1位「すずめの戸締まり」
(2023年3月24日公開)

「すずめの戸締まり」の中国語版ポスター

「すずめの戸締まり」(中国題:『铃芽之旅』)は、中国で8億元(当時のレートで約160億円以上)を超える記録的な大ヒットとなり、中国における日本映画の歴代興行収入1位を記録した。新海誠監督への人気や作品の質の高さに加えて、「災害で傷ついた心を癒やす旅」というテーマ設定が、当時のコロナ禍の中国社会の空気感と合致した。

「君の名は。」で確立されていた新海誠ブランド

中国の若い世代から、新海誠監督は厚い信頼を得ていた。前々作である「君の名は。」が、2016年に中国で公開され、記録的なヒット(約5.7億元)となった。それ以来、「新海作品=絶対に映画館で見るべき美しい映像と感動ストーリー」というブランドが確立されていた。新作を待ち望む巨大なファンベースがすでに存在しており、公開前から成功が約束されている状態だった。

「ゼロコロナ」終了直後の完璧なタイミング

開放感と癒やし

中国では、「ゼロコロナ政策」が行われた。2020年1月23日(武漢ロックダウン)からスタート。それ以来3年間、市民の行動を制限する措置が続き、2023年1月ごろに終わりを迎えた。2023年春に公開された本作は、抑圧されていた人々の「エンタメへの飢え」と「癒やしへの渇望」を満たした。

バーチャル日本旅行

本作は日本各地を巡る「ロードムービー」の側面を持つ。日本へ行きたくても行けなかった中国の観客にとって、美しい日本の風景(宮崎、神戸、東京、東北など)を大スクリーンで旅する体験は非常に魅力的だったようだ。

異例の「監督現地入り」マーケティング

新海誠監督自身による、熱心なプロモーション活動が中国のファンの心を掴んだ。

SNSでファンとの交流を発信

パンデミック後、海外の大物監督が中国を直接訪問するのは稀だったが、新海監督は北京や上海を訪れた。Twitter(現X)やWeiboで、現地の食事を楽しむ様子やファンとの交流を積極的に発信。中国市場とファンへの深いリスペクト(敬意)を示したことが、好感度を爆発的に高めた。

テーマへの「文化的共感」

災害の記憶

東日本大震災を扱った本作のテーマは、中国の観客にも深く響いた。中国も2008年の四川大地震など、大規模な自然災害を経験しており、震災のトラウマや「土地への鎮魂」というテーマに共感する土壌があった。災害によって失われた日常や、家族愛という普遍的なテーマは、国境を越えて多くの涙を誘った。

キャラクター人気

謎の猫「ダイジン」の可愛さや、椅子に変えられた「草太」のユニークな設定が、Douyin(TikTok)やWeiboでミームとして拡散され、普段アニメを見ない層をも巻き込んだ面もあったようだ。