【1950年代】受賞&ノミネート一覧

1959年(第31回)

  • ■ 作品賞:
    「恋の手ほどき」
  • ■ 最多受賞:
    「恋の手ほどき」(9部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「手錠のまゝの脱獄」(9個)
    「恋の手ほどき」(9個)

「恋の手ほどき」が過去最多となる9つのオスカー賞を受賞しました。 「風と共に去りぬ」「地上より永遠に」「波止場」が保有していた8個の記録を塗り替えました。

「恋の手ほどき」は、ノミネートされた9部門全てで勝利しました。9部門での「全勝」は、1987年「ラストエンペラー」によって並ばれるまで最多記録となりました。2003年に「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」が11部門での全勝という新記録を樹立したことで、ようやく追い抜かれました。

1959年 | 1958年↓

1959年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「恋の手ほどき」

恋の手ほどき

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監督:ヴィンセント・ミネリ

MGMミュージカル黄金期を築いた名製作者アーサー・フリード最後のミュージカル作品。生粋のパリジェンヌと金持ちの伊達男の恋を描いた。

10部門のオスカーを獲得した。この年は『手錠のままの脱獄』や『熱いトタン屋根の猫』など力作がそろい、乱戦模様だった。

<予告編▼>


<タイトル曲「Gigi(ジジ)」▼>


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  • 「熱いトタン屋根の猫」
    監督:リチャード・ブルックス
  • 「メイム叔母さん」
    監督:モートン・ダコスタ
  • 「旅路」
    監督:デルバート・マン
  • 「手錠のまゝの脱獄」
    監督:スタンリー・クレイマー
監督賞 ヴィンセント・ミネリ
(恋の手ほどき)
  • リチャード・ブルックス(熱いトタン屋根の猫)
  • ロバート・ワイズ(私は死にたくない)
  • スタンリー・クレイマー(手錠のまゝの脱獄)
  • マーク・ロブソン(六番目の幸福)
主演男優賞 デヴィッド・ニーヴン
(旅路)
  • トニー・カーティス(手錠のまゝの脱獄)
  • ポール・ニューマン(熱いトタン屋根の猫)
  • シドニー・ポワチエ(手錠のまゝの脱獄)
  • スペンサー・トレイシー(老人と海)
主演女優賞 スーザン・ヘイワード
(私は死にたくない)
  • デボラ・カー(旅路)
  • シャーリー・マクレーン (走り来る人々)
  • ロザリンド・ラッセル(メイム叔母さん)
  • エリザベス・テイラー(熱いトタン屋根の猫)
助演男優賞 バール・アイヴス
(大いなる西部)
  • セオドア・ビケル(手錠のまゝの脱獄)
  • リー・J・コッブ(カラマゾフの兄弟)
  • アーサー・ケネディ(走り来る人々)
  • ギグ・ヤング(先生のお気に入り)
助演女優賞 ウェンディ・ヒラー
(旅路)
  • ペギー・キャス(メイム叔母さん)
  • マーサ・ハイヤー(走り来る人々)
  • モーリン・ステイプルトン(孤独の旅路)
  • カーラ・ウィリアムズ(手錠のまゝの脱獄)
脚本賞 手錠のまゝの脱獄
(ネドリック・ヤング、ハロルド・ジェイコブ・スミス)
  • 月夜の出来事(メルヴィル・シェイヴルソン、ジャック・ローズ)
  • 先生のお気に入り(フェイ・ケニン、マイケル・ケニン)
  • The Goddess(パディ・チャイエフスキー)
  • 縄張り(ウィリアム・バワーズ、ジェームズ・エドワード・グラント)
脚色賞 恋の手ほどき
(アラン・ジェー・ラーナー)
  • 熱いトタン屋根の猫(リチャード・ブルックス、ジェームズ・ポー)
  • 私は死にたくない(ドン・マンキウィッツ、ネルソン・ギディング)
  • 旅路(ジョン・ゲイ、テレンス・ラティガン)
  • The Horse's Mouth(アレック・ギネス)
外国語映画賞 ぼくの伯父さん
(フランス)
  • 一年の長い道(ユーゴスラビア)
  • いつもの見知らぬ男たち(イタリア)
  • Helden(西ドイツ)
  • La Venganza(スペイン)

1958年(第30回)

  • ■ 作品賞:
    「戦場にかける橋」
  • ■ 最多受賞:
    「戦場にかける橋」(7部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「サヨナラ」(10個)

ハリウッド映画「サヨナラ」に出演した日本人のナンシー梅木(ミヨシ・ウメキ)が、助演女優賞を受賞した。日本人俳優として初のオスカーの獲得だった。アジア人俳優としても史上初の快挙。日本人の主要部門でのオスカー受賞は2023年現在、他に例がない。「サヨナラ」は最多10部門にノミネートされ、助演女優賞のほか、助演男優賞、美術賞、音響賞の計4冠に輝いた。

また、同じく日本人の早川雪洲(はやかわ・せっしゅう)も、「戦場にかける橋」で助演男優賞にノミネートされた。日本軍の捕虜収容所を舞台とする「戦場にかける橋」は、作品賞を含む最多7部門に輝いた。

1959年↑ | 1958年 | 1957年↓

1958年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「戦場にかける橋」

戦場にかける橋

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監督:デビッド・リーン

『西部戦線異状なし』以来、27年ぶりに戦争映画が作品賞を受賞した。

監督賞、脚色賞、主演男優なども獲り、計7冠。このほか、日本人俳優の早川雪洲(せっしゅう)が助演男優賞にノミネートされた。

太平洋戦争中の日本軍による鉄道橋工事をめぐる物語。日本軍と、捕虜になったイギリス兵が反目しながら工事を進める。

【背景】戦時下の1942年、日本軍は東南アジアで415キロの鉄道建設を強行。タイ、ミャンマー国境を結ぶ「泰緬(たいめん)鉄道」である。

ジャングルの中、シンガポールなどから英、蘭、豪の捕虜6万5000人が連行され、タイ、インドネシア、マレー半島の30万の労働者とともに強制労働させられた。

酷使と伝染病などで連合軍捕虜1万2000人以上、アジア人労働者5万人以上が死亡したといわれる。「南京大虐殺」「バターン死の行進」と並んで日本軍3大蛮行といわれる。

