オスカー作品賞の名作ベスト50

<トップ10>
順位 作品名
「カサブランカ」
カサブランカ

 1944年(第16回)

 監督:マイケル・カーティス

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史上最高の恋愛映画としての評価が定着している。第2次世界大戦下のモロッコを舞台にした傑作ロマンス。名場面と名台詞に彩られた永遠の恋愛映画である。反ナチスを背景に、モロッコの異国情緒、サスペンスの要素が絡む。

ハンフリー・ボガートの名ゼリフ「君の瞳に乾杯」で知られる。うるんだ瞳のイングリッド・バーグマンの美しさが際立つ。

オスカーでは作品賞のほか、監督賞、脚色賞を受賞。かつての恋人たちの思い出を奏でる名曲「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」が切ない。

アメリカ映画の最高傑作といえば、本作と「市民ケーン」「ゴッドファーザー」の3本が挙げられることが多い。

【物語】1940年、仏保護領モロッコ。米国人リック(ハンフリー・ボガート)が経営する酒場。ドイツ占領地から逃れてきたレジスタンスのリーダーとその妻イルザが現れる。イルザはかつて、パリでリックと愛し合った仲だった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
脚色賞
ノミネート 主演男優賞
 ハンフリー・ボガート
助演男優賞
 クロード・レインズ
ドラマ音楽賞
撮影賞(白黒部門)
編集賞


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「ゴッドファーザー」
ゴッドファーザー

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監督:フランシス・フォード・コッポラ

1973年 (第45回)

犯罪組織の「悪」に「家族愛」を重ね合わせた愛憎劇。米国のイタリア系マフィアの内幕を描いた。

壮大かつ上質な人間ドラマとして絶賛された。家族愛、憎しみの振幅、恋愛、父権、贖罪(しょくざい)意識など多くのテーマが重なり合う。

監督は、当時まだ32歳の若手だったフランシス・コッポラ。 コッポラはそれまで、3作ほどの映画を手がけていたが、ヒットしていなかった。 しかし、イタリア的感覚がほとばしる人柄が買われ、抜擢となった。 配給会社パラマウントは大成功を期待しておらず、予算的に大物監督を雇えないという事情もあった。

原作は、マリオ・プーゾのベストセラー小説

作品賞に加えて、コッポラ個人も監督賞こそ逸したが、脚色賞を獲得。「もはや過去のスター」と悪口を言われていたマーロン・ブランドは主演男優賞に選ばれた。

ニーノ・ロータの甘美なテーマ曲も有名。

【あらすじ】主人公のヴィト・コルレオーネ(マーロン・ブランド)は、イタリアのシシリア島からアメリカへ移住した。苦労の末に富を築き上げた。相手が貧しく微力でも、助けを求めに来れば親身になって問題を解決する。抗争では冷酷だが、仲間からは「ドン」「ゴッドファーザー」と慕われ、何よりも家族を大切する。

<受賞部門>
受賞 作品賞
主演男優賞
 マーロン・ブランド
脚色賞
ノミネート 監督賞
助演男優賞
 ジェームズ・カーン
助演男優賞
 ロバート・デュヴァル
助演男優賞
 アル・パチーノ
衣装デザイン賞
録音賞
編集賞


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「風と共に去りぬ」
風と共に去りぬ

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監督:ヴィクター・フレミング

1940年(第12回)

「不朽の名作」といえば、この映画を思い浮かべる人も多いだろう。 アメリカに限らず世界で「感動映画」の代名詞のように語り継がれてきた。アカデミー賞は10部門受賞。

大物プロデューサー、デビッド・O・セルズニックが、小説家マーガレット・ミッチェル女史から映画化権を獲得。 ビクター・フレミングを監督に起用し、当時としては破格の製作費600万ドルを投じて作り上げた。

南北戦争が始まる直前の南部ジョージア州。 大農場主の娘スカーレットの波乱万丈の人生が圧倒的スケールで描かれた。

野性的なバトラーを演じたクラーク・ゲーブル、そしてスカーレット役ビビアン・リーの名演。 アトランタ市街の大炎上など見せ場シーンの迫力も圧巻。 カラーの彩色技術も称賛された。 マックス・スタイナーの音楽なども見事にマッチ。

インフレ率を加味した興行収入(北米)は、歴代1位を維持している。

1939年の作品だが、日本で最初に公開されたのは戦後の1952年。 多くの人たちが、豪華な衣装やビビアン・リーの美しさに魅了された。 その後も数年おきに映画館で再上映。 1967年のリバイバルでは、東京の映画館に連日長蛇の列ができた。 洋画の代表的な名作として記憶に残された。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演女優賞
 ヴィヴィアン・リー
助演女優賞
 ハティ・マクダニエル
脚色賞
美術監督賞
撮影賞(カラー作品)
編集賞
特別賞
ノミネート 主演男優賞
 クラーク・ゲーブル
助演女優賞
 オリヴィア・デ・ハヴィランド
作曲賞
録音賞
特殊効果賞


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「アラビアのロレンス」
アラビアのロレンス

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監督:デヴィッド・リーン

1963年 (第35回)

イギリス映画。デビッド・リーン監督。

第1次世界大戦時、アラブの動向を探るべく英軍のロレンス少佐が砂漠へと派遣される。やがて彼はアラブの民を率いてトルコ軍と戦い、英雄となっていくが…。実在する英国の探検家がモデルとなっている。

コンピューターグラフィックス(CG)が未発達の時代に、果てしなく広がる砂漠を舞台にして迫力ある映像を表現した。主演ピーター・オトゥールの演技も絶賛された。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
作曲賞
録音賞
美術賞(カラー作品)
撮影賞(カラー作品)
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 ピーター・オトゥール
助演男優賞
 オマー・シャリフ
脚色賞
ロバート・ボルト、A・グリーン


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「シンドラーのリスト」
シンドラーのリスト

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監督:スティーブン・スピルバーグ

1994年(第66回)

第二次世界大戦下のポーランド。ナチスの党員でありながら、自ら経営するほうろう製造工場で働く約1200人のユダヤ人をホロコースト(大虐殺)から救ったドイツ人事業家オスカー・シンドラーの実話。

ユダヤ人の血を引くスティーブン・スピルバーグ監督が、執念を持って歴史を再現した。 白黒映像で、3時間15分の長尺ながら、緊張感があふれ、一瞬たりとも目を放せない。自分が現場にいるような気分にさせられるようなリアル感。 ナチス将校役を演じたレイフ・ファインズ(助演男優賞ノミネート)の好演もあって、ファシズムのもつ退廃、恐ろしさが画面にあふれる。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
脚色賞
作曲賞
美術賞
撮影賞
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 リーアム・ニーソン
助演男優賞
 レイフ・ファインズ
録音賞
メイクアップ賞
衣装デザイン賞


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「波止場」
波止場

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監督:エリア・カザン

1955年(第27回)

社会派ドラマ。1940、1950年代を代表するエリア・ガザン監督。セミ・ドキュメンタリー調。

暴力に支配されたニューヨークの波止場が舞台。 港湾労働者の青年の激しい行動力を描く。 この主人公はボクサーくずれ。一匹狼。 マーロン・ブランドが演じる。 ブランドは主演男優賞を受賞した。 なんと、4年連続でのノミネートだった。

11部門でノミネートされ、8部門で受賞した。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 マーロン・ブランド
助演女優賞
 エヴァ・マリー・セイント
脚本賞
撮影賞(白黒部門)
美術監督賞(白黒部門)
編集賞
ノミネート 助演男優賞
 リー・J・コッブ
助演男優賞
 カール・マルデン
助演男優賞
 ロッド・スタイガー
ドラマ・コメディ音楽賞


