作品賞
■ 受賞予想(有力度ランキング)
作品賞の受賞予想(有力度ランキング)です。前哨戦でリードする「ワン・バトル・アフター・アナザー」と、16ノミネートというオスカー史上最多記録を打ち立てた「罪人たち」の2強による大接戦。
- 【ノミネート】
- 「罪人たち」▼
- 「ワン・バトル・アフター・アナザー」▼
- 「センチメンタル・バリュー」▼
- 「ハムネット」▼
- 「マーティ・シュプリーム」▼
- 「フランケンシュタイン」▼
- 「トレイン・ドリームズ」▼
- 「シークレット・エージェント」▼
- 「F1/エフワン」▼
- 「ブゴニア」▼
| 順位 |
候補 |
| 1位 |
「罪人(つみびと)たち」
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【配信:アマゾン】
ブルース音楽劇
1930年代のアメリカ南部の黒人兄弟の挑戦を、ブルースの源流や軌跡と絡めて描く音楽ドラマ活劇(フィクション)。西部劇やホラーの要素を取り入れ、新鮮なアプローチで米現代史の一面を切り取った。興行も大成功し、停滞気味のハリウッド映画業界に一つの新しい方向性を示した。
天才クーグラー監督初の完全オリジナル
アカデミー作品賞ノミネート「ブラックパンサー」(2018年公開)を若干31歳で撮った天才ライアン・クーグラー監督が、初めて手掛けた完全オリジナル作品。ストーリーや構成の独創性に加えて、映像や音楽の卓越したクオリティの高さ及び物語との一体感が絶賛された。クーグラー監督のデビュー作から出演し、二人三脚でハリウッドの王道を走り抜いてきたマイケル・B・ジョーダンが、一人二役(双子の兄弟)の大主演。
批評家の97%、観客の96%が肯定派
米国内での評価の高さは、批評家と一般観客の「両立」という点において年間トップ。ロッテン・トマトの支持率は批評家97%、観客96%。劇場来館者の評価を聞き取り調査する「シネマスコア」でホラー映画(実際には半ホラーだが)として史上初の「A」を獲得した。
怒涛のロングラン
注目されるのは、こうした口コミ評価のパワーが、ふだんは「配信待ち」の層を次々と映画館へ呼び込んだこと。公開2週目の落ち込みが初週比でわずか6%の下落という驚異的な維持率を達成し、その後もしばらく興収ランキングの上位に鎮座。中毒的なリピーターも増やしつつ、怒涛のロングランを続けた。
4月公開という点で本来は賞レース上は不利だが、3年前の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(3月公開)を彷彿とさせる勢いを保って、賞シーズンを迎えた。
史上最多16ノミネートの衝撃
とはいえ、秋に公開された「ワン・バトル・アフター・アナザー」の強さは凄まじく、前哨戦では後塵を拝した。とりわけ、批評家が選ぶ賞ではワン・バトル相手に連敗続き。そんなアンダードッグ状態をチャラにしたのが、オスカーでの「史上最多16ノミネート」という偉業達成だった。映画の話法を大きくグレードアップするような本作の革新性は、批評家よりも、クリエイターや映画人により響いたことは間違いない。
重みのあるスケール感
オスカーで重視されるスケール感や社会的テーマ性という点においても、歴代受賞作と比べて全く見劣りしない。とりわけ前年の作品賞「アノーラ」が軽めのポップ路線だったことを勘案すると、米国史のダークサイドとそこから這い上がろうとする民衆パワーを生々しくあぶり出した本作の重厚感は貴重。そして何より、新鮮なオリジナリティをもって映画ファンの裾野を広げた功績が大きい。
なお、配給会社の米ワーナーは、本作の権利を取得するにあたり、「25年後にライアン・クーグラーの会社に著作権を移管する」という異例の条件を呑んだ。
【ノミネート部門(16個=史上最多)】
| 部門 |
作品賞 |
監督賞 ライアン・クーグラー |
脚本賞 ライアン・クーグラー |
主演男優賞 マイケル・B・ジョーダン |
助演男優賞 デルロイ・リンドー |
助演女優賞 ウンミ・モサク |
| 撮影賞 |
| 編集賞 |
| 配役賞 |
| 作曲賞 |
| 歌曲賞 |
| 視覚効果賞 |
| 衣装デザイン賞 |
| 美術賞 |
| メイク&ヘア賞 |
| 音響賞 |
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)キャスト賞
・ワシントン批評家賞
・ボストン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ロンドン批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
監督:ライアン・クーグラー(ブラックパンサー、クリード)
プロデューサー:クーグラー夫妻&セヴ・オハニアン
※セヴ・オハニアンは38歳(授賞式時点)。クーグラー監督の南カリフォルニア大学(USC)映画芸術学部の後輩。クーグラー監督が長編デビュー作「フルートベール駅で」を手伝ってくれる人材を求めて大学の恩師(教授)に相談したところ、「逸材の生徒」として紹介された。
続き▼
オハニアン氏は、「フルートベール駅で」の参加が決まると、すぐに大学を中退。まだ無名、というよりデビュー前のクーグラー監督が仕切る現場に入る。当初は「アソシエイト・プロデューサー」という立場だったが、献身的な働きぶりが認められ、すぐに共同プロデューサーに昇格した。「フルートベール駅で」(2013年)は、サンダンス映画祭の観客賞&審査賞のダブル受賞など鮮烈な実績を残した。
その後、独自でキャリアを重ね、共同プロデューサー兼共同脚本家として手掛けた映画「サーチ」(2018年)を大ヒットさせた。
2018年、クーグラー監督とともに映画会社「プロキシミティ・メディア」を設立。その第一弾となった「ユダ&ブラック・メシア」が成功。今回のオリジナル巨大プロジェクト「罪人たち」に挑んだ。
主演:マイケル・B・ジョーダン(ブラックパンサー、クリード)
脚本:ライアン・クーグラー
公開日:2025年6月20日(日本)
製作国:アメリカ
制作会社:米プロキシミティ・メディア(ライアン・クーグラーの会社)
米国配給会社:ワーナー
長さ:2時間17分
影響を受けた作品「フロム・ダスク・ティル・ドーン」など
【興行収入】
北米:2.8億ドル
世界:3.6億ドル
(→)
【製作費】
9000万ドル
【配信:アマゾン】
【物語の背景】
1932年のアメリカ南部ミシシッピ州を舞台とする本作では、「奴隷解放」後も続く黒人たちの苦悩、希望、躍動が克明に紡ぎ出される。
「奴隷解放」後の黒人
南北戦争(1861~1865年)で南軍が敗れ、奴隷解放宣言が行われた後も、黒人たちは農園主から住居や農具を与えられ、収穫した綿花の約半分の収益を支払う小作人として働くことになった。ところが彼らは衣類や食料を買うため生活費を農園主から前借りしなければならず、経済的に支配され続けた。
続き▼
綿摘みのメッカ「デルタ地域」
マイケル・B・ジョーダン演じる主人公の兄弟が生まれたデルタは、ミシシッピ川とヤズー川に挟まれた肥沃(ひよく)な地帯で、19世紀からプランテーションが広がり、黒人奴隷が綿摘み労働を担ってきた。
黒人の起業
物語は、故郷デルタを離れ北部シカゴで荒稼ぎしてきた双子の黒人兄弟が、地元に戻ってきたところからスタートする。蓄えた資金で「ジューク・ジョイント」と呼ばれる酒場の開業を計画する兄弟。立ち上げに必要な場所や人材の確保へと動き出す。
演奏小屋「ジューク・ジョイント」
ジューク・ジョイントは、当時アングラ的に流行した黒人の社交場(ダンスホール)で、1930年代にデルタ地域の農園近くや街道沿いに点在していた。歌やギターが得意な農夫たちは、仕事の後にジューク・ジョイントで腕前を披露したという。演目はもちろん、黒人の農園労働者らに歌い継がれてきた「ブルース」。初期ブルース(デルタ・ブルース)を代表する伝説的な奏者兼歌手として知られ、本作でも言及されるチャーリー・パットンも、綿摘みなどの農作業をしながら、ジューク・ジョイントでブルースを演奏していたこで有名。
見事な音楽シーン
ブルースはジューク・ジョイントを媒介に、デルタ地帯からメンフィス、セントルイス、シカゴへと北上。ジャズやロックなど現代ポピュラー・ミュージックの源になるのだが、本作ではその歴史的な繋がりや広がりが、卓越した音楽の数々とその演奏シーンで鮮やかに表現されている。
黒人霊歌
もともとは、米国の黒人音楽といえばゴスペルが主流だった。アフリカ大陸から奴隷船で運ばれてきたアフリカ系アメリカ人たちは、自らの土着文化を否定されたが、奴隷として暴力や絶望に苦しむなかで独自の黒人霊歌を生み出し、天国での救済を唄うようになった。それが聖歌(ゴスペル)として発展したのだった。
世俗的で快楽的な「悪魔の音楽」
しかし、南北戦争で奴隷制度が撤廃された後も差別が終わらなかったことに、信仰深かった黒人たちも失望。その憂うつ(ブルー)な気分を世俗的な歌詞とサウンドで正直に表現し、急速に広まっていったのが「ブルース」だった。神にささげるゴルペルとは対局をなす世俗的な歌詞と快楽的なリズムやノリ。プロテスタントなどの信仰深い人たちからすると、音楽による陶酔は悪魔の誘惑であり、「悪魔の音楽」「罪人たちの歌」と呼ばれた。禁酒法による統制も加わり、酒場でブルースにのって足を踏み鳴らしたり、踊り狂ったりするような人々は堕落の象徴とされた。
少年ミュージシャンと吸血鬼
本作は、そんな「堕落文化」に胸を躍らせる人々(Sinners)の姿を活写する。堕落者の象徴として、牧師の息子ながらブルース音楽家を志す少年ミュージシャン(主人公の従弟)が準主役として登場。父親から「悪魔の音楽をやめろ!」と叱責されつつも、天才的なギター演奏と歌声で人々を熱狂させる。そのサウンドの魔力が、招かれざる客(吸血鬼)を引き寄せることとなり、大きな騒動へと発展する。
【評点】
| メタクリティック |
84点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
97%(観客96%) 最新→ |
| IMDB |
7.6
最新→ |
| シネマスコア |
A |
| レターボックス |
4.1
最新→ |
【予告編▼】
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| 2位 |
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
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名匠ポール・トーマス・アンダーソン(略称:PTA)監督10作目にして初のアクション系大作。大手スタジオ(ワーナー・ブラザース)から得た200億円以上の予算を、自らの作家性や職人的センスをフルに発揮する方向で使い切り、「映画的快楽」を堪能できる贅沢な作品に仕上げた。同時に、自己陶酔型の語り口に陥り過ぎることなく、活劇としてのスリルや政治風刺の面白味も楽しめる娯楽作として成立させている。
追跡と逃走の家族劇
レオナルド・ディカプリオ演じる政治テロ犯が、同じ組織内の女性と恋仲になり、娘をもうけて家庭人に。やがてその娘の身が危険にさらされ、救出へと向かう、という逃走&追跡の家族劇。
批評家の評価ナンバー1
米国で「満点」のレビューを出す批評家が続出。主な評者の得点を平均するメタクリティックのスコアは驚異の95点で、あの「オッペンハイマー」(90点)をあっさり乗り越え、自己最高だった「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(93点)を凌ぎ、「ソーシャル・ネットワーク」(96点)、「それでも夜は明ける」(96点)、「パラサイト 半地下の家族」(97点)といった神作レベルの域に迫った。ちなみに、さらに上には「ムーンライト」(99点)や「6才のボクが、大人になるまで」(100点)などがある。いずれにせよ、本年の主要作品の中で断トツの批評家ウケの良さ。
<絶賛ポイント>
- ・没入感、緊張感、迫力(とくに後半)
- ・現代政治風土の描写の鋭さ。豊かな寓話性、風刺の面白み。
- ・主役から端役(はやく)に至るまで全キャストの高度な演技と、それを引き出す演出
一般支持率も「マグノリア」以来の高さ
一般層の反応もおおむね良好で、米映画館の出口調査シネマスコアで「A」を獲得。ロッテン・トマトの観客支持率は「85%」で、クセが強めのポール・トーマス・アンダーソン作品としては2作目「ブギーナイツ」(89%)、3作目「マグノリア」(89%)以来の高水準となった。ただ、競合相手「罪人たち」(96%)に比べると、一定割合の否定派が存在する。
前哨戦で圧勝
前哨戦で圧倒的な強さを見せた。批評家系の主要な賞は総なめ。終盤の組合系の賞でも、最も重要なPGA(米製作者組合賞)とDGA(米監督組合賞)をダブルで制覇。英国アカデミー賞でも勝利。2年前の絶対的な王者「オッペンハイマー」に劣らない勝ちっぷりだった。
【前哨戦での受賞】
・PGA(米製作者組合賞)
・DGA(米監督組合賞)