作曲賞に輝いたテーマ曲「クワイ河のマーチ」も有名。

<予告編▼>


<早川雪洲の出演シーン▼>



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  • 「サヨナラ」
    監督:ジョシュア・ローガン
    ※朝鮮戦争下、在日米軍人と日本人女性との悲恋の物語。ナンシー梅木が助演女優賞を受賞した。日本を含む東洋人の俳優として初めてのオスカーだった。
  • 「青春物語」
    監督:マーク・ロブソン
  • 「情婦」
    監督:ビリー・ワイルダー
  • 「十二人の怒れる男」
    監督:シドニー・ルメット
監督賞 デヴィッド・リーン
(戦場にかける橋)
  • シドニー・ルメット(十二人の怒れる男)
  • ビリー・ワイルダー(情婦)
  • ジョシュア・ローガン(サヨナラ)
  • マーク・ロブソン(青春物語)
主演男優賞 アレック・ギネス
(戦場にかける橋)
  • マーロン・ブランド(サヨナラ)
  • アンソニー・フランシオサ(夜を逃れて)
  • チャールズ・ロートン(情婦)
  • アンソニー・クイン(野生の息吹き)
主演女優賞 ジョアン・ウッドワード
(イブの三つの顔)
  • デボラ・カー(白い砂)
  • アンナ・マニャーニ(野生の息吹き)
  • エリザベス・テイラー(愛情の花咲く樹)
  • ラナ・ターナー(青春物語)
助演男優賞 レッド・バトンズ
(サヨナラ)
  • ヴィットリオ・デ・シーカ(武器よさらば)
  • 早川雪洲 (戦場にかける橋)
  • アーサー・ケネディ(青春物語)
  • ラス・タンブリン(青春物語)
助演女優賞 ナンシー梅木
(ミヨシ・ウメキ)
「サヨナラ」

ナンシー梅木
※北海道出身の歌手兼女優。渡米3年目で出演した本作でハリウッド映画デビュー。当時28歳。米兵と恋に落ちる日本人女性を演じた。授賞式に着物で出席し、大かっさいを浴びた。アジア人の俳優としても史上初めてのオスカー受賞という快挙だった。本名:梅木美代志(みよし)。
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1929年(昭和4年)5月、北海道の小樽にて、鉄工所の9人兄弟姉妹の末っ子として生まれた。高校在学中、兄が進駐軍の通訳をしていたことから、札幌の米軍キャンプなどで歌うようになり人気者に。「ナンシー」の由来は、米雑誌の漫画の主人公に似ていたためという。

1948年に上京する。角田孝&シックスのボーカルとしてデビューした。少し鼻にかかったハスキーボイスで、人気のジャズ歌手になった。

1955年に渡米した。1956年に全国放送のテレビ番組で歌をうたい、注目される。翌年、「サヨナラ」でハリウッドデビューを果たし、いきなりオスカーに輝いた。

その後も、「嬉し泣き」(1961年)や「戦略泥棒作戦」(1962年)などの米映画に出演。1958年開演のブロードウェイ・ミュージカル「フラワー・ドラム・ソング」で演劇界の最高峰トニー賞でミュージカル女優賞にノミネートされた。テレビドラマ「エディのすてきなパパ」(1969~1972年)にお手伝い役としてレギュラー出演もこなした。1972年に芸能活動から引退した。

私生活ではテレビディレクターのフレドリック・オピーと結婚。後に離婚。1968年にドキュメンタリー監督のランドール・フッドと再婚し、1976年に死別。晩年は息子夫婦がいるミズーリ州で暮らしていた。

2007年8月、ミズーリ州リッキングの老人ホームで他界した。死因はがん。享年78歳。
<受賞スピーチ▼>
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<歌唱シーン▼>


<歌声▼>


<歌声▼>

  • キャロリン・ジョーンズ(独身者のパーティ)
  • エルザ・ランチェスター(情婦)
  • ホープ・ラング(青春物語)
  • ダイアン・ヴァーシ(青春物語)
脚本賞 バラの肌着
(ジョージ・ウェルズ)
  • 青春群像(フェデリコ・フェリーニ、トゥリオ・ピネッリ、エンニオ・フライアーノ)
  • パリの恋人(レナード・ガーシュ)
  • 千の顔を持つ男(ラルフ・ウィールライト、R・ライト・キャンベル、アイヴァン・ゴッフ、ベン・ロバーツ)
  • 胸に輝く星(バーニー・スレイター、ジョエル・ケイン、ダドリー・ニコルズ)
脚色賞 戦場にかける橋
(マイケル・ウィルソン、カール・フォアマン、ピエール・ブール)
  • 十二人の怒れる男(レジナルド・ローズ)
  • 青春物語(ジョン・マイケル・ヘイズ)
  • サヨナラ(ポール・オズボーン)
  • 白い砂(ジョン・リー・メイヒン、ジョン・ヒューストン)
外国語映画賞 カビリアの夜
(イタリア)
  • 脱出地点(ノルウェー)
  • リラの門(フランス)
  • Nachts, wenn der Teufel kam(西ドイツ)
  • Mother India(インド)

1957年(第29回)

  • ■ 作品賞:
    「八十日間世界一周」
  • ■ 最多受賞:
    「八十日間世界一周」(5部門)
    「王様と私」(5部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「ジャイアンツ」(10個)

「ジャイアンツ」「十戒」「王様と私」といった錚々(そうそう)たる候補作をおさえ、 冒険コメディ「八十日間世界一周」が作品賞を獲得した。「ワイド・スクリーン」の映画で初の作品賞となった。 本年度以降、大ヒット作品やカラフルなスペクタクル作品が、オスカーの主流となる傾向が強まった。 台頭するテレビとの違いが明確になった。

なお、黒澤明監督の日本映画「七人の侍」(1954年)のリメイクで、西部劇の最高傑作とも言われた「荒野の七人」は、ノミネート・ゼロだった。

前年まで「名誉賞」と呼ばれていた外国語映画賞が、本年から正式な賞として位置づけられ、初代受賞作にフェデリコ・フェリーニ監督の「道」が選ばれた。日本の「ビルマの竪琴(たてごと)」(市川崑監督)もノミネートされた。

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1957年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「八十日間世界一周」

