作品賞の有力度ランキング

作品賞の有力度ランキングです。既に公開された作品の中から予想(映画祭での上映含む)。


順位 有力作品
1位 「アノーラ(Anora)」
アノーラ

「フロリダ・プロジェクト」のショーン・ベイカー監督のコメディ系ドラマ。 ニューヨークの娼婦が、ロシアの財閥一族の息子と恋に堕ちる。 「プリティウーマン」(ジュリア・ロバーツ主演)の現代版・リアル版と呼ばれる。

仏カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲得。 アメリカ映画としては、13年ぶりの快挙だった。 ライバルの仏製「エミリア・ペレス」にも勝利した。

批評家からの評価は最高レベル。 支持派の熱量が高いうえ、 幅広い層にウケやすい。 好テンポで没入しやすく、1回の鑑賞で消化しやすい点もプラス。

作品賞を獲るうえでの難関は、娼婦が主人公である点。 性的な話題や描写が多い。 テーマの軽さも弱点か。


【ノミネート有力部門】
ノミネート有力部門 作品賞
監督賞
主演女優賞
 マイキー・マディソン
脚本賞
編集賞


 監督:ショーン・ベイカー
 主演:マイキー・マディソン
 脚本:ショーン・ベイカー
 製作国:アメリカ
 長さ:2時間18分


【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 パルムドール(最高賞)

【評点】
ロッテン・トマト 97%
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IMDB 7.7
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メタクリティック 90%
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2位 「ブルータリスト(The Brutalist)
ブルータリスト

歴史ドラマ。ユダヤ系ハンガリー人の建築家が、ナチスによる大虐殺(ホロコースト)を生き延びた後、米国に移住する。アメリカン・ドリームがテーマ。3時間35分の長尺。

新鋭ブラディ・コーベット監督(公開時36歳)の長編3作目。 7年という歳月を費やした渾身の一作。 ベネチア国際映画祭で絶賛され、監督賞を受賞した。

批評家による評価は「アノーラ」と互角の最高水準。 娯楽性と大衆性はアノーラより劣るが、芸術性では勝るとの評価が多い。 斬新で独創的な映像世界を築き上げた技術の高さが称賛されている。

エンタメ性重視派にどれだけ受け入れられるかが、 作品賞レースのカギとなりそうだ。

演技も称賛された。 主演のエイドリアン・ブロディが2度目の主演男優賞なるか、注目されている。

コーベット監督

ブラディ・コーベット監督は俳優出身。1988年8月生まれ(公開時36歳)。米南部アリゾナ州の母子家庭で育った。12歳から子役俳優としてテレビ出演。「サーティーン」(2003年)で映画デビューした。 2015年の独立系ミステリー映画「シークレット・オブ・モンスター」で映画監督デビュー。低予算ながら、評論家から高い評価を得た。2作目の「ポップスター」では、ナタリー・ポートマンを主演に起用。再び玄人筋に称賛された。


【ノミネート有力部門】
ノミネート有力部門 作品賞
監督賞
主演男優賞
 エイドリアン・ブロディ
助演男優賞
 ガイ・ピアース
助演女優賞
 フェリシティ・ジョーンズ
作曲賞
撮影賞
編集賞
美術賞


 監督:ブラディ・コーベット
 出演:エイドリアン・ブロディほか
 脚本:ブラディ・コーベット、モナ・ファストボールド
 配給:フォース(米国内)
 長さ:3時間35分


【評点】
ロッテン・トマト 97%
最新→
IMDB 8.1
最新→
メタクリティック 89%
最新→

3位 「Sing Sing(シンシン)」
シンシン

刑務所内の劇団の物語。囚人たちが芝居に挑戦する。

製作費も公開規模も極めて小ぶりだが、骨太の感動作として絶賛された。社会性・現代性を備えており、オスカー有力作として浮上した。

凶悪事件の受験者が収容される「シンシン刑務所」で起きた1996年の出来事から着想を得た。実際の劇団員だった元囚人も出演。アンサンブル演技が高い評価を得た。


【ノミネート有力部門】
ノミネート有力部門 作品賞
監督賞
主演男優賞
 コールマン・ドミンゴ
助演男優賞
 クラレンス・マクリン=実際に囚人だった。
脚色賞

経緯

グレッグ・クウィダー&クリント・ベントリー

本作は、監督グレッグ・クウィダー(39歳)と脚本家クリント・ベントリー(38歳)によって推進された。2人は刑務所内の劇団の物語に惹きつけられ、リハーサルや発表会に同行。劇団の出身者らにも丹念に取材しながら脚本を書き上げた。