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「イヴの総て」
イヴの総て

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監督:ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ

1951年(第23回)

スターの座をめぐる女優たちの下克上の物語。 華やかなステージの裏で繰り広げられる人間ドラマを描く。 緻密な構成が見事。

ブロードウェーのトップ女優マーゴに憧れ、近づいた女優志願の若い女性イヴが、策を弄(ろう)して、その座を奪い取ろうとする。 追い詰めるイヴ。感情のバランスを壊していくマーゴ。緊迫した心理サスペンスに、イヴの才能と下心をともに見抜いて近づく演劇評論家や、2人の運命の重要な鍵を握る劇作家夫婦などがからみ、物語が進行する。

映画評論家・山田宏一氏によれば、最も複雑なフラッシュバック(回想形式)を駆使したオーソン・ウェルズ監督の名作「市民ケーン」に対して、本作は最も洗練されたフラッシュバックによる巧みな語り口が評価されている。 ベティ・デイビスの年齢を隠さない存在感と演技が絶賛された。イヴ役のアン・バクスターとの火花を散らす場面も圧巻だった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
助演男優賞
 ジョージ・サンダース
脚色賞
録音賞
衣装デザイン賞(白黒部門)
ノミネート 主演女優賞
 アン・バクスター
主演女優賞
 ベティ・デイヴィス
助演女優賞
 セレステ・ホルム
助演女優賞
 セルマ・リッター
ドラマ・コメディ音楽賞
美術監督賞(白黒部門)
撮影賞(白黒部門)
編集賞


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「ゴッドファーザーPARTⅡ」
ゴッドファーザーPARTⅡ

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監督:フランシス・フォード・コッポラ

1975年(第47回)

続編の映画として史上初めてオスカー作品賞に輝いた。「パート1」の「前」と「後」の物語が描かれている。マフィアのコルレオーネ一族のうち、ロバート・デニーロ演じる父親と、アル・パチーノ演じる息子が主人公。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
助演男優賞
 ロバート・デ・ニーロ
脚色賞
美術賞
劇映画作曲賞
ノミネート 主演男優賞
 アル・パチーノ
助演男優賞
 マイケル・V・ガッツォ
助演男優賞
 リー・ストラスバーグ
助演女優賞
 タリア・シャイア
衣装デザイン賞


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「或(あ)る夜の出来事」
或る夜の出来事

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監督:フランク・キャプラ

1935年(第7回)

オスカーで軽視されがちな恋愛コメディながら、初の主要5部門(作品、監督、脚本、主演男優、主演女優)受賞という快挙を成し遂げた。

民主主義を高らかにうたい上げ、「アメリカ映画界の良心」と呼ばれた名匠フランク・キャプラ監督の代表作。

「ロマンチック・コメディー」というジャンルの確立と流行に大きな役割を果たした。 さらに、車での旅の道のりを描く「ロードムービー」の草分けでもある。 日本の映画史にも大きな影響を与えた。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 クラーク・ゲーブル
主演女優賞
 クローデット・コルベール
脚色賞


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10 「タイタニック」
タイタニック

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監督:ジェームズ・キャメロン

1998年(第70回)

1912年に処女航海で氷山に衝突して沈没した豪華客船タイタニック号の悲劇を描いた。史上最高の製作費2億ドル(約260億円)を投じ、タイタニック号を原寸大セットで再現するなど、最新のテクノロジーを駆使して製作が進められた。一方で、ジェームズ・キャメロン監督は「単なるパニック映画ではなく、大人の鑑賞に堪え得る物語にしたい」と、画家の卵と上流階級の娘の恋愛ドラマをストーリーの中心に据えた。

世界の興行記録を塗り替えた。日本でも新記録を達成した。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
撮影賞
編集賞
衣裳デザイン賞
視覚効果賞
音響賞
音響効果編集賞
美術賞
主題歌賞
作曲賞
ノミネート 主演女優賞
 ケイト・ウィンスレット
助演女優賞
 キャシー・ベイツ
メイクアップ賞


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<11位~20位>
順位 作品名
11 「ベン・ハー」
ベン・ハー

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監督:ウィリアム・ワイラー

1960年(第32回)

史上最強のスペクタクル映画。

オスカー史上最多の11部門の受賞という金字塔を打ち立てた。

現在も「タイタニック」「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」と共に最多記録を保持している。

ウィリアム・ワイラー監督は3度目の監督賞。そのほか、主演男優賞(チャールトン・ヘストン)、助演男優賞も獲っており、技術部門にとどまらない勝ちぶりも見事。

古代ローマが舞台。ローマ帝国に支配されるユダヤ王族の若い当主ベン・ハー(架空の人物)の波乱に満ちた生涯を描いた。約3時間半の超大作。

ワイラー監督は、それまでのスケールだけ大きい史劇ではなく、カメラのフレームに収まるすべてに細心の注意を払い、リアリティーを出すことに成功した。

当時として史上最大の製作費が投じられた。全てがケタ違い。

CGが発達していない時代であり、生身の人間がすべてをこなす。ロケによる撮影ならの生々しさと説得力は凄まじい。

とくに有名なのが、馬が牽引する「古代戦車」の競争シーン。主人公ベン・ハーが、復讐とプライドを懸けて宿敵メッサラと激突する。映画史上の不朽の一こまとして知られている。7.3ヘクタールの競技場は1年半かけて建設した。本番と練習用に戦車を18台つくった。動員したエキストラは延べ12万5000人。8分41秒のシーンのために、3カ月半の撮影を行った。

「グラディエーター」「スター・ウォーズ/エピソード1」などにも影響を与えた。

ベン・ハーと同時代に生きたイエス・キリストが描かれる。その後ろ姿や存在感が、強烈な印象を残す。

米国の興行収入は1959年、1960年の2年連続で年間1位になった。 日本では1959年に7位、1960年は1位だった。

【あらすじ】ローマ帝国の支配下にあったユダヤの都エルサレム。この街の王族で若き大富豪のベン・ハーと、ローマ帝国の指揮官メッサラは幼なじみだった。しかし、権力欲に走ったメッサラによってベン・ハーは反逆罪のぬれぎぬを着せられ奴隷船に。母と妹まで投獄され、怒りに燃えたベン・ハーはメッサラに復讐を誓う。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 チャールトン・ヘストン
助演男優賞
 ヒュー・グリフィス
劇・喜劇映画音楽賞
録音賞
美術賞(カラー部門)
撮影賞(カラー部門)
衣装デザイン賞(カラー部門)
編集賞
特殊効果賞
ノミネート 脚色賞


<予告編▼>
12 「我等の生涯の最良の年」
我等の生涯の最良の年

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監督:ウィリアム・ワイラー

1947年(第19回)

戦場から戻ってきた3人の男を描いた。第二次世界大戦に勝利した米国だったが、元兵士たちは家庭や職場で様々な悩みや問題を抱えてきた。

爆撃手だった青年フレッド、元銀行員の陸軍軍曹のアル、両手を失った若い水兵のホーマー。戦勝国が負った深い傷を浮き彫りにした。

ワイラー監督は既にオスカーに輝いていた大物映画人だったが、記録映画撮影のために従軍した。戦争の恐ろしさを身をもって経験し、復員後の一作目として本作に挑んだ。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 フレドリック・マーチ
助演男優賞
 ハロルド・ラッセル
脚色賞
ドラマ・コメディ音楽賞
編集賞
特別賞(アカデミー名誉賞)
アービング・G・タルバーグ賞
ノミネート 録音賞


