映画「1917 命をかけた伝令」は2020年のアカデミー賞で作品賞にノミネートされました。 作品賞以外でも、監督賞、撮影賞などで候補入りし、計10部門のノミネートを獲得しました。 事前の予想では作品賞の最有力と見られていましたが、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」に敗れました。 撮影賞、視覚効果賞、録音賞のテクニカル系での3冠となりました。 (オスカー・ウォッチ編集部)
Tweet受賞 | 撮影賞 |
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視覚効果賞 | |
録音賞 |
ノミネート | 作品賞 |
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監督賞 サム・メンデス |
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音響編集賞 | |
作曲賞 | |
美術賞 | |
脚本賞 | |
メイクアップ&ヘアスタイリング賞 |
1917は第一次世界大戦下のフランスが舞台。 2人の若いイギリス人兵士が主人公。 重要な伝令を託された彼らの1日を、 カメラでひたすら追いかけるように描きます。 戦争の過酷さ、不条理さが生々しく伝わってきます。 21世紀の戦争映画の中で最高傑作と称賛されています。 監督は、「アメリカン・ビューティ」のサム・メンデスです。
本作では「疑似的な全編ワンカット」という手法が使われています。 複数の映像をつなげるのでなく、 カメラを回し続けて撮影したかのように見せています。 主人公の姿を切れ目なく追いかける映像によって、 あたかも自分が戦場にいるかのような臨場感をおぼえます。
アメリカの映画撮影(シネマトグラフィー)の第一人者であるロジャー・ディーキンスの技術が光ります。 ディーキンスは本作で2度目のオスカーを手しました。
SFや撮影などの面で際立っているとはいえ、あくまで作品の軸足は「人間ドラマ」です。 主人公の兵士の心情や使命感が、絶妙なタッチで描写されています。 主演のジョージ・マッケイら役者陣の演技もたいへん優れています。
第一次世界大戦まっただなかの1917年の朝、
英国軍の若き兵士2人(ジョージ・マッケーとディーン・チャップマン)に、
重要な任命が下る。
それは、最前線にいる味方軍に、
明朝までに作戦中止の命令を届けることだった。
伝令が間に合わなければ、1600人の味方全員が命を落とすことになる。
その中には兵士の兄も含まれていた。
2人は危険に満ちたドイツ軍の占領地に分け入っていく。
オスカー前哨戦の一つ、ゴールデングローブ賞では、ドラマ作品賞を獲得。本命視されていた「アイリッシュマン」を破りました。 さらに、アカデミー賞の前哨戦の中で最も重要と言われるPGAアワード(米プロデューサー組合賞)で作品賞を獲得。 大本命候補として浮上しました。
当初、2020年で当初有力視されていたのは、マーティン・スコセッシ監督の「アイリッシュマン」でした。 しかし、アイリッシュマンは動画配信会社「ネットフリックス(Netflix)」の作品だったため、 一部の映画館で短い期間だけ公開されました。
これに対して、「1917 命をかけた伝令」は、 1月10日から全米で大規模に公開され、家庭のテレビでは味わうことができない迫力のある映像や音響を体験できる作品として好評を博しました。 映画業界内では「ビッグ・スクリーン(大画面)の劇場文化を守り、発展させてくれる作品」と位置づけられており、 「親・劇場派」「反Netflix派」の投票の受け皿として期待されました。
しかし、終盤戦で、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」がそれを上回る熱烈な支持を集めたため、 作品賞を逃しました。 監督賞もパラサイトのポン・ジュノ監督に敗れました。 結局、撮影賞、編集賞、録音賞の3冠にとどまりました。
2020年2月14日
オスカーの予想を集計するサイト「ゴールドダービー」(2020年2月7日現在)によると、 「1917 命をかけた伝令」は、作品賞の有力度ランキングで1位に位置づけられています。 PGAや英国アカデミー賞(BAFTA)など、 直近の前哨戦での勝率が高いため、優勢と見られています。 ただ、予想で2位の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」も終盤にきて支持を拡大しており、 接戦になっている模様です。
1917は、サム・メンデス監督の手腕が称賛されており、監督賞にもノミネートされました。 監督賞もゴールドダービーの予想では1位となっています。 2位のポン・ジュノ監督(パラサイト)、3位のタランティーノ監督、4位のマーティン・スコセッシ監督に差をつけています。 メンデスが受賞すれば、デビュー作「アメリカン・ビューティー」で2000年に作品賞と監督賞に輝いて以来、20年ぶりのオスカー獲得となります。
このほか、撮影賞では大本命と予想されています。視覚効果賞、音響編集賞、録音賞でも大本命です。 最多ノミネートの「ジョーカー」をしのぎ、最多受賞の座を獲得することが有力視されています。
ノミネート | 作品賞(1位) |
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監督賞 サム・メンデス(1位) |
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撮影賞(1位) | |
視覚効果賞(1位) | |
音響編集賞(1位) | |
録音賞(1位) | |
作曲賞(2位) | |
美術賞(2位) | |
脚本賞(5位) | |
メイクアップ&ヘアスタイリング賞(4位) |
※カッコ内は、米予想サイト「ゴールドダービー」の予想順位です(2020年2月7日現在)。