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・米国映画評議会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー/NBR)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・サンフランシスコ批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・フロリダ批評家賞
・オースティン批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・米南東部批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
・トロント国際映画祭
・ゴッサム賞
【ノミネート部門(13個)】
| 部門 |
作品賞 |
| 監督賞 |
主演男優賞 レオナルド・ディカプリオ |
助演男優賞 ベニシオ・デル・トロ |
助演男優賞 ショーン・ペン |
助演女優賞 テヤナ・テイラー |
| 脚色賞 |
| 撮影賞 |
| 編集賞 |
| 配役賞 |
| 作曲賞 |
| 音響賞 |
| 美術賞 |
監督&脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
主演:レオナルド・ディカプリオ&チェイス・インフィニティ
助演:ショーン・ペン、ベニシオ・デル・トロ、テヤナ・テイラーほか
製作国:アメリカ
配給会社:ワーナー
長さ:2時間42分
公開日:2025年10月3日(日本)
【興行収入】
北米:7061万ドル
世界:2億220万ドル
(→)
【製作費】
1億3000万~1億7500万ドル
【配信:アマゾン】
【評点】
| メタクリティック |
95点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
95%
最新→ |
| IMDB |
8.4
最新→ |
| シネマスコア |
A |
| レターボックス |
4.3
最新→ |
【予告編▼】
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<挿入歌:スティーリー・ダン「ダーティ・ワーク」▼>
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| 3位 |
「センチメンタル・バリュー」
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美しく内省的な家族劇
ノルウェーを舞台とする家族劇。美しくじんわり染みる内省的な一作。疎遠になっていた父と娘2人の再会と確執を描く。アカデミー賞脚本賞にノミネートされた「わたしは最悪」と同じ監督&脚本&主演。
「撮りたい」父と「演じたくない」娘
かつて映画監督として名声を高めた父親(ステラン・スカルスガルド)が、自分の家族の歴史を映画化しようとする試みが、物語の起点となる。父親は、舞台俳優である娘(レナータ・ラインスヴァ)に主役を演じてもらいたいと申し出るが、娘は拒絶する。家族について「語りたい(撮りたい)」父と、「演じたくない」娘の溝は埋まるのか。「親子関係」をテーマに据えつつ、「映画(創作活動)を通じて自らの人生を語る」あるいは「語り直す」ことの価値や是非を、物語の命題に取り込んだ。
主要キャスト4人の演技パワー
主要キャスト4人の演技の力を最大限に引き出しながら、パーソナルな題材を普遍的な物語として静かに紡いでいく手法が高い評価を得た。静謐(せいひつ)でありながら、描かれる葛藤は鋭利で生々しい。「心の内側で静かに爆発する映画」などと絶賛された。
監督の自伝的な要素も
なお、ヨアキム・トリアー監督は本作で自伝的な要素も取り入れたという。父は音響技師、母は短編映画作家、そして何より祖父のエリック・ローシェンは、ノルウェー映画史に名を残す巨匠監督だった。ステラン・スカルスガルド演じる「かつての巨匠監督」という設定には、トリアー監督が見てきた祖父や親の世代が持つ「芸術への絶対的な信念と、それゆえの独善リスク」が色濃く反映されている。同時に、娘役が抱える「巨星すぎる父への複雑な感情とプレッシャー」は、自身の若い頃の心情が投影されているという。
非英語として史上最多の主要部門ノミネート数
9個のノミネートを獲得した。これは外国語(非英語)の作品として「グリーン・デスティニー」「ローマ」に次ぎ、「西部戦線異状なし(2022年版)」と並び史上2位タイの記録。ノミネート9個のうち7個は「主要8部門」が占めており、これは「ローマ」の5個を抜いて史上最多の記録となった。主要キャスト4人全員がノミネートされたのが大きい。
【ノミネート部門(9個)】
| 部門 |
作品賞 |
| 監督賞 |
主演女優賞 レナータ・ラインスヴァ |
助演男優賞 ステラン・スカルスガルド |
助演女優賞 インガ・イブスドッテ・リレオス |
助演女優賞 エル・ファニング |
| 脚本賞 |
| 国際映画賞 |
| 編集賞 |
監督:ヨアキム・トリアー(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )
脚本:エスキル・フォクト(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )、ヨアキム・トリアー
主演:レナータ・ラインスヴァ(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )
助演:ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテ・リレオス、エル・ファニング(「名もなき者」「マレフィセント」など)
公開日:2026年2月20日(日本)
製作国:ノルウェー、仏、独、デンマーク
言語:ノルウェー語(一部英語)
米国配給会社:ネオン
長さ:2時間15分
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 2位(グランプリ賞)
・英国アカデミー賞 非英語作品賞
・ボストン批評家賞 非英語作品賞
・ワシントン批評家賞 国際映画賞
・ダラス批評家賞 外国語映画賞
・ジョージア批評家賞 国際映画賞
・サンフランシスコ批評家賞 脚本賞
【評点】
| メタクリティック |
86点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
97% 最新→ |
| IMDB |
7.9
最新→ |
| レターボックス |
4.2
最新→ |
【予告編▼】
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|
| 4位 |
「ハムネット」
|
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本年度きっての優良文芸作品
2021年オスカーで作品賞&監督賞に輝いた「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督の4年ぶりの新作。本年度きっての優良文芸作品。歴史に名を残す戯曲が生まれる背後にあった「夫婦愛」と「親子愛」を、触覚的で繊細な映像表現と自然体の演技で浮かび上がらせる。
シェイクスピアの妻アグネス
英国の劇作家シェイクスピアの妻アグネスを主人公とする創作劇。2020年に発表された作家マギー・オファーレルの小説が原作。
シェイクスピアは18歳のときに8つ年上の女性アグネス結婚。双子の子供(長男ハムネットと長女ジュディス)をもうけたが、ハムネットは12歳で夭逝(ようせい)する。
この史実をベースに、豊かな想像力と大胆な再解釈を加え、長年にわたり「悪妻の典型」とも言われてきたアグネスの生き様を全く新たな視点で描く。ジャオ監督が原作者と共同で脚本を書いた。
喪失の痛みと、芸術への昇華
言葉にならない母(妻)の情念を徹底して掘り下げることで、逃げ場のない没入感を生み出している。癒えない傷跡が創造的なエネルギーへと変わり、一大芸術へと昇華されていくプロセスが強烈な救済感をもたらすとして、絶賛された。トロント国際映画祭で観客賞。女性からの支持は圧倒的。
映画化への道のり
スピルバーグが指名▼
英国テレビドラマ界で優れた実績のある敏腕プロデューサー、ライザ・マーシャルが、小説『ハムネット』が出版される前の2019年後半、映像化の権利を獲得。同じく英国の大物監督サム・メンデス氏(「アメリカン・ビューティー」など)の制作会社とタッグを組み、映画化を企画する。
演劇畑出身でシェイクスピアにも思い入れが強いメンデス監督は当初、自らメガホンを撮ろうかと思ったが、「これはオレじゃないな」と踏みとどまり、自身を映画界の成功者へと導いてくれた恩師スティーブン・スピルバーグ氏に相談する。
共同プロデューサーとして加わったスピルバーグ氏は、「大自然の営みと人間の心の奥底にある本質の両方に対して、まるで魔法のような深い理解と共鳴力を持っている」と考えていたクロエ・ジャオ氏に監督就任をオファーする。
ジャオ監督は最初、原作を読むことなくオファーを断った。「母親としての経験がない自分には無理だ」と思ったからだ。
しかし、その直後、ある映画祭で、当時まだ無名だった男優ポール・メスカルに出会う。初対面のメスカルを見て、「この役者ならシェイクスピアを演じられるのでは」と直感を抱いたジャオ監督は「シェイクスピア役に興味ある?」と尋ねる。メスカルは「もしかして『ハムネット』を映画化するの?あの小説大好き!ぜひ読んで」と逆に薦められる。
本を読んで感銘を受けたジャオ監督は、アグネス役として「この人しかいない」と浮かんだ女優ジェシー・バックリーにさっそく出演を打診。彼女が了解したことから、最終的に監督を引き受けたという。
【ノミネート部門(8個)】
| 部門 |
作品賞 |
| 監督賞 |
主演女優賞 ジェシー・バックリー |
| 脚色賞 |
| 配役賞 |
| 作曲賞 |
| 衣装デザイン賞 |
| 美術賞 |
監督:クロエ・ジャオ
主演:ジェシー・バックリー
助演:ポール・メスカルほか
脚本:マギー・オファーレル(兼原作者)、クロエ・ジャオ
原作:小説『ハムネット』(2020年、マギー・オファーレル著)
公開日:2026年4月10日(日本)
製作国:イギリス、アメリカ
言語:英語
米国配給会社:フォーカス
長さ:2時間5分
【前哨戦での受賞】
・トロント国際映画祭 観客賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
【評点】
| メタクリティック |
84点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
86% 最新→ |
| IMDB |
8.0
最新→ |
| レターボックス |
4.2
最新→ |
【予告編▼】
動画集を開く▼
<劇伴▼>
<ゴールデングローブ賞ドラマ作品賞の受賞スピーチ▼>
<初公開となったテルライド映画祭での監督挨拶▼>
<製作陣インタビュー▼>
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| 5位 |
「マーティ・シュプリーム」
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米国の世界的な卓球選手(マーティ・リースマン)から着想を得たフィクション。これまで兄弟コンビで「アンカット・ダイヤモンド」などを手掛けてきたサフディ・ブラザーズの兄のほうであるジョシュ・サフディの初の単独監督作。本年度のA24イチオシ。製作費も興行収入も、A24として過去最高となった。
成功への妄執を描く
舞台は1952年。『自分は特別だ』『絶対に成功する』という妄執に取りつかれた人物の暴走がひたすら描写される。人格破綻者である主人公が何をしでかすか分からないという意味においてスリラー的で、全編を貫く緊張感や疾走感が中毒的だとして、多くの批評家に支持された。「スポーツ版ウルフ・オブ・ウォールストリート」とも称された。
演技や技術への称賛
テンポの良い編集、カメラワークの切れ味、音楽との一体感といった技巧面が高く評価された。卓球シーンも見ごたえたっぷり。
傍若無人な男の怖さを表現した主演シーンティモシー・シャラメの役作りも称賛された。
卓球ハスラー(勝負師)
着想元となったマーティ・リースマン選手(1930年~2012年)は、1949年と1952年の世界選手権シングル部門で銅メダルに輝いた人物。12歳のころから卓球クラブに通い始め、年上の選手を相手に金を賭けてプレーするギャンブル試合を展開。「卓球ハスラー」として有名になった。(本作では、こうした生い立ちや経歴はあまり描かれない)
ライバルは日本人選手
注目ポイントは、日本の卓球選手が主人公のライバル「エンドウ」として登場すること。1952年世界選手権の王者で、本物のマーティとも試合をした佐藤博治氏(1925年~2000年)から着想を得たキャラクターとされ、映画内でも両者は壮絶なマッチを展開する。