八十日間世界一周

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監督:マイケル・アンダーソン

大冒険コメディ映画。飛行機もない時代に「80日間で世界一周できる」と2万ポンドを賭けた英国紳士とお供の物語。

原作は、1873年の名作小説。プロデューサーの一人であるマイケル・トッドの名前が冠された「トッドAOシステム」という最先端の大画面スクリーンが採用された。上映時間約3時間で世界観光を体験してもらう、というコンセプトだった。「ワイド・スクリーン」の映画で初の作品賞となった。

40人を越える当時の大スターたちが競演した。ホセ・グレコのフラメンコ・ダンスや、闘牛士ルイス・ドミンゲンの至芸も登場。ファンサービスぶりが大喝采を浴びた。

<予告編▼>


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  • 「友情ある説得」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「ジャイアンツ」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
  • 「王様と私」
    監督:ウォルター・ラング
    ※シャム王と王家の家庭教師としてやってきた英国人女性が心を通わせる。「シャル・ウィ・ダンス」が名高い。
  • 「十戒」
    監督:セシル・B・デミル
監督賞 ジョージ・スティーヴンス
(ジャイアンツ)
  • マイケル・アンダーソン(八十日間世界一周)
  • ウォルター・ラング(王様と私)
  • キング・ヴィダー(戦争と平和)
  • ウィリアム・ワイラー(友情ある説得)
主演男優賞 ユル・ブリンナー
(王様と私)
  • ジェームズ・ディーン(ジャイアンツ)
  • カーク・ダグラス(炎の人ゴッホ)
  • ロック・ハドソン(ジャイアンツ)
  • ローレンス・オリヴィエ(リチャード三世)
主演女優賞 イングリッド・バーグマン
(追想)
  • キャロル・ベイカー(ベビイ・ドール)
  • キャサリン・ヘプバーン(雨を降らす男)
  • ナンシー・ケリー(悪い種子)
  • デボラ・カー(王様と私)
助演男優賞 アンソニー・クイン
(炎の人ゴッホ)
  • ドン・マレー(バス停留所)
  • アンソニー・パーキンス(友情ある説得)
  • ミッキー・ルーニー(戦塵)
  • ロバート・スタック(風と共に散る)
助演女優賞 ドロシー・マローン
(風と共に散る)
  • ミルドレッド・ダンノック(ベビイ・ドール)
  • アイリーン・ヘッカート(悪い種子)
  • マーセデス・マッケンブリッジ(ジャイアンツ)
  • パティ・マコーマック(悪い種子)
脚本賞 赤い風船
(アルベール・ラモリス)
  • 戦塵(ロバート・リューイン)
  • 影なき恐怖(アンドリュー・L・ストーン)
  • 道(フェデリコ・フェリーニ、トゥリオ・ピネリ)
  • マダムと泥棒(ポール・ウィリアム・ローズ)
脚色賞 八十日間世界一周
(ジェームズ・ポー、ジョン・ファロー、S・J・ペレルマン)
  • ベビイ・ドール(テネシー・ウィリアムズ)
  • 友情ある説得(マイケル・ウィルソン)
  • ジャイアンツ(アイヴァン・モファット、フレッド・ジュイオル)
  • 炎の人ゴッホ(ノーマン・コーウィン)
外国語映画賞
(イタリア)
  • 居酒屋(フランス)
  • ビルマの竪琴(日本)
  • Der Hauptmann von Köpenick(西ドイツ)
  • Qivitoq(デンマーク)

1956年(第28回)

  • ■ 作品賞:
    「マーティ」
  • ■ 最多受賞:
    「マーティ」(4部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「慕情」(8個)
    「マーティ」(8個)
    「バラの刺青」(8個)

テレビドラマを映画化した「マーティ」が作品賞を受賞した。監督賞、脚本賞、主演男優賞を獲り、主要4部門の栄冠に輝いた。いわゆる大型予算を組んだ「大作」でなく「小作」。役者も地味。テレビドラマの映画化ということもあり、監督と脚本もテレビ界の人物。ハリウッドが敵対していたテレビの伸長を象徴するような受賞となった。
名作と言われた「エデンの東」「旅情」が作品賞ノミネートから外れた。「エデンの東」は、名匠エリア・カザン監督。ジェームズ・ディーン主演。 ディーンにとって初めての主演となった。 公開から半年後、ディーンが交通事故で亡くなった。享年24歳。ディーンは主演男優賞にノミネートされた。
日本映画「宮本武蔵」(監督:稲垣浩、主演:三船敏郎)が、現在の国際映画賞に該当する「名誉賞」を受賞した。前年の「地獄門」に続き2年連続での日本の作品が選ばれた。

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1956年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「マーティ」

マーティ

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監督:デルバート・マン

庶民の恋愛ドラマ。心理のニュアンスをユーモラスな味付けで浮かび上がらせた秀作。

テレビのドラマが原作。デルバート・マン監督もテレビ出身。テレビ業界の映画への進出を示す事例となった。

ニューヨークのブロンクスで肉屋を営むイタリア系男性マーティと、女性教師が主人公。2人の独身を通じて、等身大の人たちの生活を浮き彫りにする。

長さ90分。それまでの作品賞で最も短い映画となった。

映画会社はこの作品を税金対策の一環として赤字を出すつもりで制作したが、試写で大好評だったため、製作費を上回る宣伝費を投じて大々的に売り出した。

カンヌ国際映画祭の最高賞「パルムドール」も受賞した。 オスカー作品賞とカンヌ最高賞の両方を獲得するのは極めて珍しく、 この後は、2020年に韓国の「パラサイト 半地下の家族」が達成するまで例がなかった。

