失敗。再びアニメに戻り、今作「野生の島のロズ」を大当たりさせた。
【ノミネート部門】
監督:クリス・サンダース
脚本:クリス・サンダース
公開日:2025年2月7日
製作国:アメリカ
配給:ユニバーサル
【前哨戦での受賞】
・PGA(全米プロデューサー組合賞)
・クリティック・チョイス賞
・アニー賞
・ワシントン批評家賞
・シアトル批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ユタ批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・ハワイ批評家賞
・オースティン批評家賞
・米南東部批評家賞
・ヒューストン批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
97%
最新→
IMDB
8.2
最新→
メタクリティック
91点
最新→
動画集を開く▼
<予告編▼>
<挿入歌「キス・ザ・スカイ」▼>
<メイキング映像▼>
<サントラ再生リスト▼>
「ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!」
(Netflix)
【前哨戦の受賞】
・英国アカデミー賞
・米国際プレスアカデミー
・ポートランド批評家賞
「かたつむりのメモワール」
【国:オーストラリア】
※クレイ・アニメ。2024年のアヌシー賞で最高賞を獲得。
【前哨戦の受賞】
・フィラデルフィア批評家賞
「インサイド・ヘッド2」
(ピクサー)
※
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国際映画賞
候補作5本のうち2本が作品賞にもノミネートされるという初の事態に。その2本である「エミリア・ペレス」(フランス)、「アイム・スティル・ヒア」(ブラジル)の一騎打ち。前哨戦では「エミリア・ペレス」が圧勝していたが、軍事政権による暴挙という負の歴史に正面から向き合った「アイム・スティル・ヒア」に軍配が上がった。それぞれの国の知らざれる史実や実情を誠実に伝えてくれる作品こそ、本部門の栄誉にふさわしいということだろうか。
部門
受賞
国際映画賞
「アイム・スティル・ヒア」
国:ブラジル
※ブラジル映画として初のアカデミー賞に輝いた。
1964年からブラジルを支配した軍事独裁政権によって幸せな日々を奪われた家族の実話。夫を軍部に連れ去られた妻が、夫を探しつつも一家の大黒柱となり、残された5人の子供たちを懸命に支える。
主人公の息子が書いた伝記(2015年刊)を、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス監督(ブラジル人、68歳)が映画化。
主役のフェルナンダ・トーレスが主演女優賞にノミネートされた。
同じく南米の軍事政権を題材にした「アルゼンチン1985」(2023年国際映画賞ノミネート)のように、軍部への責任追及や真相究明を描く作品とは趣が異なる。一つ中流家庭の悲劇とそこからの長い旅路を、生活者的な視点で温かくも淡々と伝える。この一家と幼いころから知り合いだったというサレス監督ならではの緻密な描写が光る。
部門
ノミネート
国際映画賞ノミネート
「エミリア・ペレス」
国:フランス(スペイン語)
「聖なるイチジクの種」
国:ドイツ
※ある一家の住居内から突如消えた護身用の銃をめぐるサスペンス。イラン政府から弾圧を受けるモハマド・ラスロフ監督が秘密裏に製作した。
市民に対する政府側の暴力が描かれる。インターネットの動画共有サイトなどにアップされた数々の弾圧映像が差し込まれ、問題の切実さが伝わる。
ラスロフ監督は本作の公開前に、イラン政府を批判したとして有罪判決(禁固8年とむち打ち)を受けた。徒歩で国外に脱出し、フランスのカンヌ国際映画祭に出品。特別賞を受賞した。アカデミー賞では「ドイツ代表」として参加。
「Flow」
国:ラトビア
※洪水の中を漂う一匹の猫の冒険。
「The Girl with the Needle」
※
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ドキュメンタリー賞
イスラエル政府によるパレスチナ人支配の残酷さを伝える「ノー・アザー・ランド」が、不利な条件をはねのけて受賞した。もともと映画評論家などからは圧倒的に高い評価を得ていた。しかし、ユダヤ系の影響力が強い米映画業界から冷遇され、オスカー投票日までに劇場公開が実現しなかった。重要な前哨戦であるPGA(全米プロデューサー組合賞)やDGA(米監督組合賞)ではノミネートすらされず。それでも、会員用サイトや特別試写会などで鑑賞したアカデミー会員が、票を投じたようだ。
部門
受賞
ドキュメンタリー賞
「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」
国:ノルウェー、パレスチナ合作
イスラエル人とパレスチナ人の共同監督による実録映画。ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人居住地区をイスラエル軍が占拠し、民家や学校を破壊していく。この地域で生まれ育ったパレスチナ人青年と、立場上敵対するはずのイスラエル人ジャーナリストが協働し、現地の惨状を撮った。
メタクリティックが集計した批評家レビューのスコアは「93」で、本年度のオスカー候補作品で群を抜いてトップ。
【前哨戦の受賞】
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・国際ドキュメンタリー協会賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・シカゴ批評家賞
・ボストン批評家賞
・ゴッサム賞
部門
ノミネート
ドキュメンタリー賞ノミネート
「ポーセリン・ウォー」
※ロシアに侵略されたウクライナの芸術家たちが、国防軍に参加しつつ、磁器人形などの創作活動に取り組む。祖国を守るとともに、芸術を守ろうとするアーティストたちの生き様。
国:米、豪、ウクライナ
【前哨戦の受賞】
・DGA(米監督組合賞)ドキュ部門
・サンダンス映画祭 審査員賞(ドキュ部門)
「シュガーケイン」
※カナダ政府が19世紀から20世紀半ばに設置した悪名高き「先住民寄宿学校」をめぐる調査記録。先住民(インディアン)の子供たちを強制的に収容し、キリスト教文化や西洋文化への同化を強いた制度。その犠牲者たちにスポットをあてる。
【配信:ディズニープラス 】
配給:ナショナル・ジオグラフィックほか
国:米、カナダ
【前哨戦の受賞】
・米国映画評議会議(NBR)
「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」
※伊藤詩織氏の初監督作品。安倍晋三首相の友人だった山口敬之・元TBS記者から受けた性暴行被害事件と、その後の裁判闘争の記録。日米英の合作。山崎エマ氏が編集を手掛けた。制作会社はスターサンズ(日本)など。
被害現場となったホテルの防犯カメラ映像を「裁判以外で使用しない」との誓約書を交わしたうえで提供してもらったのに無断使用した、と元担当弁護士から批判された。また、事件について重要な証言をしたタクシー運転手や警察官の映像・音声が使用された点についても、人権上の問題点を指摘する声が出ている。
「サウンドトラック・トゥ・ア・クーデター」
※
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2024年(第96回)
( 25年↑ | 24年 | 23年↓ )
【主要8部門】 作品賞 、
監督賞 、
主演男優賞 、
主演女優賞 、
助演男優賞 、
助演女優賞
【ジャンル別部門】 アニメ賞 、
国際映画賞
【技術部門】 視覚効果賞
※他の部門はこちら→
部門
受賞
ノミネート
作品賞
「オッペンハイマー」
【配信:アマゾン 】
米政府の原爆開発チームを率いた科学者の伝記。
大量殺りく兵器を生んだ男のジレンマと波乱の生涯を描く。
クリストファー・ノーラン監督。
独走
オスカー前哨戦では、序盤こそ批評家系の賞で「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」相手に一進一退となる局面もあったが、中盤から早くも圧倒的な独走状態に入った。
本年度のオスカーは全般的にレベルが高く、豊作の年ではあったが、その中でも段違いの強さを見せた。
前年の覇者「エブエブ」と同じ7冠
主要部門では作品賞のほか、監督、主演男優、助演男優を制圧。
技術部門でも3部門(撮影、編集、作曲)を獲り、
前年の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」と同じ7冠に輝いた。
【全部門】
受賞
作品賞
監督賞
主演男優賞 キリアン・マーフィー
助演男優賞 ロバート・ダウニー・Jr
撮影賞
編集賞
作曲賞
ノミネート
助演女優賞 エミリー・ブラント
脚色賞
音響賞
美術賞
衣装デザイン賞
メイク&ヘア賞
ノーラン初受賞
「バットマン3部作」「インセプション」「ダンケルク」などで作家性と商業性を両立させてきた名匠ノーラン監督(53歳)は、過去5回オスカーにノミネートされた。本作では監督・脚本・共同プロデューサーを務め、初のオスカー獲得(作品賞と監督賞)となった。
ノーランのオスカー歴▼
年
作品
部門
2002
「メメント」
脚本賞ノミネート
2011
「インセプション」
作品賞ノミネート
脚本賞ノミネート
2018
「ダンケルク」
作品賞ノミネート
監督賞ノミネート
2024
「オッペンハイマー」
作品賞受賞
監督賞受賞
脚色賞ノミネート賞
激動の人生を解明
主人公の物理学者オッペンハイマーは、米政府の巨大国家プロジェクト「マンハッタン計画」のリーダーとして原爆開発を成功へと導いた後、より破壊力のある水爆開発の反対へと転換。
政府から公職追放された。その激動の人生を、複数の時間軸を交錯させながら解き明かした。
「天才科学者」「反ナチス・反全体主義者」「国家の英雄」「反逆者」「すけこまし」といった様々な顏を持つ人物像に迫るキャラクター・スタディの傑作として、極めて高い評価を得た。
濃密な会話劇
3時間の長尺で、大半が会話シーン。
しかも内容は科学や政治の難しい話題が中心。
時間軸が何度も前後する複雑な構成。
なおかつ「R」指定ーー。
商業的には不利な条件がそろった知的大人向けドラマだが、幅広い層から支持を集めた。
IMDBの評点は8.4で、作品賞候補の中で断トツのトップ。
映画としての総合力
IMAX70mmフィルムで撮影され、一つ一つのシーンが臨場感や緊迫感に満ちている。
サウンドや劇伴によるムードづくりや、スリリングで飽きさせない編集も巧妙。
短い会話に濃密な情報やドラマ性が詰め込まれた脚本も秀逸で、
見返すたびに新しい発見が得られる。
「映画技術の総合力」が圧倒的に抜きん出ているいるという点で、衆目がほぼ一致した。
演技アンサンブル
俳優陣の演技も絶賛された。オッペンハイマー役のキリアン・マーフィーは長年にわたりノーラン映画の名脇役として活躍してきたが、本作ではド主役に。
抑制された演技で複雑な心理を表現し、物語に見事に溶け込んだ。政府高官役のロバート・ダウニーJrも、キャリアベスト級の好演。
その他数十人にのぼる実力派俳優たちの掛け合いの連続も圧巻。
続きを開く▼
バービーとの興行対決で注目
米国では夏休みシーズンに娯楽大作「バービー」と同じ日に全米公開された。
超話題作2本が正面から激突するとあって、
興行の行方に注目が集まった。
「バービー」は若年層の女性が好む華やかな作品。
一方、「オッペンハイマー」はシリアスでダーク、中高年以上の男性が主な客層という対極。
公開最初の週末にどちらを鑑賞するべきか、あるいは、1日で2本鑑賞する場合はどういうスケジュールを組むべきか――。
米国民にとっての「究極の選択」がお茶の間で話題となり、
そこから『バーベンハイマー』という造語が生まれ、流行した。
結果として、映画館に人がどっと押し寄せる社会現象が起き、両作品とも驚愕の興行成績をたたき出した。オッペンハイマーの北米興収は3.3億ドルで、前年のオスカー作品賞「エブリシング・エブリウェア」の4倍以上。世界興収は約1500億円。骨太な大人向けドラマが依然として商業的に成功し得ることを示した意義は大きい。
オッペンハイマーの生涯
オッペンハイマー博士(1904~1967年)は、裕福なドイツ移民(ユダヤ系)の息子としてニューヨークに生まれ、物理学者として高名を確立。
1942年に始まった政府のマンハッタン計画(原爆製造計画)に招かれた。
マンハッタン計画は未曽有の規模の国家プロジェクトであり、ナチスドイツよりも先に原爆を開発することを主たる目的としていた。
最大55万人が動員され、ウラン濃縮が工場がテネシー州に、プルトニウムを生産する原子炉がワシントン州に建設された。
砂漠に研究所
若干38歳でマンハッタン計画のリーダーに選ばれたオッペンハイマーは、
自らが少年期を過ごしたニューメキシコ州ロスアラモスの砂漠地帯を、
研究・開発拠点の立地場所として提案する。
広大な荒野に「国立ロスアラモス研究所」が建設され、全米の一級の科学者が結集。
オッペンハイマーが初代所長に就任した。
核実験を成功に導く
1945年7月16日、オッペンハイマーのチームは史上初の核実験(通称:トリニティ実験)に成功。
すでにドイツは降伏していたが、日本との長い戦争が続いていたアメリカは沸き立った。
10日後の7月26日、米国などの連合国は日本に対して降伏を勧告(ポツダム宣言)するが、日本側はこれを拒否(無視)。
翌月、米トルーマン大統領はウラン原爆「リトルボーイ」を広島に、プルトニウム原爆「ファットマン」を長崎に投下した。
広島で約14万人、長崎で約7万4千人が1945年末までに死亡。その後も放射線による被害に苦しめられ続けた。
罪の意識にさいなまれる
オッペンハイマーは原爆投下に疑問を抱き、
罪の意識にさいなまれるようになる。
長崎への投下の翌日、すっかりふさぎこんでいたという同僚らの証言が残っている。
投下から2カ月後にロスアラモス研究所長を辞任。
その際の挨拶で「原爆が、争う世界の兵器庫や、戦争に備える国々に新たに追加されるなら、人類がロスアラモスと広島の名を呪うときが来るだろう」と語った。
また、翌月トルーマン大統領と会った際には「私の手は血塗られている」と発言し、大統領の怒りをかった。
水爆反対へ
その後、オッペンハイマーは「核の情報公開と国際管理」に向けた活動を始める。いずれソ連(現ロシア)が原爆を開発するのは目に見えていた。
その前に核管理の枠をつくり、果てしない軍拡に歯止めをかけて人類破滅への道を回避することを目指した。
原爆の数百倍以上の威力を持つとされた水爆の開発にも反対した。
原子力委員会の一般諮問委員会の長として、水爆は「防御する手段のない武器」であると、危険性を熱心に訴えたのだった。
公職追放
こうした姿勢が、政府からの迫害を招くことになる。
保守派の共和党が政権に復帰し、
マッカーシズム(冷戦下のアカ狩り)が吹き荒れた1953年、スパイの嫌疑をかけられる。
オッペンハイマーはマンハッタン計画参加前に左翼系知識人たちと交流があり、思想的にもリベラルだったが、共産党員ではなかった。
それでも、米連邦捜査局(FBI)の尾行・盗聴などによって不利な材料がかき集められ、1954年、公職追放の処分を受ける。
名誉回復と死
1963年にジョンソン大統領(民主党)がエンリコ・フェルミ賞を授与して、名誉がある程度回復された。
1965年に喉頭がんと診断(喫煙家だった)。1967年に62歳で死去した。
2022年12月、米エネルギー省のグランホルム長官は、オッペンハイマー氏に対する公職追放は「偏見に基づく不公正な手続きだった」として処分を取り消した。
歴史家などの間では、オッペンハイマーは、
卓越した知力と遂行能力を備えていた人物と評されている。
原作はピュリツァー賞
映画の原作は2007年に出版された伝記「オッペンハイマー『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」。
著者は、歴史家マーティン・シャーウィンと伝記執筆家カイ・バード。
多数のインタビューに基づいており、オッペンハイマーに関する最も優れた伝記と言われている。
ピュリツァー賞も受賞した。
本の原題は「American Prometheus(アメリカのプロメテウス)」。前半は、才能豊かな理論物理学者として活躍し、人類初の原爆実験が成功するまでが描かれる。
後半では、国家の核政策決定の中枢に位置する人物となった時代が綴られる。
映画の撮影前にシャーウィンは亡くなったが、もう一人の著者であるバードは撮影現場を訪れ、ノーラン監督に知恵を授けたという。
5つの時間軸
本作は、主に以下の5つの時間軸で展開される。
(1)学生~学者時代(1920、30年代)
(2)マンハッタン計画参加(1942年~45年)
(3)戦後の数年間。米原子力委員会(AEC)顧問と、アインシュタインらが所属する「プリンストン高等研究所」所長を兼務した時代。原子力委員会メンバーのルイス・ストロース氏(元軍職員)との出会いから関係悪化までを描写する=主に白黒映像
(4)公職追放処分について協議する政府の聴聞会(1954年)
(5)オッペンハイマー追放に関与したストロースの入閣をめぐる連邦議会の審議(1959年)=白黒映像
監督:クリストファー・ノーラン
主演:キリアン・マーフィー(ダークナイト3部作、28日後)
助演:ロバート・ダウニーJr、エミリー・ブラント、マット・デイモン、フローレンス・ピューほか
公開日:2024年3月29日(日本)
製作国:アメリカ
配給:ユニバーサル
長さ:3時間
【前哨戦での受賞】
・PGA(全米プロデューサー組合賞)
・DGA(米監督組合賞)
・SAG(俳優組合)アンサンブル賞
・批評家チョイス賞
・英国アカデミー賞
・ゴールデングローブ賞ドラマ部門
その他▼
・アトランタ批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
【評点】
【興行収入】
北米:3.3億ドル
世界:9.6億ドル
【製作費】
1億ドル
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<予告編▼>
<登場人物の解説(カラクリシネマ)▼>
<予習解説(ツッチ)▼>
<特別映像▼>
<劇伴▼>
<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ(by プロデューサーでノーランの妻のエマ・トーマス)▼>
<クリティクス・チョイス賞の受賞スピーチ▼>
「ホールドオーバーズ」
【配信:アマゾン 】
クリスマスなのに帰省しないワケあり人たちが起こす喜劇ドラマ
【全部門】
ノミネート
作品賞
主演男優賞 ポール・ジアマッティ
脚本賞
編集賞
【作品説明へ 】
「バービー」
着せ替え人形「バービー」の皮肉なコメディ。興行収入収入は年間トップ。
【全部門】
受賞
歌曲賞 ビリー・アイリッシュ 「What Was I Made For?」
ノミネート
作品賞
助演男優賞 ライアン・ゴスリング
助演女優賞 アメリカ・フェレーラ
脚色賞
衣装デザイン賞
美術賞
歌曲賞 「アイム・ジャスト・ケン」
【作品説明へ 】
【配信:アマゾン→ 】
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
米先住民虐殺の内幕を描く史実ドラマ。巨匠スコセッシ監督がアメリカの暗部をえぐり出す。
【全部門】
ノミネート
作品賞
監督賞
主演女優賞 リリー・グラッドストーン
助演男優賞 ロバート・デ・ニーロ
撮影賞
編集賞
衣装デザイン賞
美術賞
作曲賞
歌曲賞
【作品説明へ 】
「哀れなるものたち」
脳死状態から蘇った女性が、「体は大人、脳は赤ちゃん」の状態で臨む社会体験記。
【全部門】
受賞
主演女優賞 エマ・ストーン
美術賞
メイク&ヘア賞
衣装デザイン賞
ノミネート
作品賞
監督賞
助演男優賞 マーク・ラファロ
脚色賞
撮影賞
編集賞
作曲賞
【作品説明へ 】
「落下の解剖学」
夫殺しの罪に問われた女性の法廷サスペンス。仏映画。
【全部門】
ノミネート
作品賞
監督賞
主演女優賞 ザンドラ・フーラ
編集賞
【作品説明へ 】
「アメリカン・フィクション」
安直な人種平等主義や文化の「売れ線主義」を風刺する良質コメディ
【全部門】
ノミネート
作品賞
主演男優賞 ジェフリー・ライト
助演男優賞 スターリング・K・ブラウン
作曲賞
【作品説明へ 】
「パスト・ライブス/再会」
幼なじみの男女が異国の地で再会する運命系ドラマ。
【全部門】
【作品説明へ 】
「関心領域」
国:イギリス(ドイツ語)
ナチスの強制収容所のすぐ近くに住む収容所長の日常を描く野心作。
【全部門】
【作品説明へ 】
「マエストロ:その音楽と愛と」
世界屈指の指揮者レナード・バーンスタインと妻の伝記。
【全部門】
ノミネート
作品賞
主演男優賞 ブラッドリー・クーパー
主演女優賞 キャリー・マリガン
脚本賞
メイク&ヘア賞(辻一弘)
撮影賞
音響賞
【作品説明へ 】
【配信:ネトフリ→ 】
※歴代の作品賞→
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監督賞
クリストファー・ノーラン
「オッペンハイマー」
「映像話術の天才」と呼ばれ続けて四半世紀。
革新的な映画づくりに挑み続けてきた男が頂点に立った。
20代で初ノミネート
1970年ロンドン生まれ。29歳で撮った2作目「メメント」(2000年)で大ブレイク。
物語を結末から語るという手法で驚かせた。
時間の流れを逆さまにして、映画の文法や時間的距離を変えることに挑戦し、いきなりオスカー脚本賞にノミネートされた。
大物俳優に臆せず
メジャースタジオから出した次作「インソムニア」(2002年)では、心理的駆け引きのサスペンスを緊張感を持って描き、主観的真実と客観的真実は違うことを訴えた。アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクという3人の大物オスカー俳優を巧みに演出した。
バットマンで新機軸
続いて「バットマン」3部作を手掛け、
スーパーヒーロー伝説に新たな歴史を刻む。
1作目「ビギンズ」でダークかつ物語性重視の新機軸を打ち出し、
続く2作目「ダークナイト」でジョーカー役にヒース・レジャーを起用。
心の闇の奥底まで悪魔が乗り移ったかのような悪役を造形した。
ダークナイトは全米興行収入歴代第3位を記録。作品賞ノミネートから漏れたことは、作品賞の候補を5枠から10枠に増やすという歴史的な制度変更の契機になった。
SFでも成功
2010年の「インセプション」では、重層的な夢の世界で複数の物語が同時進行するというややこしいストーリーを、一級の娯楽劇に仕上げた。オスカーの作品賞と脚本賞にダブルノミネート。
SF大作「インターステラー」(2014年)では、人類の生き残りを懸けて宇宙に向かう主人公の家族愛を壮大な映像力で表現。オスカー視覚効果賞を獲った。
「ダンケルク」で監督賞候補に
続く「ダンケルク」(2017年)では、第二次世界大戦の英国軍の撤退作戦を、CGを使わずに再現することに成功。迫真の戦闘描写が称賛された。作品賞に加えて、初めて監督賞にノミネートされた。
日本で高い人気
前作「テネット(Tenet)」は、米国内で商業的に厳しい結果になったが、日本ではリピーターが続出して大ヒットとなった(そもそもデビュー以来、常に日本で人気の高い監督だった)。
ロケ撮影によるリアル映像
映像にリアリティーを持たせるため、CGなどのVFX(視覚効果)に頼らず、
極力、ロケや綿密なセット構築したうえでの撮影を重視している。
ワーナーといったん決別
長年にわたり米ワーナー・ブラザースと組んでいたが、
ワーナーが前作「テネット」を劇場公開と同時にネット配信したことで対立。
袂を分かち、今作では米ユニバーサルが配給元になった。
最強カップル
妻のエマ・トーマス氏は敏腕プロデューサーとして知られ、これまでノーランの全映画をプロデュースしてきた。大学の寮で知り合ったというおしどり夫婦。映画界最強カップルの力が本作でもいかんなく発揮され、商業的にもキャリア最高の大成功をもたらした。
【作品説明へ 】
ノーランのオスカー歴▼
年
作品
部門
2002
「メメント」
脚本賞ノミネート
2011
「インセプション」
作品賞ノミネート
脚本賞ノミネート
2018
「ダンケルク」
作品賞ノミネート
監督賞ノミネート
2024
「オッペンハイマー」
作品賞受賞
監督賞受賞
脚色賞ノミネート賞
【前哨戦での受賞】
・DGA(米監督組合賞)
・クリティクス・チョイス賞 監督賞
・英国アカデミー賞 監督賞
・ゴールデングローブ賞 監督賞
・ニューヨーク批評家賞 監督賞
・アトランタ批評家賞 監督賞