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13 「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

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監督:ピーター・ジャクソン

2004年(第76回)

人間、精霊、魔法使いが共存する国の栄枯盛衰と、旅の仲間の愛と友情を壮大なスケールで描いた冒険ファンタジー。シリーズ3部作の完結編。前2作をしのぐ高評価を得て、見事な大団円を迎えた。

11部門を制覇。「タイタニック」「ベンハー」と並び、史上最多受賞の記録保持者となっている。

ノミネートされた部門すべてで勝利。全勝の事例は過去に「恋の手ほどき」(1958年)や「ラスト・エンペラー」(1987年)=ともに9部門=などがあったが、10部門以上では史上初だった。

また、「続編」ものが作品賞を獲得したのは1974年の「ゴッドファーザー2」以来29年ぶりだった。

回を重ねるたびにつまらなくなった「マトリックス」などの他の3部作とは異なり、「シリーズ最高傑作」との評価を得た。シリーズ映画の完結編だけが作品賞を獲る初めてのケースとなった。

邪悪な力を得ることができる指輪をめぐり、指輪をこの世から葬り去ろうとする「白の勢力」と、それを手に入れようとする「闇の勢力」が繰り広げる。

JRR・トールキン原作の冒険ファンタジー『指輪物語』を、ピーター・ジャクソン監督が3本まとめて撮影した。総製作費は340億円。第一部『ロード・オブ・ザ・リング』と第二部『二つの塔』は世界中で大ヒット。第三部の本作は、それらを上回る興行収入を稼いだ。

各登場人物の内面を深く描いたのが、前2作との違い。

映画評論家の添野知生は「ほとんどすべての登場人物に見せ場が用意され、真の恐怖とその上を行く勇気、激しい戦争場面、胸を打つロマンス、陽射(ひざ)しのようなユーモアが、圧倒的な重量感で描かれる」と絶賛した。

【あらすじ】地球がまだ「中つ国(なかつくに)」と呼ばれていたころ。世界を滅ぼす力を秘めた指輪を葬り去るため、種族を超えた仲間たちが「滅びの山」へと旅立つ。闇の勢力がさまざまな陰謀を企てるが、彼ら(白の勢力)は固い友情で乗り越えていく。

冥(めい)王サウロンが率いる闇の勢力は、白の勢力の最後の砦(とりで)であるゴンドール国に襲いかかる。その兵の数は前作のローハン国攻撃時の二十倍となる二十万。白の勢力は力を結集し、対抗しようとするが…。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
脚色賞
編集賞
美術賞
衣装デザイン賞
メイクアップ賞
作曲賞
歌曲賞
音響賞
視覚効果賞


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14 「アニー・ホール」
アニー・ホール

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監督:ウディ・アレン

1978年
(第50回)

ウディ・アレンの最高傑作のひとつ。ロマンチック・コメディ。アレン自ら演じる男とが、恋人アニー(ダイアン・キートン)との関係が失敗した理由を探っていく物語。当時アレンは41歳。脚本は、史上最も愉快な傑作として称えられている。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演女優賞
 ダイアン・キートン
脚本賞
ノミネート 主演男優賞
 ウディ・アレン


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15 「サウンド・オブ・ミュージック」
サウンド・オブ・ミュージック

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監督:ロバート・ワイズ

1966年(第38回)

作品賞や監督賞など5冠。前年の「マイ・フェア・レディ」に続いて2年連続でミュージカルが作品賞に輝いた。

ミュージカル映画の最高傑作の一つ。「ドレミの歌」「エーデルワイス」などおなじみの曲がいっぱい。家族向け映画の最高峰。

「ウエスト・サイド物語」でミュージカル映画に新風を吹き込んだワイズ監督が、再び一大巨編をつくりあげた。

第2次大戦前夜のオーストリアが舞台。ナチス・ドイツの魔手を逃れ、トラップー家の7人の子供たちを連れてスイスに脱出した家庭教師マリアの物語。子供たちに歌を教える。

1956年にもドイツで映画化されたが、本作は、ロジャース&ハ一マスタインの名コンビによるブロードウェイ・ミュージカル化の映画版。

アルプスでの壮大なロケも見どころ。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
編曲賞
録音賞
編集賞
ノミネート 主演女優賞
 ジュリー・アンドリュース
助演女優賞
 ペギー・ウッド
美術賞(カラー部門)
撮影賞(カラー部門)
衣装デザイン賞(カラー部門)


<ドレミの歌▼>



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16 「ウエスト・サイド物語」
ウエスト・サイド物語

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監督:ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス

1962年(第34回)

ニューヨークの下町で争うイタリア系、プエルトリコ系の若者たちの間に生まれる恋の悲劇。

ミュージカル映画に新しいスタイルをもたらした画期的な作品。 それまでのハリウッドのミュージカル映画は、『雨に唄えば』(1952年)のように、屋内のセットで撮影していた。 本作は外で撮影された。ニューヨークの街でロケが行われ、実際のアスファルトの上でスニーカーをはいて踊った。

また、ミュージカルとえば楽しいおとぎ話という印象が強かった。しかし、本作は従来の陽気なミュージカルと異なり、人種対立や貧困問題という重いテーマにも切り込んだ。 やり場のない若者のエネルギーや焦燥感を表現し、緊迫した流れを作り上げた。

何よりも躍動感あふれる踊りが見事。 舞踏家・麿赤児(まろ・あかじ)氏は「ダンスのキレやリズム、間の取り方が違う。特にシャーク団のボスを演じていたジョージ・チャキリスの踊りはカミソリみたい」と評した。 また、ジェローム・ロビンスの振り付けについて「奇をてらうと言うよりは民族性に潜む何かをうまくすくい出している」と称賛した。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
助演男優賞
 ジョージ・チャキリス
助演女優賞
 リタ・モレノ
ミュージカル映画音楽賞
録音賞
美術賞(カラー部門)
撮影賞(カラー部門)
衣装デザイン賞(カラー部門)
編集賞
ノミネート 脚色賞


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17 「ロッキー」
ロッキー

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監督:ジョン・G・アヴィルドセン

1976年(第48回)

4回戦ボーイのボクサーが世界チャンピオンと対戦することになり、青春の情熱すべてを傾けてリングに上がる。 当時無名のスタローンは本作でいちやくスターの仲間入りした。脚本を自ら執筆したスタローンは映画会社各社に持ちこんだが、「他の大スターが主演ならいい」と言って断られた経緯がある。 映画化の過程がそのままアメリカン・ドリ一ムの体現となった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 シルヴェスター・スタローン
主演女優賞
 タリア・シャイア
助演男優賞
 バージェス・メレディス
助演男優賞
 バート・ヤング
脚本賞
歌曲賞
録音賞


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18 「カッコーの巣の上で」
カッコーの巣の上で

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監督:ミロシュ・フォアマン

1976年(第48回)

非人間的な精神病院に送られた男が、人間の尊厳を奪い返すべく徹底的に戦う物語。 管理社会の恐怖と、自由を希求することの意義を映像化した。

郊外にある病院に、刑務所からマクマーフィ(ジャック・ニコルソン)という38歳の受刑者が送られてくる。 患者と医師や看護婦との対立、葛藤、反逆、さらに患者同士の友愛が描かれる。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 ジャック・ニコルソン
主演女優賞
 ルイーズ・フレッチャー
脚色賞
ノミネート 助演男優賞
 ブラッド・ドゥーリフ
作曲賞
撮影賞
編集賞


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19 「アパートの鍵貸します」
アパートの鍵貸します

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監督:ビリー・ワイルダー

1961年(第33回)