川口功人選手が好演
この役柄を演じているのは、2025デフリンピック卓球男子団体で銅メダルを獲得した川口功人(こうと)選手(トヨタ自動車所属)。映画初出演ながら、冷静沈着な立ち振る舞いで強い印象を与える。卓球シーンではキレのあるフォームで見せ場を連発。マーティの狂気的なスイングと、エンドウの氷のような静寂がぶつかり合うラリーは圧巻。
モデルとなった佐藤博治選手とは▼
エンドウのモデルとなった佐藤博治(ひろじ)氏(1925年~2000年)は青森県出身。1952年インドのムンバイ(当時ボンベイ)で開かれた「第19回世界卓球選手権大会」に出場し、男子シングルで優勝した。日本にとって初めての卓球世界選手権だったが、いきなりの快挙。世界チャンピオンの誕生に、戦後・日本が沸き返り、卓球ブームが起きた。
この世界選手権が本作の序盤の舞台の一つとなるが、映画はあくまでフィクションであるため、開催地はインドでなくイギリスになっているなど、いろいろ改変されている。
この世界選手権で日本は7種目のうち4種目(男子単・複、女子団体・複)で優勝。なかでも佐藤は、欧米の強豪選手を相手に、個人・団体戦を通じて20戦全勝の快進撃を見せたため、そのスターぶりは際立った。
とりわけ注目されたのは、佐藤選手が新型の「スポンジ・ラケット」を使ったこと。ひのき板の柾(まさ)目のラケットに厚さ6ミリの粒の細かいスポンジを張ったもの。自らスポンジラバーをカミソリを使ってミリ単位で削り、最も速く打ち返せる6ミリという厚さを割り出したという。時計店の長男として生まれ、店を手伝ってきただけあって、創意にあふれた職人かたぎの技だった。
スポンジ・ラケットは攻撃には極めて有効だが、守備に回ると返球が難しいという難点があった。確実に球を打ち返し、相手のすきを突く「守備型」の選手だった佐藤選手は特訓を重ね、スポンジ・ラケットを守備でも上手に使いこなせるようになったという。
一方、マーティ・リースマンは当時、「ハドバット(ラバーが薄く、木の音がするラケット)」の天才として世界的に名を馳せていた。それまでマーティが誇っていた超絶的なテクニックや打球音によるタイミングの計り方は、音もなく猛烈な回転をかける佐藤選手のスポンジ・ラケットの前では通用しにくくなる。これが、マーティの闘争心を一段と駆り立てたのであった。
ヤマ場の舞台は戦後の東京
本作では、戦後間もない日本の東京で開催される卓球のエキシビジョン・マッチ(模範試合)が、本作の重要な舞台の一つとなる。
どん底から這い上がろうとする復興期・日本の熱気や、欧米化する前の風土の独自固有性がなんとなく表現されており、東洋的な異国情緒が、主人公マーティの孤独な闘いを映画的に盛り立てる。
【ノミネート部門(9個)】
| 部門 |
作品賞 |
| 監督賞 |
主演男優賞 ティモシー・シャラメ |
| 脚本賞 |
| 撮影賞 |
| 編集賞 |
| 配役賞 |
| 衣装デザイン賞 |
| 美術賞 |
監督:ジョシュ・サフディ
主演:ティモシー・シャラメ
助演:グウィネス・パルトローほか
脚本:ロナルド・ブロンスタイン、ジョシュ・サフディ
公開日:2026年3月13日(日本)
製作国:アメリカ
米国配給会社:A24
製作費:7000万ドル
(A24配給作品としては2024年「シビル・ウォー」の5000万ドルを上回り過去最高)
長さ:2時間30分
【評点】
| メタクリティック |
88点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
94% 最新→ |
| IMDB |
8.1
最新→ |
| レターボックス |
4.2
最新→ |
【予告編▼】
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<モデルとなったマーティ・リースマンのインタビュー▼>
<試合(1949年、世界選手権)▼>
<劇伴アルバム▼>
<挿入歌「フォーエバー・ヤング」など▼>
<挿入歌「ルール・ザ・ワールド」▼>
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| 6位 |
「フランケンシュタイン」
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【配信:ネトフリ】
「世界初のSF小説」とも評されるメアリー・シェリーの怪物物語『フランケンシュタイン』(1818年刊)を、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞した名匠ギレルモ・デル・トロがリメイクした。
「神話的・オペラ的な壮大さ」が高い評価を得た。ややメロドラマ的ではあるが、近年のホラーやSFが「リアリズム」や「ひねり(意外性)」を重視するなか、あえて19世紀文学の「大仰な感情表現(悲嘆、絶望、愛)」をストレートに映像化した点が、称賛の対象となった。
「ヘルボーイ」や「シェイプ・オブ・ウォーター」などで、「異形の者への愛」を見せてきたデル・トロ監督の一つの集大成とも位置づけられている。
デル・トロ監督は、7歳の頃に1931年版の映画「フランケンシュタイ」を見て衝撃を受け、それ以来、怪物(クリーチャー)に感情移入し、この物語に取り憑かれてきたという。何年もかけてクリーチャーのデザイン画を描きためたり、脚本の構想を練り続けたりしており、準備期間は実質20〜25年に及ぶとされる。
その構想を実現につなげたのは、ほかでもないNetflixマネーだった。
2018年、デル・トロ監督はNetflixの経営者(テッド・サランドス共同CEO)に対して、自身の「死ぬまでにやりたいことリスト」を提示。開発途中で頓挫していた「ピノッキオ」の完成と、構想段階だった「フランケンシュタイン」の2つを挙げ、協力を求めた。
Netflixはまず「ピノッキオ」計画の救済・再開のための資金を提供。2022年に公開にこぎつけ、オスカーでアニメ賞を受賞するなど成功を収める。ほどなくフランケンシュタインの契約を締結し、ストリーミング配信作品としては破格の製作費(約180億円)を拠出した。
巨大なセット、精巧なアニマトロニクス(機械仕掛けの人形)、特殊メイクなどの物理的な美術造形に多額の資金が充てられ、重厚な映像美が構築された。
なお、監督の過去作と比べた米国での評点の高さは、「パンズ・ラビリンス」「シェイプ・オブ・ウォーター」よりだいぶ劣るものの、「ナイトメア・アリー」「ヘルボーイ」と比べて遜色ない。
【ノミネート部門(9個)】
| 部門 |
作品賞 |
助演男優賞 ジェイコブ・エロルディ |
| 脚色賞 |
| 撮影賞 |
| 美術賞 |
| 衣装デザイン賞 |
| メイク&ヘア賞 |
| 作曲賞 |
| 音響賞 |
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ノア・オッペンハイム
主演:オスカー・アイザック
助演:ジェイコブ・エロルディ(怪物役)ほか
公開日:2025年11月7日(Netflix配信)
製作国:アメリカ
配給会社:Netflix
長さ:2時間30分
【製作費】
1.2億ドル
【前哨戦での受賞】
・トロント国際映画祭 観客賞2位
【評点】
| メタクリティック |
78点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
85% 最新→ |
| IMDB |
7.5
最新→ |
【予告編▼】
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| 7位 |
「トレイン・ドリームズ」
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【配信:ネトフリ】
前年「シンシン」で絶賛された監督&脚本家による静かな一作。制作会社もシンシンと同じBlack Bearだが、今回はNetflixがサンダンス映画祭で配給権を獲った。
鉄道敷設や森林伐採に汗を流し、家族を愛しながら、19世紀終盤から20世紀のアメリカを静かに歩み続けた「普通の労働者」の生涯を描いた。
大きな時代のうねりに対して無力でありながらも、ただ誠実に生き、働き、そして老いていく人間の「尊厳」が表現されている。
内容的に地味ではあるが、味わい深さや詩的な魅力が評価された。「監督が静寂を恐れずに時間をたっぷり使って描いた演出(長回しなど)が、観客を没入させる」(米コライダー)などと批評家もほぼ称賛一色。
【ノミネート部門(4個)】
監督:クリント・ベントリー(「シンシン」など)
脚本:クリント・ベントリー&グレッグ・クウィダー(「シンシン」の脚本コンビ)
主演:ジョエル・エジャトン(「ラビング 愛という名前のふたり」「ゼロ・ダーク・サーティ」など)
助演:フェリシティ・ジョーンズ、ウィリアム・H・メイシーほか
公開日:2025年11月21日(Netflix配信)
製作国:アメリカ
配給会社:Netflix
長さ:1時間42分
【評点】
| メタクリティック |
88点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
95% 最新→ |
| IMDB |
7.5
最新→ |
【予告編▼】
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| 8位 |
「シークレット・エージェント」
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国:ブラジル
前年の「アイム・スティル・ヒア」に続き、ブラジル映画が2年連続で作品賞ノミネートという快挙を果たした。
ひっそりと逃げる男の緊張感
1977年の軍事独裁政権下のブラジルを舞台とする政治スリラー(フィクション)。「秘密工作員(シークレット・エージェント)」という題名からは、特殊な能力を持ったスパイの映画のような印象を受けるが、本作の主人公は逃げることに必死な普通の学者。
軍事政権の監視の網をすり抜け、ただ『自らの存在を消し、生き延びること』が最大のミッションとなった男の、緊張感に満ちた日常や周囲との触れあいが描かれる。スローテンポで、物語の展開はおおむね地味。
重みのある色彩
当時のブラジルが持っていた空気感を再現した巧みな映像表現が高く評価された。デジタル撮影でありながら、まるで1970年代の35mmフィルムで撮られた未発表のアーカイブを見つけてきたかのような雰囲気。
【ノミネート部門(4個)】
| 部門 |
作品賞 |
主演男優賞 ヴァグネル・モウラ |
| 国際映画賞 |
| 配役賞 |
監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ
主演:ヴァグネル・モウラ
製作国:ブラジル+独仏蘭
言語:ポルトガル語、ドイツ語
米国配給会社:ネオン
長さ:2時間38分
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭【4冠】監督賞&主演男優賞&国際映画批評家連盟賞&フランスアート系映画館協会賞
・クリティック・チョイス賞 非英語作品賞
・ニューヨーク批評家賞 外国語映画賞(&主演男優賞も)
・ロサンゼルス批評家賞 外国語映画賞
・オースティン批評家賞 国際映画賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め 非英語作品賞(&作品賞3位)
・ゴールデングローブ賞 非英語作品賞
【評点】
| メタクリティック |
91点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
98%
最新→ |
| IMDB |
7.9
最新→ |
| レターボックス |
3.9
最新→ |
【予告編▼】
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| 9位 |
「F1/エフワン」
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映画スター(ブラッド・ピット)が輝き、大画面でレースのスピードに酔いしれる体験型作品。「古き良きハリウッド文化」が、最新の映像・音響技術と融合し、「トップガン マーヴェリック」で感じたようなノスタルジーと高揚感をもたらす。世界興行収入1000億円のメガヒット作。
本年度の作品賞ノミネート争いは秀作がひしめく激戦だったが、「エンタメもの」というレッテルを打ち破り、見事に10枠入りを果たした。とりわけ、批評家から絶大な支持を得た「シンプル・アクシデント/偶然」に競り勝ったことは注目に値する。イラン発・欧州出資の「シンプル・アクシデント」は、カンヌ映画祭の最高賞やNY批評家賞の監督賞に輝き、作家性や政治的な意味合いの強さからノミネート入りを予想する声が多かったが、F1が立ちはだかった。
そもそもアカデミー事務局が作品賞のノミネートを5枠から10枠に増やし、同時にランキング形式の投票方式に変えたのは、「F1」のようなブロックバスターを押し上げるためだった。バットマン「ダークナイト」などの大衆娯楽作の相次ぐ落選を受けた苦肉の策でもあった。ところが、「ブラックパンサー」のような例外は出たものの、依然としてブロックバスターは冷遇され続け、むしろ作家系や外国語の作品が増えた。