・ワシントン批評家賞 監督賞
・セントルイス批評家賞 監督賞
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<コルベア対談1▼>
<コルベア対談2▼>
<コルベア対談3▼>
<コルベア対談4▼>
<コルベア対談5▼>
<英国アカデミー賞スピーチ▼>
マーティン・スコセッシ
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
10回目の監督賞ノミネート
【前哨戦での受賞】
・米国映画評議会賞(NBR)
・サンディエゴ批評家賞
ヨルゴス・ランティモス
「哀れなるものたち」
【前哨戦での受賞】
・フィラデルフィア批評家賞
・フェニックス批評家賞
ジョナサン・グレイザー
「関心領域」
【前哨戦での受賞】
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ロサンゼルス批評家賞(作品賞との2冠)
・ボストン批評家賞
・トロント批評家賞(作品賞との2冠)
ジュスティーヌ・トリエ
「落下の解剖学」
※歴代の監督賞→
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主演男優賞
キリアン・マーフィー
「オッペンハイマー」
パラドックスに満ち、組み合わせパズルのように複雑なオッペンハイマー氏の人物像を、抜群の説得力でリアルに造形。
大げさな表現に頼ることなく、ストーリーに自然に溶け込み、伝記ドラマの歴史的な傑作誕生の立役者となった。
脇役から主役へ
悪役スケアクロウを演じた「バットマン」3部作のほか、「インセプション」「ダンケルク」といったノーラン監督の名作を脇役として支えてきた。
繊細、知的、大胆、ときに不気味。キャラクターの性質や心情を巧みに伝えるスキルは、ようやくめぐってきた主役の座で存分に発揮された。
「28日後」で大ブレイク
1976年、アイルランドの教育者の家系に生まれた。
10代はロック少年。20歳で地元劇団の舞台に初出演。
英国人監督ダニー・ボイル氏のゾンビ映画「28日後」(2002年)の配役担当の目に留まり、主役に大抜擢された。
華奢で夢想的な雰囲気が作品に見事にマッチし、映画の成功とともに世界的なブレイクを果たした。
目力(めぢから)で圧倒
「バットマン・ビギンズ」(2005年)のオーディションでは希望する主人公の役を逃したが、その「目力(めぢから)」に圧倒されたノーラン監督は、悪役としての起用を決めたという。
【作品説明へ 】
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・英国アカデミー賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・ワシントン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・セントルイス批評家賞
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<登場シーンなど▼>
<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ▼>
<昔の歌唱シーン▼>
<バットマンでの登場シーン▼>
<「28日後」での登場シーン▼>
<「オッペンハイマー」出演者3人のインタビュー▼>
ポール・ジアマッティ
「ホールドオーバーズ」
米国民に長く親しまれ、愛される三枚目。
全寮制の学校の教師を演じた。
短気で毒舌だが、
優れた知性と強い信念を持つ奥深いキャラクター。
滑稽かつ味わい深い演技で物語を推進した。
他の登場人物との波長もぴったりで、
職人芸的な役者ぶりに称賛が集まった。
オスカー・ノミネートは2度目。
前回ノミネートは「シンデレラマン」(2005)でのシリアス演技。
その前年、傑作コメディ「サイドウェイ」で絶賛されながらもノミネートから漏れたことは、
オスカーの歴史に残るSnubとして語り草になっている。
今回、サイドウェイのアレクサンダー・ペイン監督と再びタッグを組み、
得意とする「ひねくれオヤジ」演技の真骨頂を発揮した。
1967年コネチカット州生まれ。
父親は大学教授、母親は高校教師の母親という教育家系。
重要な前哨戦となるクリティクス・チョイス賞で、
キリアン・マーフィー(オッペンハイマー)に勝利。
また、教育者たちへの敬意を示したゴールデングローブ賞での受賞スピーチは、
大きな共感を呼んだ。
【作品説明へ 】
【前哨戦での受賞】
・クリティクス・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
・米国映画評議会議賞(NBR)
・シカゴ批評家賞
・ボストン批評家賞
・ミシガン批評家賞(同点)
動画集を開く▼
<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ▼>
<クリティクス・チョイス賞の受賞スピーチ▼>
<予告編▼>
<「サイドウェイ」予告編▼>
ジェフリー・ライト
「アメリカン・フィクション」
【前哨戦での受賞】
・サンディエゴ批評家賞
・ミシガン批評家賞(タイ)
・インディスピリット賞 主演賞
ブラッドリー・クーパー
「マエストロ:その音楽と愛と」
【前哨戦での受賞】
・ネバダ批評家賞
コールマン・ドミンゴ
「ラスティン:ワシントンの『あの日』を作った男」
【配信:ネトフリ 】
※歴代の主演男優賞→
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主演女優賞
エマ・ストーン
「哀れなるものたち」
2回目の受賞。「ラ・ラ・ランド」での受賞から7年ぶり。
特異キャラをぶっとび体現
科学実験で死から蘇った女性を演じた。体は大人なのに脳は乳児という特異なキャラクターを、ぶっ飛び演技で愉快に表現。そこから急ピッチで成長していく「変革」のプロセスを存分に見せた。
共同プロデューサー
共同プロデューサーとして企画の初期段階から参加し、「女王陛下のお気に入り」で組んだヨルゴス・ランティモス監督と二人三脚で主人公像を創造していったという。
15歳でLA移住
1988年11月、米南部アリゾナ州生まれ。11歳から演技を学び、家族の応援で母と一緒に15歳からロサンゼルスに移ってテレビ出演を始めた。
「Easy A」で高評価
2007年の「スーパーバッド 童貞ウォーズ」で映画デビュー。青春コメディの傑作として絶賛された「Easy A」(2010年)で演技力とハリウッドスターらしい華を備えたスターとして高い評価を受け、初めて賞レースにも絡んだ。2012年の「アメイジング・スパイダーマン」でヒロイン役に。
4度目のノミネート
2015年に「バードマン」でオスカー初ノミネート(助演)。2017年に「ラ・ラ・ランド」で初のオスカー(主演)を獲得した。2019年にも「女王陛下のお気に入り」でノミネート(助演)された。今回で4度目のノミネートだった。
【作品説明へ 】
【前哨戦での受賞】
・クリティクス・チョイス賞
・英国アカデミー賞
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
・ミシガン批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・フェニックス批評家賞
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<登場シーン▼>
<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ▼>
<ルイ・ヴィトンの宣伝動画▼>
<自宅で78個の質問にこたえる▼>
リリー・グラッドストーン
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
先住民系米国人として初の俳優部門ノミネートとなった。
愛情と疑念
先住民虐殺事件を描いた本作で、白人の男(レオナルド・ディカプリオ)と結婚する金持ちの女性を演じた。
病に冒されていくなかで見せる夫への愛情と疑念。微妙な葛藤の表現が称賛された。
ディカプリオやロバート・デ・ニーロら超豪華キャストの中で特別の輝きを放った。
イウォーク族に触発される
米モンタナ州ブラウニングのインディアン居留地で育った。父親は先住民系(ブラックフィート族とネズ・パース族)、母親は白人。
5歳のときに映画「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」で見たイウォーク族に触発され、俳優を志望するようになった。
メジャー映画は初出演
大学で演劇を学んだ後、独立系の小規模映画の脇役としてキャリアを積み、
2016年の「ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択」で批評家系の賞レースに絡んだ。
本作はメジャー映画での初出演だった。
SAGで勢い
当初は「助演」での最有力候補になると見られたが、「主演」で賞レースに参戦した。
主役にしては登場時間が短いが、存在感は圧巻。
前哨戦では歴史的な重みを感じさせるスピーチで喝采を浴びた。
賞レース終盤のSAGアワード受賞で勢いづいた。
【作品説明へ 】
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・米国映画評議会議賞(NBR)
・ニューヨーク批評家賞
・ボストン批評家賞
・ワシントン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・セントルイス批評家賞
動画集を開く▼
<登場シーン▼>
<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ▼>
<インディワイヤー賞の受賞スピーチ▼>
ザンドラ・フーラ
「落下の解剖学」
ドイツの女優。殺人罪に問われる小説家を演じた。長回しで撮影された夫との口論シーンなどが絶賛された。本作と同じく作品賞のノミネートされた「関心領域」でも名演を見せ、大活躍の年となった。1978年生まれ。2006年「レクイエム~ミカエラの肖像」でベルリン国際映画祭の女優賞を獲得。
【作品説明へ 】
【前哨戦での受賞】
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ロサンゼルス批評家賞
・バンクーバー批評家賞
・ヨーロッパ映画賞(欧州アカデミー賞)
動画集を開く▼
<登場シーン▼>
<ヨーロッパ映画賞の受賞スピーチ▼>
<ドイツ国営放送▼>
キャリー・マリガン
「マエストロ:その音楽と愛と」
アネット・ベニング
「ナイアド~その決意は海を越える」
5回目のノミネート。64歳という高齢にもかかわらず、キューバから米フロリダまで泳いだ実在の女性を演じた。
【配信:ネトフリ 】
※歴代の主演女優賞→
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助演男優賞
ロバート・ダウニーJr
「オッペンハイマー」
科学者オッペンハイマーの公職追放をめぐる政治ドラマが描かれる本作において、そのカギを握る政府高官を演じた。
現実味たっぷり
「アイアンマン」など過去の数々の有名キャラターの面影を消し去り、全くの別人に変身。
権力欲や虚栄心が強く腹黒い政治的キャラクターを現実味たっぷりに造形した。
見せ場を支える
会話シーンはもとより、
手のしぐさから表情の微妙な変化にいたるまで、派手さはないが強烈な印象を残す表現を連発。
立体的で深いドラマの見せ場を支えた。
若いころから実力が高く評価されてきた一流スターの真骨頂が、存分に発揮された。
チャプリン役で初候補に
オスカーノミネートは3回目。
1度目は、実に30年前(1993年)にさかのぼる。
伝記映画「チャーリー」で喜劇王チャーリー・チャプリンを演じ、主演男優賞にノミネート。当時26歳ながら10代から88歳までのチャプリンを演じた。
2009年には活劇コメディ「トロピック・サンダー」で助演男優賞にノミネートされた。
薬物中毒から脱却
1965年4月生まれ、米ニューヨーク出身。父は映画監督、母は女優。5歳の時に初めて父の監督作に出演し、1980年代は青春映画で活躍した。
2000年代初頭に人気テレビドラマ「アリー・myラブ」に出演したころから麻薬の常習者になり、何度も刑務所に入った。その後、リハビリ施設入所やヨガなどによって中毒から立ち直ったという。
マーベル黄金期の立役者
2008年の「アイアンマン」で初めてスーパー・ヒーロー役(トニー・スターク)を演じ、大当たり。
米コミック「マーベル」のシリーズ化の起点となった。
2010年代のアメコミ映画の黄金時代をど真ん中で支え続けた。
「シャーロック・ホームズ」シリーズでも主役を務め、大ヒットへと導いた。
「頼れる兄貴分」
映画業界への貢献度はとてつもない。撮影現場では「頼れる兄貴分」として同業者から高評価を得ており、かつての問題児の影はない。
【作品説明へ 】
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・クリティクス・チョイス賞
・英国アカデミー賞
・ゴールデングローブ賞
・フィラデルフィア批評家賞
・フェニックス批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・アトランタ批評家賞(タイ)
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<登場シーンなど▼>
<スティングと一緒に歌う▼>
<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ▼>
<「チャーリー」の予告編▼>
ライアン・ゴスリング
「バービー」
バービーの友人ケンを演じた。
抜群のコメディ・センスとカリスマ性を発揮し、
世界中の観客を爆笑させた。
人間社会に初めて行ったときのはしゃぎぶりや、
男性を自虐するネタの愉快さは圧巻。見せ場をいくつもさらった。
「ラ・ラ・ランド」で見せたダンスと歌唱にもさらに磨きがかかった。
無邪気な人形男子を、
これだけ違和感なく魅力的に演じられるおじさん(42歳)は他にいない。
オスカーノミネートは3度目。
最初のノミネートは、1億円以下の超低予算で制作された「ハーフネルソン」(2006年)での主演で。続いて2016年のミュージカル大作「ラ・ラ・ランド」の主演でノミネートされ、
本命の一角と見られていたが、ケイシー・アフレック(マンチェスター・バイ・ザ・シー)に敗れた。
1980年、カナダのオンタリオ州生まれ。1993年、テレビの「ミッキー・マウス・クラブ」のオーディションに参加。1万7000人から選ばれてレギュラーになった。
1996年に映画デビュー。2004年「きみに読む物語」で注目された。2010年「ブルーバレンタイン」などでも優れた演技力を発揮。「ドライヴ」でカルト的人気を博した。
ジャズピアニスト役で挑んだ初の本格ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」では、ピアノ演奏のシーンでは代役を使わず自ら演奏し、その腕前はプロのピアニストをもうならせた。
2017年の「ブレードランナー2049」などの超大作でもおなじみ。
【前哨戦での受賞】
・ボストン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ハワイ批評家賞
・アトランタ批評家賞(タイ)
動画集を開く▼
<「アイム・ジャスト・ケン」歌唱ビデオ▼>
<「ラ・ラ・ランド」の歌唱&ダンス▼>
<MTVベストキス賞の受賞スピーチ▼>
マーク・ラファロ
「哀れなるものたち」
【前哨戦での受賞】
・米国映画評議会議賞(NBR)
エマ・ストーン演じる主人公を外の世界へと連れ出すスケベ男を演じた。
ロバート・デ・ニーロ
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
9回目のノミネート。マーロン・ブランドやケイト・ブランシェットら7人の俳優が持つ記録に並んだ。恐ろしい悪人役。凄みに満ちた演技で観客を深淵へと導いた。
スターリング・K・ブラウン
「アメリカン・フィクション」
主人公の弟役。葛藤を抱えるゲイの医者をコミカルに痛々しく演じた。
※歴代の助演男優賞→
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助演女優賞
デバイン・ジョイ・ランドルフ
「ホールドオーバーズ」
学食の料理人を演じた。
最愛の息子をベトナム戦争で失って初めて迎えたクリスマス。
自分と同じく休校中の学校に居残った教師(ポール・ジアマッティ)や生徒(ドミニク・セッサ)が繰り広げるドタバタに、じわじわと巻き込まれていく役柄。
母性と芯の強さを体現
自身が喪失感にさいなまれながらも、
さりげない優しさとユーモアで他の2人を温め、お互いの理解を助けていく母性を絶妙に表現。
愛らしさと芯の強さが観客の感動を呼んだ。
いきなりトニー賞
1986年5月、米東部フィラデルフィア生まれ。
地元の大学で演劇を学んだ後、
名門イエール大学院に進み、演劇で修士号をとった。
ミュージカル版「ゴースト」で役者デビューを飾り、
いきなりトニー賞の助演女優賞にノミネートされた。
歌唱力も抜群
2019年、エディ・マーフィ主演映画「ルディ・レイ・ムーア」(Netflix)で、大柄な芸人を熱演。ド迫力の歌唱力もあいまって、一躍脚光を浴びた。
今回の賞レースでは前哨戦を負け知らずで独走した。
【作品説明へ 】
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・クリティクス・チョイス賞
・英国アカデミー賞
・ゴールデングローブ賞
・米国映画評議会議賞(NBR)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ボストン批評家賞
・ワシントン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ミシガン批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・セントルイス批評家賞
・フェニックス批評家賞
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<登場シーン▼>
<「ルディ・レイ・ムーア」での歌唱シーン▼>
<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ▼>
エミリー・ブラント
「オッペンハイマー」
ジョディ・フォスター
「ナイアド~その決意は海を越える」
5回目のノミネート。助演としては2回目で、1977年に「タクシードライバー」でノミネートされて以来、実に47年ぶり。同じ部門でのノミネートとしてオスカー史上最も長い間隔となった。
【配信:ネトフリ 】
アメリカ・フェレーラ
「バービー」
※テレビ「アグリー・ベティ」で有名。今作でのスピーチのシーンが大きな感動を呼んだ。
ダニエル・ブルックス
「カラーパープル」
※歴代の受賞者(助演女優賞)→
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アニメ賞
「君たちはどう生きるか」
【国:日本】
宮崎駿監督、鈴木敏夫プロデューサー
宮崎監督3回目のオスカー
日本にとって「千と千尋の神隠し」以来21年ぶり2度目の長編アニメ賞。宮崎駿監督にとっては「千と千尋の神隠し」、2015年の名誉賞に続いて3回目のオスカー受賞となった。
引退を撤回
2013年の「風立ちぬ」を最後に引退すると表明していた宮崎監督が、2016年にこれを撤回し、製作に臨んだ。
手描きの味わい
作画開始から完成まで異例の7年という長期間を費やし、マイペースで丹念に作り上げた。
手描きによる絵のクオリティの高さは健在。
人物などの滑らかな動きや美しい背景美術など、視覚的な味わいに満ちている。
自伝的なストーリー
宮崎氏の自伝的なストーリー。
内省的なキャラクター造形や迷宮のような不思議な世界観が、
見る側の想像力をかき立てる。
巨匠の復帰を大歓迎
海外でも高い評価を集め、
引退したはずのレジェンドの復帰に、全米のアニメファン、映画ファンが沸き上がった。
オスカー前哨戦では、ニューヨーク批評家賞やロサンゼルス批評家賞といった権威ある玄人系の賞でアニメ賞を獲得。
英国アカデミー賞やゴールデングローブ賞でも勝利し、勢いづいた。
歴代ジブリで最高の米興収
商業的にも世界的に成功した。アメリカ(北米)における興行収入は4600万ドルで、ジブリ映画として歴代1位を記録。
それまでトップだった「千と千尋の神隠し」の3倍以上を稼いだ。
(参考:エクシブ投資顧問 )
過去のオスカーでは大衆派が勝利
とはいえ、オスカーの最大の競争相手だった「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」の北米興収はその8倍。
両作ともに大絶賛を浴びたが、
どちらかといえば批評家の評価は「君たちはどう生きるか」が上で、
観客の評価は「スパイダーマン」が上。
ざっくり言えば「作家性」対「娯楽性」、「手描き」対「CG」、そして日米アニメの最高峰による未曽有の激戦となった。
過去のオスカーでは大衆派が勝利
過去のアニメ部門でディズニーやピクサーなどの大衆娯楽作を選んできたオスカーの傾向をふまえると、
スパイダーマンが優勢との事前予想が多かった。
国際化が追い風
しかし、アカデミー会員は宮崎氏の唯一無二の独創性に軍配を上げた。
海外の会員が増えて国際化したことや、全3部作の2作目であるスパイダーマンが既に1作目で受賞していることも、「君たち」に優位に働いたと見られている。
「千と千尋の神隠し」以来
オスカーの長編アニメ賞は2002年に新設された比較的新しい部門。
1回目は「シュレック」が受賞し、翌年の2回目をジブリの「千と千尋の神隠し」が獲った。
それ以来、日本勢はノミネートどまりが続いていた。
ジブリ以外で日本からノミネートされたのは、
細田守監督「未来のミライ」のみ。
■ジブリのオスカー歴
年
作品
部門
2003
「千と千尋の神隠し」
宮崎駿監督
アニメ賞受賞
2006
「ハウルの動く城」
宮崎駿監督
アニメ賞ノミネート
2014
「風立ちぬ」
宮崎駿監督
アニメ賞ノミネート
2015
「かぐや姫の物語」
高畑勲監督
アニメ賞ノミネート
2016
「思い出のマーニー」
米林宏昌監督
アニメ賞ノミネート
2017
「レッドタートル ある島の物語」
マイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督
アニメ賞ノミネート
2024
「君たちはどう生きるか」
宮崎駿監督
アニメ賞受賞
監督・脚本・原作:宮崎駿
プロデューサー:鈴木敏夫
配給:GKIDS
英題:The Boy and the Heron
製作国:日本
長さ:2時間4分
【評価】
【興行収入】
北米:4600万ドル
世界:1億6700万ドル(最新→ )
【前哨戦での受賞】
・英国アカデミー賞 アニメ賞
・ゴールデングローブ賞 アニメ賞
・ニューヨーク批評家賞 アニメ賞
・ロサンゼルス批評家賞 アニメ賞
・フロリダ批評家賞 作品賞、アニメ賞、作曲賞【3冠】
・シカゴ批評家賞 アニメ賞
・ボストン批評家賞 アニメ賞
・フィラデルフィア批評家賞 アニメ賞&外国語映画賞【2冠】
・サンディエゴ批評家賞 アニメ賞
・ロンドン批評家賞 アニメ賞
<▼受賞発表>
動画集を開く▼
<予告編▼>
<主題歌:米津玄師「地球儀」▼>
<受賞後の中島清文・ジブリCOOの会見▼>
歴代の日本人受賞者→
「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」
2019年のオスカーで長編アニメ賞に輝いた「スパイダーマン:スパイダーバース」の続編。
前作では、アニメ表現の新境地を拓いた。
コミックがそのまま動き出したかのような映像。
テイストの異なる画風を一つの作品に落とし込む斬新なスタイルは、
画期的だった。
空前のアート映像作品
今回は、その映像表現がさらに大きく進化した。
1000人のアニメーターが参加。
人間らしい絵の質感が活かすため、CGへの依存を減らし、マンパワーで絵を描くことを重視した。
その結果、空前のクオリティを持ったアート映像作品に仕上がった。
ビジュアルの良さにとどまらず、エンタメとしての面白さも抜群。
批評家と一般観客の双方から極めて高い評価を得た。
多数のスパイダー
複数の異次元空間が並行する世界(マルチバース)が舞台。
主人公の少年マイルスが、この世界に足を踏み入れ、過去の漫画及び映画シリーズで登場した多数のスパイダーマンに遭遇する。