小心なサラリーマンが自分のアパートを上司の情事の場所に提供するうち、エレベーターガールと結ばれるコメディ。ビリー・ワイルダー監督は、プロデューサーとして作品賞、監督賞、共同執筆していたので脚本賞と、計3つのオスカーを獲得した。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
脚本賞
美術賞(白黒部門)
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 ジャック・レモン
主演女優賞
 シャーリー・マクレーン
助演男優賞
 ジャック・クラスチェン
録音賞
撮影賞(白黒部門)


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20 「戦場にかける橋」
戦場にかける橋

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監督:デヴィッド・リーン

1958年(第30回)

『西部戦線異状なし』以来27年ぶりに戦争映画が作品賞を受賞。第二次大戦下、ビルマの捕虜収容所で英軍捕虜と日本軍が協力してジャングルのなかでの架橋に成功するが、戦火で爆破される。日本人俳優・早川雪洲が助演男優賞にノミネートされた。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 アレック・ギネス
脚色賞
作曲賞
撮影賞
編集賞
ノミネート 助演男優賞
 早川雪洲


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<21位~30位>
順位 作品名
21 「ディア・ハンター」
ディア・ハンター

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監督:マイクル・チミノ

1979年(第51回)

ベトナム戦争を題材にした本格的な映画の先駆け。ペンシルバニアの田舎町からベトナムの激戦地に送られた3人の若者の苦痛と後遺症の重さを描いた。

戦場で心に深い傷を負った若いブルーカラー群像に焦点をあてた。

ベトナム解放民族戦線側が米兵捕虜に「ロシア式ルーレット」を強要する有名なシーンには「事実ではない」との批判が出たが、戦争の狂気を伝えたのは確か。

米国でのシーンでは、アメリカの若者たちの日常を静かに追っており、ドキュメンタリー的な面がある。日常のありふれた情景や平凡さの中に、きらめきを求めた叙事詩でもある。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
助演男優賞
 クリストファー・ウォーケン
録音賞
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 ロバート・デ・ニーロ
助演女優賞
 メリル・ストリープ
脚本賞
撮影賞


<予告編▼>


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22 「夜の大捜査線」
夜の大捜査線

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監督:ノーマン・ジュイソン

1968年(第40回)

良質の犯罪捜査ミステリーであるとともに、人種差別の実像を描く社会派ドラマ。

黒人刑事が、米国南部ミシシッピ州で差別と闘いながら殺人事件を解決しようとする。

シドニー・ボアチエふんする理知的な黒人刑事と、ロッド・スタイガー演じる粗野な白人警官が主人公。殺人捜査の過程で人種偏見の壁を越えて協調する。

ロッド・スタイガーが主演男優賞を受賞した。しかし、シドニー・ポワチエは、ノミネートもされなかった。

ポワチエは、4年前に「野のユリ」で黒人男優として初めてオスカー主演男優賞を獲得。この作品での風格ある演技で、大スターの地位を不動のものとした。

やはりポワチエ主演で人種差別問題を扱った「招かれざる客」も作品賞にノミネートされた。この年のポワチエはさらに「いつも心に太陽を」でも主演として好演を見せており、票が割れたと言われている。

ジュイソン監督は「シンシナティ・キッド」「屋根の上のバイオリン弾き」「月の輝く夜に」「ザ・ハリケーン」などの名匠。

<受賞部門>
受賞 作品賞
主演男優賞
 ロッド・スタイガー
脚色賞
録音賞
編集賞
ノミネート 音響編集賞


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23 「スティング」
スティング

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監督:ジョージ・ロイ・ヒル

1974年(第46回)

詐欺師たちの痛快なゲーム劇。ひねりの効いたストーリー展開が称賛された。悪党から金を奪うため、チンピラたちが次々と繰り出すアイデアも見どころ。大衆的な娯楽性と作家性の両立が素晴らしい。

「明日に向かって撃て!」で1970年作品賞にノミネートされたロイ・ヒルが監督を務めた。明日に向かって撃て!と同じく、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの黄金俳優コンビを起用した。

ファッション、セット、音楽など、あらゆる要素がスタイリッシュでおしゃれ。テーマ曲「エンターテイナー」も有名。

傑出した興行的成功を収めた。インフレ率などを加味した実質的な興行収入ランキングは、歴代の作品賞映画の中で、「風と共に去りぬ」「サウンド・オブ・ミュージック」「タイタニック」「ベン・ハー」に次いで堂々の4位。

【物語】1936年のシカゴが舞台。ギャングのボスに仲間を殺された詐欺師フッカー(ロバート・レッドフォード)は報復を決意。伝説の賭博師ゴンドーフ(ポール・ニューマン)の助けを借り、大掛かりないかさまに引きずり込んでいく…。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
脚本賞
編曲・歌曲賞
衣装デザイン賞
美術賞
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 ロバート・レッドフォード
録音賞
撮影賞


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24 「羊たちの沈黙」


羊たちの沈黙

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監督:ジョナサン・デミ

1992年(第64回)

サイコ・スリラーの傑作。「猟奇犯罪」「狂気的殺人」といったテーマを、ハリウッドの人間ドラマに取り入れた画期的な作品として評価されている。

作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞の主要5部門を独占した。

トマス・ハリスのベストセラー小説をジョナサン・デミ監督が忠実に映画化。連続殺人事件が発生し、FBIの学校に通う若き女性クラリスが捜査に参加する。彼女は、残忍な手口を解明するため、同じような罪で監禁されていた精神科医のレクター博士に接近、ヒントを得ようとする。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 アンソニー・ホプキンス
主演女優賞
 ジョディ・フォスター
脚色賞
ノミネート 録音賞
編集賞


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25 「パラサイト 半地下の家族」
パラサイト 半地下の家族

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監督:ポン・ジュノ

2020年 (第92回)

韓国映画。言語が英語でない映画として、初めての作品賞を受賞した。 まさに歴史的な快挙だった。

「半地下住宅」という劣悪な生活環境で暮らす貧しい家族が主人公。 貧富の格差などがテーマ。ドラマ、コメディ、サスペンス、風刺、ホラー、悲劇、社会への問題提起など、 あらゆる要素がダイナミックに交錯する傑作との称賛を浴びた。

ポン・ジュノ監督は「母なる証明」「殺人の追憶」が世界で絶賛され、映画評論家や映画通の間では神的な存在ではあった。しかし、一般の米国人は知られておらず、当初は、本作の作品賞獲得を予想する声は少なかった。

アメリカ人は業界関係者であっても字幕で映画を見ることにそれほど慣れていない。字幕映画という点はやはり不利。しかし、芸術性だけでなく、シンプルな娯楽性という点において傑出した本作は、エンタメ映画として幅広い層から熱烈な支持を得ることに成功した。

終盤にはハリウッドの業界人の間でも応援団的な動きが出てきた。 過去数年で海外のアカデミー会員(日本でいえば北野武、是枝裕和)が増えたことも追い風になったようだ。

この後、韓国音楽グループ「BTS」、韓国ドラマ「イカゲーム」などが世界を席巻し、コンテンツ大国としての存在感を発揮することとなった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
国際映画賞
脚本賞
ノミネート 編集賞
美術賞


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26 「ムーンライト」
ムーンライト

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監督:バリー・ジェンキンズ

2017年(第89回)

製作費1.5億円という小規模予算。 正真正銘のインディー映画である。

主人公はゲイの黒人。 いじめ、差別、貧困に直面しながら生きる姿が、静かな語り口で描かれる。 子供時代、高校時代、大人時代の3部に分かれている。 美しい映像と音楽とともに、主人公の内面へ引き込む力が、高い評価を得た。

