作品賞
インディー映画「アノーラ」大勝利
インディー映画一筋のショーン・ベイカー監督の現代コメディ「アノーラ(Anora)」が大勝利。優れた作家性と深みのある娯楽性を両立させ、メジャースタジオの超大作や重厚な歴史ドラマを打ち破った。
部門
受賞
作品賞
「アノーラ(Anora)」
※作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の5冠
作家性+面白み
ニューヨークのストリッパーが、ロシア財閥一族の放蕩(ほうとう)息子と恋に堕ちる。それを聞いた息子側ファミリーが結婚阻止へと動き、ドタバタ劇に発展する。「フロリダ・プロジェクト」(2017年)など庶民社会のコメディを得意とするベイカー監督の真骨頂。作家性に満ちているが、テンポが良く、気軽に吸収しやすい。会話劇としての魅力もたっぷり。何よりエネルギッシュで、普通に面白い。
カンヌから先頭を走る
賞レースでは、仏カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲得。米国映画として2011年の「ツリー・オブ・ライフ」以来13年ぶりの快挙となった。続くトロント国際映画祭で次点。オスカー前哨戦としての価値が低いゴールデングローブ賞を落としたものの、最も重要なPGA(全米プロデューサー組合賞)とDGA(米監督組合賞)をダブルで制した。クリティック・チョイス賞の受賞スピーチで訴えた「地域の映画館への支持」も共感を呼んだ。
批評家レビュー平均点が驚異の「91」
展開、人物造形、絵作り等がユニークでセンスが良いことなどから批評家がこぞって絶賛。米メタクリティックが集計したレビュー平均点は「91」で、本年度オスカー関連作の中で「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」に次ぐナンバー2。
労働者階級の悲哀
「格差婚」というありがちな設定だが、物語が進むにつれて新鮮味がアップ。風変わりなシンデレラ・ストーリー的ノリがある一方で、労働者階級の悲哀が心にしみる。実直で感情表現豊かなヒロインを生き生きと演じたマイキー・マディソン(主演女優賞)が、最大級の賛辞を集めた。
「重みがない」との声も
とはいえ、オスカー作品賞としては「軽すぎる(重みがない)」との声も出ていた。社会テーマ性が弱め。露骨な性的描写が過剰気味で、とくに前半は「ソフトポルノ」と位置づける人も。娼婦やロシア経済マフィアといった登場人物たちに本質的に共感できないとの反応も出た。
全体のまとまり感
それでも、高い作家性を発揮しつつストーリー全体に「まとまり」があり、エンディングの納得感も高い本作は、俳優&脚本家のストライキの影響でやや貧弱になった本年度ラインナップの中で稀有な存在。リピート鑑賞が容易で、とくに後半部分のダイアログなどは見るたびに味わいが深まりやすいのも強み。
製作費10億円とは思えない良質さ
ベイカー監督(完成時53歳)はこれが長編8作目で、初のオスカーノミネート。過去作と同様、脚本(オリジナル)、配役、編集まで自ら手掛けた。製作費600万ドル(約10億円)の低予算(「コーダ」より安い)ながら、前作(レッド・ロケット)までの粗っぽさがなくなり上質感が増した。マディソンだけでなく、ユーラ・ボリソフ(助演男優賞ノミネート)らマイナーな役者陣の魅力を引き出した演出力も際立つ。
個人4冠を達成し、「インディー映画万歳!」
本作でベイカー監督は個人として一晩で4個のオスカー(作品、監督、脚本、編集)を獲得。個人の単独作での受賞数として新記録を樹立した。4回登壇した授賞式では、最後の作品賞の受賞スピーチを「インディペンデント映画万歳!(Long live independent film!)」と言って締めくくった。
【アノーラ全結果】
受賞部門
作品賞
監督賞
主演女優賞 マイキー・マディソン
脚本賞
編集賞
監督:ショーン・ベイカー
主演:マイキー・マディソン
脚本:ショーン・ベイカー
公開日:2025年2月28日(日本)
製作国:アメリカ
配給:ネオン
長さ:2時間18分
【前哨戦での受賞】
・PGA(全米プロデューサー組合賞)
・DGA(米監督組合賞)
・クリティック・チョイス賞
・カンヌ国際映画祭 パルムドール(最高賞)