次回作(3作目)「スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース」も一体的に制作された。
ロード&ミラー
プロデューサーは、前作に続き、米国アニメ界きっての黄金コンビとして知られるフィル・ロード&クリス・ミラーが務めた。監督作として「LEGO ムービー」「21ジャンプストリート」、プロデューサー作品として「ミッチェル家とマシンの反乱」などが有名。
監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン
配給:ソニー
長さ:2時間20分
【前哨戦での受賞】
・PGA(全米プロデューサー組合賞)
・クリティクス・チョイス賞
・アニー賞 作品賞
・米国映画評議会議賞(NBR) アニメ賞
・ワシントン批評家賞
・視覚効果協会賞(アニメ部門)
【評価】
【興行収入】
北米:3.8億ドル
世界:6.9億ドル
【製作費】
1億ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<挿入歌「コーリング」▼>
「マイ・エレメント」
コロナ禍以降、ピクサーの映画は劇場公開されず、配信のみだったが、本作は映画館で上映。
アメリカでは公開当初は興行成績が悪かったが、
口コミで高評価が伝わり、ロングランとなった。
日本でもヒットした。
評論家のレビューは、ロッテン・トマトで「支持率74%」。
ピクサーにしてはイマイチだった。
しかし、観客の評判はおおむね良かった。
【評価】
ロッテン・トマト:74%(最新→ )
IMDB:7.0(最新→ )
メタクリティック:58%(最新→ )
レターボックス:3.3(最新→ )
動画集を開く▼
<予告編▼>
<エンドソング:Superfly「やさしい気持ちで」▼>
<劇中歌「Steal The Show」▼>
「ニモーナ」
(Netflix)
【配信:ネトフリ 】
「ロボット・ドリームズ」
国:スペイン
※歴代のアニメ賞→
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国際映画賞
「関心領域」
国:イギリス(ドイツ語)
1990年代にジャミロクワイの音楽ビデオを撮ったことで知られる英国の鬼才ジョナサン・グレイザー監督の10年ぶりの新作映画。
作家性が強い独創的な作品。
大衆娯楽性は低いが、
コアなシネフィルから絶大な支持を得た。
PGAの10本に入る
カンヌ国際映画祭で「落下の解剖学」との接戦の末、2位(グランプリ)となった。米国の賞レースでも、ロサンゼルス批評家賞など権威の高い賞で作品賞や監督賞を次々と獲得。ハリウッドの大作を選ぶ傾向が強いPGA(全米プロデューサー組合賞)でも作品賞にノミネートされるというサプライズまで起こした。
ナチス収容所の隣人
ユダヤ人大量虐殺が行われた独ナチスのアウシュビッツ強制収容所。
その隣の邸宅が主な舞台となる。
ナチス幹部である収容所の所長一家が、この邸宅に入居し、生活を始める。
塀の向こうで行われているナチスの虐殺行為は画面には映さない。
ただ、時折、銃声や悲鳴が聞こえてくる。
それでも一家は、絵に描いたような幸せな暮らしを送る。
鮮烈なコントラストで異常さを際立たせる。
音で想像力を喚起させる「見せない演出」が絶賛された。
固定カメラにより長回しを多用。
ドラマチックにしない演出も注目された。
【結果】
監督:ジョナサン・グレイザー(英国人)
公開日:2024年5月24日
英題:The Zone of Interest
言語:ドイツ語
製作国:英国、ポーランド
配給:A24
■評点:ロッテン93% 、IMDb7.6
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 2位(グランプリ)
・ロサンゼルス批評家賞 作品賞&監督賞&主演賞&音楽賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)監督賞
・トロント批評家賞 作品賞&監督賞
・サンフランシスコ批評家賞 監督賞
・女性映画ジャーナリスト同盟 作品賞
・ボストン批評家賞 監督賞&脚色賞
・英国アカデミー賞 非英語作品賞&英国作品賞&音響賞の3冠
・シカゴ批評家賞 外国語映画賞
<▼受賞スピーチ>
動画集を開く▼
<カンヌ上映後の客席の反応▼>
「パーフェクト・デイズ」
国:日本
※東京都心の公衆トイレの清掃業務に従事する初老男性の物語。
黙々と働くプロ職業人の日常生活を、静かに追う。
ストーリーらしきものがなく会話も非常に少ないが、
主人公の生き様とその描き方が世界から共感を得た。
「ベルリン・天使の詩」「パリ、テキサス」など数々の名作を送り出してきたドイツの巨匠、ビム・ベンダース監督が、東京の心象風景を美しく味わい深く表現している。
カンヌ国際映画祭で役所広司が男優賞を獲得。
世界的な実力俳優として認知された。
表情、身ぶり、僅かなセリフで人生観を伝える。
ユニクロのオーナー社長の息子・柳井康治氏がプロデューサーを務めた。
東京都渋谷区内に斬新な公共トイレを17カ所設置するという日本財団のプロジェクトの一環としてつくられた。
当初は短編映画として企画され、
親日家として知られるベンダース監督にオファーしたところ、快諾。
「どうせなら長編で」という話になり、
ベンダース氏と広告作家・高崎卓馬氏(電通)が共同で脚本を書いた。
ベンダーズ監督が敬愛してやまないで巨匠・小津安二郎氏へのオマージュに満ちている。
監督:ビム・ベンダース
プロデューサー:ビム・ベンダース、柳井康治、高崎卓馬(電通)ほか
主演:役所広司
助演:石川さゆり、三浦友和、柄本時生(えもと・ときお)ほか
言語:日本語
製作国:日本、ドイツ
配給:ビターズ・エンド
米国配給:ネオン
長さ:2時間4分
■評点:ロッテン96% 、IMDb7.9
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 男優賞(役所広司)
動画集を開く▼
<予告編▼>
<役所広司のカンヌ受賞スピーチ▼>
<挿入歌「パーフェクト・デイ」~歌手ルー・リード▼>
<挿入歌「朝日のあたる家」~byアニマルズ▼>
<挿入歌「ドック・オブ・ベイ」~歌手オーティス・レディング▼>
「雪山の絆(きずな)」
国:スペイン
【配信:ネトフリ 】
1972年、南米アンデス山中でウルグアイの学生ラグビーチームら45人を乗せた飛行機が消息を絶った。生存者の確認もできないまま、やがて捜索は打ち切りに。雪と岩だらけの4000メートル近い高地。夜半には氷点下40度にもなる過酷な極限状況。飢えや雪崩で次々と仲間が死んでいく中で、残った者たちが生存を図る。実際に起きた事故を忠実に再現した感動作。1993年にハリウッドが映画化し、高い評価を得た「生きてこそ」から30年。スペイン人のJA・バヨナ監督が、南米の無名俳優たちを起用。140日間にわたる山脈でのロケ撮影を決行した。自然環境の過酷さを伝える美術やメイクなども含め、リアリズムの徹底ぶりが絶賛された。
■評点:ロッテン91% 、IMDb7.8
動画集を開く▼
<予告編▼>
<劇伴▼>
「僕はキャプテン」
国:イタリア
マッテオ・ガローネ監督
アフリカから欧州を目指す移民の物語
「ありふれた教室」
国:ドイツ
公開:2024年5月17日
※歴代の国際映画賞→
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視覚効果賞
「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」
(山崎貴、渋谷紀世子、高橋正紀、野島達司)
映画大国アメリカにおいて「商業」と「批評」の両面で大成功した。
アニメでは珍しくないが、実写の邦画としては歴史的な快挙だった。
怖いゴジラ
とりわけ高く評価されたのが、視覚効果(VFX)だった。
CG(コンピューター・グラフィクス)によって描いたゴジラは、重厚感がたっぷり。
迫ってくるときの凄み、怖さに加えて、元祖ゴジラを想起させる質感や形も称賛された。
銀座の破壊シーン
ゴジラが暴れる街もVFXで緻密に生成された。
見せ場となる東京・銀座の破壊シーンでは、無数の建物をCGで配置。
ビル一棟一棟について、壁や床の素材や構造をコンピューターに入力したうえで、「壊れて粉々になる」という物理現象を出力させたという。
海を歩くシーン
海を舞台とするシーンでも、視覚効果の技術が存分に活かされた。
物体や生き物が水の中を移動すると、白く泡立つ波「白波」(ホワイト・ウォーター)が発生する。
巨体のゴジラともなれば、白波のボリュームはとてつもないが、本作ではこれをCGで緻密に描き、実写の海と組み合わせた。
その結果、洋上で迫ってくるゴジラがリアルにに表現され、「海上アクション映画」としても一級になった。
3分の2にVFX
全体の3分の2程度(尺数ベース)の映像に、
VFX技術が何らかの形で使われたという。
格安の製作費&わずか35人
製作費は20億円程度で、ハリウッド大作と比べれば10分の1以下。
しかも、VFXスタッフはわずか35人。ハリウッドなら数百人も珍しくない。
技術レベルも米国に大きく劣ると思われていた。
マンネリ感を打破
それだけに、ゴジラ-1.0の仕上がりの良さはアメリカのファンを驚かせた。
最近の米国製SF大作に物足りなさやマンネリ感を覚えていた人たちも惜しみなく喝采を浴びせた。
作品力の勝利
最終的には、技術レベルうんぬんというより、創意工夫やクラフトマンシップ(職人魂)、そして何より作品としての総合力がものをいったのだろう。
VFXの名手・山崎貴監督
本作は、視覚効果を得意とする山崎貴監督の集大成となった。
山崎監督は日本を代表する「VFXの名手」として有名。
そもそもVFXの技術者出身だ。
過去作で実績
「ALWAYS 三丁目の夕日」で昭和30年代の街並みをVFXで丸ごと構築し、
その続編ではCG製ゴジラも登場させた。
「永遠の0」ではゼロ戦の戦闘シーンを再現。
「海賊とよばれた男」では、東京大空襲で町が火煙に包まれるシーンをCGで描くなど、
ハリウッドに追いつくべく果敢な挑戦を続けてきた。
遊園地のゴジラも
さらに、埼玉県の「西武園ゆうえんち」でゴジラをテーマとする乗り物アトラクションの映像を手掛けた。
本作では、過去の作品で蓄えたノウハウを全てぶつけたという。
長野出身のSF児童
山崎氏は1964年、長野県松本市生まれ。
小学生の時、児童向けのSF小説をほぼ毎日一冊のペースで愛読していた。
「未知との遭遇」「スターウォーズ」で覚醒
中学生(13歳)のときに映画館で「未知との遭遇」(スティーブン・スピルバーグ監督)と「スター・ウォーズ」(ジョージ・ルーカス監督)を鑑賞し、
革新的なSF技術に感動。特撮技術者を志すようになる。
8ミリカメラを持っている友達を引き込み、受験勉強そっちのけで短編のSF作品を撮ったという。
高校でも映画研究会で映像作品づくりに没頭した。
専門学校でCGに熱
高校を出た後、東京の「阿佐ケ谷(あさがや)美術専門学校」に入り、映像技術を学ぶ。当時出回り始めていたCG(コンピューター・グラフィックス)にも熱中した。
「白組」へ就職
学校で募集がかかった映像制作会社「白組」のアルバイトに従事する。
白組は、映像作家・島村達雄氏が設立した新興企業。山崎氏はCM撮影で使うミニチュア作りを手伝った。
その仕事ぶりと潜在力が島崎氏に認められ、卒業後の1985年、白組に入社を果たす。
初の監督作が成功
白組では、CMなどの視覚効果を担当した。24歳で伊丹十三監督の映画「マルサの女2」(1988年)の特撮場面を任された。
社内で映画のアイデアが募集されると、並々ならぬ熱意と行動力で、企画書を作成。
この提案が通り、SF活劇「ジュブナイル」(2000年)を撮った。
CGを駆使した監督デビュー作は、戦闘シーンの迫力などが話題となり、興行収入12億円を稼いだ。
恩師・阿部秀司との出会い
この「ジュブナイル」の企画書を気に入り、
映画化へと導いたのは、プロデューサーの阿部秀司氏だった。
広告代理店の社員を脱サラし、1986年に制作会社「ロボット」を設立。
映画の自主制作に乗り出していた阿部氏は、若き山崎氏の才能と白組のVFX技術をいち早く認め、ジュブナイルに新人監督作として異例の総製作費4億5000万円を付けた。
受賞スピーチで追悼
その後、山崎監督と阿部プロデューサーのコンビは、
「ALWAYS 三丁目の夕日」などの超ヒット作を次々と生み、
その盟友関係は、「ゴジラ-1.0」まで続いた。
阿部氏は前年12月に惜しくも死去(享年74歳)。
山崎氏のオスカー受賞スピーチは、阿部氏への追悼で締めくくられた。
白組の一流人材が結集
ゴジラ-1.0の制作には、山崎氏が今でも所属する白組のVFXスペシャリストが集結した。
いつも通り山崎監督が自ら視覚効果を監修。
長年にわたり山崎作品の視覚効果を支えてきた渋谷紀世子氏が、
全体のまとめ役となるVFXディレクターを務めた。
4人が代表して受賞
オスカーの視覚効果賞では、受賞対象の個人の上限が4人。
山崎監督(59歳)と渋谷ディレクター(53歳)以外の2枠はスタッフ全員による社内投票で選出したという。
その結果、ベテランCG技術者の高橋正紀氏(55歳)と、海のシーンで天才的な才能を発揮した若手のホープ・野島達司氏(25歳)が選ばれた。
米国で邦画史上2位
ゴジラ-1.0は2023年12月1日、日本の実写映画としては異例の規模で全米公開され、初週末の興行収入ランキングは3位。
最終的な北米興収は5600万ドルを突破する大ヒットとなった。邦画として「ポケモン」(1998年)に次ぐ史上2位を記録した(エクシブ投資顧問→ )。
実写として快挙
これまでアメリカ市場における邦画の商業的な成功は、
ほぼアニメに限られていたが、
実写でのメジャーヒットを出したことは、日本の映画産業にとって実に意義深い。
また、米国での配給を、現地企業に頼らず東宝が自ら行ったことも画期的だった。
(参考:河端哲朗 氏)
家族愛のテーマ設定も成功
なお、本作ではテーマを「家族愛」に据えたことも、
米国で成功した理由の一つだと考えられている。
日本では人間ドラマの部分について賛否が分かれたが、
アメリカでは肯定派が圧倒的な多数を占めた。
米国の賞レースで台風の目
米ロッテン・トマトの集計では、批評家と観客の支持率がいずれも「98%」という驚異的な高さ記録。
賞レースで台風の目になり、全米の各都市や州ごとの評論家の賞で視覚効果賞を次々とさらった。
SF映画賞も
さらに、ラスベガス批評家賞では「SF/ホラー映画賞」「国際映画賞」の2冠を達成するなど、技術部門にとどまらない評価の広がりを見せた。
現地で人気者に
ゴジラのミニチュアを手にオスカー・キャンペーンを走り回った山崎監督は、そのオタク的な愛嬌の良さもあって、
賞レースにおける人気者の一人となった。
キューブリック以来
監督が自らオスカー視覚効果部門での受賞を果たした事例は、
過去に1969年のスタンリー・キューブリック(2001年宇宙の旅)のみで、今回で2例目となった。
【前哨戦での受賞】
・ラスベガス批評家賞 SF/ホラー映画賞、国際映画賞【2冠】
・シカゴ批評家賞 視覚効果賞
・フロリダ批評家賞 視覚効果賞
・ユタ批評家賞 視覚効果賞
・ジョージア批評家賞 国際映画賞
・ハワイ批評家賞 SF作品賞
・ポートランド批評家賞 SF作品賞
・カンザスシティ批評家賞 SFホラー賞
初代ゴジラ
「ゴジラ-1.0」は、初代「ゴジラ」の誕生から70周年の企画として製作された。
第1作目のゴジラは1954年(昭和29年)に公開。水爆実験の影響で誕生した巨大恐竜が人間を襲うというコンセプトだった。
ビキニ核実験で死の灰を浴びた「第五福竜丸事件」に触発された。ゴリラとクジラの合いの子として「ゴジラ」と名付けられた。
「特撮の父」円谷英二
製作費は当時の映画5本分に当たる1億円がかけられた。後に「特撮の父」と呼ばれるようになる円谷英二が特撮監督を担当。着ぐるみの中に人間が入るという方式を開発した。
着ぐるみがミニチュアの街を壊し、それをカメラで撮影。リアルな動きや破壊シーンが世界を驚かせた。
初代ゴジラは国内でたちまち1.5億円を稼ぐ大ヒットとなり、戦後日本の子供たちを熱狂させた。
米国でも人気沸騰
これにハリウッドが目をつけた。人気俳優レイモンド・バー扮する新聞記者の部分を撮り足して再編集され、「怪獣王ゴジラ」(1956年)として公開された。
米国の一流劇場でのロードショー公開は日本映画として初めてだった。しかも見事に大ヒットを記録。以後、東宝特撮映画のほとんどはアメリカで上映されることになった。
「Gファン」
1962年には、シリーズ3作目「キングコング対ゴジラ」が公開される。アメリカ映画が生んだ大怪獣の元祖キングコングと、雪氷の奥で目覚めて再び巨体を現したゴジラが対決。話題を呼んだ。
いつしか米国では「Gファン」という怪獣映画愛好グループが発足。定期的に大会開催されるようになった。
ハリウッドに影響を与える
ハリウッドの視覚効果の専門家の中には、ゴジラやモスラなどの日本の怪獣映画を見ながら育った人も多い。とくにオスカーの投票権が与えられるようなベテラン技術者は、大きな影響を受けている。
VFX技術者たち
例えば「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」(1983年)のロボットと「ジュラシック・パーク」(1993年)の恐竜づくりで2度の視覚効果賞に輝いたフィル・ティペット氏などが、ゴジラ好きとして有名だ。
「シェイプ・オブ・ウォーター」で作品賞などを獲ったギレルモ・デル・トロ監督も、日本製怪獣のファンを公言している。
【評価】
【興行収入】
北米:5600万ドル
世界:1.1億ドル(最新→ )
監督・脚本:山崎貴
主演:神木隆之介
助演:浜辺美波、安藤サクラほか
VFX制作会社:白組
VFXディレクター:渋谷紀世子
言語:日本語
製作国:日本
配給:東宝
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<監督によるVFX説明▼>
<受賞後のテレビ出演▼>
<受賞後の帰国会見(ノーカット)▼>
<ノミネート発表時の監督らの歓喜▼>
<野島達司の天才ぶり▼>
<監督インタビュー▼>
<渋谷紀世子・VFXディレクターのインタビュー▼>
<サントラ▼>
<制作の舞台裏▼>
<予告編▼>
「ザ・クリエイター/創造者」
【前哨戦での受賞】
・視覚効果協会賞(実写部門)
・セントルイス批評家賞 視覚効果賞
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:ボリューム3」
「ナポレオン」
「ミッション・インポッシブル/デッドレコニング1」
※歴代の視覚効果賞→
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※2024年の全部門を見る→
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2023年(第95回)
( 24年↑ | 23年 | 22年↓ )
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が作品賞を含む7冠を獲得。このうち6つは主要部門(作品・監督・俳優・脚本系)だった。主要部門での6冠はオスカー史上初めて。
【主要8部門】 作品賞 、
監督賞 、
主演男優賞 、
主演女優賞 、
助演男優賞 、
助演女優賞 、
脚本賞 、
脚色賞 、
【ジャンル別部門】 アニメ賞 、
国際映画賞 、
ドキュ賞
※他の部門はこちら→
2023年
部門
受賞
ノミネート
作品賞
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(略称:エブエブ)」
(日本公開:2023年3月3日)
監督:ダニエルズ
史上初の主要6冠
作品賞に加えて、監督、主演女優、助演男優、助演女優、脚本、編集賞の計7冠。
このうち編集賞を除く6部門が主要部門だった。
「羊たちの沈黙」「愛と追憶の日々」「クレイマー・クレイマー」「カッコーの巣の上で」「或る夜の出来事」「地上(ここ)より永遠(とわ)に」などの最多記録(主要5冠)を抜き、史上初の主要部門6冠に輝いた。
ダントツの独創性と斬新さに熱烈な支持が集まった。インデペンデント映画ならではの発想力の勝利だった。
中華系移民のSF家族劇
米国の中華系移民の家族が突然、人類を救う戦いに巻き込まれるSF活劇。母娘愛・夫婦愛を軸とする感動系の家族物語でもある。ミシェル・ヨー主演。
若手オタクとA24
新進気鋭の2人組監督ダニエルズの大出世作となった。ハリウッドで最も勢いのある新興映画会社「A24」にとって過去最大の興行収入を記録。米国の映画ファンの間で話題沸騰となった。
若手オタクとA24
オスカー前哨戦では、評論家系の賞で勝ち続けた後、映画業界の組合別の賞で圧勝した(PGA、DGA、SAG、WGAを完全制覇)。
アジア系が大活躍
主要キャストの大半はアジア系。さらに監督の1人は台湾系。メインのプロデューサーも台湾系。衣装デザイナーは日系人。アジア系の人材が大活躍した。
奇抜な異色作のわりにアンチが少ないのも特徴。米国を支えてきた移民たちへの賛歌というメッセージ性もある。
歴代トップ級の奇想天外ぶり
メジャー作品にはない手作り感とB級風味も持ち味となった。
オスカー作品賞史上、奇想天外ぶりにおいてトップレベルと受け止められている。少なくとも「お馬鹿映画ぶり」が歴代マックスであることは間違いない。
8年ぶり7冠
オスカー7冠達成は、2014年の「ゼロ・グラビティ」以来9年ぶり。
作品賞を含めた7冠以上となると、2009年に8冠に輝いた「スラムドッグ・ミリオネア」以来だった。一つの作品による独占が難しくなっていた近年のアカデミー賞において、久しぶりの完勝となった。
俳優部門3冠は史上3作目
また、俳優部門での3冠は46年ぶり。1977年「ネットワーク」、1953年「欲望という名の電車」に次いで史上3作目の快挙だった。
「タイタニック」との勝ちぶりの違い
アカデミー賞の最多受賞の記録は、「ベン・ハー」「タイタニック」「ロード・オブ・ザ・リング3/王の帰還」の13部門だが、これらの作品は技術部門で大量に稼いだ結果である。例えばタイタニックとロード・オブ・ザ・リング3は俳優部門は一つも獲っていない。
一方、エブエブは技術部門の受賞は編集賞だけで、残りは「above the line」と呼ばれる主要8部門での勝利。主演男優と脚色はそもそも選考対象ではなかったことを考えると、主要部門は全て制覇したといえる。
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1年前の劇場公開は「羊たちの沈黙」以来
本作が米国で劇場公開されたのは2022年3月だった。
オスカー授賞式の1年も前だ。
通常、公開から時間が経つとオスカーでは不利だが、本作に限っては勢いが衰えなかった。むしろ「見返すほど面白さが増す」との声が多く聞かれた。
公開時期の早さは、1991年2月に全米公開されて翌年の作品賞を獲った「羊たちの沈黙」以来の記録。
サークル的なノリに共感
賞レースでは、本作で20余年ぶりの奇跡的なカムバックを果たした元子役キー・ホイ・クァンが、感動的なスピーチで往年の映画ファンを泣かせた。
ミシェル・ヨーやジェイミー・リー・カーティスらお馴染みのスターたちも作品の魅力を訴え、ムードを盛り上げた。
各授賞式やイベントでは、キャストやスタッフが若いオタク系監督を囲み、和気あいあいと祝福しあうサークル活動的なノリが共感を呼んだ。その輪の中には、祖父役を演じた94歳の超ベテラン中国系俳優ジェームズ・ホンの姿もあった。
包摂的(インクルーシブ)で楽しそうな光景が、映画自体のメッセージとも重なり合った。
逆風が吹かず
賞レース終盤で「断トツの最有力候補」としてのポジションを固めたが、よくありがちなバッシングは起きなかった。
前哨戦で連勝しながら最終局面でアンチが増え、作品賞を逃した前年の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(Netflix)とは対照的だった。
ポジティブな人生賛歌という作風が、有利に働いたかも知れない。
「A24」の圧勝
インデペンデント系映画会社「A24」にとって、2017年の「ムーンライト」に続いて2度目の作品賞となった。
同じく本年度にA24が配給した「ザ・ホエール」は主演男優賞とメイク&ヘア賞を獲得した。
大手スタジオやNetflixを突き放し、会社別の受賞数で圧倒的なトップだった。
A24は2012年創業。
映画投資会社出身のダニエル・カッツら3人が設立した。本社ニューヨーク。
「エブエブ」は設立10周年の作品であり、出資と配給を担当した。
A24はアート性と娯楽性を兼ね備えた作品づくりに定評がある。
「ムーンライト」以外の過去の作品賞ノミネートは、2016年の「ルーム」、2021年の「ミナリ」。