黒人のバリー・ジェンキンス監督は37歳。本作が長編2作目となった。 登場人物もほとんどが黒人。 このうち、麻薬の売人を演じるマハーシャラ・アリが助演男優賞を受賞した。

配給は、質の高いインディー映画で有名なアメリカの「A24」。 製作は、ブラッド・ピットが経営する「プランB」とA24が共同で手がけた。

事前予想では、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」が最有力との声が圧倒的に多かった。 とはいえ、批評家からの評価は「ムーンライト」のほうが、やや上だった。 両作品とも、歴史に残る傑作として語り継がれている。

<受賞部門>
受賞 作品賞
助演男優賞
 マハーシャラ・アリ
脚色賞
ノミネート 監督賞
助演女優賞
 ナオミ・ハリス
撮影賞
編集賞
作曲賞


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27 「地上より永遠に」
地上より永遠に

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監督:フレッド・ジンネマン

1954年(第26回)

「風と共に去りぬ」と並ぶ8冠のタイ記録を成し遂げた。

性、売春、不倫、軍の腐敗など、当時のアメリカ映画ではタブーとされていたテーマを恐れずに描いた。 ハリウッドがより成熟したトピックに取り組む先例となった。

8冠のうち5つは主要部門(作品、監督、助演男優、助演女優、脚色)だった。 さらに主演男優賞も有力視されていたが、2人がノミネートされたこともあり、共倒れに終わってしまった。

本作で助演男優賞に輝いたフランク・シナトラは、キャリア低迷期が続いていたが、見事なカムバックを果たした。

日本軍による真珠湾攻撃が間近の1941年のハワイが舞台。米軍の兵舎内での人間ドラマを通して、軍隊組織の非人間性を暴く。

原作は1951年のベストセラー小説。 ジェームズ・ジョーンズ(当時30歳)が自ら兵舎駐在の経験に基づいて書いた。 政府機関への批判がご法度に近かったマッカーシー時代(赤狩り時代)にあって、 軍の矛盾をあぶりだす内容は、 センセーションを巻き起こした。

コロンビア(現ソニー・ピクチャーズ)の豪腕社長ハリー・コーンは、 赤狩りに臆することなく、大金を投じてこの小説の映画化権を取得。 アート系監督と見られていたフレッド・ジンネマンを監督として雇った。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
助演男優賞
 フランク・シナトラ
助演女優賞
 ドナ・リード
脚色賞
撮影賞(白黒部門)
録音賞
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 バート・ランカスター
主演男優賞
 モンゴメリー・クリフト
主演女優賞
 デボラ・カー
衣装デザイン賞(白黒部門)
ドラマ・コメディ音楽賞


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28 「わが谷は緑なりき」
わが谷は緑なりき

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監督:ジョン・フォード

1942年(第14回)

「市民ケーン」が作品賞をとれなかった年として有名だ。市民ケーンのモデルとなった新聞王ハーストのネガティブ・キャンペーンによって、「わが谷は緑なりき」が漁夫の利を得たというイメージが強い。

とはいえ、「わが谷は緑なりき」も、映画史上最大の巨匠ジョン・フォードの傑作群の一つとして当時から讃えられていたのも事実。

ジョン・フォードは生涯において、7個のオスカーを獲得した。 このうち監督賞の受賞回数は4回であり、史上最多記録を保持ている。

しかし、作品賞となると、受賞したのは本作だけだった。西部劇の傑作「駅馬車」も、戦後の代表作となる「静かなる男」も、作品賞はノミネートどまりだった。

そんな本作は、フォードの得意分野として知られる西部劇ではなく、郷土劇。19世紀末のウェールズが炭鉱町が舞台。平凡な一家の人生を、静かなタッチで情感豊かに描いた。

「家族の団結」というテーマ性も、戦時中のムードと相性が良かった。

なお、監督賞は、前年に続きジョン・フォードの2年連続受賞となった。

<ジョン・フォード>アイルランド系米国人。1895年2月1日、米メーン州生まれ。本名ショーン・アロイシャス・オフィーニー。大道具係、俳優、助監督を経て、2017年に監督に。デビュー作から遺作「荒野の女たち」(1966年)まで監督作はなんと137本。すべては職人技のたまもの。1973年、癌により死去。享年78歳。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
助演男優賞
 ドナルド・クリスプ
美術賞(白黒部門)
撮影賞(白黒部門)
ノミネート 助演女優賞
 サラ・オールグッド
脚色賞
録音賞
ドラマ音楽賞
編集賞


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29 「フォレスト・ガンプ/一期一会」
フォレスト・ガンプ/一期一会

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監督:ロバート・ゼメキス

1995年(第67回)

第二次世界大戦後のベイビー・ブームの真っ只中に生まれたフォレスト・ガンプが主人公。 知的障害をものともせず、アメフト選手として活躍。 ベトナム戦争従軍後は、卓球全米チームのメンバーに。 実業界としても大成功し、億万長者になった。

ロックンロールの1950年代、ヒッピーの1960年代、ベトナム戦争の1970年代と、 アメリカの戦後をたくましく生き抜くガンプ。 苦しいときも優しい心を大切にして純粋に生きる姿が感動を呼んだ。

ガンプ役のトム・ハンクスは、2年連続で主演男優賞を受賞した。

この年の作品賞ノミネートは、強豪ぞろいだった。 「ショーシャンクの空に」「パルプ・フィクション」という映画史に残る傑作が名をつらねた。

ただ、フォレスト・ガンプは、ハリウッド歴代4位にあたる3億1700万ドル(約285億円)を稼ぎ出し、一大センセーションを巻き起こしていた。前哨戦でも圧勝しており、作品賞はおおむね確実視されていた。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 トム・ハンクス
脚色賞
編集賞
視覚効果賞
ノミネート 助演男優賞
 ゲイリー・シニーズ
作曲賞
音響編集賞
録音賞
美術賞
撮影賞
メイクアップ賞


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30 「巴里(パリ)のアメリカ人」
巴里のアメリカ人

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監督:ビンセント・ミネリ

1952年(第24回)

ミュージカル。「雨に唄えば」とともに、ジーン・ケリーが主演するミュージカル映画の傑作と評される。ケリーが名誉賞を受賞し、計7冠に輝いた。

アメリカの誇る作曲家の一人、ジョージ・ガーシュイン(1898~1973)が、1928年にヨーロッパ旅行中のパリの印象を綴った管弦楽曲「巴里のアメリカ人」。本作はこの名曲を中心に、ガーシュインのメロディーの数々を全編に散りばめた。

大戦後6年を経て活気を取り戻しつつある躍動するパリのイメージを、音楽、色彩、舞踊が一体となって描き出していく。ルノワール、ユトリロ、ゴッホ、ロートレック、ルソーなどの名画をバックに17分も踊りまくる幻想バレエのシーンは見事。

本作がデビューのレスリー・キャロンは、主演ジーン・ケリーがパリでスカウトした。

【あらすじ】第二次世界大戦中、パリに駐屯したことのあるアメリカ人、ジェリー・マリガン(ジーン・ケリー)は、画家になりたい一心でパリを訪れる。

彼は美しいバレリーナ、リズ(レスリー・キャロン)に心を奪われるが、皮肉にも彼女はジェリーの友人アンリ(ジョルジュ・ゲタリー)のフィアンセだった。パリジェンヌと生っ粋のアメリカ人の恋は実るのか?