こうしたなか、エンタメ路線であることを恥じるのでなく、むしろ前面に出しながら堂々とキャンペーンを張ったF1が候補入りを果たしたのは意義深い。しかも、「ウィキッド 永遠の約束」「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」といった続きものではなく、オリジナル・ストーリーの本作が選ばれたことは、普通に喜ばしい。
【ノミネート部門(4個)】
監督:ジョセフ・コシンスキー(トップガン マーヴェリックなど)
主演:ブラッド・ピット
助演:ダムソン・イドリス(若手選手)、ハビエル・バルデム(チーム所有者)、ケリー・コンドン(車の開発者)ほか
脚本(書下ろし):アーレン・クルーガー(トップガン マーヴェリックなど)
公開日:2025年6月20日(日本)
製作国:アメリカ
製作会社:アップル
配給担当:ワーナー
長さ:2時間15分
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| 10位 |
「ブゴニア」
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「女王陛下のお気に入り」(2018年)を起点として、「哀れなるものたち」(2023年)、「憐れみの三章」(2024年)と続いてきたヨルゴス・ランティモスとエマ・ストーンの協働プロジェクトが、またしても賞レースにモロに食い込んだ。
社会的に疎外された労働者が、圧倒的な富と権力を持つ製薬会社の女性CEOを、「隠れ宇宙人だ」と思い込むことから始まるブラックコメディ。「この男は狂った陰謀論者か、それとも救世主か」という問いを、観客に突きつけたまま物語が進行する。
原作は、カルト的な人気を誇る韓国のブラックコメディ映画「地球を救え!」(2003年)。「パラサイト 半地下の家族」を手掛けた韓国エンタメ大手「CJ ENM」が、「地球を救え」のハリウッド版リメイクを目指して2020年ごろ企画を始動させた。原作映画のファンだった「ヘレディタリー」「ミッドサマー」のアリ・アスター監督がプロデューサーとして参加し、テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」で注目を集めた脚本家ウィル・トレイシーを起用。その脚本を気に入ったランティモスが監督を引き受けた。原作の韓国版を撮ったチャン・ジュナン監督(大ヒット作「1987、ある闘いの真実」で有名)は、エグゼクティブ・プロデューサーに回った。
歴代のランティモス作品の中では比較的ストレートに観やすく、一般観客の支持率も高め。ただ、「哀れなるものたち」に比べると、映像面の華やかさや圧倒的な別世界体験は弱め。また、緻密さの面で「女王陛下のお気に入り」より劣る。
【ノミネート部門(4個)】
| 部門 |
作品賞 |
主演女優賞 エマ・ストーン |
| 脚色賞 |
| 作曲賞 |
監督:ヨルゴス・ランティモス(「哀れなるものたち」「女王陛下のお気に入り」など)
脚本:ウィル・トレイシー(テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」シーズン2・第5話の脚本を書き、エミー賞脚本賞を受賞)
主演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンズ
公開日:2026年2月13日(日本)
製作国:アイルランド、韓国、米国
配給会社:フォーカス
長さ:1時間58分
【製作費】
5000万ドル
【評点】
| メタクリティック |
72点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
87% 最新→ |
| IMDB |
7.7
最新→ |
【予告編▼】
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※歴代の作品賞→
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監督賞
| 部門 |
監督賞 |
|
ノミネート
|
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ポール・トーマス・アンダーソン
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
これまで主に中規模な予算で「密室劇」や「内省的な人間模様」を精緻に描いてきたが、今作ではハリウッド大作規模の予算を使いこなし、「外向的なスペクタクル」を現出させた。幅広い観客を楽しませる責任を果たしながら、一瞬たりとも自らの審美眼を曇らせない。
主役のレオナルド・ディカプリオから「カリスマ性」を剥ぎ取り、少し背中の丸まった、しかし観客が共感せずにはいられない「ボブ」という一人の人間を立ち上げる。ベニチオ・デル・トロに「静の安心感」を、ショーン・ペンに「動の恐怖」を割り振り、それらがぶつかり合うタイミングを1秒単位でコントロールしているようなリズム感は、まさに名指揮者。
伝説的なビスタビジョン・カメラを使い、広大なカリフォルニアの風景から車内の狭い空間までを、歪みなく、かつ圧倒的な実在感で捉える空間把握能力は見事。CGに頼らず、車などの物理的な衝撃やスピード感をカメラワークのみで表現する演出は、デジタル全盛の時代において、「最も新しく、力強い映画体験」として見る側に突き刺さった。
1970年6月、ロサンゼルス生まれ。俳優の息子。若干26歳で長編2作目「ブギーナイツ」(1997年)を撮り、大当たり。新進気鋭の天才として注目された。マーク・ウォールバーグ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジョン・C・ライリーらの新進俳優を世界に知らしめた立役者である。今作の完成時54歳。
過去のアカデミー賞ノミネート数は11個。受賞はゼロだった。
<過去のノミネート歴>
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作品 |
部門 |
| 1997 |
「ブギーナイツ」 |
脚本賞 |
| 1999 |
「マグノリア」 |
脚本賞 |
| 2007 |
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」 |
作品賞 |
| 監督賞 |
| 脚色賞 |
| 2014 |
「インヒアレント・ヴァイス」 |
脚色賞 |
| 2017 |
「ファントム・スレッド」 |
作品賞 |
| 監督賞 |
| 2021 |
「リコリス・ピザ」 |
作品賞 |
| 監督賞 |
| 脚本賞 |
【前哨戦での受賞】
・DGA(米監督組合賞)
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞
・米映画評議会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・サンフランシスコ批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・オースティン批評家賞
・フェニックス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
-
ライアン・クーグラー
「罪人(つみびと)たち」
キャリア初のオリジナル作品。
1932年の米南部(ジム・クロウ法時代)という歴史的リアリズムに、「吸血鬼」という超自然的要素を衝突させる大胆な発想と演出。ホラーとして「ただ怖い」ことを追い求める以上に、ブルース音楽や黒人文化の歴史的深みを映像に刻み込むことで、一級のヒューマンドラマとして成立させた。
俳優陣から美術、視覚効果、音響、衣装など技術部門に至るまで、バラバラになりがちな各セクションに自らの「ビジョン」を浸透させ、一つの世界観として統合させたオーケストレーション能力は、まさに現代の巨匠の風格。ルートヴィッヒ・ヨーランソン(音楽)らオスカー常連のトップランナーたちにも「自己ベスト」を更新させる環境を作った。
1986年5月生まれ。加州オークランド出身。
続き▼
2013年、地元近くの黒人青年の射殺事件を描いた「フルートベール駅で」で長編デビュー(当時27歳)。サンダンス映画祭で最高の栄誉である「審査員グランプリ」と「観客賞」の2冠を制した。商業的にも成功し、製作費90万ドルに対して興行収入1740万ドルを稼いだ。主役に起用したマイケル・B・ジョーダンも称賛を浴びる。
続いて「ロッキー」シリーズの新作「クリード」の監督に抜擢されると、期待以上の質の高さで再び称賛を浴びる。さらにマーベル映画「ブラックパンサー」の監督を任され、アメコミ映画として史上初のアカデミー作品賞ノミネートへと導いた。2021年の「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」では、共同プロデューサーとして作品賞にノミネートされた。
なお、本作では、従来のホラー映画の枠を超える「体験型のエピック(叙事詩)」として本作を構想。視覚的リアリティを極限まで高めるため、クリストファー・ノーラン夫妻に直接アドバイスを仰ぎ、特注のUltra PanavisionとIMAXカメラを導入した。
【前哨戦での受賞】
・ボストン批評家賞
・ワシントン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・米南東部批評家賞
・テキサス北部批評家賞
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ヨアキム・トリアー
「センチメンタル・バリュー」
※ノルウェー人。1974年生まれ。前作「わたしは最悪」で2022年オスカーの国際映画賞と脚本賞にノミネートされたが、いずれも濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」に敗れた。
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クロエ・ジャオ
「ハムネット」
※中国出身。アメリカに移住。低予算「ノマドランド」で2021年の作品賞、監督賞に輝く。マーベル大作「エターナルズ」を経て、本作が4年ぶりの新作。
-
ジョシュ・サフディ
「マーティ・シュプリーム」
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※歴代の監督賞→
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主演男優賞
| 部門 |
主演男優賞 |
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ノミネート
|
-
マイケル・B・ジョーダン
「罪人たち」
※双子の兄弟を一人二役で演じた。厳格で引率力のある兄スモークと、陽気で脇の甘い弟スタック。しぐさ、目つき、声を巧みに使い分けた。見た目以外にも双子らしい共通性を持たせつつ、別人として見せる演技が巧妙。
物語の進行とともに、希望、後悔、恐怖、怒り、連帯感といった感情表現を幾多にも積み重ね、観客を歴史ドラマの深みへと引き寄せる。多層なジャンルへと転調・拡張していく本作において、その確かな存在感が「太い縦串」として機能する。
「威圧的なギャング」「超然としたヒーロー」といったステレオタイプに走らず、かといって繊細な名演ぶりを誇示するふうでもない。あくまで一人(二人)の人間キャラとしての体温や呼吸を感じさせる適度なサジ加減が良い。
1987年生まれ、ニュージャージー育ち。
続き▼
10歳の頃からモデルや子役として働いた。同世代のライアン・クーグラー監督は映画学校の学生のころから、ドラマの脇役としてテレビに出るジョーダンを見て、「不完全な人物を、愛すべき存在として演じられる役者」として高く評価していたという。
後にデビュー作となる「フルートベール駅で」の準備に入ったクーグラー監督は、脚本を書いている段階から「主役はジョーダン」と決めていた。2012年、初対面の喫茶店で脚本を渡し、出演をオファー。これがジョーダンにとって初主演となった。低予算ながら高い評価を受け、ジョーダン個人も米映画評議会の飛躍賞やゴッサム賞の新進賞などを受賞。
以降、クーグラー作品の常連となり、「クリード」「ブラックパンサー」シリーズで大スターになった。オスカー・ノミネートは今回が初。
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・ワシントン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・米南東部批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ジョージア批評家賞