■エブエブ受賞結果
受賞
作品賞
監督賞
主演女優賞 ミシェル・ヨー
助演男優賞 キー・ホイ・クァン
助演女優賞 ジェイミー・リー・カーティス
脚本賞
編集賞
ノミネート
助演女優賞 ステファニー・シュー
歌曲賞
作曲賞
衣装デザイン賞
配給:A24
プロデューサー:ジョナサン・ウォン、ルッソ兄弟、ダニエルズほか
■評点:ロッテン95%、IMDb8.0
■米興収:7200万ドル→
■製作費:1600万ドル
【前哨戦での受賞】
・PGA(米プロデューサー組合賞)
・DGA(米監督組合賞)
・SAG(俳優組合)アンサンブル賞
・クリティック・チョイス賞
その他▼
・ロサンゼルス批評家賞
・ワシントン批評家賞
・フロリダ批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・ハリウッド批評家賞
・ゴッサム賞
・独立系精神賞
・WGA(米脚本家組合賞)
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<主題歌「This Is A Life」▼>
<茶一郎の解説▼>
<予告編▼>
「トップガン マーヴェリック」
監督:ジョセフ・コジンスキー
※驚愕の完成度の高さを誇る骨太アクション系ドラマ。1986年の青春映画「トップガン」の続編。
商業的にも評論的にも世界で最高の成功を収めた。幅広い世代を劇場に戻した功績は大きい。
続きを開く▼
中年男の成熟と苦悩
実に36年ぶりの続編となった今作では、若者向けの青春ドラマだった1作目からストーリー性を大きく発展させた。
中年になったトム・クルーズ演じる主人公の人間的な成熟ぶりや苦悩、若い世代との緊張関係や絆を丁寧に描く。アート系を好む玄人筋からも大絶賛を浴びた。脚色賞でのノミネート獲得は、一級ドラマとしても認知された証拠。
劇場復活の立役者
コロナ禍で米国の映画館は壊滅的な打撃を受けた。2021年暮れから「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」で若者が劇場に殺到したが、中高年層は依然として足取りが重かった。
多くの大作がコロナ終結に待ちきれずに「ネット配信直行」へと舵を切るなか、本作は映画館での上映にこだわり続け、何度も公開延期を重ねた。
興行収入は歴代5位
いざ公開されると、予想をはるかに上回る大ヒットとなり、米国内の興行収入はぶっち切りの年間1位。歴代でも5位となった。
迫力満点の戦闘機の空中戦シーンは、IMAX(アイマックス)などの特殊スクリーンへの呼び水となった。
ノミネート数:6個
受賞数:1個
受賞結果の一覧▼
ノミネート
作品賞
脚色賞
歌曲賞 レディー・ガガ
視覚効果賞
編集賞
配給:パラマウント
プロデューサー:ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズほか
■評点:ロッテン96%、IMDb8.3
■米興収:7億1800万ドル→
■製作費:1億7000万ドル
【前哨戦での受賞】
・米国映画評議会議(NBR)作品賞
【配信:アマゾン 】
動画集を開く▼
<挿入歌「Hold My Hand」▼>
<テーマ曲▼>
<トム・クルーズのPGA名誉賞スピーチ▼>
<予告編▼>
<初代トップガンの挿入歌▼>
「西部戦線異状なし」
国:ドイツ
監督:エドワード・ベルガー
※ドイツ語の戦争映画。Netflixの本年度イチオシ。1931年にアカデミー作品賞を受賞した同名のハリウッド映画を、原作小説の母国であるドイツの映画人たちがリメイク。
続き▼
第一次世界対戦の残忍さを世界に伝えた反戦ストーリーが、現代の最高レベルの映画技術で蘇った。
ドイツ軍の志願兵として戦線に乗り込んだ主人公が、塹壕での毒ガス、機関銃、戦車など思いもかけなかった凄惨な経験を重ねる。
ロシアの対ウクライナ侵略戦争による悲劇が日々伝えられるなか、極めて生々しく、心に突き刺さる上質な一本として支持を集めた。 英国アカデミー賞では、母国の有力作「イニシェリン島の精霊」を差しおいて作品賞など最多7冠に輝いた。
ノミネート数:9個
受賞数:4個
受賞部門の一覧▼
<受賞結果>
受賞
国際映画賞
撮影賞
美術賞
作曲賞
ノミネート
作品賞
脚色賞
視覚効果賞
音響賞
メイク&ヘア賞
配給:ネットフリックス
■評点:ロッテン90%、IMDb7.8
■製作費:2000万ドル
【前哨戦での受賞】
・英国アカデミー賞 作品賞など7冠
【配信:ネトフリ 】
「イニシェリン島の精霊」
(日本公開:2023年1月27日)
監督:マーティン・マクドナー
※田舎の島を舞台にした人間関係劇。男2人の友情の変化を描く。
続き▼
見る側に思索と強い余韻をもたらす大人のドラマとして称賛された。
オスカー作品賞的な基準からするとやや陰鬱で、分かりやすいインパクトに欠けたか。ロッテントマト集計の批評家支持率は96%でトップガンと肩を並べたが、一般観客の支持率はそれほど高くなかった。
オスカーに強い配給会社サーチライトの本年度イチオシ。
「スリー・ビルボード」(2017年)で作品賞の最有力候補の一角を占めながら「シェイプ・オブ・ウォーター」に敗れたマーティン・マクドナー監督の5年ぶり新作。
ノミネート数:9個
受賞数:0個
候補部門の一覧▼
ノミネート
作品賞
監督賞
主演男優賞 コリン・ファレル
助演男優賞 ブレンダン・グリーソン
助演男優賞 バリー・キオガン
助演女優賞 ケリー・コンドン
脚本賞
作曲賞
編集賞
配給:サーチライト
■評点:ロッテン96%、IMDb7.8
■米興収:1000万ドル→
■製作費:2000万ドル
【前哨戦での受賞】▼
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
・シカゴ批評家賞
・フェニックス批評家賞
「フェイブルマンズ」
(日本公開:2023年3月3日)
監督:スティーブン・スピルバーグ
※巨匠・スピルバーグ監督の自伝的ドラマ。
映画愛に目覚めた少年が、8ミリカメラを手に異才を発揮。映像の魔力や危うさに気づく。
続き▼
両親との絆や複雑な家庭内事情が赤裸々に描かれる。成功物語や温かい美談に仕立てるのでなく、過去と向き合いながら映画の本質に迫る視点が称賛された。
前哨戦の第一弾となるトロント国際映画祭で勝利したが、その後勢いが弱まった。興行成績は期待外れ。
ただ、オスカーで票を握る映画人からは幅広く共感を得やすいと予想された。
ノミネート数:7個
受賞数:0個
候補部門の一覧▼
ノミネート
作品賞
監督賞
主演女優賞 ミシェル・ウィリアムズ
助演男優賞 ジャド・ハーシュ
脚本賞
作曲賞
美術賞
配給:ユニバーサル
プロデューサー:スピルバーグほか
■評点:ロッテン92%、IMDb7.7
■米興収:1700万ドル→
■製作費:4000万ドル
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・トロント国際映画祭 観客賞
「エルヴィス」
監督:バズ・ラーマン
※米国史上最強のロック歌手エルビス・プレスリーの伝説の裏側を映画化。監督は「ムーラン・ルージュ」のバズ・ラーマン。
可憐でゴージャスな演出とダイナミックな語り口が高評価を得た。
続き▼
エルビスを食い物にしたと言われるマネージャー(トム・ハンクス)が、過去を振り返る形で綴る壮絶なドラマ。主演オースティン・バトラーがエルビスを見事に熱演・熱唱し、大ブレイクした。
日本ではあまり売れなかったが、米国ではロングランの大ヒットを記録。
ノミネート数:8個
受賞数:0個
候補部門の一覧▼
ノミネート
作品賞
主演男優賞 オースティン・バトラー
編集賞
撮影賞
美術賞
音響賞
衣装デザイン賞
メイク&ヘア賞
配給:ワーナー
■評点:ロッテン77%、IMDb7.4
■米興収:1億5100万ドル→
■製作費:8500万ドル
【配信:アマゾン 】
「TAR(ター)」
(日本公開:2023年5月12日)
監督:トッド・フィールド
ノミネート数:6個
受賞数:0個
候補部門▼
・作品賞
・監督賞
・脚本賞
・主演女優賞
・撮影賞
・編集賞
※作家性では本年度トップ級との評価を得た。サイコスリラー的な要素を兼ねた心理サスペンス。ケイト・ブランシェットが演じる世界トップ級のオーケストラ指揮者(架空の人物)の横暴ぶりと、その顛末を描く。
続き▼
秀作「リトル・チルドレン」(2006年)のトッド・フィールド監督の16年ぶりの新作。緻密な構成の下、予測し難い物語進行や奥行きのある人物設定により、観客を次々と驚きや発見へと導く。強烈な印象を残すシーンの連続で、完成度の高さはピカイチ。
主人公の深層心理や行動原理を分析する「人物研究(キャラクター・スタディ)」として高評価を得た。また、クラシック音楽の難解で特異な世界を詳細に描写。パワハラ問題やキャンセル・カルチャーなどの現代的なテーマも巧みにとらえた。
何といっても、ケイト・ブランシェットの演技が壮絶。孤高で残酷で才能に満ち溢れた人物を、異次元レベルの表現力で造形した。
賞レースでは、ベネチア国際映画祭から参戦。好評だったが、最高賞(金獅子賞)や審査員賞などを逃し、脚本賞も「イニシェリン島の精霊」にもっていかれた。女優賞(ケイト・ブランシェット)は獲った。
その後、権威の高い「ニューヨーク批評家賞」で作品賞に輝いた。「ロサンゼルス批評家賞」では、「エブリシング・エブリウェア」と同点で作品賞を獲った。
前年の日本映画「ドライブ・マイ・カー」のように、芸術性が重視される主要要で好成績を収めた。
オスカーではエブエブ旋風に押され、無冠に終わった。
配給:フォーカス
■評点:ロッテン91%、IMDb7.5
■米興収:677万ドル→
■製作費:1500万ドル
【前哨戦での受賞】▼
・全米映画批評家協会賞(NSFC)作品賞
・ニューヨーク批評家賞 作品賞
・ロサンゼルス批評家賞 作品賞(エブエブと同点)
動画集を開く▼
<予告編▼>
<町山智浩の解説▼>
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」
監督:ジェームズ・キャメロン
※圧倒的な映像美が魅力の超々大作。映画史上最も売れた前作「アバター」(2009年)の世界観と特撮技術を発展させ、水の中の神秘的な立体映像を表現するなど、再び劇場体験の新境地を拓いた。
続き▼
ハリウッド映画を次々と上映禁止にしていた中国でも劇場公開にこぎつけたことで、世界興行収入ではトップガン マーヴェリックを抜いて本年度1位になった。
初代アバターは2010年のオスカーで作品賞、監督賞を含む9部門にノミネート。このうち視覚効果、撮影、美術の3部門を受賞した。今作「2」は作品賞のほか、視覚効果、音響、美術でノミネートされたが、監督賞での候補入りを逃した。
ノミネート数:4個
受賞数:1個
受賞部門の一覧▼
配給:20世紀
■評点:ロッテン77%、IMDb7.9
■米興収:6億6000万ドル→
■製作費:4億ドル
「ウーマン・トーキング 私たちの選択」
(日本公開:2023年6月2日
監督:サラ・ポーリー
※「アウェイ・フロム・ハー君を想う」のサラ・ポーリー監督(女優出身)による会話劇。女性パワーの結集がテーマ。脚色賞を受賞。実力派の俳優陣によるアンサンブル演技も称賛された。
続き▼
閉鎖的なキリスト教系団体が営む共同体の村で、女性信者たちが次々とレイプ被害を受けていた。
犯人たちが逮捕された後、村の女性たちには3つの選択肢が残された。
男たちへの反抗か、赦しを与えるのか、それとも――。
原作小説は、実際に起きた事件から着想を得た。
2000年代に南米ボリビアで起きた連続レイプ事件。
「メノナイト」という古い宗派が運営する自給自足の村で、少なくとも151人が強姦された。被害者の年齢は3歳~65歳。
加害者は同じ集落に住む男たち9人以上。
動物要の麻酔を使って女性の意識を失わさせるという極めて悪質な犯行だった。
7人が懲役25年の有罪判決を受けた。
大女優であり、社会派の有力プロデューサーでもあるフランシス・マクドーマンドが、原作小説の映画化権を獲得した。
そして、16歳の時に自ら性的暴行を受けたことがある女優出身のサラ・ポーリーが脚本を執筆。監督も引き受けた。
女性8人が狭い納屋に集まって2日間にわたって会話する、という地味な設定。
作風も静かだが、力強さがあふれる一作として評論家や映画ファンから喝采を浴びた。
巨額予算が投入された「バビロン」などメジャースタジオの豪華エンタメ作品を抑え、堂々の作品賞ノミネート入りを果たした。
ノミネート数:2個
受賞数:1個(脚色賞)
配給:UA(アマゾン系)
■評点:ロッテン91%、IMDb7.1
■米興収:545万ドル→
「逆転のトライアングル」
(日本公開:2023年2月23日)
国:スウェーデン、独、仏、英
監督:リューベン・オストルンド
※皮肉に満ちた欧州映画。ブルジョワ風刺劇。
前作「ザ・スクエア 思いやりの聖域」でオスカー国際映画賞(2018年)を受賞したスウェーデン人のオストルンド監督による初の英語作品。従来作より娯楽色を強めた。
カンヌ国際映画祭で最高賞(パルムドール)を獲得。オストルンド監督にとって2作品連続のパルムドールとなった。その後、米国の賞レースでも目立った受賞はなかったが、オスカーで作品賞、監督賞、脚本賞のノミネートを果たし、サプライズとなった。
あらすじ(ネタバレ有)を開く▼
セレブが乗る豪華客船がクルーズ中に無人島に難破する。乗客・乗員によるサバイバル・ゲームがスタート。船内で掃除係だった中年女性が、食糧調達などのスキルを活かして、集団内秩序のトップに立つという逆転現象が起こる。
ノミネート数:3個
受賞数:0個
候補部門▼
・作品賞
・監督賞
・脚本賞
■評点:ロッテン72%、IMDb7.5
■米興収:450万ドル→
■製作費:1600万ドル
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 作品賞(パルムドール)
※歴代の作品賞→
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監督賞
ダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
30代半ばの精鋭コンビ。本作がコンビとして長編2作目。
多次元宇宙(マルチバース)、カンフーアクション、家族劇、哲学論など数々の要素がてんこ盛りになった重層的かつ壮大なストーリーを、一本筋の通った娯楽作に仕上げた。
古今東西の様々な映画文化を取り入れつつ、唯一無二の映像体験を実現した手腕は見事。
ベテラン俳優の起用で成功
ベテラン俳優3人(ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ジェイミー・リー・カーティス)を起用し、そろって初のオスカーへと導いた功績も大きい。その千里眼とハイセンスな演出力については、映画界の重鎮たちも舌を巻いた。
台湾系&ゴジラファン
2人組のうち、ダニエル・クワンは中華系アメリカ人で米東部マサチューセッツ州出身。本作の登場人物(娘役)と同じようにアジア系移民2世(母親が台湾出身)。フェイバリット映画は「エターナル・サンシャイン」(2004年)。
一方、 ダニエル・シャイナートは南部アラバマ州の出身。中流家庭で育った。子供のころゴジラの映画に熱中。兄(現在ゲーム・デザイナー)が仲間と自主制作した映像作品に触発され、映画監督への道を志したという。
音楽ビデオで成功し、映画へ
2人はボストンの大学で映画を学んでいるときに出会った。卒業後、監督デュオとして音楽アーティストのビデオを手掛け、グラミー賞に2度ノミネートされた。
続き▼
その後、映画に参入し、「スイス・アーミー・マン」(2016年)でデビュー。サンダンス映画祭の監督賞などの賞に輝き、期待の新人として注目を浴びた。
映画的知性の高さ
若手とはいえ、かつてサム・メンデス監督がデビュー作「アメリカン・ビューティー」で作品賞と監督賞をダブル受賞した年齢(35歳)と変わらない。むしろ、若者らしからぬ地に足のついた言動と映画的知性の高さは、愛嬌のあるオタクキャラと相まって、広範囲な支持をもたらした。
【前哨戦での受賞(監督部門)】
・クリティック・チョイス賞
・DGA(米監督組合賞)
その他▼
・アトランタ批評家賞
・ワシントン批評家賞
・シカゴ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ネバダ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・ハリウッド批評家賞
<受賞スピーチ▼>
スティーブン・スピルバーグ
「フェイブルマンズ」
※監督歴50年。巨匠の中の巨匠であり、現代最強の映画人。今作では、自らの少年期を題材に、「映画愛」「親子関係」という原点に立ち返った。監督賞ノミネートは今回で9度目(2年連続)。このうち、1994年「シンドラーのリスト」、1999年「プライベート・ライアン」で受賞を果たしている。76歳。
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞
・米国映画評議会議(NBR)
トッド・フィールド
「TAR(ター)」
打率の高い寡作の監督(兼俳優)。16年ぶりに撮った長編3作目で、3本連続でのノミネートを果たした。
続き▼
長編1作目「イン・ザ・ベッドルーム」は作品賞と脚色賞の候補に。2作目「リトル・チルドレン」も脚色賞候補に。初めてオリジナル脚本で臨んだ今作では作品賞、監督賞、脚本賞の3部門ノミネートとなった。
【前哨戦での受賞】
・ロサンゼルス批評家賞
・ボストン批評家賞
マーティン・マクドナー
「イニシェリン島の精霊」
※自らのルーツであるアイルランドを舞台に、ユニークだが普遍性の高い会話劇を創造した。
俳優たちの熟された演技や撮影場所の風景・空気感の魅力を最大限に引き出した手腕も評価された。
続き▼
英国の演劇作家出身。映画界に入って初期の短編で、オスカー(短編実写映画賞、2006年)を受賞した経歴がある。長編1作目「ヒットマンズ・レクイエム」では脚本賞ノミネート。前作「スリー・ビルボード」では作品賞と脚本賞の候補に。長編4作目となる今作では作品、監督、脚本での3部門ノミネートを果たした。52歳。
リューベン・オストルンド
「逆転のトライアングル」
※2作連続でのカンヌ最高賞(パルムドール)をひっさげてオスカーレースに参戦し、作品賞と監督賞の2部門ノミネートを果たした。
続き▼
監督賞では近年、ノミネート5枠のうちの少なくとも1つに非英語圏の監督が入ることが多いが、前年の濱口竜介監督に続いたのは、「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー監督(ドイツ)や「別れる決心」のパク・チャヌク監督(監督)ではなく、スウェーデン人のオストルンド監督だった。48歳。前作「ザ・スクエア 思いやりの聖域」ではオスカー国際映画賞に輝いている。
※歴代の監督賞→
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主演男優賞
ブレンダン・フレイザー
「ザ・ホエール」
過食で体重270キロになった中年教師を演じた。54歳で演技派としての見事なカムバック。
かつて冒険アクション大作「ハムナプトラ」3部作(1999年~2008年)の主人公として大成功を収めた。オスカー作品賞「クラッシュ」でも渋い脇役を演じた。
しかし、その後、うつ病や離婚などが重なり活動が停滞。ハリウッド映画界の第一線から遠ざかった。
2021年に出演した「クライム・ゲーム」(スティーヴン・ソダバーグ監督)は批評家に好評だったが、話題にならなかった。
状況が激変したのは、2022年9月のベネチア国際映画祭。本作「ザ・ホエール」が出品されると、鬱積した感情を抱える中年ならではの演技に称賛の声が集まった。
その後の賞レースでは、若手オースティン・バトラーらと一進一退の星取ゲームを展開した。
続き▼
フレイザーがかつて主催団体トップによるセクハラ問題を告発したゴールデングローブ賞では、バトラーに敗れた。しかし、重要度が高いクリティック・チョイス賞とSAGアワードでは勝利し、米国内での支持の厚さを示した。
迎えたオスカーでは、同じくカムバック劇が話題となった助演男優賞のキー・ホイ・クァンとともに、栄冠を手にした。
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・クリティック・チョイス賞
・ネバダ批評家賞
・ハリウッド批評家賞
<受賞スピーチ▼>
オースティン・バトラー
「エルヴィス」
※史上最強のロック歌手エルヴィス・プレスリーになりきった。それまでの脇役中心のキャリアをふまえると大抜擢だったが、見事に期待にこたえた。とりわけライブシーンの身のこなしは圧巻。
続き▼
若年期エルヴィスの歌唱場面は、リップシンクでなく自ら唄ったという(後期は本物のエルヴィスとの混成)。
音楽アーティストの自伝ものとしては、「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディ・マーキュリーに扮したラミ・マレックに匹敵する高評価を得た。実在の著名人を再現する演技はオスカーで有利だが、芸歴の若さが響いたかも。31歳。
・英国アカデミー賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
【配信:アマゾン 】
動画集を開く▼
<歌唱シーン「トラブル」▼>
<歌唱シーン「If I Can Dream」▼>
コリン・ファレル
「イニシェリン島の精霊」
※田舎に暮らす素朴なおじさんを演じた。親友に突然絶交された男の戸惑いと、感情の変化を巧みに表現した。かつての「やんちゃなプレイボーイ」の面影はすっかり消え、演技派への成熟ぶりを印象付けた。
続き▼
派手さはないが、物語に説得力をもたらす抜群の演技で、評論家が選ぶ前哨戦での勝率は断トツ1位だった。本年度は「ザ・バットマン」「13人の命」「アフター・ヤン」でも名演を見せ、トータルの活躍ぶりは抜群。46歳。
【前哨戦での受賞】
・ベネチア映画祭
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
その他▼
・米国映画評議会議(NBR)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ニューヨーク批評家賞
・ボストン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ワシントン批評家賞
・シカゴ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
ポール・メスカル
「アフターサン」
※アイルランド出身の27歳。
続き▼
2021年の「ロスト・ドーター」で、脇役として長編映画に初出演した。2作目となる本作は、シャーロット・ウェルズ監督が賞レースの新人監督賞を総なめにして話題となり、初主演となったメスカルも「本年度最もブレイクした俳優」として注目された。
・トロント批評家賞
ビル・ナイ
「生きる LIVING」
※巨匠・黒澤明監督「生きる」のリメイク。日本では配給会社の東宝が「アカデミー賞最有力!」と派手に宣伝し、当サイト選定の誇大広告賞の歴代トップに。
・ロサンゼルス批評家賞批評家賞
※歴代の主演男優賞→
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主演女優賞
ミシェル・ヨー
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
アジア人として史上初の主演女優賞の受賞となった。非白人としては、2002年のハリ・ベリーに続いて史上2人目。
総決算の多面キャラ
異色のインディーSFを大成功へと導いた立役者。
幾多もの異次元宇宙を転々とし、それぞれの世界での「別の自分」を表現した。庶民からセレブ女優、カンフー格闘家、料理人まで、その多面的なキャラ変容は、まさに長いキャリアの総決算。娘や夫への感情表現や、未知なる世界との遭遇で見せる戸惑いと覚醒反応も、本作の魅力を格段に高めた。
香港アクション界からハリウッドへ
1962年マレーシア生まれ。中華系。
1980年代から香港のアクション映画界で大活躍。「ポリス・ストーリー3」でジャッキー・チェンとの見事な格闘コンビを見せ、世界から注目を集めた。
1997年の「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」でボンドガール役を務め、ハリウッドに進出。
「グリーン・デスティニー」で英国アカデミー賞候補に
台湾・米国などの合作「グリーン・デスティニー」(2001年オスカー作品賞候補)の大成功によって、アジア系を代表する名女優として認知され、英国アカデミー賞にもノミネートされた。