<受賞部門>
受賞 作品賞
脚本賞
ミュージカル音楽賞
美術監督賞(カラー部門)
撮影賞(カラー部門)
衣装デザイン賞(カラー部門)
ノミネート 監督賞
編集賞


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<31位~>
順位 作品名
31 「マイ・フェア・レディ」
マイ・フェア・レディ

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監督:ジョージ・キューカー

1965年(第37回)

ロンドンの貧しい花売り娘が、言語学者と出会い、涙ぐましい特訓を経て、社交界の花形に変身する。

アラン・ジェイ・ラーナーが脚本と作詞を、フレデリック・ロウが作曲を担当した。「運が良けりゃ」「踊り明かそう」など数々の名曲に彩られる。競馬場や舞踏会などのセットも称賛された。

英国の作家バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」を基にした米ブロードウェーの舞台劇を、ハリウッドが映画化した。

巨額の資金で映画化権を獲得したワーナーブラザース社は、舞台でイライザ役だったジュリー・アンドリュースではなく、ヘプバーンを起用した。

ヘプバーンならではの美しさに、観客は魅了された。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 レックス・ハリソン
編曲賞
録音賞
美術賞(カラー部門)
撮影賞(カラー部門)
衣装デザイン賞(カラー部門)
ノミネート 助演男優賞
 スタンリー・ホロウェイ
助演女優賞
 グラディス・クーパー
脚色賞
編集賞


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32 「許されざる者」
許されざる者

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監督:クリント・イーストウッド

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
助演男優賞
 ジーン・ハックマン
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 クリント・イーストウッド
脚本賞
録音賞
美術賞
撮影賞


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1993年(第65回)

西部劇。 クリント・イーストウッド(当時61歳)が監督、主演、そして、プロデューサーを務めた。 作品賞、監督賞、助演男優賞(ジーン・ハックマン)、編集賞を受賞。 長年、世界的なトップスターだったイーストウッドが、ついにその実力をハリウッドの主流映画人たちに認めさせた。

秀逸なシナリオ、演出も重厚で濃密が光る名作。 映画ジャーナリストの野島孝一氏は「伝統の西部劇のムードを盛り上げながら、かなり思い切ったアウトロー像を展開していくことで、既存の西部劇と一線を画している」と評価した。 そのうえで「ヤマ場を一つずつクリアーしながら、興奮を盛り上げていくイーストウッド監督の手腕は称賛に値する」と論じた。

初老の域に達した元ガンマン(イーストウッド)が、幼い子供の将来のために再び賞金稼ぎの旅に出る。
33 「アマデウス」
アマデウス

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監督:ミロス・フォアマン

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 F・マーリー・エイブラハム
脚色賞
美術賞
衣装デザイン賞
メイクアップ賞
録音賞
ノミネート 主演男優賞
 トム・ハルス
撮影賞
編集賞


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1985年(第57回)

35歳の若さで死んだ音楽家モーツァルトと、彼に嫉妬する宮廷作曲家サリエリの物語。天才と凡人の確執劇を、大胆に映画化した。

モーツァルトの数々の名曲をバックに、サリエリの独白という形でストーリーが展開。 「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」「レクイエム」などの名曲誕生の過程も描いた。

サリエリ役のF・マーリー・エイブラハム、モーツァルト役のトム・ハルスはいずれも無名の俳優だった。2人そろって主演男優賞にノミネートされ、サリエリ役のエイブラハムが受賞した。

ミロス・フォアマン監督は、「カッコーの巣の上で」に続いて2度目の作品賞受賞となった(同じく監督賞も2度目の受賞)。

撮影は、フォアマン監督の故郷でもあるチェコの古都プラハで行われた。舞台となる18世紀のウィーンを再現。本物の美術品や建造物も映像に収められた。

【物語】18世紀後半、オーストリアの宮廷に仕える作曲家サリエリの前に、青年モーツァルトが出現。 モーツァルトは軽薄ながら、天才的な作曲の才能が備わっていた。
34 「グランド・ホテル」
グランド・ホテル

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監督:エドマンド・グールディング

1933年(第5回)

作品賞だけにノミネートされ、作品賞だけを獲った唯一の映画として有名。

様々な過去を持ち、様々な状況下におかれた人物たちが、たまたま同じホテルに泊まり合わせたことによって起こる人間模様。 24時間の出来事を流暢なタッチで描いた。 後に「グランド・ホテル型」と呼ばれるようになった。舞台はベルリンのホテル。

MGM黄金時代を象徴する豪華キャスト。商業的にも大成功した。

1989年のミュージカル「グランド・ホテル」の基になった。同作はトニー賞を受賞した。

<受賞部門>
受賞 作品賞


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35 「真夜中のカーボーイ」
真夜中のカーボーイ

監督:ジョン・シュレシンジャー

1970年(第42回)

アメリカン・ニューシネマの代表作。現代青年の疎外感や孤独を鋭くとらえた。ユニークな文明批判劇。

テキサスからニューヨークにやってきた青年と、イタリア系ホームレスの友情が軸となる。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
脚色賞
ノミネート 主演男優賞
 ダスティン・ホフマン
主演男優賞
 ジョン・ヴォイト
助演女優賞
 シルヴィア・マイルズ


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36 「わが命つきるとも」
わが命つきるとも

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監督:フレッド・ジンネマン

1967年(第39回)

重厚で格調高い歴史劇。16世紀イギリスの思想家トーマス・モアを描く。絶対権力者の国王ヘンリー8世に屈せず、信念を貫いたモアの人物像に焦点を当てた。

ジンネマン監督は、「地上(ここ)より永遠(とわ)に」(1953年)に続く作品賞&監督賞となった。

英国の舞台劇の映画化。モア役で主演男優賞を受賞したポール・スコフィールドは、根っからの舞台人であり、映画界では無名に近い存在だった。イギリス演劇界の底力を見せつけた。

夫婦喧嘩劇「バージニア・ウルフなんかこわくない」が本命視されていたが、オーソドックスな歴史劇に軍配が上がった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 ポール・スコフィールド
脚色賞
撮影賞(カラー部門)
衣装デザイン賞(カラー部門)
ノミネート 助演男優賞
 ロバート・ショウ
助演女優賞
 ウェンディ・ヒラー


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37 「フレンチ・コネクション」
フレンチ・コネクション

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監督:ウイリアム・フリードキン

1972年(第44回)

※刑事アクション映画。手に汗握る緊迫感にあふれる秀作。すさまじいカーチェイスのシーンが有名。

作品賞に加えて、監督賞(ウィリアム・フリードキン)、主演男優賞(ジーン・ハックマン)など計5部門を受賞した。

1961年にニューヨークで実際に起きた史上最大の麻薬密輸事件を題材にした。映像がリアル。時間の流れもリアル。意外性のある展開で飽きさせない。ドキュメンタリー的な撮影・編集が見どころ。移動撮影も絶賛された。犯罪都市の一面を見事にえぐり出した。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 ジーン・ハックマン
脚色賞
編集賞
ノミネート 助演男優賞
 ロイ・シャイダー
録音賞
撮影賞


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38 「それでも夜は明ける」
それでも夜は明ける

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監督:スティーヴ・マックイーン

2014年(第86回)

奴隷制度の冷酷さを、誠実に描いた歴史物語。 奴隷の輸入が禁止された後のアメリカにおいて、 米国内で自由に暮らす黒人を誘拐し、強制的に奴隷にしてしまう事件が多発した。 その被害者の一人の手記に基づく実話である。
監督スティーヴ・マックイーンはアフリカ系イギリス人。 黒人監督として史上初のアカデミー賞作品賞を受賞した。 SF映画の傑作「ゼロ・グラビティ」をおさえ、堂々の受賞。