-
ティモシー・シャラメ
「マーティ・シュプリーム」
※野心あふれる卓球選手役。ジョシュ・サフディ監督特有の、追い詰められた人間の熱量を完璧に体現した。
過去の貴公子的なイメージを完全に封印し、あえて「鼻持ちならない、自己中心的な男」を演じきった。徹底したナルシシズムを押し出し、観客に強い拒絶感を抱かせる。それでも、圧倒的なエネルギーとカリスマ性により、「破滅的な熱狂から目を離せなくなる」という奇妙なトランス状態へと導く。
卓球シーンで見せる俊敏な動きは圧巻。数ヶ月の猛特訓を積み、スイングやフットワークを身に着けたという。卓球台の前で放つ生々しい輝きは、いかに酷い人物であるかを散々見せられた後であっても、抗(あらが)たい魅力として伝わる。
前年の「名もなき者」でボブ・ディランを好演し、主演男優賞レースで先頭を走っていたエイドリアン・ブロディ(ブルータリスト)を猛追。SAGアワード(俳優組合賞)で勝利するも、オスカーでは敗れた。「今度こそ」の期待が膨らむ。
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・ラスベガス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・オースティン批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
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レオナルド・ディカプリオ
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※左翼活動家の役柄。
脱力感のあるコミカル表現で笑わせる。
シリアスとコメディの境界をあいまいにし、「理想主義」の空回りを観客に痛々しく見せる役割を果たした。
後半は、薬物や酒に溺れたジャンキーとしてのダメぶりを体現。ミドルエイジの疲弊感をリアルに感じさせる。
その一方で、娘思いなお父さんぶりが温かい。
過去作「ディパーテッド」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「レヴェナント」等では、精神や肉体の極限状態におかれたキャラを築いてきた。本作では、狂気と正気、真面目とユーモアを滑らかに行き来する均衡力を発揮。「ディカプリオはもはや狂気の縁で“演じる”のではなく、その上で“踊っている”」(英ガーディアン紙のピーター・ブラッドショウ記者)と評されるような熟練のバランス演技で魅せた。(Hitomi AI)
【前哨戦での受賞】
・米映画評議会議(NBR)
・アトランタ批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ダラス批評家賞
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イーサン・ホーク
「ブルー・ムーン」
※作詞家ロレンツ・ハート(Lorenz Hart)を演じた。
細かなタッチや余白を大切にした演技。軽やかな言葉遣いながら、身体的にはやや控えめ・縮んだ感じという対比的な演技設計を採用。
才能あるが自己破壊的で、性的な抑圧もあり、プロとしても人間としても苦悩している複雑な人物像をとらえた。
本来の発声・動き・外見などすべてを変え、別人になりきった。
ロレンツ・ハートはアメリカ音楽史でもっとも重要な作詞家の一人とされ、作曲家リチャード・ロジャースとの名コンビで1920年代から1940年代初頭まで、ブロードウェイ黄金期の礎を築いた人物。
【前哨戦での受賞】
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・ロサンゼルス批評家賞
・ボストン批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・トロント批評家賞
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ヴァグネル・モウラ
「シークレット・エージェント」
※ブラジルの人気俳優。Netflixのドラマ「ナルコス」で麻薬王パブロ・エスコバルを演じたことで有名。
1970年代の軍事政権下のブラジルを舞台に、逃亡中の中年男性を演じた。ゆるやかな進行するドラマの中で、深みの漂う眼差しや身体のわずかな揺れなどで緊張感を表現。
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 男優賞
・ニューヨーク批評家賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
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※歴代の主演男優賞→
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主演女優賞
| 部門 |
主演女優賞 |
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ノミネート
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ジェシー・バックリー
「ハムネット」
※シェイクスピアの妻アグネスを演じた。
野性味にあふれ、本能で生きる女性としての力強さを全身から放つキャラクター像が、冒頭から全開。「匂い」や「風の音」で世界を感じているような鋭さが、スクリーンからにじみでる。
思ったことをはっきり言う勝気ぶりも自然体そのもの。自分の言葉で世界と対峙し、土地に深く根差して生き抜こうとする姿は、都会的な夫ウィリアム(ポール・メスカル)との対比を際立たせる。
そして、家族に不幸が訪れた時の感情の爆発は圧巻。その後の空っぽになったような姿も、観客の心をつかんだ。
監督のクロエ・ジャオは、原作を最初に読んだとき「アグネス役はジェシー・バックリーしかいない」と直感。すぐに連絡をとった。バックリーから前向きな返事をもらえたことが、監督を引き受ける決断につながったという。
説明的なシーンやセリフを省き、観客の感性や知性に委ねるのがジャオ監督の基本スタンス。主役のバックリーが本作の世界観に完全に溶け込んだことで、「言語化されない監督の意図」が見る側に伝わりやすくなった。
過去のオスカーでは、2022年に「ロスト・ドーター」で助演女優賞ノミネート。アイルランド出身。1989年生まれ。
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・ワシントン批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・フェニックス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・米南東部批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
・サンディエゴ批評家賞(タイ)
・英国批評家賞
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ローズ・バーン
「If I Had Legs I'd Kick You」
「病気の娘の看病」「ストレスフルな仕事」「自宅の損壊」といった難題に対処できず、精神が摩耗していく母親を演じた。顔のアップのシーンが長く続くなかで、表情の痙攣などで爆発寸前の危うさを描き出した。
かなり身勝手で、嫌悪感を与えるキャラクター像だが、欠陥を正当化せず、開き直って醜態を晒す演技に徹したことで、「多くの俳優が陥る『観客に好かれたい』という誘惑を完璧に断ち切った」(英ガーディアン紙)などと批評家に評価された。
オーストラリア出身。「ブライズメイズ」「ネイバーズ」などのコメディ映画で有名。
【前哨戦での受賞】
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・米映画評議会議(NBR)
・ボストン批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ダラス批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・サンディエゴ批評家賞(タイ)
・トロント批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
・ベルリン国際映画祭 主演俳優賞
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レナータ・ラインスヴァ
「センチメンタル・バリュー」
ダークで、鋭利で、かつ壊れそうな繊細さを見事に体現した。
父親(ステラン・スカルスガルド)に対して、「嫌悪感」と「認められたい渇望」という相反する感情を抱く役柄。その複雑な心理状態が、切実に伝わる。
精神的な不安定ぶりも巧みで、いつ崩れるか分からないような危うさを見せる。
一方で、演劇の舞台に立った時のシーンなどで放つカリスマ性が華やかで、そのスイッチの切り替えが凄い。
同じヨアキム・トリアー監督の「わたしは最悪。」(2021年)で世界的に大ブレイクし、英国アカデミー賞の主演女優賞ノミネート。1987年ノルウェー生まれ。
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エマ・ストーン
「ブゴニア」
カリスマ的なCEOとしての自信に満ちた姿から、陰謀論者に責められるときの痛々しい姿まで、その感情の機微を的確に表現している点が称賛された。「結局、どんな人物なのか」という疑問を、観客に抱かせ続ける絶妙さが光る。
2度目のオスカーに輝いた「哀れなるものたち」では、生まれたての子供のような純粋さと力強い好奇心を「目」で表現していた。今作では、危機下での恐怖感や、それでも失われない主人公の洞察力、計算力、コミュニケーション力といった生存スキルを、再びあの目力で見事に表現した。
エリート経営者としてオフィスを闊歩するシーンも鮮烈。ヨガや格闘技もうまい。
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ケイト・ハドソン
「ソング・サング・ブルー」
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※歴代の主演女優賞→
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助演男優賞
| 部門 |
助演男優賞 |
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ノミネート
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ステラン・スカルスガルド
「センチメンタル・バリュー」
疎遠だった娘たちと対峙する父親を演じた。かつて名声を得たベテラン映画監督という設定。
普段はあまり感情を表に出さず、むしろ冷淡さが目立つ人物像だが、時折見せる思慮深さ、優しさ、茶目っ気が絶妙で、観客の共感を静かに手繰り寄せる。
映像作家として時代の潮流に取り残された焦燥と、それでも手放せないクリエイターとしての矜持(きょうじ)を、「頑固な老人」というステレオタイプに陥ることなく、生々しい実存感を伴って具現化した。
主要キャスト4人による息を呑むような演技の応酬において、重鎮らしい「アンカー(錨)」としての役割を果たし、美しいアンサンブルを完遂へと導く。
スウェーデン出身のベテラン。世界的な名脇役として活躍してきた。ハリウッド映画では「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ、「アベンジャーズ」「マンマ・ミーア」「ドラゴン・タトゥーの女」などの大作に出演。近年では「デューン 砂の惑星」シリーズの変態悪役(ハルコンネン男爵)でおなじみ。HBOの傑作ドラマ「チェルノブイリ」(2019年)でエミー賞の助演男優賞(リミテッド・シリーズ部門)ノミネート。1951年生まれ。
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞
・ボストン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ダラス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
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ショーン・ペン
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※ディカプリオ氏演じる主人公と対峙する悪役。とにかく狂気的で不気味。差別主義者ぶりや変態男ぶりを滑稽かつ大げさに演じつつ、屈折した内面や脆弱性を丁寧に表現した。近年のハリウッド作品の中でも際立つヴィラン造形との高評価も。