近年は、大ヒットコメディ「クレイジー・リッチ」(2018年)やマーベル映画を通じて若い世代にもお馴染み。
現場のリーダー役
本作では、破天荒な脚本のポテンシャルにいち早く気づき、エグゼクティブ・プロデューサーの一人に名をつらねた。
続き▼
撮影現場では、アジアとハリウッドの映画界での豊富な経験を活かして若い監督に有益な助言を与えるなど、チームを引っ張ったという。
候補入りは2人目
アジア系の主演女優賞ノミネートは、1936年のマール・オベロンに続き史上2人目だった。
本選では当初、ケイト・ブランシェットのほうが有利と予想されていたが、「エブエブ」ブームの白熱化とともに支持が拡大。
前哨戦の天王山となるSAGアワードを制し、その勢いに乗って大一番をものにした。
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・米国映画評議会議(NBR)
その他▼
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
・ボストン批評家賞
・ネバダ批評家賞
・ハリウッド批評家賞
<受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<歴代の格闘シーン集▼>
<SAGの受賞スピーチ▼>
ケイト・ブランシェット
「TAR(ター)」
※過去に7度オスカーにノミネートされ2度受賞。今回の演技はキャリアベスト級と称賛されている。レズビアンの天才指揮者を演じた。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・英国アカデミー賞
・ベネチア映画祭 女優賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ワシントン批評家賞
・シカゴ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
ミシェル・ウィリアムズ
「フェイブルマンズ」
※5度目のノミネート。スピルバーグ監督をモデルにした主人公の母親役を演じた。「助演」かと思われたが、「主演」枠で賞レースに参戦した。
アナ・デ・アルマス
「ブロンド」
※マリリン・モンローを題材にしたNetflix映画。作品自体は酷評されたが、演技は称賛された。キューバ出身。「ナイブズ・アウト1」で称賛され、007のボンドガールに。
アンドレア・ライズボロー
「トゥ・レスリー(To Leslie)」
※アルコール中毒の母親を演じた。映画自体はほぼ無名だったが、作品を見た俳優仲間たちが自発的な口コミキャンペーンを展開。今年度のオスカーで全部門を通じて最もサプライズな候補入りとなった。イギリス人。41歳。「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の脇役などで知られる。
※歴代の主演女優賞→
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助演男優賞
キー・ホイ・クァン
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
「グーニーズ」「インディ・ジョーンズ2~魔宮の伝説」で世界的に有名になったアジア系子役が、20年ぶりに俳優業に復帰。ハリウッドに旋風を巻き起こした。
人情味とクールさのギャップ
気弱で頼りない中年男性から、地球を救う戦士、ダンディー伊達男などへと変貌する役柄。
コミカルな立ち振る舞い、キレのある格闘技アクション、心を打つ愛情表現により、観客の心をつかんだ。
ベトナム移民
ベトナム生まれの51歳。名前の正確な発音はキー・フイ ・クァン。子役時代の芸名なジョナサン・キー。中華系。
4歳だった1975年、混乱期のベトナムからボートで逃れ、香港の難民キャンプに1年滞在。米国へ移住した。
配役がなく裏方に
10代前半でハリウッドスターに。しかし、アジア系向けの配役が少なかったこともあり、俳優の仕事に恵まれず、小さなオーディションにも落ちまくったという。
続き▼
技術を磨き続ける
それでも映画への情熱を捨てきれず、大学で映画学を専攻し、卒業後は裏方の仕事に従事した。カンフーなどの技術も磨き、スタント指導者や撮影現場の通訳、助監督として食いつないだ。
そんな元スターに、若き監督が目をつけ、うってつけの役をオファーした。
愛されキャラ
前哨戦で独走。一連の授賞式での感動的なスピーチは、世界の映画ファンを泣かせた。飾らずに喜怒哀楽を表わす「愛されキャラ」ぶりにも注目が集まり、本年度賞レースの好感度ナンバー1に。
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード
・クリティック・チョイス賞
・NY批評家賞
その他▼
・ゴールデングローブ賞
・ロサンゼルス批評家賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ボストン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ワシントン批評家賞
・シカゴ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ネバダ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・ハリウッド批評家賞
・ゴッサム賞
<受賞スピーチ▼>
<受賞後の会見▼>
動画集を開く▼
<格闘シーン▼>
<子役時代▼>
<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ▼>
バリー・キオガン
「イニシェリン島の精霊」
・英国アカデミー賞
ブレンダン・グリーソン
「イニシェリン島の精霊」
・米国映画評議会議(NBR)
ジャド・ハーシュ
「フェイブルマンズ」
※主人公の少年に教訓を説く親戚役。短い出演時間ながらキーパーソンとして強烈な印象を残した。「普通の人々」以来42年ぶりノミネート。
ブライアン・タイリー・ヘンリー
「その道の向こうに」
※歴代の助演男優賞→
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助演女優賞
ジェイミー・リー・カーティス
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
税務署の職員をコミカルに演じた。主演ミシェル・ヨーのカウンター役として独特な存在感を発揮。笑いと泣きのシーンに厚みをもたせ、娯楽性を高めた。
ホラー映画の金字塔「ハロウィン」(1978年)で女子高生役として銀幕デビューして以来、ホラーやコメディで活躍を続けてきた。今回初のオスカーノミネートを果たした。
賞レースでは、エブエブ組のチアリーダーとして陣営を大いに盛り上げた。64歳。両親ともに俳優の生粋ハリウッド人。
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・ネバダ批評家賞
<受賞スピーチ▼>
アンジェラ・バセット
「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」
※映画「TINA」(1993年)で大物歌手ティナ・ターナーを演じて主演女優賞にノミネートされて以来、29年ぶりの候補入りを果たした。
続き▼
この間、「マルコムX」「ボーイズン・ザ・フッド」「ノトーリアス・B.I.G」など重要な黒人映画に出演し、ハリウッドの多様性を支えてきた。初代「ブラックパンサー」では主人公(チャドウィック・ボーズマン)の母親役に。ボーズマン亡き後の続編となった今作では、王国を率いる女王役として申し分のない貫禄と存在感を発揮した。マーベル映画として初めての俳優部門ノミネート。64歳。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞
・ハリウッド批評家賞
ケリー・コンドン
「イニシェリン島の精霊」
※主人公の妹を演じた。田舎の島で同居の兄を優しく支えながら、聡明さをにじませるキャラクター。マーティン・マクドナー監督とは、18歳のときに舞台演劇に出演して以来の仕事仲間。アイルランド人。40歳。
【前哨戦での受賞】
・英国アカデミー賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ボストン批評家賞
・ワシントン批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
ステファニー・シュー
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
※虚無主義を提唱する特異なキャラクターをシニカルに表現し、見せ場をつくった。移民2世の人物像をリアルに好演。若者からカルト的な支持を集めた。32歳。主にテレビや舞台で活躍した後、本作で大ブレイクした。母親が台湾からの移民。
ホン・チャウ
「ザ・ホエール」
※引きこもりの主人公(ブレンダン・フレイザー)が唯一心を許す友人を演じた。ベトナム系。難民キャンプで生まれ、家族で米国に移住した。「ダウンサイズ」(2017年)でSAG助演女優賞ノミネート。43歳。
※歴代の受賞者(助演女優賞)→
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脚本賞
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
脚本:ダニエルズ(兼監督)
2人の監督の頭の中から生まれた独創的アイデアの脚本。「家族」をめぐる日常的な話題を、多元宇宙(マルチバース)を舞台とする戦いに置き換え、娯楽性の高いストーリーとして成立させた。奇抜でめまぐるしい展開ながら、最後は本筋のテーマへと観客をひきこみ、心を動かす。英語と中国語の多言語脚本。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・ワシントン批評家賞
・ネバダ批評家賞
・ハリウッド批評家賞
・WGA(米脚本家組合賞)
「イニシェリン島の精霊」
脚本:マーチン・マクドナー(兼監督)
※舞台出身のマクドナー監督らしい会話劇
【前哨戦での受賞】
・ベネチア国際映画祭 脚本賞
・ニューヨーク批評家賞
・米国映画評議会議(NBR)
・ボストン批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞
・ヒューストン批評家賞
「TAR(ター)」
脚本:トッド・フィールド(兼監督)
・ロサンゼルス批評家賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
「フェイブルマンズ」
脚本:スティーブン・スピルバーグ(兼監督)&トニー・クシュナー
「逆転のトライアングル」
脚本:リューベン・オストルンド(兼監督)
※歴代の脚本賞→
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脚色賞
「ウーマン・トーキング 私たちの選択」
脚本:サラ・ポーリー
※カナダの女性作家による2018年の同名小説を、サラ・ポーリー監督が脚色した。原作小説は、南米ボリビアで起きた連続女性暴行事件から着想を得ているという。
女性パワーの結集がテーマとなっている。
サラ・ポーリー監督は「アウェイ・フロム・ハー君を想う」(2006年)でも脚色賞にノミネートされており、今回2度目のオスカー候補入りとなった。作品賞とのダブルノミネート。
44歳。カナダ人。もともとは人気俳優だったが、現在は監督・脚本業に専念している。ハリウッドにおける性差別問題を俳優引退の理由の一つに挙げている。熱心な活動家としても知られる。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・シカゴ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ハリウッド批評家賞
・WGA(米脚本家組合賞)
「西部戦線異状なし」
脚本:イアン・ストーケル、レスリー・パターソン
国:ドイツ
・英国アカデミー賞
【配信:ネトフリ 】
「トップガン マーヴェリック」
脚本:アーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン・シンガー、クリストファー・マッカリー
「ナイブズ・アウト:グラスオニオン」
脚本:ライアン・ジョンソン
・ワシントン批評家賞
【配信:ネトフリ 】
「生きる LIVING」
脚本:カズオ・イシグロ
※東宝が「アカデミー賞最有力」という大胆な広告を打ち、当サイトが選ぶ「誇大広告賞」を受賞。歴代トップの誇大ぶりだった。
※歴代の脚色賞→
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アニメ賞
「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」
【配信:ネトフリ 】
「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年)でオスカー作品賞を受賞した鬼才ギレルモ・デル・トロによる最新版ピノキオ。ミュージカル。Netflixにとって初の長編アニメ賞となった。
ストップモーション・アニメ
嘘をつくと鼻がのびる木の人形の冒険物語。人形や物体を少しずつ動かしながら撮影していく「ストップモーション・アニメ」の手法を用いた。独特な作風と完成度の高さが絶賛された。
中止の危機をネトフリが救う
トロ監督の個人的な情熱によってプロジェクトがスタート。何度も中止寸前に追い込まれたが、Netflixが資金を提供したことで製作にこぎつけた。
ジブリの影響
日本の怪獣やアニメなどをこよなく愛するトロ監督だが、本作をつくるにあたっては、ジブリのアニメ作品を意識したという。
配給:Netflix
制作:Netflixアニメーションほか
<前哨戦>
・クリティック・チョイス賞
・英国アカデミー賞
・アニー賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞
・ヒューストン批評家賞
・ハリウッド批評家賞
「マルセル 靴をはいた小さな貝」
※インディー映画。ロッテン・トマトの批評家支持率98%で年間トップ級。しゃべる貝殻であるマーセルが、はぐれた家族を探す。心温まる系。
配給:A24
【前哨戦での受賞】
・ニューヨーク批評家賞
・米国映画評議会議(NBR)
・アニー賞 独立系アニメ賞
・ハリウッド批評家賞 独立系映画賞
「私ときどきレッサーパンダ」
【ピクサー】
※ポップな成長物語。主人公はカナダのトロントに住むアジア系少女(13歳)。友たちとオタク活動に励む一方で、厳格な親が敷いたレールに乗っかり、本当の自分を抑えている。ある日突然、レッサーパンダに変身する。舞台は2002年。日本のアニメへのオマージュがたっぷり。
・フロリダ批評家賞
・トロント批評家賞
【配信:ディズニープラス 】
「長ぐつをはいたネコと9つの命」
【ドリームワークス】
(日本公開:2023年3月17日)
※「シュレック」シリーズから派生した物語。2011年の「長ぐつをはいたネコ」の続編。命が9つある猫プスが主人公。冒険を重ねて8回死んでしまい、残りは1回に。
「ジェイコブと海の怪物」
【Netflix】
※怪物を退治しようとする船乗りと、1人の少女の冒険を描く。水や怪物の質感の表現が称賛された。
【配信:ネトフリ 】
※歴代のアニメ賞→
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国際映画賞
「西部戦線異状なし」
国:ドイツ
ドイツ語の戦争映画。原作はドイツ生まれの作家エリッヒ・レマルクが1929年に出版したベストセラー小説。
ハリウッドのスタジオが92年前にも映画化しており、そのときはアカデミー作品賞(1931年)を受賞した。
今回、小説の母国ドイツでの初の映画化となった。第一次世界対戦の残忍さを世界に伝えた反戦ストーリーが、現代の最高レベルの映画技術で蘇った。
ドイツ軍の志願兵として戦線に乗り込んだ主人公が、塹壕(ざんごう)での毒ガス、機関銃、戦車など思いもかけなかった凄惨な経験を重ねる。
ロシアの対ウクライナ侵略戦争による悲劇が日々伝えられるなか、極めて生々しく、心に突き刺さる上質な一本として支持を集めた。
前年の「ドライブ・マイ・カー」(日本)のように、作品賞と国際映画賞のダブルノミネートを果たした。技術部門でも票を集め、計9部門での候補入り。このうち4部門で受賞した。
外国語映画として異例の強さを見せた。Netflixの本年度イチオシだった。
監督:エドワード・ベルガー
配給:ネットフリックス
【前哨戦での受賞】
・英国アカデミー賞 非英語作品賞
【配信:ネトフリ 】
「アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判」
国:アルゼンチン
※法廷ドラマ。南米アルゼンチンで軍事政権が終了した2年後の1985年、2人の弁護士が軍政による犯罪の追及に動く。
(サンティアゴ・ミトレ監督)
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞 非英語作品賞
・ベネチア国際映画祭 国際映画批評家連盟賞
【配信:アマゾン 】
「CLOSE/クロース」
国:ベルギー
※少年2人の友情の行方
監督:ルーカス・ドン
(日本公開:2023年7月14日)
・カンヌ国際映画祭グランプリ(2位)
・米国映画評議会議(NBR)
「EO イーオー」
国:ポーランド
※主人公は一匹のロバ。活躍していたサーカス団から外の世界へ。
(日本公開:2023年5月5日)
・ニューヨーク批評家賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
(イエジー・スコリモフスキ監督)
「クワイエット・ガール(The Quiet Girl)」
国:アイルランド
※アイルランドの田舎の9歳の少女が主人公。貧しいのに子供が次々にできる大家族の末っ子。夏休みの間、おばの家に預けられる。
※歴代の国際映画賞→
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ドキュメンタリ賞
「ナワリヌイ」
(日本公開:2022年6月)
ロシアのプーチン政権を批判し、毒殺未遂で死にかけた弁護士アレクセイ・ナワリヌイ氏(46歳)の記録。
プーチン政権による毒殺未遂
プーチン政権による毒殺計画は、2020年にロシア上空の旅客機内で実行された。何者かに毒をもられたナワリヌイは昏睡状態に陥り、飛行機は緊急着陸。病院に搬送された。
カメラがとられた犯人特定の瞬間
そこから、本作の取材班が密着する。移送先のドイツの病院で意識を取り戻したナワリヌイは、犯人の特定へと動き出す。
旅客機の搭乗者名簿など数々のデータを手掛かりに、実行犯グループと思われる人物たちを割り出し、直接電話をかけて真相究明を図る。果敢な行動の一部始終をカメラがとらえた。
命の危険にさらされながら
スパイ映画のような緊迫感と臨場感。命の危険にさらされながらもユーモアと笑顔を失わず前に進もうとするナワリヌイと、彼を支える家族やプロフェッショナルな仲間たちの姿が胸を打つ。
監督はカナダ人のダニエル・ロアー(30歳)。日本でも劇場公開された「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」(2019年)で称賛された。
授賞式に妻が登壇
オスカー授賞式では、監督らとともにナワリヌイ氏の妻が登壇。ロシアの刑務所に投獄されている夫の身の安全の確保を訴えた。
【前哨戦での受賞】
・PGA(全米プロデューサー組合賞)
・英国アカデミー賞
・サンダンス映画祭フェイバリット賞
【配信:アマゾン 】
<予告編▼>
<監督とナワリヌイ氏の妻ユリア氏の受賞スピーチ▼>
動画集を開く▼
<日テレのニュース▼>
<町山智浩の解説▼>
「オール・ザ・ビューティ&ザ・ブラッドシェッド(All the Beauty and the Bloodshed)」
監督:ローラ・ポイトラス
※ポイトラス監督(女性)は「シチズンフォー スノーデンの暴露」で有名。同作で2015年オスカーを受賞している。
今作では、米国の著名な女性写真家ナン・ゴールディンの仕事ぶりを追った。
続き▼
ゴールディンは社会の不正を追及してきた社会派フォトジャーナリストとして尊敬されている。主たる題材となるのは、ゴールディンが告発した富豪サックラー家の没落。米国の麻薬系鎮痛薬(オピオイド)危機を招いた製薬会社のオーナー一族の悪行があぶり出される。ベネチア国際映画祭において、作品賞を受賞した。ドキュメンタリー映画として史上初の快挙だった。
【前哨戦での受賞】
・ベネチア国際映画祭 作品賞(ドキュメンタリーとして史上初)
・ニューヨーク批評家賞
・フロリダ批評家賞
「ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦」
※フランス火山学者の夫婦の実録。調査・研究のためのデータや映像を残すために、噴火中の火山に突っ込んでいく。日本の火山にも挑む。2人の愛情物語でもある。
【配信:ディズニープラス 】
「オール・ザット・ブリーズ(All That Breathes)」
※ニューデリーの兄弟が、公害による汚染でダメージを負った鳥(トビ)たちを救う。
製作国:インド、英、米
言語:ヒンドゥー語
【前哨戦での受賞】
・サンダンス映画祭 ドキュメンタリー賞
「ハウス・メイド・オブ・スプリンターズ(A House Made of Splinters)」
※ウクライナの保護施設の子供たちと、子供たちを守ろうとする大人たちの記録。
製作国:ウクライナ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド
言語:ウクライナ語、ロシア語
【前哨戦での受賞】
・サンダンス映画祭 ドキュメンタリー監督賞
予告編→
※歴代のドキュメンタリー賞→
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※2023年の全部門を見る→
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2022年(第94回)
( 23年↑ | 22年 | 21年↓ )
■ 作品賞:
「コーダ あいのうた」
■ 最多受賞:
「DUNE/デューン 砂の惑星」(6部門)
■ 最多ノミネート:
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(11部門12個)
日本映画「ドライブ・マイ・カー」が作品賞など4部門ノミネート
日本映画「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)が作品賞、監督賞、脚色賞、国際映画賞の4部門でノミネートされ、このうち国際映画賞を受賞しました。
作品賞ノミネートは邦画として史上初めて。脚色賞ノミネートも史上初でした。
作品賞は、前哨戦で圧倒的な強さを見せていた「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が敗れ、「コーダ あいのうた」が受賞しました。
作品賞 、監督賞 、主演男優賞 、主演女優賞 、助演男優賞 、助演女優賞 、
脚本賞 、脚色賞 、国際映画賞 、アニメ賞
( 23年↑ | 22年 | 21年↓ )
2022年
部門
受賞
ノミネート
作品賞
「コーダ あいのうた」
【配信:アマゾン 】
監督:シアン・ヘダー
涙と笑いあふれる感動作。漁師一家の中でただ1人耳が聞こえる女子高生を主人公に、家族の絆や成長を描く。
2014年のフランス映画のリメイクながら、米国らしい陽気でエネルギッシュな脚色・演出により、突き抜けた一本になった。
コロナ禍で多くの人が辛い目にあっていた時代。温かみのあるストーリーが支持された。
役者たちの演技も絶賛された。主人公の家族のろう者3人は、いずれも聴覚にハンディのある俳優が演じた。
独立系(インデペンデント)の作品であり、当初は有力視されていなかった。
しかし、作品の知名度が高まるにつれて応援ムードが盛り上がり、前哨戦の終盤で急浮上。
大本命「パワー・オブ・ザ・ドッグ」を破った。
続きを開く▼▼
<投票方式が有利に>
前哨戦で圧倒的に強かったパワー・オブ・ザ・ドッグは、芸術性は高いものの、好き嫌いが分かれる傾向にあった。
候補作10本に順位を付けさせる独特な投票方式が、「みんなに好かれる映画(嫌われない映画)」の典型といえる本作に有利に働いたようだ。
アート系の「ROMA/ローマ」が、大衆系の「グリーンブック」に敗れた2019年と類似する結末といえる。
<サンダンス映画祭>