<受賞部門>
受賞 作品賞
助演女優賞
 ルピタ・ニョンゴ
脚色賞
ノミネート 監督賞
主演男優賞
 キウェテル・イジョフォー
助演男優賞
 マイケル・ファスベンダー
美術賞
衣裳デザイン賞
編集賞


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39 「ハムレット」
ハムレット

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監督:ローレンス・オリビエ

1949年(第21回)

シェークスピア劇の映画化の最高傑作と評される。

イギリス映画。ハリウッド・スタジオ以外の映画として初めて作品賞を受賞した。主演男優賞も獲り、計4冠。

英国史上最強の名優の一人、ローレンス・オリビエが自ら監督と主演を務め、プロデューサーも単独で務めた。オリビエによるシェークスピア3部作「ヘンリー五世」(1945年)、「リチャード三世」(1955年)の一つ。

<受賞部門>
受賞 作品賞
主演男優賞
 ローレンス・オリヴィエ
美術賞
衣装デザイン賞
ノミネート 監督賞
助演女優賞
 キウェテル・イジョフォー
ドラマ・コメディ音楽賞


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40 「愛と追憶の日々」
愛と追憶の日々

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監督:ジェームズ・L・ブルックス

1984年(第56回)

姉妹のように仲の良い母娘オーロラとエマの強い絆を描いた愛と感動のドラマ。主要部門だけで5冠に輝いた。

ジェームズ・L・ブルックス監督は当時43歳。テレビの脚本家として活躍したあと映画に参入し、本作で初めて映画監督に挑んだ。脚本(脚色)も自ら手掛けた。

母親役と娘役の2人が主演女優賞にノミネートされ、母役のシャーリー・マクレーンが初受賞した。

元・宇宙飛行士役で助演男優賞を受賞したジャック・ニコルソンの怪演も話題になった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演女優賞
 シャーリー・マクレーン
助演男優賞
 ジャック・ニコルソン
脚色賞
ノミネート 主演女優賞
 デブラ・ウィンガー
助演男優賞
 ジョン・リスゴー
編集賞
作曲賞
録音賞
美術賞


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41 「レベッカ」
レベッカ

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監督:アルフレッド・ヒッチコック

1941年(第13回)

スリラーの巨匠ヒッチコック監督のサイコ・スリラー映画。有力候補だったチャップリン監督の「独裁者」に競り勝った。

不安にさいなまれる女性の心理を、ヒッチコックが様々な小道具とリアクション撮影で描いていく。 ゆったりとしたシーンの中にショック演出を加え、ドキンとさせられる。

ヒッチコック監督は生涯、個人として5回オスカーにノミネートされた。 いずれも監督賞だったが、本作「レベッカ」が最初だった。 惜しくも監督賞の受賞は逃したが、作品賞は獲った。 (ただし、本作ではプロデューサーを兼務していなかったため、『受賞者』にはならなかった)

英国人のヒッチコックは26歳で監督デビューし、1934年「暗殺者の家」で成功してからスリラー専門となった。 1938年、イギリスから黄金期の米国ハリウッドへと拠点を移した。本作が米国での第1弾の作品だった。

第2弾となる「海外特派員」も本年の作品賞にノミネートされた。

映画評論家の淀川長治さんによれば「ヒッチコックはアメリカで自分をお披露目するにあたり、美と恐怖の隣り合わせの疑惑とロマンを『レベッカ』で、連続アクション風のアクションを『海外特派員』で鮮やかに見せた」という。

プロデューサーのデビッド・セルズニックは、前年の「風と共に去りぬ」に続く受賞で作品賞2連覇となった。

<アルフレッド・ヒッチコック>1899年、ロンドン郊外レインストーンで生まれる。15歳で父を失い、働きながらロンドン大美術学部聴講生となった。20歳で字幕デザイナーとして映画界に入った。1980年死去。享年80歳。

【あらすじ】米国の若い女性が、イギリスの富豪と出会い、2度目の妻となる。 彼の荘園に行くと、邸内には前妻レベッカの思い出に満ちていた。 不気味な家政婦から嫌がらせを受け、レベッカの従兄につきまとわれる。

<受賞部門>
受賞 作品賞
撮影賞(白黒部門)
ノミネート 監督賞
主演男優賞
 ローレンス・オリヴィエ
主演女優賞
 ジュディス・アンダーソン
脚色賞
美術監督賞(白黒部門)
作曲賞
編集賞
特殊効果賞


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42 「西部戦線異状なし」
西部戦線異状なし

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監督:ルイス・マイルストン

1930年(第3回)

戦場での兵士たちの日々を描いた。反戦映画のスタイルを決定付けた記念碑的作品となった。

原作は、ドイツの同名ベストセラー小説。ドイツのジャーナリストとして従軍した第1次大戦にエーリヒ・マリア・レマルクが、1929年に自らの体験に基づいて書いた。

マイルストン監督は、敗れたドイツ軍を通して、戦争の非情さをリアルに見極め、反戦を強く訴えた。マイルストン監督は、サイレント末期からトーキー初期にかけて、華やかに活躍した。コメディー、アクションもこなす器用な監督。本作が生涯の代表作となった。「美人国二人行脚」(1927年)で第1回アカデミー賞の喜劇監督賞に輝いており、本作は2度目の受賞となった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
ノミネート 脚本賞
撮影賞


<予告編▼>


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43 「プラトーン」
プラトーン

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監督:オリバー・ストーン

1987年(第59回)

ベトナム戦争に参戦したストーン監督が自己の体験を映画化した作品。最前線の兵士たちが極限状態の中でいかに理性を失っていくかをリアルに描いた。監督賞も受賞した。

受賞スピーチでストーン監督は「重要なことは真実を掘り出すこと。人はすでにベトナム戦争の真実と記憶を忘れ始めており、私はこれを掘り起こしたかった」と語った。

【物語】名門大学を中退してベトナム行きを志願し、最前線の戦闘小隊に配属された兵士が苛酷な戦場で見たものは、想像を上回る現実だった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
録音賞
編集賞
ノミネート 助演男優賞
 トム・ベレンジャー
助演男優賞
 ウィレム・デフォー
脚本賞
撮影賞


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44 「ハート・ロッカー」
ハート・ロッカー

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監督:キャスリン・ビグロー

2010年(第82回)

米国の対イラク戦争の最前線で爆弾を処理する兵士たちの人間ドラマ。 いつ命を失ってもおかしくない日々を送る爆弾処理員の緊迫した姿と心理を描く。ドキュメンタリーと間違えそうなリアリティーが話題となった。

キャスリン・ビグロー監督は、女性として初めてとなる監督賞も獲得した。計6冠。 ビグロー監督の元夫であるジェームス・キャメロン監督の超大ヒット作「アバター」との対決が注目された。

前哨戦では、ゴールデン・グローブ賞で「アバター」に敗れた。しかし、より重要度が高いPGA(全米プロデューサー組合賞)とクリティクス・チョイス賞で勝利していた。 ハート・ロッカーは製作費がアバターの約16分1の15億円。世界興行収入も約54分の1の48億円だったが、賞レースではハート・ロッカーに軍配が上がった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
脚本賞
音響編集賞
録音賞
編集賞
ノミネート 主演男優賞
 ジェレミー・レナー
作曲賞
撮影賞


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45 「普通の人々」
普通の人々

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監督:ロバート・レッド・フォード

1981年(第53回)

大スター俳優レッドフォードの監督デビュー作。アメリカの中流家庭の危機をテーマにしたシリアスなドラマ。

4人家庭の長男が事故死する。その兄の死に負い目を感じる弟、家族に冷たく接する母親、息子を心配する父親。家族関係が崩れていく。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
助演男優賞
 ティモシー・ハットン
脚色賞
ノミネート 主演女優賞
 メアリー・タイラー・ムーア
助演女優賞
 ジャド・ハーシュ