過去2度、主演男優賞を受賞(「ミスティック・リバー」「ミルク」)。その前にも3回の主演ノミネートという輝かしいオスカー歴を誇る。ただ、ここ16年間はノミネートから遠ざかっていた。
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・英国アカデミー賞
・セントルイス批評家賞
・フロリダ批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・英国批評家賞
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デルロイ・リンドー
「罪人たち」
大ベテランだが、今回が初のノミネート。
米国史の暗部をえぐる本作において、黒人コミュニティの「語り部」として破格の味わい深さを発揮した。
序盤から路上パフォーマーとして登場する。その名は「デルタ・スリム」。いい感じの酔っ払いおじいちゃんぶりをコミカルに表現しつつ、「大物感」を存分に漂わせる。即興感が漂うハーモニカ演奏ぶりも魅力的。雑談の中で過酷な人生経験を吐露する場面は見どころで、本作の重みを決定づけている。
1952年、英国生まれ。ジャマイカ移民の息子。16歳で母親と米国移住。
続き▼
演劇学校を出た後、舞台劇でキャリアを重ねた。1990年代から映画に進出し、スパイク・リー監督「マルコムX」(1992年)のギャング役で注目を集める。「ゲット・ショーティ」「サイダーハウス・ルール」などの名脇役として名を馳せた。
再び大きな脚光を浴びたのがスパイク・リー監督のNetflix映画「ザ・ファイブ・ブラッズ」(2020年)。ベトナム戦争の元兵士と、現役時代の兵士を熱演。ニューヨーク批評家賞など有力などで主演男優賞を受賞。しかし、オスカーにはノミネートされず、一部の批評家たちが激怒した。
【前哨戦での受賞】
・テキサス北部批評家賞
・ユタ批評家賞
・ポートランド批評家賞
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ベニシオ・デル・トロ
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※空手の指導者役。「センセイ」と呼ばれ、生徒だけでなく、地域のラテンコミュニティのリーダー格として慕われる存在。さりげないカリスマ性や賢者ぶりをユーモラスに表現。ひょうひょうとした立ち振る舞いながら、脳に確かに響く名セリフを連発する。ふとした瞬間にこぼれる笑顔もあいまって、とにかくチャーミング。特異なキャラクターが多い本作に親近感をもたせてくれる役目でもある。
「トラフィック」(2000年)で文句なしの助演男優賞に輝いたときを想起させる、四半世紀ぶりの超絶ハマリ役。
【前哨戦での受賞】
・ニューヨーク批評家賞
・シカゴ批評家賞
・米映画評議会議(NBR)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・ワシントン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・オースティン批評家賞
・フェニックス批評家賞
・米南東部批評家賞
・トロント批評家賞
・ジョージア批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
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ジェイコブ・エロルディ
「フランケンシュタイン」
【前哨戦での受賞】
・クリティック・チョイス賞
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※歴代の助演男優賞→
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助演女優賞
| 部門 |
助演女優賞 |
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ノミネート
|
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エイミー・マディガン
「ウェポンズ」
40年ぶりのノミネート。
大ヒットした異色ホラーの立役者。「グラディスおばさん」という強い個性を持った役柄を演じた。オレンジのウィッグ、はみ出した口紅、大きな眼鏡といった外見は一見、滑稽なピエロのようだったが、決しておちゃらけているわけではなく、独自の論理や大胆な行動力を備えた女性として実在感を発揮した。哀れさ、滑稽さ、不気味さなどがリアルに同居。セリフの言い回しもベテランらしい巧みさが光り、批評家からは「オペラ的で古典的なスケール感があふれる名演」などと称賛された。
1980年代半ばからハリウッドの王道で活躍。オスカー作品賞ノミネート「プレイス・イン・ザ・ハート」で罪悪感に悩む南部の女性教師を演じ、「ストリート・オブ・ファイヤー」ではタフな元兵士を演じた。「燃えてふたたび」で1986年に助演女優賞にノミネートされて以来、オスカーには縁がなかった。
【前哨戦での受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・クリティック・チョイス賞
・ニューヨーク批評家賞
・ボストン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・米南東部批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
・テキサス北部批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ニュー・ジャージー批評家賞
・プエルトリコ批評家賞
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ウンミ・モサク
「罪人たち」
子供を失った悲しみを抱えながらも、マイケル・B・ジョーダン演じる夫を精神的に支える聖母のような慈愛を見せる。その母性には「演技を超えた真実味がある」と称賛された。なお、撮影時、自身が出産後7ヶ月だった。
冒頭のナレーションも担当。その呪術や信仰に関する言葉は、作品に深い神秘性を与える。低く、深く響く声は、観客を異世界へと誘う「オラクル(神託者)」のようだと評された。
1986年にナイジェリアで生まれ、1歳のとき家族で英国に移住した。
続き▼
3人姉妹の末っ子。
両親はいずれも大学教授という学術一家。
母親が英マンチェスター大学で化学の博士号を取得する機会を得たことが、移住のきっかけだった。
母は後に人材紹介・派遣業のビジネスを立ち上げる。
姉もやがて学者(犯罪学)になった。
9歳の時に劇場でミュージカル「アニー」を見て感動し、地元の合唱団に入団。高校卒業後は大学で数学を勉強する予定だったが、アニーの感動が忘れられず、名門「王立演劇学校」(演劇コース)に進学する。2007年に卒業後、テレビや独立系映画で脇役として活動。2016年に英BBCの1話完結ドラマ「Damilola, Our Loved Boy」で母親役を演じ、英国アカデミー賞の助演女優賞(テレビ部門)を受賞した。
2020年、イギリスのホラー映画「獣の棲む家」で初の主演を務める。これが「罪人たち」の構想を練っていたライアン・クーグラーの目に留まった。クーグラーから「『罪人たち』は僕たちのルーツとアイデンティティの物語だ。君の声がその道標になる」という熱烈な手紙を受け取り、出演を快諾したという。
【前哨戦での受賞】
・英国アカデミー賞
・ミシガン批評家賞
・英国批評家賞
・ゴッサム賞
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テヤナ・テイラー
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
※「革命闘士」を名乗るテロリスト役。強烈な演技で前半を盛り上げる。獰猛かつ無慈悲に暴れ回るシーンや、敵の幹部をサディスティックに挑発する場面などが印象的。
【前哨戦での受賞】
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ゴールデングローブ賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
・ワシントン批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ダラス批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
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インガ・イブスドッテ・リレオス
「センチメンタル・バリュー」
※家族劇における娘(次女)の役を演じた。家庭から離れていった父親(ステラン・スカルスガルド)と、それを恨む長女(レナータ・ラインスヴァ)の間に立ち、調停役(バランサー)のような役割を担う。自身の感情を静かに抑制する演技が光る。
あくまで「一般の人」に見えるところが高評価のポイント。主要キャスト4人のうち、他の3人は表現者(俳優や映画監督)という設定で、唯一の家庭人として登場する。その「普通ぶり」が、作品のリアリズムを一段と格上げするのに貢献。多くの批評家から「光り輝く自然体(Luminous Naturalism)」などと称えられた。
1989年生まれのノルウェー。Netflix「ビューティフル・ライフ」(2023年、デンマーク)などに出演。
【前哨戦での受賞】
・米映画評議会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー)
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エル・ファニング
「センチメンタル・バリュー」
北欧の映画監督とその娘たちが織りなす家族劇に、「人気ハリウッド俳優」という設定で静かな波乱をもたらす役柄を演じた。内省的な空気感の中に「アメリカ的」なエネルギーとダイナミズムを持ち込み、単なる華やかさを超えて世界観の広がりをもたらした。
「スター性」と「真面目な職人気質」を融合させたキャラ造形が素晴らしい。圧倒的なオーラを放ちながらも、仕事に対して真摯なプロとしての顔を見せる。自分が関わる芸術に対して倫理的な責任を持とうとする表現者としての苦悩を演じ切ったことで、物語に独特な緊張感が加わった。
前年の作品賞ノミネート「名もなき者」でボブ・ディランの恋人役を演じた。自身は今回が初のオスカーノミネート。1998年、米南部ジョージア州生まれ。姉は、有名子役ダコタ・ファニング(宇宙戦争)。
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※歴代の助演女優賞→
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脚本賞
| 部門 |
脚本賞 |
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ノミネート
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「罪人たち」
脚本:ライアン・クーグラー
「1930年代の南部ジム・クロウ法下の社会派ドラマ」×「サザン・ゴシック・ホラー」×「吸血鬼伝説」×「ミュージカル」という、一歩間違えれば空中分解しかねない要素を有機的に融合させた珠玉の台本。あまりに重く、直視しがたい「黒人差別・黒人搾取の歴史的事実」を、ホラーという超自然的なメタファー(暗喩)に変換することで、全人類・全世代に届く「普遍的な恐怖と勇気の物語」へと書き換えた。その大胆な構造と、知的で緻密なディテール設計が光る。
本作の脚本を執筆する際、「これが自分にとって最後の映画になるかもしれない」という覚悟で、自身のルーツ、歴史観、そしてジャンル映画への愛をすべて注ぎ込んだという。
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「マーティ・シュプリーム」
脚本:ロナルド・ブロンスタイン&ジョシュ・サフディ
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「センチメンタル・バリュー」
脚本:エスキル・フォクト(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )、ヨアキム・トリアー
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「シンプル・アクシデント/偶然」
脚本:ジャファール・パナヒ
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「ブルー・ムーン」
脚本:ロバート・カプロウ