本作の製作費は11億で、オスカー受賞映画としてはかなり小規模だった。(それでも前年の作品賞の「ノマドランド」の2倍ではある)。米インデペンデント系映画賞「サンダンス映画祭 」で史上最多となる4冠を達成。ネット配信に参入して間もない米IT企業アップルが、これまたサンダンス史上最高となる26億円で配給権を買い取った。
サンダンス映画祭の出品作としても初の作品賞。ろう者が主な出演者となっている映画としても初めて。
配給元アップルは1999年にネット動画配信に参入したばかり。
アップルとして初の作品賞。ネット配信会社のオリジナル作品としても初めて。
先発組のNetflixとアマゾンの先を越した。
<90年ぶり>
なお、3個以下のノミネートしか得ていない映画の作品賞受賞は、1932年(第5回)の「グランド・ホテル」以来90年ぶりとなった。
<受賞結果>
受賞部門
作品賞
助演男優賞 トロイ・コッツァー
脚色賞
<受賞スピーチ▼>
<挿入歌▼>
<予告編▼>
(日本公開:2022年1月21日)
「ドライブ・マイ・カー」
【日本映画】
監督:濱口竜介
※日本映画として史上初の作品賞ノミネート
受賞結果を開く▼
作品説明を開く▼
ドライブ・マイ・カーは、濱口竜介監督の2作目の商業映画。
濱口監督は熱心な映画ファンから長年にわたって高い評価を得てきた。
大学院の卒業制作から早々に注目を集め、その後も、自主制作で手掛けた作品が、コンスタントに海外や国内の小規模インデペンデント向け映画祭で紹介された。ネットで資金を集めながら完成させた実験的な作品「ハッピーアワー」(2015年)が海外で様々な賞を獲得。続く「寝ても覚めても」(2018年)により、満を持しての商業デビューを果たした。
村上春樹を短編を、3時間の超大作に
本作の原作は村上春樹の短編小説。妻を失い、喪失感を抱えて生きる男の悲しみと再生を、緻密な脚本で描く。上映時間はなんと3時間。
多言語の芝居を題材に取り入れ、言葉の壁を越えた意思疎通の深さに迫った。
ストーリー
主人公は舞台の演出家。俳優でもある。車を運転するのが好きな男で、自分の車に愛着を持っている。
東京で妻と満ち足りた日々を送っていたが、突然、妻がこの世を去る。
その2年後、広島で行われる国際演劇祭で芝居の監督を務めることになった。愛車を運転して現地入りしたが、主催者から「車を自分で運転してはいけない」と告げられ、若い運転手を紹介された。このドライバーは寡黙な女性で、ある過去をもっていた。
原作・村上春樹
濱口監督は映画化の許諾を得ようと村上春樹氏に手紙を送った。その際に、脚本で独自の解釈を加える意向も伝えたという。脚本づくりにおいて最も重視したのは出演者の“感情の移ろい”だったという。
製作費1億5000万円
製作費1億5000万円。日本映画の平均製作費3.5億円と比べても低予算だった。数十億円の製作費が相場のハリウッドと比べると、圧倒的に小規模。
プロデューサーは山本晃久(てるひさ)
製作会社は「TSUTAYA」グループのC&Iエンタテインメントなど。
プロデューサーは山本晃久(てるひさ)(40歳)。村上春樹ファンであり、濱口監督のポテンシャルに早くから目をつけてきた山本プロデューサーが「村上の短編小説の映画化」を濱口に提案したことから、企画が立ち上がった。
日本の独立系映画会社「ビターズ・エンド」
配給と制作幹事を担当した「ビターズ・エンド」(東京、社長:定井勇二社長)は、小規模のアート作品を日本の映画ファンに届け続けてきた貴重な存在。ミニシアター文化を支える柱の一つとなってきた。
文化的な価値にこだわった地道な取り組みが、世界で大きく花開いた。
オスカーまでの道のり
カンヌでデビュー
ドライブ・マイ・カーは2021年7月のカンヌ国際映画祭で日本映画初の脚本賞を受賞。その他のマイナーな賞も含めて計4冠に輝き、世界に華々しくデビューした。
米国の評論家たちが火をつけた
その数か月後にスタートした米国の映画賞レースに参戦。映画専門のジャーナリストや評論家から大絶賛を浴びた。
とくにニューヨーク・タイムズ、LAタイムズ、バラエティ誌など、影響力の大きい有力メディアの映画担当記者が猛烈にプッシュした。
「3大批評家賞」で全勝
権威の高い全米映画批評家協会、ニューヨーク、ロサンゼルスの「3大批評家賞」では、いずれも作品賞(国際映画賞でなく作品賞!)を獲得。これは、英語以外の映画として初の快挙だった。ハリウッドの有力作を差しおいての日本映画の最高賞獲得は、驚きをもって迎えられた。
地味な日本語の会話劇
とはいえ、ストーリーは地味で、上映時間も3時間という長尺。日本語による会話劇ということもあり、コアな映画通(シネフィル)だけの熱狂にとどまるかと思われた。
目の肥えた映画人も大納得
しかし、深層心理に訴えるような普遍性、独創的な語り口、観客を温かく包み込むような人間味は、目の肥えたハリウッドの映画人たちの心も動かした。最高峰のアカデミー賞において、日本映画として史上初の作品賞ノミネートを達成。監督賞、脚本賞、国際映画賞と併せて4部門での候補入りという歴史的偉業を成し遂げた。
予告編→
【配信:アマゾン 】
(2021年8月公開)
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
監督:ジェーン・カンピオン
※最多ノミネート(11部門12個)
受賞結果を開く▼
ノミネート
作品賞
主演男優賞
助演男優賞 コディ・スミット・マクフィー
助演男優賞 ジェシー・プレモンス
助演女優賞
脚色賞
撮影賞
作曲賞
編集賞
音響賞
美術賞
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心理ドラマ兼スリラー。モダン西部劇。1920年代の米国の牧場を舞台に、生々しい愛憎ストーリーを静かなタッチで描いた。
優れた物語構築
優れた物語の構築力と深い人物描写、そして濃密な映像表現が絶賛された。
「完璧さ」と「独創性」を徹底的に追及した作家路線の傑作として、全米の評論家が選ぶ各賞で圧倒的な勝率を達成。
さらに、記者が投票するゴールデングローブ賞でも強敵「ベルファスト」を破り、オスカー前哨戦を完全にリードした。
革命的な女性監督
ジェーン・カンピオン監督は、女性として3人目となる監督賞を受賞した。ニュージーランド出身。
「ピアノ・レッスン」で
1994年 アカデミーの作品賞、監督賞などにノミネートされ、革命的な女性監督として注目を集めた。
このときは「
シンドラーのリスト 」(スピルバーグ監督)があまりにも強力だったため、作品賞、監督賞ともに逃した(脚本賞は受賞)。
それから28年後となる本年度は、再びスピルバーグ監督(ウエスト・サイド・ストーリー)と作品賞、監督賞を争った。
10年ぶりの映画
本作の製作は、2017年にカンピオン監督が義母からもらった原作小説にハマったのが発端だった。
活動の場をテレビドラマに移し、映画づくりから10年ほど遠ざかっていた彼女は、再びリスクの高い映画製作に臨むことを決意。
個人的に信頼する英、豪、カナダのプロデューサーらを巻き込み、「新生カンピオン組」の布陣をつくった。
さらに、母国ニュージーランド政府や豪・英の政府系機関からの資金支援も取り付けた。
世界の英才とNetflixマネー
しかし、革命家カンピオンが思うがままのビジョンを映像化するためには、まだ資金が足りなかった。
そこに登場したのが、米Netflix(ネットフリックス)だった。
野心的な構想に飛びついた同社が巨額資金の提供を申し出たことで、プロジェクトは一気に動き出す。
撮影中にコロナ禍に見舞われたが、Netflixは追加支援を惜しまなかったという。
世界の英才と潤沢なNetflixマネーの組み合わせは、まさに今日的といえる。
精緻な作り込み
テーマがややダークで、一見ストーリー展開が地味。このため、一般のNetflixユーザーの反応は当初は少し鈍かった。
しかし、「見返せば見返すほど精緻な作り込みに圧倒される」という人も多く、着実に支持を広げた。
「万人受け」のコーダに敗れる
アカデミー作品賞の獲得に向けて最大の難関になったのが、その独特な投票システムだ。
ベストの作品を一つ選ぶのでなく、全ノミネートに順位を付ける方式が採用されているため、
多数の投票で2位、3位以上に入らなければ勝てない。
その点、万人受けしやすいコーダより不利だったといえる。
予告編→
【配信:ネトフリ 】
(日本公開:2021年12月Netflix配信)
「ベルファスト」
監督:ケネス・ブラナー
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監督の半自伝
北アイルランド出身のケネス・ブラナー監督が、自らの少年期に基づいて描いた半自伝。白黒映画(一部カラー)。
紛争下の少年の日常
社会を二分する北アイルランド紛争下の首都ベルファスト(1969年)を舞台に、日常を生きる少年と家族を描く。
政治的・宗教的な対立に揺れる地域や大人たちを、子供の純心な視点から写し出す。
3世代家族の絆
チャーミングな家族物語でもある。
少年、両親、祖父母の3世代の絆が、温かくノスタルジックな映像とともに語られる。
トロントで好スタートだったが・・
オスカー前哨戦のトップを切って行われたトロント国際映画祭で観客賞を受賞。
以来、ややマニア的な「パワー・オブ・ザ・ドッグ」に対抗しうるハート・ウォーミング系作品として期待を背負ってきた。
しかし、トロント以後は目立った勝利がなかった。
ROMAより入りやすい?
2019年の作品賞にノミネートされた「ROMA(ローマ)」と同じく監督自身の回想劇であり、かつ白黒映画という共通点もある。
ただ、淡々とした作風で、ストーリー展開が退屈だと感じる人も多かったROMAに比べると、入り込みやすい大衆作品。
映画愛のシーンも
「映画愛」を感じさせるシーンもあり、オスカーとの相性も良好。
高齢アカデミー会員へのアピール度も強いと見られていた。
弱点は、強烈なインパクトに欠けること。
監督・俳優・脚本家として候補歴
映画監督兼俳優のブラナー氏は、過去5度アカデミー賞にノミネートされている。
監督デビュー作「ヘンリー五世」(1989年)で監督賞と主演男優賞にダブルノミネート。
そのあと短編映画賞と脚色賞で候補になり、直近では「マリリン 7日間の恋」(2011年)で助演男優賞にノミネートされた。
新記録「1人で累計7つの異なる部門でノミネート」
今回は作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされ、「1人で累計7つの異なる部門でノミネート」というアカデミー賞の新記録を樹立した。そして、ついに脚本賞で受賞を果たした。マーベル映画「ソー」の1作目(2011年)の監督としても有名。
予告編→
【配信:アマゾン 】
(日本公開:2022年3月25日)
「ドリームプラン」
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
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観客支持率トップの98%
大多数の観客が称賛する一作。ロッテン・トマトの一般観客の評価スコアは候補作の中でトップの98%。
ハリウッド・スタジオ製の王道
オスカーになじみやすい家族物語であり、スポーツもの。
本年度の作品賞ノミネートの中で、最もアメリカン・ドリーム的なストーリーでもある。
ハリウッド大手スタジオ(ワーナー)による王道作品といえる。
実在の父親がモデル
テニスの世界トップに君臨した姉妹(姉ビーナス・ウィリアムズ、妹セリーナ・ウィリアムズ)の父親の姿を描く。
実話をベースにしている。
主人公リチャード・ウィリアムズはテニスの素人ながら、娘2人に幼少期からテニスを徹底指導。
娘が力をつけてくると、 経済的に貧しかったにもかかわらず、強引なやり方で超一流のコーチをつけることに成功し、鮮烈なプロデビューへと導いた。
伝説的な姉妹の大活躍の土台をつくった熱血パパとして知られる。
裕福な白人層が中心だった米国テニス界に風穴を開けた存在でもある。
「王様」のような立ち振る舞い
本作は、リチャードの独特な「子育て法」に焦点があてられている。
目先のゲームや一時的な活躍よりも、娘たちの長期的な成功を優先させ、学問や人格形成を重視した教育に邁進する。
一方で、破天荒で独善的な態度により、周囲と様々な軋轢(あつれき)を起こしていく。
その立ち振る舞いはまるで「王様」。映画の原題も「王様リチャード(King Richard)」になっている。
低所得層の苦闘
少数派人種や低所得層の苦労・努力がテーマの一つ。
家族の団結や厚い信仰心もしっかりと描写されている。
米国で重視されがちな価値観が前面に出ており、
変化球のかたまりのような「パワー・オブ・ザ・ドッグ」とは対照的。一般観客が入りやすい作品であることが、作品賞レースで有利に働く可能性がある。
ただ、称賛の嵐の中で、「ややありがちな映画」との声も。
監督は無名の若手
主演ウィル・スミスの熱演ぶりが、見どころの一つ。
3度目のノミネートにして初の主演男優賞を獲得した。
助演女優賞ノミネートの妻役アーンジャニュー・エリスも、限られた見せ場で観客の心をわしづかみにする。
監督はほぼ無名の若手レイナルド・マーカス・グリーンが務めたが、名演出と堅実なまとめぶりが光る。
臨場感のあるテニスシーンも好評。
ワーナーの「配信重視」路線
米国では劇場公開と同時にネット配信された。
配給会社ワーナーが自社の配信サービス「HBOマックス」の加入者を増やすため、
2021年のすべての映画を「ネット同時公開」としたためだ。
この方針をめぐっては、映画界から強い反発が出た。
このため、本作は「親劇場派(反ネット配信業者派)」の票の受け皿としてやや説得力に欠ける面があった。
【あらすじ】
米国ロサンゼルス近郊の貧困地区コンプトンで暮らすリチャードはある日、
テレビで女子テニス選手が巨額の賞金を受け取るのを見て、
自分たちも娘をもうけ、彼女たちをプロテニス選手に育てることを決意する。
独自の教育論に基づく約80ページの「プラン(計画書)」を作成。
そのプランに基づいて夫婦で娘たちにテニスを教え始める。
予告編→
【配信:アマゾン 】
(日本公開:2022年2月23日)
「ウエスト・サイド・ストーリー」
監督:スティーブン・スピルバーグ
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巨匠スピルバーグ監督の映画として、
11作目 の作品賞ノミネートとなった(※過去の作品賞ノミネートは「ジョーズ」「ET」「カラーパープル」「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」「ミュンヘン」「戦火の馬」「リンカーン」「ブリッジ・オブ・スパイ」「ペンタゴン・ペーパーズ」)。
原版は作品賞など10部門独占
原作は、1957年初演の傑作ミュージカル劇。
今回が2度目の映画化となる。
最初の映画版となった1960年の「
ウエスト・サイド物語 」は、アカデミー賞で作品賞を含む10部門を独占。
ミュージカル映画史に残る絶対的な名作として語り継がれてきた。
それだけに、今回の2度目の映画化については、「何故また作るのか」という懐疑的な声が多く聞かれた。
最高級の映画テクニック
しかし、いざ公開されると「最高に眩(まぶ)しく、ゴージャス」などの称賛の声が相次いだ。
今の映画界が持ちうる最高級のテクニックを結集。オリジナル版を現代風に洗練させつつ、その精神をビビッドに蘇らせたことで、往年のファンから若い世代に至るまで幅広い支持を得た。
踊りの振り付けもバージョンアップされており、躍動感あふれるダンスシーンは圧巻。
劇場マジック
スピルバーグ監督にとって初めてのミュージカル。10歳のときに両親が買ってきたミュージカル版のレコードをボロボロになるまで聴いて以来、この劇を愛し続けてきたという。
それだけに、パワフルな演出や1シーンごとの徹底した仕上げぶりはかつてないほどの情熱を感じさせる。スペクタクル作品ならではの劇場マジックも存分に味わえる。
助演女優賞を受賞
ヒロインのマリア役を演じたレイチェル・ゼグラーは新人ながら高い評価を得た。
それを上回る大絶賛の嵐となったのが、アニータ役のアリアナ・デボーズ。助演女優賞を受賞した。
オリジナル版でアニータを演じ、今回90歳にして別の役柄で再出演したリタ・モレノも見事。
リメイクは不利
作品賞レースでは、オスカーらしい華々しさがあるという点で有利だが、リメイクである点はやはり不利だと見られた。
オリジナル版をリアルタイムに体験している高齢アカデミー会員の心をどれだけ掴むかが焦点だった。
貧困街の愛の物語
ニューヨークの下町「ウエスト・サイド」で、イタリア系とプエルトリコ系の不良少年グループが対立。その中で生まれる愛の物語。
恋愛悲劇の最高傑作として知られるシェークスピアの「ロミオとジュリエット」を、1950年代の貧困街に置き換え、アメリカ社会の抱える不満や苦悩を描き出した
予告編→
【配信:アマゾン 】
(日本公開:2022年2月11日)
「DUNE/デューン 砂の惑星」
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
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未来の宇宙を舞台とするSF大作。
現在も絶大な人気を誇る原作小説の独創的な世界観を、驚くべき精密さで映像化した。
ドゥニ・ビルヌーブ監督。
主演はティモシー・シャラメ。
原作となった伝説的なSF小説『デューン 砂の惑星』(フランク・ハーバート作)は、1965年に出版された。
これまで多くの監督が映画化に挑戦しながら、プロジェクトが途中で頓挫したり、出来栄えがいま一つだったりと、成功には至らなかった。
そんな歴史的な難題に、「ブレードランナー2049」「メッセージ」で知られるドゥニ・ビルヌーブ監督が挑んだ。
本作は、何よりも映像の美しさが称賛の的となった。
洗練された視覚デザインと描写により、ユニークな世界観を構築。
別の惑星にいるかのような錯覚を観客に覚えさせる。
砂漠のスペクタクルも見事。中東の砂漠で挑んだ撮影が、驚愕の映像体験へとつながった。
日本では興行的に伸び悩んだが、欧州で大ヒット。中国でも堅調だった。
母国アメリカでは、劇場公開と同時にネット配信されたこともあって当初は伸び悩んだものの、1か月かけて1億ドルの大台を突破。
コロナ禍という悪条件のなか、最終的には全世界で400億円以上を稼ぎ、本年度の作品賞ノミネートの中で唯一の「特大ヒット作」となった。
本作は2部構成のシリーズの第一弾と位置づけられている。
このため、ストーリーの進展が序盤の段階にとどまったという印象を持つ人も多い。
次作でどのようにまとめる上げるのか、監督の手腕が注目されるところであり、「1作目だけで作品賞を与えるのは時期尚早」との声もあった。
あの大傑作シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング」でさえ、「パート1」と「2」では作品賞ノミネートにとどまり、完結編の「3」でようやく受賞を果たした。
10ノミネートのうち、視覚効果賞、撮影賞、作曲賞、編集賞、美術賞、音響賞の6部門で受賞を果たした。断トツの本年度最多受賞。
2016年のオスカーで、作品賞を逃しながら技術系6部門を制した「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を彷彿とさせる。
主人公は、銀河を支配する「皇帝」に仕える大物一族の息子。未来をぼんやりと予見する力を備えている。豪華なオールスターキャストが登場する超大作。
予告編→
【配信:アマゾン(字幕版) 】
【配信:アマゾン(吹替版) 】
メイキング映像→
(日本公開:2021年10月15日)
「リコリス・ピザ」
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
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ノスタルジックな青春映画。
1970年代のカリフォルニアが舞台。
15歳の少年と、25歳の女性の恋を描く。
ポール・トーマス・アンダーソン監督(51歳)の9作目。
自らが生まれ育った街とその時代を題材にしたパーソナルな一作。
登場人物や出演者にも、自分になじみのある人を多く起用した。過去作と比べ、心温まる作風。
本作が作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたことで、
アンダーソン監督のアカデミー賞ノミネート数は通算11になった。
しかし、今回も受賞は逃し、受賞は通算ゼロのままとなった。
ノミネート歴(wiki)→
主演のクーパー・ホフマンは、本作でデビューとなる新人。
アンダーソン監督の数々の名作に出演してきた故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子である。
ホフマンの相手役となる主演女優アラナ・ハイムも元々はロック歌手で、俳優としては新人。2人の好演と相性の良さも称賛されている。
題名の「リコリス・ピザ」は、カリフォルニアに実在していたレコード店の店名。
無料のリコリス(キャンディ)、快適なソファ、音楽雑誌を提供していたことでも知られていた。
予告編→
【配信:アマゾン 】
(日本公開:2022年7月1日)
「ドント・ルック・アップ」
監督:アダム・マッケイ
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本年度の作品賞ノミネートの中で、最も賛否両論が激しく分かれている一作。肯定派からは強い支持を得た。
社会風刺コメディ。現代の扇動的な大衆政治や、事実を軽視する「反知性主義」を嘲笑のネタにしている。
「マネー・ショート 華麗なる大逆転」「バイス」という社会派ノンフィクション系傑作でアカデミー作品賞にノミネートされたアダム・マッケイ監督。超豪華キャストと先端のSF技術を駆使した大作で、製作費80億円。
当初パラマウントが配給権を持っていたが、Netflixが買い取った。配信スタート直後からNetflixの記録を塗り替えるような人気ぶりとなった。
彗星が地球に接近し、人類が破滅の危機に瀕していることを察知した2人の天文学者が、米大統領らに対策を講じるよう求めていく。地球温暖化への警鐘にもなっている。
レオナルド・ディカプリオらの演技も好評だったが、俳優部門でのノミネートはゼロだった。
予告編→
【配信:ネトフリ 】
(日本公開:2021年12月10日、2021年12月Netflix配信)
「ナイトメア・アリー」
監督:ギレルモ・デル・トロ
作品説明を開く▼
スリラー映画。「シェイプ・オブ・ウォーター(2017年)」で作品賞と監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督作の新作とあって、公開前から期待が膨らんでいた。興行的には失敗したが、熱心な映画ファンやマニアからは厚い支持を獲得。
技術的なレベルの高さも称賛された。
オスカー争いの最強集団として君臨する米映画会社サーチライトの作品。
サーチライトは本年度、有力作に恵まれず、作品賞レースではナイトメア・アリー1本に注力した。
その甲斐あってか、「チック、チック…ブーン!」(Netflix)をさしおいて、作品賞ノミネート入りを果たした。
巡回ショーの芸人が主人公。
この芸人が、女性精神科医と出会う。
そして、危険な道へと走っていく。
主演はブラッドリー・クーパー。
危ない女性精神科医を、オスカー女優ケイト・ブランシェケイトが演じる。
トロ監督はメキシコ人。日本の怪獣をこよなく愛する天才的オタクとして知られる。
ハリウッド業界内でも「愛されキャラ」として親しまれている。
予告編→
【配信:アマゾン 】
(日本公開:2022年3月25日)
※戦評・解説→
※歴代の作品賞→
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監督賞
ジェーン・カンピオン
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
1994年に「ピアノ・レッスン」で脚本賞を受賞して以来、2度目のオスカー獲得。
女性の監督賞は史上3人目。前年の「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督に続いて2年連続。
ニュージーランド出身のベテラン。しばらくテレビドラマに専念していたため、13年ぶりの映画製作となった。Netflixの資金を得て、細部にまでこだわり抜いた末に完成させた渾身の一作。
人間の深層心理を静かに掘り下げる西部劇。極めて精緻で完成度の高いドラマであり、かつスリラーとしても上質。前哨戦で圧勝し、最多12個のノミネートを獲得。作品賞も有力視されていたが、逃した。結局、受賞は監督賞のみだった。