<予告編▼>


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  • 「慕情」
    監督:ヘンリー・キング
  • 「ミスタア・ロバーツ」
    監督:ジョン・フォード 他
  • 「ピクニック」
    監督:ジョシュア・ローガン
  • 「バラの刺青」
    監督:ダニエル・マン
監督賞 デルバート・マン
(マーティ)
  • エリア・カザン(エデンの東)
  • デヴィッド・リーン(旅情)
  • ジョシュア・ローガン(ピクニック)
  • ジョン・スタージェス(日本人の勲章)
主演男優賞 アーネスト・ボーグナイン
(マーティ)
  • ジェームズ・キャグニー(情欲の悪魔)
  • ジェームズ・ディーン(エデンの東)
  • フランク・シナトラ(黄金の腕)
  • スペンサー・トレイシー(日本人の勲章)
主演女優賞 アンナ・マニャーニ
(バラの刺青)
  • スーザン・ヘイワード(明日泣く)
  • キャサリン・ヘプバーン(旅情)
  • ジェニファー・ジョーンズ(旅情)
  • エリノア・パーカー(わが愛は終りなし)
助演男優賞 ジャック・レモン
(ミスタア・ロバーツ)
  • アーサー・ケネディ(アメリカの戦慄)
  • ジョー・マンテル(マーティ)
  • サル・ミネオ(理由なき反抗)
  • アーサー・オコンネル(ピクニック)
助演女優賞 ジョー・ヴァン・フリート
(エデンの東)
  • ベッツィ・ブレア(マーティ)
  • ペギー・リー(皆殺しのトランペット)
  • マリサ・パヴァン(バラの刺青)
  • ナタリー・ウッド(理由なき反抗)
脚本賞 わが愛は終りなし
(ウィリアム・ルドウィグ、ソニア・レヴィン)
  • いつも上天気(B・カムデン、A・グリーン)
  • エディ・フォイ物語(メルヴィル・シェイヴルソン、ジャック・ローズ)
  • 軍法会議(ミルトン・スパーリング、エメット・レイヴリー)
  • ぼくの伯父さんの休暇(ジャック・タチ、アンリ・マルケ)
脚色賞 マーティ
(パディ・チャイエフスキー)
  • 暴力教室(リチャード・ブルックス)
  • 情欲の悪魔(ダニエル・フックス、イソベル・レナート)
  • 日本人の勲章(ミラード・カウフマン)
  • エデンの東(ポール・オズボーン)

1955年(第27回)

  • ■ 作品賞:
    「波止場」
  • ■ 最多受賞:
    「波止場」(8部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「波止場」(12個)

「波止場」が席巻した。堂々の8冠を獲得。「風と共に去りぬ」と、前年の覇者「地上より永遠に」が持つ歴代最多記録(当時)に並んだ。
日本映画「地獄門」が名誉賞(現在の国際映画賞)と衣装デザイン賞の2部門で受賞した。1952年名誉賞の「羅生門」に続いて邦画2度目の快挙。 オスカーで複数の賞を獲った日本映画は、他に例がない。

1956年↑ | 1955年 | 1954年↓

1955年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「波止場」

波止場

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監督:エリア・カザン
マーロン・ブランド主演。

8部門で受賞。「風と共に去りぬ」「地上より永遠に」が持つ歴代最多記録(当時)に並んだ。

1950年代のアメリカ映画界を代表する傑作として評価されている。歴代オスカー作品賞のベスト投票ランキングでもトップ10に入ることが多い。

マーロン・ブランドは主演男優賞を獲得。4年連続でのノミネートにして、初の受賞となった。

波止場で働くボクサーくずれのテリーが、暴力で支配する顔役に兄を殺される。怒りに燃えた彼は、労働者を組織し顔役に立ち向かう。

カザン監督は赤狩りの時代、共産党員の仲間の名前を公表して映画監督の地位を確保し、批判を浴びた。
赤狩りは、米ソ冷戦下の1950年代、マッカーシー上院議員らが推し進めた共産主義者排斥運動。文化的影響の強いハリウッドの映画関係者にも疑いの目を向け、324人をリストアップしたブラックリストを作成。喜劇王チャーリー・チャプリンら映画人を次々と米映画界から追放した。
1952年4月、自身が共産党員だったカザンは「ハリウッドにおける共産主義者の破壊活動調査」のために開かれた連邦議会下院の非米活動委員会・聴聞会で「転向」を表明。さらに、かつての演劇仲間や映画関係者のうち自分が党員だったと信じる者8人の名前を挙げたのだった。

<予告編▼>


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  • 「掠奪された七人の花嫁」
    監督:スタンリー・ドーネン
  • 「ケイン号の叛乱」
    監督:エドワード・ドミトリク
  • 「喝采」
    監督:ジョージ・シートン
  • 「愛の泉」
    監督:ジーン・ネグレスコ
監督賞 エリア・カザン
(波止場)
  • アルフレッド・ヒッチコック(裏窓)
  • ビリー・ワイルダー(麗しのサブリナ)
  • ジョージ・シートン(喝采)
  • ウィリアム・A・ウェルマン(紅の翼)
主演男優賞 マーロン・ブランド
(波止場)

オスカー史上最も優れた主演男優賞の演技の一つと評されている。4年連続でのノミネートにして、初の受賞となった。
  • ジェームズ・メイソン(スタア誕生)
  • ダン・オハーリー(ロビンソン漂流記)
  • ハンフリー・ボガート(ケイン号の叛乱)
  • ビング・クロスビー(喝采)
主演女優賞 グレース・ケリー
(喝采)
  • ジュディ・ガーランド(スタア誕生)
  • ドロシー・ダンドリッジ(カルメン)
  • ジェーン・ワイマン(心のともしび)
  • オードリー・ヘプバーン(麗しのサブリナ)
助演男優賞 エドモンド・オブライエン
(裸足の伯爵夫人)
  • リー・J・コッブ(波止場)
  • カール・マルデン(波止場)
  • ロッド・スタイガー(波止場)
  • トム・タリー(ケイン号の叛乱)
助演女優賞 エヴァ・マリー・セイント
(波止場)
  • ケティ・フラド(折れた槍)
  • ニナ・フォック(重役室)
  • ジャン・スターリング(紅の翼)
  • クレア・トレヴァー(紅の翼)
脚本賞 波止場
(バッド・シュールバーグ)
  • おかしなおかしな自動車競争(ウィリアム・ローズ)
  • あの手この手(ノーマン・パナマ、メルヴィン・フランク)
  • 裸足の伯爵夫人(ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ)
  • グレン・ミラー物語(ヴァレンタイン・デイヴィス、オスカー・ブロドニー)
脚色賞 喝采
(ジョージ・シートン)
  • 裏窓(ジョン・マイケル・ヘイズ)
  • 麗しのサブリナ(ビリー・ワイルダー、サミュエル・テイラー、アーネスト・レーマン)
  • ケイン号の叛乱(スタンリー・ロバーツ)
  • 掠奪された七人の花嫁(アルバート・ハケット、フランセス・グッドリッチ、ドロシー・キングスレイ)

1954年(第26回)

  • ■ 作品賞:
    「地上より永遠に」
  • ■ 最多受賞:
    「地上より永遠に」(8部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「地上より永遠に」(13個)