全員が同じ日給

本作には、全てのキャスト(出演者)とクルーが、同じ日給で参加した。助手、脇役から監督、主演俳優にいたるまで、全員が同一基準の賃金を受け取る。そのうえで、映画の利益から配分を受け取る。

この方式は、クウィダーとベントリーのコンビが、前作「ジョッキー」で初めて挑戦した仕組みだった。本作でそれを進化させた。初期費用が抑えられたことで、「ダム・マネー」などの実績がある制作会社「ブラック・ベア社」が、全額出資で合意した。

A24が買い取る

2023年秋のトロント国際映画祭で特別上映されて好評を博すと、すかさずA24が配給権を買い取った。2024年3月のサウス・バイ・サウスウエスト映画祭(テキサス州)でも好評を博した。

アンサンブル演技に絶賛の声

「ラスティン」で主演男優賞にノミネートされたコールマン・ドミンゴが、劇団プログラムの創設メンバーを演じた。

劇団の実際の出身者が出演者の85%を占め、それぞれ自身のキャラクターを演じている。アンサンブル演技が絶賛された。



 監督:グレッグ・クウィダー
 主演:コールマン・ドミンゴ
 助演:クラレンス・マクリンほか
 脚本:クウィダー&ベントリー
 プロデューサー:クウィダー&ベントリーほか

 公開日:2024年7月12日(米国)
 配給:A24
 長さ:1時間45分


【評点】
ロッテン・トマト 98%
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IMDB 8.3
最新→
メタクリティック 84%
最新→


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<SIFF2024のインタビュー▼>

4位 「デューン 砂の惑星 2」
デューン 砂の惑星 2

最多ノミネート、最多受賞の最有力

最多ノミネート有力。最多受賞を予想する声も多い。前作「パート1」は2022年のアカデミー賞で年度最多の6部門を獲ったが、今回、それを上回るかどうかが注目される。

米国で大ヒット。世界的にも、日本以外の国で商業的な大成功を収めた。レビュー評価も、評論家と一般観客ともに最高レベル。とりわけ映像・撮影技術面での評価は極めて高い。

作品賞レースはノミネート入りは確実と見られるが、受賞に関しては続編シリーズの途中である点で不利。


【ノミネート有力部門】
ノミネート有力部門 作品賞
監督賞
主演男優賞
 ティモシー・シャラメ
助演男優賞
 オースティン・バトラー、ハビエル・バルデム
撮影賞
視覚効果賞
作曲賞
 ハンス・ジマー
編集賞
音響賞
衣装デザイン賞
美術賞
メイク&ヘア賞

荘厳さ

本年度のオスカー有力作の中で、スケールの大きさは抜群。荘厳さがあり、オスカー的風格も備えている。

技術部門では圧倒的な強さか。作品賞争いに関しては、続編であることに加えて、SF作品だという点で不利。

娯楽性、物語性が高まる

前作「パート1」と比べて、娯楽性と物語性が格段とアップした。前作はお膳立てをするのに時間をとられ、ストーリーがあまり進展しなかった。

父を失った主人公が、砂漠の民と共に戦いに挑む本作では、物語がテンポ良く動く。味わい深いドラマ。アクションの見せ場も急増した。

「オッペンハイマー」のクリストファー・ノーラン監督は「現代版のスター・ウォーズ帝国の逆襲」(=初期スター・ウォーズ3部作の2作目)と称賛した。

上半期で唯一の有力作

今年度オスカーレースは、2024年秋口まで「不作」だった。ヒット作は純娯楽作かアニメで占められ、商業的な成功と、批評的な成功の両方を兼ね備えたのは「デューン 砂の惑星2」だけだった。

前年の上半期は「オッペンハイマー」と「バービー」が商業・評論の両面で大成功。映画祭で先行上映された「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」も、批評家に大絶賛され、有力候補として期待が膨らんだ。

前々年も「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」「トップガン マーヴェリック」が上半期で大成功し、上半期の時点で有力候補として名乗りを挙げていた。