【説明→ 】
【作品紹介→ 】
予告編(監督版)→
作品一覧(wiki)→
<受賞スピーチ↓>
VIDEO
※戦評・解説→
※歴代の監督賞→
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主演男優賞
ウィル・スミス
「ドリームプラン」
3度目のノミネートにして初の受賞。過去に「ALI アリ」(2001年)、「幸せのちから」(2006年)でノミネートされた。黒人として5人目の主演男優賞。
女子テニスの世界トップに君臨した米国人ウィリアムズ姉妹の実在の父親を演じた。
アクの強さやひょうひょうとした立ち振る舞いを見事に再現。
同時に、スミスらしい茶目っ気を加えることで、観客にとって親しみやすいキャラクターを造形した。
自らプロデューサーの一人としても名をつらね、後見役のウィリアムズ姉妹らとともにプロジェクトを推進した。劇場公開と同時にネット配信されたことで、俳優たちの受け取る歩合報酬が減ったことから、自分のギャラの一部を他の出演者たちに回したという逸話もある。
前哨戦では、序盤の評論家系アワードでカンバーバッチに連敗していたが、記者系のゴールデングローブ賞で勝利。その後の映画業界人が選ぶ賞では連勝した。前哨戦での受賞スピーチも「さすがに上手い」と好意的に受け止められた。
受賞当時53歳。俳優歴32年。ラッパーとして芸能活動を開始し、俳優業に進出した。
「インデペンデンス・デイ」「メン・イン・ブラック」などの歴史的ヒット作を含め、
長年の超ドル箱スターとして業界への貢献度は申し分なかった。
オスカーはベテラン勢が有利であることを加味すれば、受賞は確実と予想されていた。
ところが、せっかくのオスカーで授賞式でコメディアンのジョークに立腹し、
生放送中に壇上で殴打する暴行事件を起こし、キャリアが一気にどん底に落ちることとなった。
「ビンタ事件」の顛末▼
授賞式でウィル・スミスは、妻の病気を揶揄(やゆ)するジョークを飛ばしたコメディアンのクリス・ロック(57歳)に激怒。
ステージに駆け上がってビンタを食らわすという事件が起きた。
アカデミー賞の歴史に残る残念な出来事となった。
10年間の出席禁止に
授賞式の後、スミスは映画芸術科学アカデミーから、今後10年間にわたる授賞式への出入り禁止処分を受けた。アカデミー会員の資格返上にも追い込まれた。
VIDEO
クリス・ロック
殴られたクリス・ロック(コメディアン)はこの日、「ドキュメンタリー賞」の発表者(プレゼンター)として登壇していた。ロックは全米トップ級の人気コメディアンであり、アカデミー賞の司会(ホスト)も過去2回務めている(歴代の司会者→ )。毒舌系で知られる。
脱毛症をネタに
ロックは受賞者を読み上げる前のトークで、招待席に座っていたセレブたちをいじるジョークを展開。その中で、スミスの妻ジェイダ・ピンケット・スミスに向かって「ジェイダ好きだよ。『GIジェーン 2』が楽しみだね」(Jada, I love you! "GI Jane 2", can't wait to see it. Alright? )と冗談を飛ばした。
ムッとするジェイダ
これは、ジェイダが脱毛症のため髪を短くしていることを揶揄(やゆ)するものだった。人の病気を笑いのネタにするジョークであり、会場では笑いが起きたものの、聞いていたジェイダ本人がムッとするのがテレビ中継でも映し出された。隣のスミスは笑顔だったが、この後席を立ち、壇上へと向かった。身長188cmで強靭な肉体を持つスミスによる殴打シーンは、平手とはいえ、強いインパクトを与えた。
放送禁止用語を絶叫
スミスはクリス・ロックにビンタをした後、席に戻り、放送禁止用語を用いながら、壇上のロックに「妻の名前を出すな!」と叫んだ。
日本のWOWOWを含む一部の国のテレビ放送局は、この暴言を無音声に切り替えずそのまま放送。お茶の間に衝撃を与えた。
受賞スピーチにも批判
その後、スミスは主演男優賞を受賞した。受賞スピーチでは、ビンタ行為について泣きながら弁明した。しかし、自分の行為をむしろ正当化しようとする内容だったと受け止められ、米国内では批判が多く出た。殴ったクリス・ロックに対する謝罪も、この時点ではなかった。(スミスの受賞スピーチ動画→ )
退場を拒否
主催団体「映画芸術科学アカデミー」の声明によると、暴力行為の後、主催者側がスミスに退場を求めたが、スミスは拒否した。
警察が駆けつける
また、授賞式のテレビ番組プロデューサーが後日ABC放送のインタビュー(動画→ )で語ったところによると、現場にはロサンゼルス市警察(LAPD)が駆け付けた。
被害届を出さず
警察は控室に戻ったクリス・ロックに対して、「スミス逮捕」を選択肢の一つとして提示した。そのうえで、被害届を出す意向があるか尋ねた。これに対して、クリス・ロックは被害届に否定的だったという。
映画の主人公キャラが非難声明
授賞式の後、スミスの受賞作となった「ドリームプラン 」で主人公のモデルとなったリチャード・ウィリアムズ(テニスのウィリアムズ姉妹の父親)は「自衛でもない限り、人を殴る行為は許されない」とする非難声明を出した。
授賞式でのスミスの受賞発表時の拍手喝采(スタンディング・オベーション)とはうってかわって、他の芸能人からも批判的なコメントが相次いだ。
パーティ動画の拡散も痛手に
式典後のパーティでオスカー像を片手に上機嫌で歌って踊るスミスの動画が拡散したことで、さらに印象が悪くなった。
コメディアンに対する許容範囲が広い
アメリカでは、日本と比べてジョークに対する許容範囲がはるかに広い。
ふだんは問題視されるような発言でも、コメディアンがジョークの一環として口にすると、許される風潮がある。(ただ、人種差別などにつながるようなジョークは厳しく対処される)。
発言はあまり問題視されず
将来的には脱毛ネタのたジョークもデリケートに扱われるようになるのかも知れないが、この時点ではほとんど問題視されなかった。
授賞式への出席を10年間禁止
アカデミーはスミスに対して、10年間にわたって授賞式への出席を禁止する処分を下した。また、スミスはアカデミー会員を辞任した。
ショーのチケットがバカ売れ
事件を受けて、クリス・ロックの米国ツアーの人気はうなぎ上りとなった。アカデミーも声明でクリスに謝罪するとともに、異様な事態を冷静かつ巧みに収拾してくれたことに感謝の意を表わした。
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観客支持率トップの98%
大多数の観客が称賛する一作。ロッテン・トマトの一般観客の評価スコアは候補作の中でトップの98%。
実在の父親がモデル
テニスの世界トップに君臨した姉妹(姉ビーナス・ウィリアムズ、妹セリーナ・ウィリアムズ)の父親の姿を描く。実話をベースにしている。オスカーになじみやすい家族物語であり、スポーツもの。
本年度の作品賞ノミネートの中で、最もアメリカン・ドリーム的なストーリーとなった。
主人公リチャード・ウィリアムズはテニスの素人ながら、娘2人に幼少期からテニスを徹底指導。
娘が力をつけてくると、 経済的に貧しかったにもかかわらず、強引なやり方で超一流のコーチをつけることに成功し、鮮烈なプロデビューへと導いた。
伝説的な姉妹の大活躍の土台をつくった熱血パパとして知られる。
裕福な白人層が中心だった米国テニス界に風穴を開けた存在でもある。
「王様」のような立ち振る舞い
本作は、リチャードの独特な「子育て法」に焦点があてられている。
目先のゲームや一時的な活躍よりも、娘たちの長期的な成功を優先させ、学問や人格形成を重視した教育に邁進する。
一方で、破天荒で独善的な態度により、周囲と様々な軋轢(あつれき)を起こしていく。
その立ち振る舞いはまるで「王様」。映画の原題も「王様リチャード(King Richard)」になっている。
低所得層の苦闘
少数派人種や低所得層の苦労・努力がテーマの一つ。
家族の団結や厚い信仰心もしっかりと描写されている。
米国で重視されがちな価値観が前面に出ており、
変化球のかたまりのような「パワー・オブ・ザ・ドッグ」とは対照的。一般観客が入りやすい作品であることが、作品賞レースで有利に働く可能性がある。
ただ、称賛の嵐の中で、「ややありがちな映画」との声も。
監督は無名の若手
主演ウィル・スミスの熱演に加えて、
助演女優賞ノミネートの妻役アーンジャニュー・エリスが、限られた見せ場で観客の心をわしづかみにした。
監督はほぼ無名の若手レイナルド・マーカス・グリーンが務めたが、名演出と堅実なまとめぶりが光る。
臨場感のあるテニスシーンも好評。
ワーナーの「配信重視」路線
米国では劇場公開と同時にネット配信された。
配給会社ワーナーが自社の配信サービス「HBOマックス」の加入者を増やすため、
2021年のすべての映画を「ネット同時公開」としたためだ。
この方針をめぐっては、映画界から強い反発が出た。
このため、本作は「親劇場派(反ネット配信業者派)」の票の受け皿としてやや説得力に欠ける面があった。
【あらすじ】
米国ロサンゼルス近郊の貧困地区コンプトンで暮らすリチャードはある日、
テレビで女子テニス選手が巨額の賞金を受け取るのを見て、
自分たちも娘をもうけ、彼女たちをプロテニス選手に育てることを決意する。
独自の教育論に基づく約80ページの「プラン(計画書)」を作成。
そのプランに基づいて夫婦で娘たちにテニスを教え始める。
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<受賞スピーチ↓>
VIDEO
※戦評・解説→
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主演女優賞
ジェシカ・チャステイン
「タミー・フェイの瞳」
3度目のノミネートにして初のオスカー獲得。過去に「ヘルプ」(2011年)で助演に、「ゼロ・ダーク・サーティ」(2012年)で主演女優賞にノミネートされた。
テレビで派手な布教活動を展開した実在の著名伝道師タミー・フェイを演じた。自らプロデューサーも務めた。
自分らしさをすっかり消し去り、別人に成りきる演技。
容姿、声、しぐさ、雰囲気、歌いぶり、ミネソタ訛りのしゃべり方に至るまで、米国民によく知られる個性的な人物像を見事に再現させた。
配給会社サーチライトの巧みな宣伝活動と、自らのキャンペーン活動が功を奏し、前哨戦で競り合ったニコール・キッドマンら他候補を抑えた。
44歳。父親は消防士。
【説明→ 】
予告編→
プレビュー→
作品一覧(wiki)→
<受賞スピーチ↓>
VIDEO
※戦評・解説→
※歴代の主演女優賞→
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助演男優賞
トロイ・コッツァー
「コーダ あいのうた」
ろう者の俳優としては2人目のオスカー受賞。1人目は本作で共演した女優マーリー・マトリンだった。男優としては初。
情熱的でやや破天荒なろう者の父親役をコミカルに演じた。
作品の中で最も笑わせ、泣かせる存在。
手話が分からない人にも喜怒哀楽をしっかりと豊かに伝える迫真の演技が、多数の観客の心をつかんだ。
今回の「コーダ旋風」の最大の立役者。助演賞争いの前哨戦の中盤までは「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のコディ・スミット・マクフィーの独走を許していたが、終盤のSAGアワード(全米俳優組合賞)で大勝利。
このときの手話によるエネルギッシュで濃密なスピーチが反響を呼び、さらに支持が広がった。その猛烈な勢いが、作品賞レースにも飛び火した。
53歳。生活費に苦慮しながらも、俳優業をやめなかった努力の人。
【説明→ 】
【作品紹介→ 】
予告編(トロイ・コッツァー版)→
作品一覧(wiki)→
<受賞スピーチ↓>
VIDEO
※戦評・解説→
※歴代の助演男優賞→
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助演女優賞
アリアナ・デボーズ
「ウエスト・サイド・ストーリー」
1961年のオリジナル版で同じ役を演じたリタ・モレノに続く二代での受賞。
優れたキャスト陣の中でもひときわ輝く存在感。圧巻のダンスシーンは映画で最大の見せ場の一つとなり、挿入歌「アメリカ」の伝説を新しいステージへと引き上げた。
希望から悲しみへの感情の移ろいを見事に表現するとともに、本作のテーマの一つである「女性のたくましさ」を体現した。
31歳。これまでは主に舞台で活躍。本作が本格的な映画デビューとなった。
性的少数派(クィア)を公表している有色人種の女性として初めての受賞という。アフロ・ラテン系としても貴重な勝利となった。
【作品紹介→ 】
予告編(デボーズ版)→
作品一覧(英語wiki)→
<受賞スピーチ↓>
VIDEO
※戦評・解説→
※歴代の受賞者(助演女優賞)→
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脚本賞
「ベルファスト」
【配信:アマゾン 】
(脚本家:ケネス・ブラナー)
作品一覧(wiki)→
キリスト教の宗派間闘争で荒れる北アイルランドを舞台に、日常を生き抜こうとする一般家族を描く。
9歳の少年を主人公に、両親、祖父母が織りなす3世代ファミリーの物語。ノスタルジックな白黒映像作(一部カラー)。
北アイルランド出身のケネス・ブラナー監督が、自らの少年期に基づいて脚本を書いた。
コロナ禍で自宅にこもっている間に執筆したという。
無邪気な子供の目線で身の回りの出来事をとらえつつ、大人たちの想いや苦悩も織り込み、普遍性の高いシナリオとなっている。とりわけ祖父母のさりげないセリフに重みがあり、胸を打つ。
ケネス・ブラナーは今回、脚本賞に加えて、作品賞、監督賞(2度目)にもノミネート。
過去には主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、短編映画賞にもノミネートされたことから、「累計7つの異なる部門でノミネート」という新記録をつくった。
受賞は今回が初めて。
【作品紹介→ 】
※歴代の脚本賞→
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脚色賞
「コーダ あいのうた」
(脚本家:シアン・ヘダー)
作品一覧(IMDB)→
フランス映画「エール!」(2015年)のリメイク。
女性監督シアン・ヘダーが自ら脚本を書き、受賞を果たした。
原作では主人公一家は酪農家という設定だったが、漁師に変更。
大まかなストーリーの流れを踏襲しながらも、細部をより丁寧に描き、完成度の高いシナリオとなった。
人間味あふれる人物像の描写や、手話と口頭での会話のかけあいも見事。
【作品紹介→ 】
※歴代の脚色賞→
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国際映画賞
「ドライブ・マイ・カー」
【日本】
(濱口竜介監督)
日本映画として2009年の「おくりびと」以来13年ぶりの受賞。通算5作目。(過去の日本映画の受賞作→ )
作品賞、監督賞、脚色賞の主要3部門にもノミネートされており、国際映画賞での受賞は確実視されていた。
妻を亡くし、喪失心を抱える男の物語。同じく過去の傷を背負う若い女性運転手との友情ストーリーでもある。
コロナ禍で身近な人を失った世界の人たちの心をつかんだ。
アップテンポなコミック映画やアクション映画がハリウッドを席巻するなか、
静かにじっくりと、かつ深みのある言葉で伝える作風が称賛された。
仏カンヌ国際映画祭での脚本賞を皮切りに、英国アカデミー賞など海外の賞を次々と制覇した。
同じく2021年公開の濱口映画「偶然と想像」はベルリン国際映画祭の審査員グランプリに輝いており、世界の賞レースを席巻することとなった。
濱口監督は43歳。東日本大震災のドキュメンタリー映画を自主制作で3本撮るなど社会派として活動してきた。神戸の映画講座の一環として製作した「ハッピーアワー」(2015年)は、海外の映画賞を獲得した。(濱口監督のプロフィール→ )
本作は、「寝ても覚めても」(2018年)に続く商業映画2本目。
【作品の紹介→ 】
【受賞歴→ 】
<受賞スピーチ↓>
VIDEO
予告編→
【動画配信(アマゾン)→ 】
「わたしは最悪。」
【ノルウェー】
予告編→
【説明→ 】
(日本公開:2022年7月1日)
※人生の方向性が定まらないまま30歳を迎えた女性の仕事や恋を映し出すラブ・ストーリー。
「FLEE フリー」
【デンマーク】
予告編→
【説明→ 】
(日本公開:2022年6月10日)
「Hand of God -神の手が触れた日-」
【イタリア】
予告編→
Netflix→
「ブータン 山の教室」
【ブータン】
予告編→
※戦評・解説→
※歴代の国際映画賞→
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長編アニメ賞
「ミラベルと魔法だらけの家」
(ディズニー)
ディズニーの60作目の長編アニメ。傑作「ズートピア」の監督コンビによるミュージカル。米ミュージカル界の第一人者・リン・マニュエル・ミランダが音楽を手掛けた。
ディズニーらしい映像の質の高さ。本格ミュージカルとしての良質さも評価された。
【説明→ 】
吹替版(Amazon)→
字幕版(Amazon)→
<予告編↓>
VIDEO
(公開:2021年11月26日)
「ミッチェル家とマシンの反乱」
(ソニー)
【説明→ 】
予告編→
Netflix→
(公開:2021年4月23日からNetflix配信)
※斬新さあふれる一作。ストーリーの面白さや独創性を重視する人たちに支持され、アニメ界の最高峰・アニー賞でも作品賞を受賞した。「スパイダーマン:スパイダーバース」でアニメ賞を獲得した米ソニー・ピクチャーズ アニメーション製作。
「あの夏のルカ」
(ピクサー)
説明→
予告編→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
(公開:2021年6月18日)
「FLEE フリー」
【デンマーク】
予告編→
説明→
※ アニメ・ドキュメンタリー。デンマーク作品。アフガニスタンからデンマークへ難民としてやってきた男性の実話に基づく。アヌシー国際アニメーション映画祭で、作品賞(長編グランプリ)を受賞。
(公開:2022年6月10日)
「ラーヤと龍の王国」
(ディズニー)
予告編→
吹替版(Amazon)→
字幕版(Amazon)→
(公開:2021年3月5日)
※戦評・解説→
※歴代のアニメ賞→
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※2022年の全部門を見る→
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2021年(第93回)
■ 作品賞:
「ノマドランド」
■ 最多受賞:
「ノマドランド」(3部門)
■ 最多ノミネート:
「マンク」(10個)
作品賞は「ノマドランド」
「ノマドランド」が作品賞を受賞しました。中国出身の若手女性監督による低予算の小規模作品ながら、現代アメリカの移動労働者(ノマド)の姿を美しい映像と詩的な語り口で描き、高い評価を得ました。
2021年の特集ページ→
作品賞 、監督賞 、主演男優賞 、主演女優賞 、助演男優賞 、助演女優賞 、アニメ賞
、脚本賞 、脚色賞 、国際映画賞
(2022年↑ | 2021年 | 2020年↓ )
<受賞・ノミネート一覧(全部門)>
2021年
部門
受賞
ノミネート
作品賞
「ノマドランド」
【配信:アマゾン 】
監督:クロエ・ジャオ
アメリカの雄大な原風景を背景に、
季節労働者たちの心のひだを見事に映し出した詩情的な作品。
コロナウイルス感染拡大で孤立感や喪失感が深まるなか、
人と人とのつながり、亡き伴侶への想い、自然との一体感を伝える静かな物語が、共感を呼んだ。
カメラクルーが半年間にわたって米国の田舎を転々としながら、撮影を行った。荒野、砂漠、森林、峡谷に主人公らが溶け込む様子を美しい映像で伝える。
過去数年の作品賞争いは、有力2作品による接戦が多かった。
しかし、本年度は、ノマドランドが前哨戦 の序盤から独走を続け、予想通りの受賞となった。
なお、授賞式では、作品賞が一番最後に発表されず、主演男優賞で締めくくられた。本来は最高の栄誉である作品賞で締めくくるのは当たり前だが、「亡くなったチャドウィック・ボーズマンの主演男優賞受賞で式を感動的に締めくくる」という演出意図により、順番が入れ替えられた。この構成はあまりにも作為的で、ノマドランドに失礼だ。しかも、主演男優賞はボーズマンでなくアンソニー・ホプキンスになるというバツの悪さ。式のプロデューサーを務めたスティーブン・ソダバーグらのとんでもない大失態だ。
【受賞部門】
・作品賞
・監督賞
・主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)
【ノミネート部門】
・脚色賞
・撮影賞
・編集賞
日本公開:2021年3月26日
説明ページ→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
<受賞スピーチ▼>
VIDEO
<予告編▼>
VIDEO
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監督賞
クロエ・ジャオ
「ノマドランド」
女性として史上2人目の監督賞。2010年のキャスリン・ビグロー(ハート・ロッカー)以来、11年ぶり。
1982年北京生まれの中国籍。
アメリカで映画を学び、そのまま米国に住みついた。
本作が長編3作目。38歳。
前年のポン・ジュノ監督(韓国人、パラサイト)に続いて、2年連続のアジア人の監督賞受賞。
前々年はメキシコ人のアルフォンソ・キュアロンが獲得しており、
3年連続の外国人の受賞となった。
作品の特別映像→
レビューや過去作の紹介動画(シネコト)→
受賞スピーチ→
VIDEO
※歴代の監督賞→
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主演男優賞
アンソニー・ホプキンス
「ファーザー」
83歳での栄冠。アカデミー賞の最高齢受賞の記録を塗り替えた。
1992年に「羊たちの沈黙」で同じ部門を受賞して以来29年ぶり2度目。
ノミネートは、助演部門を含めると今回で6度目だった。
アルツハイマーの高齢者を演じた。
自らの存在が足元から崩れる恐怖や怒り、葛藤といった複雑な感情を見事に表現した。
長いキャリアの中でも最高級と称賛された。
当初は、大腸がんで亡くなったチャドウィック・ボーズマンが最有力と予想されていたが、
賞レース終盤でホプキンスが英国アカデミー賞 を獲るなど、追い上げた。
英国人。シェークスピア劇の出身。
1992年の受賞スピーチ→
<受賞スピーチ ↓>
※歴代の主演男優賞→
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主演女優賞
フランシス・マクドーマンド
「ノマドランド」
1997年「ファーゴ」、2018年「スリー・ビルボード」に続いて、3度目の受賞。
メリル・ストリープ、イングリッド・バーグマンら映画史に残る大御所たちに並んだ。
「主演」部門だけでの3度受賞となると、
4回のキャサリン・ヘプバーンと、3回のダニエル・デイ・ルイス(男優)に続く3人目の快挙。
本作では、物静かで地味な役柄を、説得力あふれるリアル感で演じた。
表情やしぐさによる繊細な演技が絶賛された。
共同プロデューサーとして作品賞も手にした。
原作となる本を読んで感銘を受け、
仲間とともに映画化権を取得。
ほとんど無名だった若手監督(クロエ・ジャオ)を指名し、プロジェクトを大成功へと導いた。
VIDEO
※歴代の主演女優賞→
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助演男優賞
ダニエル・カルーヤ
「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」
「ゲット・アウト」(2018年)での主演男優賞ノミネート以来2度目の候補入りにして初のオスカー獲得となった。
黒人運動の指導者フレッド・ハンプトンを演じた。
スピーチ場面などでの言葉の説得力や、本人が乗り移ったかのようなカリスマ性は圧巻。
静かなシーンでもしっかりと魅せ、表現力の幅広さを証明した。
他のキャストとともに、
演技で魅了する秀作を実現。
なぜか「主演」のスタンフィールドまで、一緒に「助演」賞に一緒にノミネートされるというオマケもついた。
動画(スピーチのシーン)→
VIDEO
※歴代の助演男優賞→
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助演女優賞
ユン・ヨジョン
「ミナリ」
韓国映画界の発展を長年にわたって引っ張ってきた大物女優。