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46 オール・ザ・キングスメン
オール・ザ・キングスメン

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監督:ロバート・ロッセン

1949年(第22回)

政治権力の暗部をえぐった秀作。

政治家の腐敗を批判して州知事になった男が、次第に独裁者になっていく物語。参謀になった元新聞記者の苦悩を通して描かれる。

作品賞、主演男優賞、助演女優賞の3冠。ロバート・ロッセン監督は本作で見せた批判精神によって保守派からにらまれ、監督賞ノミネートから外された。恐怖の「赤狩り時代」が、ハリウッドに本格的に到来しようとしていた。

【モデルは実在の政治家】主人公のモデルは、ヒューイ・ロングという実在のアメリカの政治家である。

1929年10月から大恐慌に突入したアメリカでは白人中産階級でさえもが職を失い飢え始めた。そんな時期にロングは南部のルイジアナ州知事になり、次に民主党の上院議員になって大統領を目指すようになる。

1932年の大統領選では、はじめは同じ民主党のフランクリン・ルーズベルトを支持したが、ルーズベルトが当選すると「反ニューディール」の姿勢を明らかにする。

「石油財閥による政治支配をやめさせよ。ニューヨークの大富豪たちによる独占体制を打ち倒せ」と激しく訴えて国民の熱烈な支持を受けた。いわゆる「ポピュリスト」である。

すべての作品賞ノミネートが白黒作品だった最後の年となった。

<受賞部門>
受賞 作品賞
主演男優賞
 ブロデリック・クロフォード
助演女優賞
 マーセデス・マッケンブリッジ
ノミネート 監督賞
助演男優賞
 ジョン・アイアランド
脚色賞
編集賞


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47 ディパーテッド
ディパーテッド

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監督:マーティン・スコセッシ

2007年(第79回)

マフィアに潜入した捜査官と警察に潜入したマフィアの攻防を描く。香港映画「インファナル・アフェア」シリーズのリメーク。

州警察が犯罪組織と戦いを繰り広げるボストン南部が舞台。秘密捜査官ビリー(ディカプリオ)は、コステロ(ニコルソン)が仕切る犯罪組織への潜入捜査を命じられる。ビリーがコステロの信頼を得る一方で、クールな犯罪者コリン(デイモン)はコステロの内通者として警察に潜入し、特別捜査課で出世する。やがて2人は正体が暴かれる危機に直面する。

ブラッド・ピットがプロデューサーの一人として参加した。 香港映画「インファナル・アフェア」にハリウッドでいち早く注目し、映画化権を手にした。しかし、役柄などの問題で出演はせず、裏方に徹した。

この年の作品賞レースでは、ディパーテッドが当初から有力視されていたが、サーチライト配給のコメディ「リトル・ミス・サンシャイン」が猛追し、台風の目のような存在になりつつあった。「リトル・ミス・サンシャイン」は不器用な家族の姿を描いたロードムービー。製作費約10億円で、ハリウッド映画としては中小規模ながら、口コミで絶賛の声が広がり、興行収入100億円を超える大ヒットになっていた。前哨戦の天王山となるPGA(プロデューサー組合賞)で作品賞を獲り、SAGアワード(俳優組合賞)でも、豪華俳優陣がそろったディパーテッドをおさえ、最高賞のアンサンブル・キャスト賞を制した。

しかし、オスカーでは、スケール感の大きいディパーテッドが勝った。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
脚色賞
編集賞
ノミネート 助演男優賞
 マーク・ウォルバーグ


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48 失われた週末
失われた週末

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監督:ビリー・ワイルダー

1946年(第18回)

映画史上初めて、アルコール依存症という問題に正面から向き合った作品と言われる。 中毒患者の心理と行動を緻密に緊迫感あふれるタッチで描いたことが評価された。

明るいハッピーエンド作品が映画の主流だった時代。酔っ払いといえば、笑いを誘う滑稽な存在だった。

名匠ビリー・ワイルダー監督に、初めてのオスカーをもたらした。 当時39歳。すでに脚本家として4度ノミネートされ、さらに前作「深夜の告白」は作品賞、監督賞にもノミネートされていた。 本作では、作品賞に加えて、監督賞、脚本賞も獲った。

ワイルダー監督はこの12年前の1934年にナチ台頭のドイツを逃れ、アメリカに亡命した。

本作の後も20年にわたって「サンセット大通り」「アパートの鍵貸します」などのワイルダー作品がオスカーをにぎわせた。

【あらすじ】物語の舞台はニューヨーク。売れない作家ドンは重度のアルコール依存症に陥っている。3年来の恋人の女性ヘレンは、懸命に彼を世話し、立ち直らせようとする。しかし、ドンは口実をつくってはバーに入り浸り、買った酒は巧みに隠した。やがて倒れて中毒患者の収容所に入れられる。怖くなって逃げだすが、禁断症状と幻覚に苦しめられる。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 レイ・ミランド
脚色賞
ノミネート ドラマ・コメディ音楽賞
撮影賞(白黒部門)
編集賞


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49 恋におちたシェイクスピア
恋におちたシェイクスピア

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監督:ジョン・マッデン

1999年(第71回)

スランプに陥った作家シェイクスピアが、男装して接近してきた娘と熱愛し、新境地を開拓するというコミカルなラブストーリー。 男性しか舞台に立てなかった時代に、富豪の娘が男装をして役者になるという独創的な物語になっている。

日本の女性たちからも絶大な支持を得た。

事前予想では、作品賞は「プライベート・ライアン」との声が多かった。PGA(全米プロデューサー組合賞)やクリティクス・チョイス賞などの主要な前哨戦でも、プライベート・ライアンが連勝していた。

しかし、超有力プロデューサーだったハーベイ・ワインスタイン率いる配給会社ミラマックスの大規模なキャンペーンの末、恋におちたシェイクスピアがオスカーの最高峰を勝ち取った。さらに、グウィネス・パルトロウの主演女優賞に、英国の演技派ジュディ・デンチが助演女優賞に輝くなど、計7部門を制した。

<受賞部門>
受賞 作品賞
主演女優賞
 グウィネス・パルトロー
助演女優賞
 ジュディ・デンチ
脚本賞
ミュージカル・喜劇映画音楽賞
美術賞
衣装デザイン賞
ノミネート 監督賞
助演男優賞
録音賞
撮影賞
メイクアップ賞
編集賞


<受賞スピーチ▼>


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50 ノーカントリー
ノーカントリー

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監督:コーエン兄弟(ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン)

2008年(第80回)

米テキサス州を舞台に、凶悪犯罪の恐怖と不条理を描いたサスペンス。 コ―マック・マッカーシーの小説「血と暴力の国」を、「ファーゴ」のコーエン兄弟が映画化した。 米国社会が抱える暴力性を、緊張感あふれる演出であぶり出した。

悪役の殺し屋は冷酷無比。「映画史上、最も恐ろしいキャラクター」と評された。 この役で助演男優賞を受賞したハビエル・ベルデムの怪演が強烈。

作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の4冠に輝いた。

【物語】アメリカとメキシコの国境地帯で、麻薬取引の大金をめぐる惨劇が起きる。

<受賞部門>
受賞 作品賞
監督賞
 ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン
助演男優賞
 ハビエル・バルデム
脚色賞
ノミネート 撮影賞
編集賞
録音賞
音響編集賞


<受賞スピーチ▼>


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