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※歴代の脚本賞→
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脚色賞
| 部門 |
ノミネート |
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脚色賞ノミネート
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「ワン・バトル・アフター・アナザー」
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
現代アメリカを代表する小説家の一人、トマス・ピンチョンの「ヴァインランド」(1990年刊)から着想を得た。
小説は、1980年代を生きる父娘の物語を通じて、1960年代の政治闘争を振り返る内容だが、本作では、複雑な政治的事情を「背景」へと退かせ、普遍的な「父と娘の絆」を物語の軸に据えた。同時に、2020年代の分断されたアメリカの「寓話」へと転換した。
前半で一つ一つのカットに「面白味」を散りばめることで観客を惹きつけ、中盤までのダイアログや何気ないユーモアの一つ一つに、伏線やキャラクターの厚みをしのびこませる。終盤に向けてそれらの「点」を一気に「線」として繋ぎ合わせ、圧倒的なカタルシスへと導く。
続き▼
フレッシュさが満ち溢れていた「ブギーナイツ」はともかく、これまでのポール・トーマス・アンダーソン(PTA)の作品には、意味深な長台詞や「間」をたっぷり持たせた演出が、結果として「もったいぶっている」印象を与える面があった。「インヒアレント・ヴァイス」や「リコリス・ピザ」には、物語がどこへ向かっているのか確信が持てないまま、ただその場の空気に浸ることを求める「彷徨い」のような感覚もあった。
しかし、今作は、後半のスペクタクルに向けて明確な「熱量の勾配」が設計されており、脚本が「作家の気まぐれ」ではなく「映画全体のカタルシス」のために奉仕している。この構造の変化が、幅広いの一般観客を「PTA疲れ」から解放し、物語への「没入」を可能にした面があるかも知れない。
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「ハムネット」
脚本:マギー・オファーレル(兼原作者)&クロエ・ジャオ
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「トレイン・ドリームズ」
脚本:クリント・ベントリー&グレッグ・クウィダー
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「ブゴニア」
脚本:ウィル・トレイシー
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「フランケンシュタイン」
脚本:ギレルモ・デル・トロ
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※歴代の脚色賞→
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ジャンル別映画3部門
アニメ賞 、国際映画賞、ドキュメンタリー賞
アニメ賞
| 部門 |
アニメ賞 |
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アニメ賞ノミネート
|
-
「K-Popガールズ!デーモン・ハンターズ」
(Netflix)
Netflixの英語映画で史上1位の視聴回数を記録した大当たり作品。
『スパイダーマン:スパイダーバース』でアニメーションの歴史を塗り替えたソニー・ピクチャーズ アニメーションが制作。K-POPのミュージックビデオのようなスタイリッシュな視覚と、「セーラームーン」に代表される1990年代の日本の魔法少女アニメのキュートさが融合し、世界中の視聴者を釘付けにした。
一つ一つの動きが流動的で、各キャラクターの表情やポージングが強調されており、セリフや感情が強く伝わってくる。風変わりなデザインやドリーミーな色彩も魅力。
特に各音楽シークエンスは、独自のセンスに溢れている。米ビルボード・チャートで首位を獲得した「Golden」などキャッチーな曲が次々と流れ、映画の付随物ではなく、物語の核として音楽が最大限に機能する。
個性を消して完璧を求められる業界のプレッシャーや、ファンの期待に応えようとする葛藤など、アイドルの裏側にある人間ドラマも共感も呼んだ。
続編やリメイクが続く映画界において、全く新しいキャラクターと設定による「完全オリジナル」の成功事例になったことも、オスカー的に大きなプラス材料となった。
監督:マギー・カン(韓国出身のカナダ人)&クリス・アップルハンズ
※マギー・カン氏は韓国出身で、本作が監督デビュー作。原案を考案し、ソニー・ピクチャーズ・アニメーションに提案した立役者である。故郷の音楽(K-Pop)への深い愛着を込めてストーリーを創造したという。
続き▼
ソウルで生まれのカンは、5歳のときに両親と共にカナダに移住。父親は熱心な映画ファンで、VHSやDVDなどの映画ソフト5万本以上を買い集め、娘のマギーにチャップリン、黒澤明、キューブリックなどの名作を紹介したという。
幼少期から自分で物語をつくってイラストを描くのが好きだったこともあり、アニメ学で有名な「シェリダン・カレッジ」に進学。在学中に積み上げたポートフォリオが評価され、米ドリームワークス・アニメーションに就職する。
「マダガスカル2」などで絵コンテ作家として活躍した後、イルミネーションやワーナーアニメなどでキャリアを重ね、「カンフー・パンダ3」(2016年)、「レゴニンジャゴー ザ・ムービー」(2017年)等の脚本づくりにも参加。業界から高い評価を得た。
2018年に本作のコンセプトを思いつき、プロジェクトのリーダーとして企画・制作を引っ張った。
公開日:2025年6月20日(Netflix配信)
※配信スタートに先立ち、ニューヨークとカリフォルニアの映画館で限定的な劇場公開を行い、アカデミー賞の選考基準を満たした。その後、配信での大成功を受けて、2025年8月23日と24日の週末、米国、カナダ、オーストラリアなどで2日間限定の劇場公開(声出し上映)が行われ、大ヒットを記録した。
製作国:アメリカ
制作会社:ソニー・ピクチャーズ・アニメーション
言語:英語
【評点】
| メタクリティック |
77点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
96%
最新→ |
| IMDB |
7.6
最新→ |
【製作費】
1億ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<挿入歌「ゴールデン」▼>
<カン監督インタビュー▼>
<両監督インタビュー▼>
-
「ズートピア2」
(ディズニー)
【評点】
| メタクリティック |
73点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
91%
最新→ |
| IMDB |
7.7
最新→ |
<予告編▼>
-
「アルコ」
(フランス)
※アヌシー国際アニメーション映画祭2025 最高賞(クリスタル賞)
【評点】
| メタクリティック |
75点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
93%
最新→ |
| IMDB |
7.6
最新→ |
<予告編▼>
-
「アメリと雨の物語」
(フランス)
色使いや世界観が、幼児期の視覚体験や感覚的な記憶を表現するために工夫されており、「視線が世界を捉える絵画的手法」とされる。
主人公のアメリは、ベルギー人の家族のもと、日本で暮らしている設定。 日本の文化・風景(例:池の鯉、霧、雨、幼児期の感覚)などが物語に登場する。「言語・文化・記憶」というテーマを抽象的かつ感覚的に描いている点が注目されている。
公開日:2026年3月20日(日本)
言語:フランス語
長さ:1時間17分
※アヌシー国際アニメーション映画祭2025 観客賞
【評点】
| メタクリティック |
80点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
98%
最新→ |
| IMDB |
7.7
最新→ |
<予告編▼>
-
「星つなぎのエリオ」
(ピクサー)
【評点】
| メタクリティック |
66点
最新→ |
| ロッテン・トマト |
83%
最新→ |
| IMDB |
6.7
最新→ |
<予告編▼>
|
※歴代のアニメ賞→
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国際映画賞
※歴代の国際映画賞→
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ドキュメンタリー賞
| 部門 |
ドキュメンタリー賞 |
|
ノミネート
|
-
「パーフェクト・ネイバー:正当防衛法はどこへ向かうのか」
(Netflix)
【配信:ネトフリ】
※フロリダ州で起きた隣人トラブルの顛末録。警察官のボディ・カメラ(身体装着型カメラ)映像など、第三者が撮影した素材や公的機関の記録を編集・構成して映画に仕立てた。再現映像やナレーションはなし。製作陣は「素材をつなぐ」作業ではなく「観客に事件の流れと社会的文脈を体験させる」設計にこだわったという。強烈な没入感と緊張感が高い評価を得た。
「正当防衛」の範囲の過度な拡大といった米社会の制度上の問題点を浮き彫りにする。
-
「あかるい光の中で」
-
「アラバマ・ソリューション」
(HBO)
※全米で最も過酷と言われるアラバマ州の刑務所の汚職や虐待、隠蔽工作を告発する。受刑者たちが密かに施設内に持ち込んだスマホで撮影した内部映像がふんだんに使われている。
-
「ミスター・ノーバディ・アゲインスト・プーチン」
※ロシアの地方に住む一人の小学校教師が、ウクライナ侵攻後に変貌していく教育現場を命がけで隠し撮りし、亡命するまでを記録した。
-
「Cutting Through Rocks」
|
※歴代のドキュメンタリー賞→
|
作品賞 |
監督賞 |
主演 |
助演 |
アニメ |
| クリティクス・チョイス賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
|
【男優】 ジェイコブ・エロルディ (リアル・ペイン)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| ニューヨーク批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
It Was Just an Accident |
【男優】 ヴァグネル・モウラ (シークレット・エージェント)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| ロサンゼルス批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
イーサン・ホーク (ブルー・ムーン)
|
ステラン・スカルスガルド (センチメンタル・バリュー)
テヤナ・テイラー (ワン・バトル・アフター・アナザー)
|
アメリと雨の物語 |
|
| シカゴ批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 テヤナ・テイラー (ワン・バトル)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| 英国アカデミー賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ロバート・アラマヨ (I Swear)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
|
【男優】 ショーン・ペン (ワン・バトル・アフター・アナザー)
【女優】 ウンミ・モサク (罪人たち)
|
ズートピア2 |
|
| 米映画評議会(NBR) |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 レオナルド・ディカプリオ (ワン・バトル)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 インガ・イブスドッテ・リレオス (センチメンタル・バリュー)
|
アルコ |
|
| 全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 イーサン・ホーク (ブルー・ムーン)
【女優】 キャスリーン・チャルファント (Familiar Touch)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 テヤナ・テイラー (ワン・バトル)
|
|
|
| テキサス北部批評家賞 |