本作では、破天荒なおばあちゃん役を演じた。
韓国語にブロークン英語を交えたコミカルな芝居。
顔の表情やしぐさも含めて、超ベテランならではの名演で笑いと涙を誘った。
韓国人として俳優部門での初受賞。
前年のポン・ジュノ監督(パラサイト)に続く韓国映画界の栄冠。
アジア人の俳優部門の受賞は、1985年にハイン・ニョール(カンボジア人)が「キリング・フィールド」で助演男優賞を受賞して以来、36年ぶり。
授賞式でのスピーチも好評だった。
映画のシーン→
受賞スピーチ→
VIDEO
※歴代の受賞者(助演女優賞)→
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長編アニメ賞
「ソウルフル・ワールド」
(ピクサー)
ピクサーの歴史の残る傑作の一つと称賛された。
事故で命をおとし、ソウル(魂)になった男性が主人公。
彼は音楽教師で、長年の夢だった音楽家としての演奏デビューのチャンスが目前に迫っていた。
現世に戻る冒険の中で、生命と向き合う。
コロナの影響で劇場公開されなかった。
(公開:2020年12月25日、ディズニープラス配信)
予告編→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
動画配信(ディズニープラス)→
受賞スピーチ→
レビュー動画(ツッチ)→
※歴代のアニメ賞→
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脚本賞
「プロミシング・ヤング・ウーマン」
(脚本家:エメラルド・フェネル)
受賞スピーチ→
レビューと脚本解説(シネコト)→
「シカゴ7裁判」
(脚本家:アーロン・ソーキン)
ネタバレ解説(シネコト)→
「ミナリ」
(脚本家:リー・アイザック・チョン)
「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」
(脚本家:ダリウス・マーダー、エイブラハム・マーダー)
「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」
(脚本家:ウィル・バーソン、シャカ・キング)
※歴代の脚本賞→
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脚色賞
「ファーザー」
(脚本家:クリストファー・ハンプトン、フロリアン・ゼレール)
受賞スピーチ→
解説動画(シネコト)→
※歴代の脚色賞→
一覧表の上部に戻る↑
国際映画賞
「アナザーラウンド」 (デンマーク)
※デンマークを代表するトマス・ヴィンターベア監督の作品。
酒の魔力にのめり込む男たちの物語。
主人公の高校教師が、同僚3人と「アルコール摂取によって人生を劇的に良くする」という理論の実践を試みる。
すると、冷え切った家族関係が改善し、授業も絶好調になった。男たちはさらなる効果を求め、強い酒に手を出す。
日本からは「朝が来る」(河瀬直美監督)が出品されたが、ノミネート候補作品(ショートリスト)に入らなかった。
(公開:2021年9月3日)
予告編→
受賞スピーチ→
町山ラジオ解説→
「少年の君」
(香港)
(公開:2021年7月16日)
予告編→
「コレクティブ 国家の嘘」
(ルーマニア)
(公開:2021年10月2日)
予告編→
町山解説→
「皮膚を売った男」
(チュニジア)
(公開:2021年11月12日)
予告編→
「アイダよ、何処へ?」
(ボスニア、ヘルツェゴビナ)
(公開:2021年9月17日)
予告編→
※歴代の国際映画賞→
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2020年(第92回)
■ 作品賞:
「パラサイト 半地下の家族」
■ 最多受賞:
「パラサイト 半地下の家族」(4部門)
■ 最多ノミネート:
「ジョーカー」(11個)
2020年の全部門の一覧は特集ページ→ へ。
韓国「パラサイト」が作品賞。非英語の作品で史上初の快挙
韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を受賞。英語以外の映画として史上初の快挙となりました。監督賞や脚本賞なども獲り、最多4冠に輝きました。
(2021年↑ | 2020年 | 2019年↓ )
2020年
部門
受賞
ノミネート
作品賞
「パラサイト 半地下の家族」
【配信:アマゾン 】
監督:ポン・ジュノ
韓国映画としてはもちろん、英語以外の映画として史上初の作品賞に輝いた。まさに歴史的な快挙だった。
「半地下住宅」という劣悪な生活環境で暮らす貧しい家族が主人公。
貧富の格差などがテーマ。ドラマ、コメディ、サスペンス、風刺、ホラー、悲劇、社会への問題提起など、
あらゆる要素がダイナミックに交錯する傑作との称賛を浴びた。
ポン・ジュノ監督は「母なる証明」「殺人の追憶」が世界で絶賛され、映画評論家や映画通の間では神的な存在ではあった。しかし、一般の米国人は知られておらず、当初は、本作の作品賞獲得を予想する声は少なかった。
アメリカ人は業界関係者であっても字幕で映画を見ることにそれほど慣れていない。字幕映画という点はやはり不利。しかし、芸術性だけでなく、シンプルな娯楽性という点において傑出した本作は、エンタメ映画として幅広い層から熱烈な支持を得ることに成功した。
この後、音楽グループ「BTS」、ドラマ「イカゲーム」などが世界市場を席巻し、韓国がコンテンツ大国としての注目されることとなった。
【受賞部門】
・作品賞
・監督賞
・脚本賞
・国際映画賞
【ノミネート部門】
・編集賞
・美術賞
(公開:2020年1月10日)
説明ページ→
予告編→
動画配信(Amazon字幕版)→
授賞式の発表の瞬間(動画)→
「1917 命をかけた伝令」
監督:サム・メンデス
※戦争映画であり、ハリウッドらしい大作。主人公たちをカメラが切れ目なく追いかけているように見せる撮影手法など技術面で高い評価を受けた。「IMAX」の映画館で鑑賞したときの臨場感も称賛の的。
Netflixのようなネット配信が映画館の存在を脅かすなかで、「劇場体験」の凄さを味わえる大作としてプッシュする声が拡大した。
戦争映画としては「プライベート・ライアン」(1998年)以来の傑作という声も出た。
サム・メンデス監督はデビュー作「アメリカン・ビューティー」で2020年に作品賞と監督賞を受賞しており、20年ぶりに本命候補に名をつらねた。
オスカー前哨戦の中で最も重要視されている「PGA(全米プロデューサー組合賞)」で作品賞を獲得。
ゴールデングローブ賞も制し、受賞歴では本年トップ。
第一次世界大戦下のフランス北部が舞台。
主人公は、英国軍の若い兵士2人。
1600人の友軍兵士を救うため、
重要な伝令を担って、
危険な戦場を駆ける。
(公開:2020年2月14日)
予告編→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
解説→
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
監督:クエンティン・タランティーノ
※やや落ち目の俳優とその専属スタントマンの2人を主人公とする愉快なドラマ。略称「ワンハリ」。
作品の舞台が「1960年代のアメリカ映画業界」になっており、
ハリウッドへのノスタルジーと愛情に満ちている。
内輪ネタが好きなアカデミー賞の投票権者から支持を得た。
オスカー前哨戦の序盤では「アイリッシュマン」に負け続けたが、
年明けの放送映画批評家協会賞で作品賞を獲得。
アイリッシュマンと入れ替わる形で有力候補に浮上した。
過去のタランティーノの数々の業績も大きなプラス材料となり、最後まで本命候補の一角を占めた。
(公開:2019年8月)
予告編→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
解説→
「ジョーカー」
監督:トッド・フィリップス
※大人気漫画「バットマン」の悪役ジョーカーが主人公。
孤独な大道芸人が、凶悪な犯罪者へと変貌する過程を描く。
世界で記録的な大ヒットとなった勢いに乗り、最多となる11部門にノミネートされた。
コミック映画でありながら、ドラマ性を重視したダークな作風に挑戦し、見事に成功させた業績が評価された。
興行収入は本年度の候補作の中で断トツの1位。
賞レースの序盤では、伝統のある「ベネチア国際映画祭」でいきなり作品賞を受賞した。
だが、アメリカ国内の評論家や映画ファンの評判は、賛否両論に分かれた。
ロッテン・トマトのスコアは69%。作品賞候補作の中で最も低かった。
低評価の理由としては、
「ややチープな政治的意見を前面に出すぎている」
「マーティン・スコセッシ監督の『タクシー・ドライバー』『キング・オブ・コメディ』など過去の映画の焼き直しだ。新鮮さがない」
「暴力に対する批判的な視点が足りない」
などが挙げられている。
それでも、主役ホアキン・フェニックスの演技については、絶賛の一色だった。
(公開:2019年10月)
予告編→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
「アイリッシュマン」
監督:マーティン・スコセッシ
※巨匠スコセッシ監督のマフィア映画。ネットフリックス(Netflix)のオリジナル作品。
主演はロバート・デ・ニーロ。
スコセッシとデニーロのコンビは、
「タクシードライバー」「レイジング・ブル」「グッドフェローズ」といった歴史的な名作を生んだが、今回はそれらに匹敵する出来栄えと評価された。
賞レースの序盤戦で快走したが、盛り上がりが持続せず、
終盤に入って失速した。
3時間30分という上映時間が長すぎること、
主人公(マフィアの殺し屋)に共感しづらい、
などが失速の原因として指摘された。
(公開:2019年11月)
解説→
Netflix→
予告編→
特別映像→
「マリッジ・ストーリー」
監督:ノア・バームバック
※ネットフリックス(Netflix)のオリジナル映画。離婚問題に直面する夫婦の愛憎劇。
夫はニューヨークで活動する舞台監督。
妻は女優であり、ロサンゼルスで息子とともに再出発をしようとする。
1980年のアカデミー賞で作品賞を受賞した「クレイマー・クレイマー」の21世紀版とも受け止められた。
ノア・バームバック監督は「フランシス・ハ」などで知られる。
会話劇を得意とするバームバックのスキルがいかんなく発揮された。
夫役のアダム・ドライバーと妻役のスカーレット・ヨハンソンがぞれぞれ主演でノミネート入り。
離婚専門の攻撃的な弁護士を演じたローラ・ダーンが助演女優賞に輝いた。
(公開:2019年11月)
予告編→
Netflix→
解説→
「フォードvsフェラーリ」
監督:ジェームズ・マンゴールド
※大衆から評論家まで幅広く愛された王道ハリウッド映画。
世界の3大自動車レースの一つ、「ル・マン24時間レース」の実話に基づいている。
時代設定は1963年。
カーレース界で王者に君臨していたイタリアのフェラーリに対して、米フォードがプライドを賭けて挑む。
フォードの技術者(マット・デイモン)と、ドライバーに抜擢された英国人の型破りなレーサー(クリスチャン・ベール)の友情がストーリーの軸になる。
(公開:2020年1月10日)
予告編→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
「ジョジョ・ラビット」
監督:タイカ・ワイティティ
※ナチスが権力を握った第二次世界大戦下のドイツが舞台。コメディとしてのユーモアや風刺を貫きながら、問題の本質に迫った姿勢が称賛された。マーベル映画「マイティ・ソー バトルロイヤル」を成功させたタイカ・ワイティティ監督の辛口のユーモア・センスが光る。
主人公の少年は、アドルフ・ヒトラーを空想上の友達にするが、
自分の母親(スカーレット・ヨハンソン)がユダヤ人の少女をかくまっているのを見つけた。
アカデミー賞の前哨戦の中で、
最も有力な試金石の一つとなるトロント国際映画祭において、
最高賞の「観客賞」を受賞した。
(公開:2020年1月17日)
予告編→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」
監督:グレタ・ガーウィグ
※名作文学「若草物語」の映画化。
感動もの。南北戦争下のアメリカを舞台に、
田舎の四姉妹の成長ドラマを描く。
監督は、アカデミー賞作品賞ノミネートの「レディ・バード」で大絶賛されたグレタ・ガーウィグ。
主演は、「レディ・バード」「ブルックリン」で2度アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナン。
若草物語はこれまでに何度か映画化されてきたが、
今回はシニカルで現代的なタッチで知られるガーウィグ監督が独特な脚色を加えた。
アメリカでは、主に白人女性の映画ファンから絶大な支持を得た。
(公開:2020年6月12日)
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
※歴代の受賞作(作品賞)→
監督賞
ポン・ジュノ
「パラサイト 半地下の家族」
韓国人として初の監督賞。アジア人としてはアン・リー監督(台湾)以来、2人目。
強烈なオリジナリティにあふれる作品をつくったことが、
大絶賛された。
オスカー前哨戦の授賞式や受賞スピーチでの落ち着きと愛嬌を備えた振る舞いも好感された。
作品一覧→
受賞スピーチ(動画)と日本語訳→
サム・メンデス
「1917 命をかけた伝令」
※作品の技術面における到達度の高さが評価された。
前哨戦では、最大の山場となるDGA(全米監督組合賞)を制した。
戦争に従軍した祖父から子供のころに聞いた話を自ら脚本化し、大作映画に仕上げた。
デビュー作「アメリカン・ビューティー」以来20年ぶりの受賞が有力視されたが、惜しくも落選した。
クエンティン・タランティーノ
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
マーティン・スコセッシ
「アイリッシュマン」
トッド・フィリップス
「ジョーカー」
歴代の受賞者(監督賞)→
主演男優賞
ホアキン・フェニックス
「ジョーカー」
初のオスカー獲得。過去に「グラディエーター」「ウォーク・ザ・ライン」「ザ・マスター」でノミネートされた。
作品「ジョーカー」に対しては好き嫌いがはっきり分かれたが、フェニックスの演技に対しては賛美一色となった。
1974年生まれ。
父親はガーデニング会社経営、母親は活動家だった。
5歳のとき、兄リバー・フェニックスとともにテレビ番組に出演し、芸能界デビュー。5歳年上のリバーは翌年の映画「スタンド・バイ・ミー」で大ブレーク。1988年の「旅立ちの時」でアカデミー助演男優賞にノミネートされたるなど、10代にして大スターとなった。
ホアキンも、1989年のロン・ハワード監督「バックマン家の人々」に助演として出演し、期待の若手として称賛された。
1993年、リバーが薬物過剰摂取で死亡する。その夜、フェニックスはリバーと行動を共にしており、助けを求めて911番通報したのもフェニックスだった。
1995年、ニコール・キッドマン主演の「誘う女」で、キッドマンから誘惑される高校生役を演じ、称賛を浴びる。「メンタルが脆弱なヤバい男」を演じたら、ピカイチであることが明らかになった。
そして2000年、リドリー・スコット監督の「グラディエーター」で、極めてヤバい悪役を熱演。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。オスカー史上初めて演技部門における兄弟ノミネートとなった。
<受賞スピーチ▼>
アダム・ドライバー
「マリッジ・ストーリー」
※インディー系のドラマからスター・ウォーズのようなSF大作まで、
どんな仕事でも輝かしい仕事ぶりを見せていた。
マリッジ・ストーリーでの演技は、ホアキン・フェニックスのような派手さはないが、多くの人の心をわしづかみにした。
レオナルド・ディカプリオ
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
オスカー受賞歴→
予告編→
アントニオ・バンデラス
「ペイン・アンド・グローリー」
※長いキャリアの中で最高の演技と称賛された。
ジョナサン・プライス
「2人のローマ教皇」
※歴代の主演男優賞→
主演女優賞
レネー・ゼルウィガー
「ジュディ 虹の彼方に」
伝説のミュージカル女優を見事に演じきった。
2度目のオスカー受賞。「主演」での受賞は初めて。2004年に「コールド・マウンテン」で助演女優賞を受賞して以来、16年ぶり2度目の栄冠。しばらくトップ女優の座とは縁遠かったが、見事なカムバックを果たした。
今作は、20世紀半ばの米歌手兼女優ジュディ・ガーランドの伝記。
17歳にして一躍スターダムに駆け上がり、47歳の死まで波乱の芸能人生を送った。
そんな彼女の最期の日々と、起死回生を懸けたラスト・ステージの裏側を描いた。
ゼルウィガーは、圧倒的なパフォーマンスで全曲を自ら歌い上げた。さらに、女性としての苦悩も表現した。
1969年4月25日、テキサス生まれ。スイス人の父とノルウェー人の母を持つ。
テキサス大学でラジオ・テレビ・フィルム専攻。在学中にCMに出演して、女優の道へ。
1993年「バッド・チューニング」で映画デビュー。
独立系の映画で経験を積んだ。
27歳のときトム・クルーズ主演の「ザ・エージェント」(1996年)で、ヒロイン役に抜擢される。
会社の冷酷なやり方に反発してクビになってしまった腕利きスポーツ・エージェント(トム・クルーズ)に、たった一人味方となってついていくシングル・マザーのOL役を好演。大ブレイクした。普通の女性っぽさが大うけした。
2000年の「ベティ・サイズモア」でゴールデングローブ主演女優賞を獲得。
2002年、現代女性の悩みや願望をコミカルに描いた「ブリジット・ジョーンズの日記」で、
オスカー主演女優賞候補にノミネートされた。
ダイエットに焦る主人公をリアルに演じるため、増量して撮影に臨んだ。
英ロンドンに住む架空の30代独身女性の日常をつづった原作は、
若い女性を中心に大反響を呼び、多くの国でベストセラーとなっていた。
「テキサス生まれのハリウッド女優が、ロンドン女性を演じられるのか」と不安視する声もあったが、
イギリス英語を特訓し、ロンドンOLのたしなみを学ぶため、2週間お忍びで出版社に勤務するなど、
徹底した役づくりを実践。見事に期待にこたえた。
翌年の2003年も「シカゴ」で2年連続の主演女優賞ノミネートを果たす。
シカゴは1920年代を舞台にしたミュージカルで、
情夫を殺害しながら、やり手の弁護士(リチャード・ギア)らの助けを得て巧みな演技でマスコミや法廷を味方につけ、無罪を勝ち取るという“悪女”を演じた。ダンスや歌の経験はなく、ミュージカルは「未知の領域」だったが、稽古を重ねて克服した。
さらに翌年の2004年、「コールド・マウンテン」で助演女優賞の受賞を果たした。
アメリカ南北戦争末期の流れ者の女性を好演した。一見粗野だが繊細な感受性の持ち主のキャラクターを、レネー独特の泣き笑いの表情、哀愁漂う迫真の演技で見事に表現した。
2010年代はキャリアが下降気味となった。一時、健康づくりを優先させるために女優業から離れた。
復帰作となった今作では、正式なリハーサルの1年前から歌のトレーニングを始めた。
その後、音楽監督と約4か月のリハーサルを行った。
膨大な記録映像や参考資料を集め、役作りに生かしたという。
周囲からあまり注目を浴びない環境で静かに映画づくりに臨めたことが好演につながったという。
オスカー受賞スピーチでは、「ジュディ・ガーランドは生前、この賞を手にすることはありませんでした。この賞はもちろんあなたのものです」と語り、感動を呼んだ。
<受賞スピーチ▼>
<レッドカーペット▼>
※歴代の主演女優賞→
助演男優賞
ブラッド・ピット
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
55歳にしてキャリア最高の演技を見せた。
主演のレオナルド・ディカプリオも名演だったが、
強烈な存在感とカッコよさで老若男女を絶句させたブラピには、
絶賛の嵐が沸き起こった。
過去にプロデューサーとして「それでも夜は明ける」で作品賞を受賞。
役者としては4度目のノミネートで初の受賞となった。
ジョー・ペシ
「アイリッシュマン」
アル・パチーノ
「アイリッシュマン」
トム・ハンクス
「幸せへのまわり道」
アンソニー・ホプキンス
「2人のローマ教皇」
※歴代の助演男優賞→
助演女優賞
ローラ・ダーン
「マリッジ・ストーリー」
離婚専門の攻撃的な弁護士を、リアルに演じた。
モデルとなったセレブご用達の離婚弁護士ローラ・ワッサーの百戦錬磨ぶりを見事に表現した。
とりわけ最初の法律相談や法廷でのシーンの演技は極めて評判が良い。
俳優の組合活動にも熱心で、業界内部での信頼が厚い。
マーゴット・ロビー
「スキャンダル」
スカーレット・ヨハンソン
「ジョジョ・ラビット」
※輝かしいキャリアと様々な映画賞の受賞歴を持ちながら、
なんと、アカデミー賞は初のノミネート。
フローレンス・ピュー
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」
キャシー・ベイツ
「リチャード・ジュエル」
※歴代の助演女優賞→
長編アニメ賞
「トイ・ストーリー4 」
※ロッテン・トマトで「97」という驚異の高スコアを獲得。
前作の「トイ・ストーリー3」ほどではないが、やはりピクサーの歴史に名を残す秀作として称賛された。
アニー賞で「クロース」に敗れた。
ゴールデングローブ賞では「ミッシング・リンク」に敗北を喫した。
それでもPGA(プロデューサー組合賞)などの前哨戦で勝利した。
同じディズニーの「アナと雪の女王2」がノミネートから漏れたことで、ディズニー陣営も危機感を抱き、
必死に賞獲りに乗り出した。
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
「クロース 」
※ネットフリックス作品。サンタ・クロースの誕生プロセスを描く。
アニメ映画の最高峰であるアニー賞で、トイ・ストーリー4をおさえて作品賞に輝いた。
ディズニー・ピクサー連合の続編(シリーズもの)が興行収入トップを独占するなかで、
本作のような優れたオリジナル作品への期待が一段と高まった。
予告編→
Netflix→
「失くした体 」
予告編→
Netflix→
「ヒックとドラゴン 聖地への冒険 」 (公開:2019年12月20日)
予告編→
「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒 」 (公開:2020年11月)
予告編→
※歴代のアニメ賞→
国際映画賞(外国語映画賞)
「パラサイト 半地下の家族 」
(韓国)
公開:2020年1月10日
予告編→
字幕版(Amazon)→
吹替版(Amazon)→
※歴代の国際映画賞→
脚本賞
「パラサイト 半地下の家族 」
ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 」
クエンティン・タランティーノ
「マリッジ・ストーリー 」
ノア・バームバック
「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 」
ライアン・ジョンソン
「1917 命をかけた伝令 」
サム・メンデス
クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
※歴代の脚本賞→
脚色賞
「ジョジョ・ラビット 」
タイカ・ワイティティ
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 」
グレタ・ガーウィグ
「アイリッシュマン 」
スティーブン・ザイリアン
「2人のローマ教皇 」
アンソニー・マクカーテン
「ジョーカー 」
トッド・フィリップス、スコット・シルバー
※歴代の脚色賞→
衣装賞
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 」
(ジャクリーン・デュラン)
解説動画(英語)→
「ジョジョ・ラビット 」
(マイェス・C・ルベオ)
解説動画(英語)→
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 」
(アリアンヌ・フィリップス)
解説動画(英語)→
「アイリッシュマン 」
(サンディ・パウエル&クリストファー・ピーターソン)
解説動画(英語)→
「ジョーカー 」
(マーク・ブリッジス)
※歴代の衣装賞→
※2020年の全部門(結果・解説・作品の評価)を見る→
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