挑戦的な作品「地上より永遠に」が8冠に輝いた。「風と共に去りぬ」の最多受賞の記録に並んだ。 軍隊組織の暗部をあぶりだす問題作の圧勝で、暗黒マッカーシズム下のハリウッドに灯がともった。
一方、オードリー・ヘプバーンが、ハリウッド映画デビュー作「ローマの休日」でいきなり主演女優賞を獲得。歴史的な女優の旋風が始まった。

1955年↑ | 1954年 | 1953年↓

1954年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「地上(ここ)より永遠(とわ)に」

地上より永遠に

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監督:フレッド・ジンネマン

「風と共に去りぬ」と並ぶ8冠のタイ記録を成し遂げた。

性、売春、不倫、軍の腐敗など、当時のアメリカ映画ではタブーとされていたテーマを恐れずに描いた。 ハリウッドがより成熟したトピックに取り組む先例となった。

8冠のうち5つは主要部門(作品、監督、助演男優、助演女優、脚色)だった。 さらに主演男優賞も有力視されていたが、2人がノミネートされたこともあり、共倒れに終わってしまった。

本作で助演男優賞に輝いたフランク・シナトラは、キャリア低迷期が続いていたが、見事なカムバックを果たした。

日本軍による真珠湾攻撃が間近の1941年のハワイが舞台。米軍の兵舎内での人間ドラマを通して、軍隊組織の非人間性を暴く。

原作は1951年のベストセラー小説。 ジェームズ・ジョーンズ(当時30歳)が自ら兵舎駐在の経験に基づいて書いた。 政府機関への批判がご法度に近かったマッカーシー時代(赤狩り時代)にあって、 軍の矛盾をあぶりだす内容は、 センセーションを巻き起こした。

コロンビア(現ソニー・ピクチャーズ)の豪腕社長ハリー・コーンは、 赤狩りに臆することなく、大金を投じてこの小説の映画化権を取得。 アート系監督と見られていたフレッド・ジンネマンを監督として雇った。

【あらすじ】1941年夏、ハワイのスコフィールド米軍基地に、プルーイット2等兵(モンゴメリー・クリフト)が転属してくる。

ボクシングの名選手だった彼は、中隊長のホームズ大尉(フィリップ・オーバー)にボクシング部入りを勧誘されるが、断る。リングで友人を失明させて、やめると決意していたからだ。

これがきっかけで、プルーイットへのいじめが始まる。かばってくれるのは、同僚のマジオ(フランク・シナトラ)と、中隊長付のウォーデン曹長(バート・ランカスター)だけだった…。

閉鎖的な男社会の中の人間ドラマ。プルーイットとウォーデンのそれぞれの恋。この二つを軸に物語が進行する。

<予告編▼>


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  • 「ジュリアス・シーザー」
    監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
  • 「聖衣」
    監督:ヘンリー・コスター
  • 「ローマの休日」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「シェーン」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
監督賞 フレッド・ジンネマン
(地上より永遠に)
  • ジョージ・スティーヴンス(シェーン)
  • チャールズ・ウォルタース(リリー)
  • ビリー・ワイルダー(第十七捕虜収容所)
  • ウィリアム・ワイラー(ローマの休日)
主演男優賞 ウィリアム・ホールデン
(第十七捕虜収容所)
  • マーロン・ブランド(ジュリアス・シーザー)
  • リチャード・ハリス(孤独の報酬)
  • リチャード・バートン(聖衣)
  • モンゴメリー・クリフト(地上より永遠に)
主演女優賞 オードリー・ヘプバーン
(ローマの休日)

※ヘプバーンにとって初ノミネートにして初受賞。この後も4回主演女優賞にノミネートされたが、 受賞はこの時だけとなった。
本作はハリウッド映画デビュー作だった。 それまではイギリス映画界の端役(はやく)に過ぎなかった。 彼女がブロードウェイ舞台に出演しているのを見たワイラー監督が、即決した。
  • レスリー・キャロン(リリー)
  • エヴァ・ガードナー(モガンボ)
  • デボラ・カー(地上より永遠に)
  • マギー・マクナマラ(月蒼くして)
助演男優賞 フランク・シナトラ
(地上より永遠に)

※歌手としてキャリア低迷期に入っていたが、本作で俳優として大成功。 次々と仕事が舞い込み、 2年後の1956年に「黄金の腕」で主演男優賞にノミネート。このほか「夜の豹(ひょう)」「上流社会」などのメガヒットに次々と出演した。
シナトラは当時、マフィアとの関係が問題視されており、本作の役柄を獲得する際にもマフィアの力を借りたという疑惑が出ていた。
  • エディ・アルバート(ローマの休日)
  • ブランドン・デ・ワイルド(シェーン)
  • ジャック・パランス(シェーン)
  • ロバート・ストラウス(第十七捕虜収容所)
助演女優賞 ドナ・リード
(地上より永遠に)
  • グレース・ケリー(モガンボ)
  • ジェラルディン・ペイジ(ホンドー)
  • マージョリー・ランボー  Torch Song
  • セルマ・リッター(拾った女)
脚本賞 タイタニックの最期
(チャールズ・ブラケット、ウォルター・ライシュ、リチャード・ブリーン)
  • バンド・ワゴン(ベティ・コムデン、アドルフ・グリーン)
  • あの高地を取れ(ミラード・カウフマン)
  • 砂漠の鼠(リチャード・マーフィ)
  • 裸の拍車(サム・ロルフ、ハロルド・ジャック・ブルーム)
脚色賞 地上より永遠に
(ダニエル・タラダッシュ)
  • 怒りの海(エリック・アンブラー)
  • リリー(ヘレン・ドイッチュ)
  • シェーン(A・B・ガスリー・Jr)
  • ローマの休日(イアン・マクレラン・ハンター、ジョン・ダイトン)

1953年(第25回)

  • ■ 作品賞:
    「地上最大のショウ」
  • ■ 最多受賞:
    「悪人と美女」(5部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「真昼の決闘」(7個)
    「赤い風車」(7個)
    「静かなる男」(7個)

不朽の名作「雨に唄えば」が、わずか2部門(助演女優賞、作曲賞)でしかノミネートされなかった。 「雨に唄えば」ほどではないが、歴史に残る傑作として評価されている「真昼の決闘」は作品賞にノミネートされたが、受賞は逃した。 大番狂わせだった。 作品賞を獲った「地上最大のショウ」は、作品賞を受賞した作品の中で最悪の一つとされるようになった。
授業式が初めてテレビで放映された。