2023年のハリウッドの俳優・脚本家による長期ストライキが、今年度の作品ランナップに影を落としている。

ビルヌーブ監督の歴史的な偉業

原作は、フランク・ハーバートが1960年代に書き始めたSF小説。「スター・ウォーズ」「風の谷のナウシカ」などに多大な影響を与えた傑作として知られる。

伝説の映画監督ホドロフスキーが映像化に向けて壮大な企画を立てたが、頓挫した。1984年にはデビッド・リンチ監督が映画化したものの、評判は芳しくなかった。

ついに、ドゥニ・ビルヌーブ監督が成功へと導いた。SFの歴史の中で偉業である。ビルヌーブ監督が美学が詰め込まれた。

「パート1」が最多受賞を飾った2022年のオスカーでは、ビルヌーブ監督が監督賞ノミネートから外されて、映画ファンから怒りを買った。

役者たちも奮闘

ティモシー・シャラメが大熱演。オースティン・バトラーのサイコ・キラーぶりもすごい。シャラメとバトラーの決闘シーンは見事。

映像世界

本作の見どころの一つが、作り込まれた映像世界。完全に没入できる。鮮烈なイメージにもあふれている。

「IMAX体験」の到達点

パート1では全体の約40%がIMAXカメラで撮影されたが、「2」では全編IMAXカメラでの撮影が実現した。IMAX劇場体験の到達点として称賛された。



 監督:ドゥニ・ビルヌーブ
 主演:ティモシー・シャラメ
 助演:オースティン・バトラー、ハビエル・バルデムほか

 公開日:2024年3月15日(日本)
 配給:ワーナー
 長さ:2時間46分


【評点】
ロッテン・トマト 92%
最新→
IMDB 8.5
最新→
メタクリティック 79%
最新→

【興行収入】
北米:2億8214万ドル
世界:7億1184万ドル
日本:4170万ドル(6億円)
※北米以外でヒットした国:英、独、仏、豪など。韓国でも日本の4倍以上の興収を稼いだ。

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<劇伴▼>

5位 「Conclave(コンクラーベ)」
コンクラーベ

「西部戦線異状なし」で2023年の国際映画賞に輝いたエドワード・ベルガー監督の新作。英・米合作。カトリック教会の権力中枢を舞台とする心理スリラー。亡くなった教皇の後継者を見つける任務を与えられた教会ナンバー2が、前教皇の秘密を知る。


【ノミネート有力部門】
ノミネート有力部門 作品賞
監督賞
主演男優賞
 レイフ・ファインズ
助演男優賞
 スタンリー・トゥッチ
助演女優賞
 イザベラ・ロッセリーニ
脚色賞
作曲賞


 監督:エドワード・ベルガー
 主演:レイフ・ファインズ
 助演:スタンリー・トゥッチ、イザベラ・ロッセリーニほか
 脚本:ピーター・ストローハン

 公開日:2024年11月1日(米国)
 製作国:英米
 配給:フォーカス


【評点】
ロッテン・トマト 96%
最新→
IMDB 7.9
最新→
メタクリティック 80%
最新→


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6位 「エミリア・ペレス」
エミリア・ペレス

ミュージカル。フランスで製作され、北米の配給権をNetflixが取得した。言語はスペイン語。女性弁護士が、メキシコの麻薬組織の幹部の性別適合手術を手助けする。


【ノミネート有力部門】
ノミネート有力部門 作品賞
監督賞
主演女優賞
 カルラ・ソフィア・ガスコン
助演女優賞
 ゾーイ・サルダーニャ
脚本賞
編集賞
メイク&ヘア賞
作曲賞
歌曲賞


 監督:ジャック・オーディアール
 主演:カルラ・ソフィア・ガスコン
 助演:ゾーイ・サルダーニャほか
 脚本:ジャック・オーディアール
 製作国:フランス
 言語:スペイン語
 配給:Netflix(北米)
 長さ:2時間10分


【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 審査員賞

【評点】
ロッテン・トマト 89%
最新→
IMDB 7.3
最新→
メタクリティック 71%
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選考・発表の日程

イベント 日時
主要部門のエントリー申請の期限 2024年11月14日(木)
仮投票の開始 2024年12月9日(月)
仮投票の終了 2024年12月13日(金)
候補作の候補(ショートリスト)発表 2024年12月17日(火)
選考対象となる作品の公開日の期限 2024年12月31日(火)
ノミネート投票開始 2025年1月8日(水)
ノミネート投票終了 2025年1月12日(日)
ノミネート発表 2025年1月17日(金)
最終投票開始 2025年2月11日(火)
最終投票終了 2025年2月18日(火)
授賞式(結果発表) 2025年3月3日(月)の昼間(日本時間)