罪人たち |
罪人たち |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
|
【男優】 デルロイ・リンドー (罪人たち)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| ラスベガス批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 アマンダ・サイフリッド (The Testament of Ann Lee)
|
【男優】 ステラン・スカルスガルド (センチメンタル・バリュー)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
|
ズートピア2 |
|
| フィラデルフィア批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 マイケル・B・ジョーダン (罪人たち)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 テヤナ・テイラー (ワン・バトル)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| ジョージア批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| カンザスシティ批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 マイケル・B・ジョーダン (罪人たち)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
|
【男優】 ショーン・ペン (ワン・バトル)
【女優】 ウェポンズ (エイミー・マディガン)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| ダラス批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 レオナルド・ディカプリオ (ワン・バトル)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
|
【男優】 ステラン・スカルスガルド (センチメンタル・バリュー)
【女優】 テヤナ・テイラー (ワン・バトル)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| オースティン批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| ボストン批評家賞 |
罪人たち |
罪人たち |
【男優】 イーサン・ホーク (ブルー・ムーン)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
|
【男優】 ステラン・スカルスガルド (センチメンタル・バリュー)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
|
エンドレス・クッキー |
|
| ワシントン批評家賞 |
罪人たち |
罪人たち |
【男優】 マイケル・B・ジョーダン (罪人たち)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 テヤナ・テイラー (ワン・バトル)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| ミシガン批評家賞 |
罪人たち |
罪人たち |
【男優】 マイケル・B・ジョーダン (罪人たち)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
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【男優】 マイルズ・ケイトン (罪人たち)
【女優】 ウンミ・モサク (罪人たち)
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Kポップ・デーモン・ハンターズ |
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| サンディエゴ批評家賞 |
罪人たち |
罪人たち |
【男優】 マイケル・B・ジョーダン (罪人たち)
【女優(タイ)】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
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【男優】 ステラン・スカルスガルド (センチメンタル・バリュー)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
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Kポップ・デーモン・ハンターズ |
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| サンフランシスコ批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 イーサン・ホーク (ブルー・ムーン)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
|
Kポップ・デーモン・ハンターズ |
|
| アトランタ批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 レオナルド・ディカプリオ (ワン・バトル)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
|
【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
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Kポップ・デーモン・ハンターズ |
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| ミネソタ批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
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【男優】 ステラン・スカルスガルド (センチメンタル・バリュー)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
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Kポップ・デーモン・ハンターズ |
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| ニュージャージー批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
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【男優】 ステラン・スカルスガルド (センチメンタル・バリュー)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
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Kポップ・デーモン・ハンターズ |
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| フェニックス批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
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【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
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Kポップ・デーモン・ハンターズ |
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| セントルイス批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 レオナルド・ディカプリオ (ワン・バトル)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
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【男優】 ショーン・ペン (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
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ズートピア2 |
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| 南東部批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
罪人たち |
【男優】 マイケル・B・ジョーダン (罪人たち)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
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【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
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Kポップ・デーモン・ハンターズ |
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| フロリダ批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
しあわせな選択 |
【男優】 ジョシュ・オコナー (マスターマインド)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
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【男優】 ショーン・ペン (ワン・バトル)
【女優】 テヤナ・テイラー (ワン・バトル)
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アメリと雨の物語 |
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| トロント批評家賞 |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
イーサン・ホーク (ブルー・ムーン)
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ベニシオ・デル・トロ(ワン・バトル)
ニーナ・ホス (ヘッダ)
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エンドレス・クッキー |
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| 英国批評家賞 |
罪人たち |
ワン・バトル・アフター・アナザー |
【男優】 マイケル・B・ジョーダン (罪人たち)
【女優】 ジェシー・バックリー (ハムネット)
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【男優】 ショーン・ペン (ワン・バトル)
【女優】 ウンミ・モサク (罪人たち)
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| プエルトリコ批評家賞 |
罪人たち |
罪人たち |
【男優】 ティモシー・シャラメ (マーティ・シュプリーム)
【女優】 ローズ・バーン (If I Had Legs I'd Kick You)
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【男優】 ベニシオ・デル・トロ (ワン・バトル)
【女優】 エイミー・マディガン (ウェポンズ)
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Kポップ・デーモン・ハンターズ |
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