1954年↑ | 1953年 | 1952年↓

1953年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「地上最大のショウ」

地上最大のショウ

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監督:セシル・B・デミル

サーカスの舞台裏を描いた。80年の歴史を誇り、1400人の座員を抱える世界最大の一座の人間ドラマ。

観客を理屈抜きに楽しませる娯楽映画の王道。スペクタクル大作。移動列車が転覆するシーンが有名。サーカス団による華麗なショーも魅力。テレビの台頭に対抗するため、映画ならではの派手さを前面に出した。

ただ、歴代の作品賞の受賞作の中でワーストの駄作という意見もある。

事前の予想では「真昼の決闘」が最有力と見られていた。オスカー歴史に残る番狂わせ(大どんでん返し)として有名。

作品賞以外では原案賞のみの受賞。作品賞受賞作が2冠のみという例は、2016年の「スポットライト」まで出てこなかった。

【あらすじ】年間興行ツアーの出発30分前を迎え、動物や機械などを次々と列車に積み込んでいくサーカス団。そこに突然、白バイを引き連れた高級車が登場する。乗っていたのは、世界一の空中曲芸師・大セバスチャン(コーネル・ワイルド)だった。

迎えたのは、座長ブラッド(チャールトン・ヘストン)。ブラッドは「何度かスターは出迎えたが、護衛付きは初めてだ」と呆れ顔で彼を受け入れ、座員に彼の交通違反の罰金を立て替えるように指示した。

経営陣は不況下での興行短縮を考えた。ショーの存在価値と座員の生活を守ろうとする座長ブラッドは、大セバスチャンの加入と黒字の限り続けることを条件に8カ月の巡業を、経営陣に認めさせる。

だが、そのためにはブラッドが愛する花形空中曲芸師ホリー(ベティ・ハットン)をトップスターの座から降ろす必要があった。

<予告編▼>


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  • 「真昼の決闘」
    監督:フレッド・ジンネマン
  • 「黒騎士」
    監督:リチャード・ソープ
  • 「赤い風車」
    監督:ジョン・ヒューストン
  • 「静かなる男」
    監督:ジョン・フォード
監督賞 ジョン・フォード
(静かなる男)
  • セシル・B・デミル(地上最大のショウ)
  • ジョン・ヒューストン(赤い風車)
  • ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ(五本の指)
  • フレッド・ジンネマン(真昼の決闘)
主演男優賞 ゲイリー・クーパー
(真昼の決闘)
  • マーロン・ブランド(革命児サパタ)
  • カーク・ダグラス(悪人と美女)
  • ホセ・フェラー(赤い風車)
  • アレック・ギネス(ラベンダー・ヒル・モブ)
主演女優賞 シャーリー・ブース(愛しのシバよ帰れ)
(奇跡の人)
  • ジョーン・クロフォード(突然の恐怖)
  • ベティ・デイヴィス(The Star)
  • ジュリー・ハリス(The Member of the Wedding)
  • スーザン・ヘイワード(わが心に歌えば)
助演男優賞 アンソニー・クイン
(革命児サパタ)
  • リチャード・バートン(謎の佳人レイチェル)
  • アーサー・ハニカット(果てしなき蒼空)
  • ヴィクター・マクラグレン(静かなる男)
  • ジャック・パランス(突然の恐怖)
助演女優賞 グロリア・グレアム
(悪人と美女)
  • ジーン・ヘイゲン(雨に唄えば)
  • コレット・マルシャン(赤い風車)
  • テリー・ムーア(愛しのシバよ帰れ)
  • セルマ・リッター(わが心に歌えば)
脚本賞 ラベンダー・ヒル・モブ)
(T・E・B・クラーク)
  • The Atomic City(シドニー・ボーム)
  • パットとマイク(ルース・ゴードン、ガーソン・ケニン)
  • 超音ジェット機(テレンス・ラティガン)
  • 革命児サパタ(ジョン・スタインベック)
脚色賞 悪人と美女
(チャールズ・シュニー)
  • 真昼の決闘(カール・フォアマン)
  • 白衣の男(英語版)(ロジャー・マクドゥガル、ジョン・ダイトン、アレクサンダー・マッケンドリック)
  • 静かなる男(フランク・S・ニュージェント)
  • 五本の指(マイケル・ウィルソン)

1952年(第24回)

  • ■ 作品賞:
    「巴里(パリ)のアメリカ人」
  • ■ 最多受賞:
    「巴里のアメリカ人」(6部門)
    「陽のあたる場所」(6部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「欲望という名の電車」(12個)

事前予想では、作品賞は「陽(ひ)のあたる場所」「欲望という名の電車」の一騎打ちと見られていたが、 「巴里のアメリカ人」が獲った。 オスカーの歴史に残るサプライズの一つとなった。
「陽のあたる場所」は監督賞を獲得。「欲望という名の電車」は俳優3部門(主演女優、助演男優、助演女優)を制した。

日本初のオスカー「羅生門」(黒澤明監督)

日本映画が初めてオスカーを受賞した記念すべき年。黒澤明監督の「羅生門」が名誉賞(現在の国際映画賞)に輝いた。 前年にベネチア国際映画祭で最高賞(金熊賞)に選ばれていたが、 それがまぐれでないことが裏付けられた。敗戦による絶望から這い上がろうとする日本人たちに勇気を与えるとともに、日本映画が世界で認められる突破口となった。黒澤監督はこの後、「世界のクロサワ」としてハリウッドの映画人たちにも多大な影響を与えていく。

1953年↑ | 1952年 | 1951年↓

1952年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「巴里(パリ)のアメリカ人」

巴里のアメリカ人

【配信:アマゾン

監督:ビンセント・ミネリ

ミュージカル。「雨に唄えば」とともに、ジーン・ケリーが主演するミュージカル映画の傑作と評される。 ケリーが名誉賞を受賞し、計7冠に輝いた。

「風と共に去りぬ」以来12年ぶりにカラー作品が作品賞を獲った。

アメリカの誇る作曲家の一人、ジョージ・ガーシュイン(1898~1973)が、1928年にヨーロッパ旅行中のパリの印象を綴った管弦楽曲「巴里のアメリカ人」。本作はこの名曲を中心に、ガーシュインのメロディーの数々を全編に散りばめた。

大戦後6年を経て活気を取り戻しつつある躍動するパリのイメージを、音楽、色彩、舞踊が一体となって描き出していく。ルノワール、ユトリロ、ゴッホ、ロートレック、ルソーなどの名画をバックに17分も踊りまくる幻想バレエのシーンは見事

本作がデビューのレスリー・キャロンは、主演ジーン・ケリーがパリでスカウトした。

【あらすじ】第二次世界大戦中、パリに駐屯したことのあるアメリカ人、ジェリー・マリガン(ジーン・ケリー)は、画家になりたい一心でパリを訪れる。

彼は美しいバレリーナ、リズ(レスリー・キャロン)に心を奪われるが、皮肉にも彼女はジェリーの友人アンリ(ジョルジュ・ゲタリー)のフィアンセだった。パリジェンヌと生っ粋のアメリカ人の恋は実るのか?。

<予告編▼>


<挿入歌「アイ・ガット・リズム」▼>


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  • 「暁前の決断」
    監督:アナトール・リトヴァク
  • 「陽のあたる場所」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
  • 「クォ・ヴァディス」
    監督:マーヴィン・ルロイ
  • 「欲望という名の電車」
    監督:エリア・カザン
監督賞 ジョージ・スティーヴンス
(陽のあたる場所)
  • ジョン・ヒューストン(アフリカの女王)
  • エリア・カザン(欲望という名の電車)
  • ヴィンセント・ミネリ(巴里のアメリカ人)
  • ウィリアム・ワイラー(探偵物語)
主演男優賞 ハンフリー・ボガート
(アフリカの女王)
  • マーロン・ブランド(欲望という名の電車)
  • モンゴメリー・クリフト(陽のあたる場所)
  • アーサー・ケネディ(Bright Victory)
  • フレドリック・マーチ(セールスマンの死)
主演女優賞 ヴィヴィアン・リー
(欲望という名の電車)
  • キャサリン・ヘプバーン(アフリカの女王)
  • エリノア・パーカー(探偵物語)
  • シェリー・ウィンタース(陽のあたる場所)
  • ジェーン・ワイマン(青いヴェール)
助演男優賞 カール・マルデン
(欲望という名の電車)
  • レオ・ゲン(クォ・ヴァディス)
  • ケヴィン・マッカーシー(セールスマンの死)
  • ピーター・ユスティノフ(クォ・ヴァディス)
  • ギグ・ヤング(六年目の誘惑)
助演女優賞 キム・ハンター
(欲望という名の電車)
  • ジョーン・ブロンデル(青いヴェール)
  • ミルドレッド・ダンノック(セールスマンの死)
  • リー・グラント(探偵物語)
  • セルマ・リッター(The Mating Season)
脚本賞 巴里のアメリカ人
(アラン・ジェイ・ラーナー)
  • 愛欲の十字路(フィリップ・ダン)
  • 井戸(ラッセル・ラウズ、フラレンス・グリーン)
  • 二世部隊(ロバート・ピロッシュ)
  • 地獄の英雄(ビリー・ワイルダー、レッサー・サミュエルズ、ウォルター・ニューマン)
脚色賞 陽のあたる場所
(マイケル・ウィルソン、ハリー・ブラウン)
  • アフリカの女王(ジェームズ・エイジー、ジョン・ヒューストン)
  • 輪舞(ジャック・ナタンソン、マックス・オフュルス)
  • 欲望という名の電車(テネシー・ウィリアムズ)
  • 探偵物語(フィリップ・ヨーダン、ロバート・ワイラー)

1951年(第23回)

  • ■ 作品賞:
    「イヴの総て」
  • ■ 最多受賞:
    「イヴの総て」(6部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「イヴの総て」(14個)

米映画の歴史に残る2つの傑作が、激戦を展開した。 「イヴの総て」と「サンセット大通り」。 いずれも芸能界の舞台裏の物語である。
「イヴの総て」は過去最多となる14個ノミネート。 「サンセット大通り」は11ノミネート。 結果はイヴが作品、監督、助演男優賞など6部門を制した。 「サンセット大通り」は脚本など3部門で受賞。

1952年↑ | 1951年 | 1950年↓

1951年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「イヴの総て」

イヴの総て

【配信:アマゾン

監督:ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ

ブロードウェイの演劇界の内幕を描いた。

過去最多となる14個のノミネートを獲得。「風と共に去りぬ」の13ノミネートの記録を塗り替えた。 このうち、作品、監督、助演男優賞など6部門で受賞した。

主演女優賞では、本作から大本命のベティ・デイビスと、イヴ役のアン・バクスターの2人がノミネートされた。 支持票が割れたためか、どちらも受賞ならず。「ボーン・イエスタデイ」のジュディ・ホリデイにさらわれるどんでん返しが起きた。

マンキーウィッツ監督は、2年連続の監督賞という快挙。さらに、前年の脚本賞に続いて脚色賞を獲った。

【あらすじ】ブロードウェーのトップ女優マーゴに憧れ、近づいた女優志願の若い女性イヴが、策を弄(ろう)して、その座を奪い取ろうとする。

追い詰めるイヴ。感情のバランスを壊していくマーゴ。緊迫した心理サスペンスに、イヴの才能と下心をともに見抜いて近づく演劇評論家や、2人の運命の重要な鍵を握る劇作家夫婦などがからみ、物語が進行する。

<予告編▼>


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  • 「ボーン・イエスタデイ」
    監督:ジョージ・キューカー
  • 「花嫁の父」
    監督:ヴィンセント・ミネリ
  • 「キング・ソロモン」
    監督:コンプトン・ベネット 他
  • 「サンセット大通り」
    監督:ビリー・ワイルダー
監督賞 ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
(イヴの総て)

2年連続の受賞
  • ジョージ・キューカー(ボーン・イエスタデイ)
  • ジョン・ヒューストン(アスファルト・ジャングル)
  • キャロル・リード(第三の男)
  • ビリー・ワイルダー(サンセット大通り)
主演男優賞 ホセ・フェラー
(シラノ・ド・ベルジュラック)
  • ルイス・カルハーン(The Magnificent Yankee)
  • ウィリアム・ホールデン(サンセット大通り)
  • ジェームズ・ステュアート(ハーヴェイ)
  • スペンサー・トレイシー(花嫁の父)
主演女優賞 ジュディ・ホリデイ
(ボーン・イエスタデイ)
  • アン・バクスター(イヴの総て)
  • ベティ・デイヴィス(イヴの総て)
  • エリノア・パーカー(女囚の掟)
  • グロリア・スワンソン(サンセット大通り)
助演男優賞 ジョージ・サンダース
(イヴの総て)
  • ジェフ・チャンドラー(折れた矢)
  • エドマンド・グウェン(Mister 880)
  • サム・ジャッフェ(アスファルト・ジャングル)
  • エリッヒ・フォン・シュトロハイム(サンセット大通り)
助演女優賞 ジョセフィン・ハル
(ハーヴェイ)
  • ホープ・エマーソン(女囚の掟)
  • セレステ・ホルム(イヴの総て)
  • ナンシー・オルソン(サンセット大通り)
  • セルマ・リッター(イヴの総て)
脚本賞 サンセット大通り
(チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー、D・M・マーシュマン・Jr)
  • 男たち(カール・フォアマン
  • アダム氏とマダム(ルース・ゴードン、ガーソン・ケニン)
  • 女囚の掟(バーナード・ショーンフェルド、ヴァージニア・ケロッグ)
  • 復讐鬼(ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ、レッサー・サミュエルズ)
脚色賞 イヴの総て
(ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ)
  • 折れた矢(マイケル・ブランクフォート)
  • 花嫁の父(フランセス・グッドリッチ、アルバート・ハケット)
  • アスファルト・ジャングル(ベン・マドー、ジョン・ヒューストン)
  • ボーン・イエスタデイ(アルバート・マンハイマー)

1950年(第22回)

  • ■ 作品賞:
    「オール・ザ・キングスメン」
  • ■ 最多受賞:
    「女相続人」(4部門)
  • ■ 最多ノミネート:
    「女相続人」(8個)

作品賞には、政治腐敗を描いた「オール・ザ・キングスメン」が受賞した。主演男優賞、助演女優賞も獲り、3冠だった。 ただし、当時は赤狩りの時代。監督のロバート・ロッセン氏は、権力への批判精神が保守層からにらまれ、監督賞にノミネートすらされなかった。
ウィリアム・ワイラー監督の「女相続人」が最多の8ノミネートを獲得。主演女優賞や衣装デザイン賞などの4部門に輝き、最多受賞となった。

1951年↑ | 1950年 | 1949年→

1950年
部門 受賞 ノミネート
作品賞 「オール・ザ・キングスメン」

オール・ザ・キングスメン

【配信:アマゾン

監督:ロバート・ロッセン

政治権力の暗部をえぐった秀作。

政治家の腐敗を批判して州知事になった男が、次第に独裁者になっていく物語。参謀になった元新聞記者の苦悩を通して描かれる。

作品賞、主演男優賞、助演女優賞の3冠。ロバート・ロッセン監督は本作で見せた批判精神によって保守派からにらまれ、監督賞ノミネートから外された。恐怖の「赤狩り時代」が、ハリウッドに本格的に到来しようとしていた。

【モデルは実在の政治家】主人公のモデルは、ヒューイ・ロングという実在のアメリカの政治家である。

1929年10月から大恐慌に突入したアメリカでは白人中産階級でさえもが職を失い飢え始めた。そんな時期にロングは南部のルイジアナ州知事になり、次に民主党の上院議員になって大統領を目指すようになる。

1932年の大統領選では、はじめは同じ民主党のフランクリン・ルーズベルトを支持したが、ルーズベルトが当選すると「反ニューディール」の姿勢を明らかにする。

「石油財閥による政治支配をやめさせよ。ニューヨークの大富豪たちによる独占体制を打ち倒せ」と激しく訴えて国民の熱烈な支持を受けた。いわゆる「ポピュリスト」である。

すべての作品賞ノミネートが白黒作品だった最後の年となった。

<予告編▼>


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  • 「戦場」
    監督:ウィリアム・A・ウェルマン
  • 「女相続人」
    監督:ウィリアム・ワイラー
    ※遺産相続をめぐる愛憎ドラマ。最多の8ノミネートを獲得。主演女優賞や衣装デザイン賞などの4部門に輝き、最多受賞となった。
  • 「三人の妻への手紙」
    監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
  • 「頭上の敵機」
    監督:ヘンリー・キング
監督賞 ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
(三人の妻への手紙)
  • キャロル・リード(落ちた偶像)
  • ロバート・ロッセン(オール・ザ・キングスメン)
  • ウィリアム・A・ウェルマン(戦場)
  • ウィリアム・ワイラー(女相続人)
主演男優賞 ブロデリック・クロフォード
(オール・ザ・キングスメン)
  • ジョン・ウェイン(硫黄島の砂)
  • カーク・ダグラス(チャンピオン)
  • グレゴリー・ペック(頭上の敵機)
  • リチャード・トッド(命ある限り)
主演女優賞 オリヴィア・デ・ハヴィランド
(女相続人)
  • スーザン・ヘイワード(愚かなり我が心)
  • ジーン・クレイン(ピンキー)
  • デボラ・カー(Edward, My Son)
  • ロレッタ・ヤング(星は輝く)
助演男優賞 ディーン・ジャガー
(頭上の敵機)
  • ジョン・アイアランド(オール・ザ・キングスメン)
  • アーサー・ケネディ(チャンピオン)
  • ラルフ・リチャードソン(女相続人)
  • ジェームズ・ホイットモア(戦場)
助演女優賞 マーセデス・マッケンブリッジ
(オール・ザ・キングスメン)
  • エセル・バリモア(ピンキー)
  • セレステ・ホルム(星は輝く)
  • エルザ・ランチェスター(星は輝く)
  • エセル・ウォーターズ(ピンキー)
脚本賞 三人の妻への手紙
(ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ)
  • チャンピオン(カール・フォアマン)
  • 落ちた偶像(グレアム・グリーン)
  • オール・ザ・キングスメン(ロバート・ロッセン)
  • 自転車泥棒(チェザーレ・ザヴァッティーニ)
脚色賞 戦場
(ロバート・ピロッシュ)
  • ジョルスン再び歌う(シドニー・バックマン)
  • Passport to Pimlico(T・E・B・クラーク)
  • 戦火のかなた(アルフレッド・ヘイズ、フェデリコ・フェリーニ、セルジオ・アミデイ、マルチェロ・パリエーロ、ロベルト・ロッセリーニ)
  • The Quiet One(ヘレン・レヴィット、ジャニス・ローブ、シドニー・マイヤーズ)

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