・ロサンゼルス批評家賞
・ボストン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・ベイエリア批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・米南東部批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・オンライン批評家賞
・インディー・スピリット賞
【評点】
ロッテン・トマト
93% (観客89%)最新→
IMDB
7.7
最新→
メタクリティック
91%
最新→
【興行収入】
北米:1900万ドル
世界:4800万ドル
(→ )
【製作費】
600万ドル
【受賞スピーチ▼】
動画集を開く▼
<予告編▼>
<クリティック・チョイス受賞スピーチ▼>
<オープニング曲▼>
<監督インタビュー▼>
<マイキー・マディソンのジミー・キンメル番組出演▼>
部門
ノミネート
作品賞ノミネート
「ブルータリスト」
純シネマ的な風味
ナチスの迫害を生き延びたユダヤ系ハンガリー人が、米国に移住。建築家としてアメリカン・ドリームを追いかけるも、様々な苦悩が待ち受ける。3時間35分の超長尺。映像表現や音楽の質の高さが絶賛された。重厚・壮大で、純シネマ的な風味がたっぷり。フィクション。
新鋭監督の野心作
新鋭ブレイディ・コーベット監督(公開時36歳)の長編3作目で、7年という歳月を費やした野心的な一作。
ベネチア国際映画祭の監督賞(銀獅子賞)受賞後、A24が米国内での配給権を買い取った。
芸術性でアノーラに勝る?
批評家による評点は「アノーラ」とほぼ互角で本年度トップレベル。
娯楽性はアノーラより劣るが、芸術性では勝るとの評価が多かった。
長時間の鑑賞の最後に待つものは
一方で、「退屈」「冗長」「もったいぶり過ぎ」との批判が出た。作り手の野心の大きさや技術面での到達度に、肝心の物語力が追いついていないというのが否定派の主たる論調だ。せっかくの長時間の鑑賞体験が、終盤の盛り上がりとして結実しにくく、ガッカリ感や疲労感を訴える人も。暗めのテイストもあいまって、劇場公開の規模拡大とともに観客支持率がやや低下した。
主演エイドリアン・ブロディの演技は、ほぼ絶賛一色。
【ブルータリスト全結果】
受賞部門
主演男優賞 エイドリアン・ブロディ
作曲賞
撮影賞
他の候補部門
作品賞
監督賞
助演男優賞 ガイ・ピアース
助演女優賞 フェリシティ・ジョーンズ
脚本賞
編集賞
美術賞
監督:ブレイディ・コーベット
出演:エイドリアン・ブロディほか
脚本:ブレイディ・コーベット、モナ・ファストボールド
公開日:2025年2月21日(日本)
製作国:ハンガリー、英国、米国
配給:A24(米国内)
長さ:3時間35分
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞(ドラマ作品賞)
・ニューヨーク批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ネバダ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ベネチア国際映画祭 監督賞(銀獅子賞)
・ミネソタ批評家賞
・ハワイ批評家賞
・ポートランド批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
94% (観客80%)最新→
IMDB
7.6 最新→
メタクリティック
90% 最新→
【製作費】
960万ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<サントラ(再生リスト)▼>
<監督の男泣き(ベネチア映画祭)▼>
「名もなき者~A Complete Unknown」
若き日のボブ・ディラン伝
若き日の歌手ボブ・ディランの伝記ドラマ。異次元の天才ぶり、運命的な出会いの数々、先鋭的な挑戦を、数々の名曲の演奏シーンと巧みな演技で紡ぐ。歴史にインパクトを与えたとされる出来事や人物を、むやみにデフォルメすることなく歌と会話の力で渋くドラマ化。同時にカジュアルなエンタメ性もしっかりと備え、幅広い層にアピールした。1960年代の郷愁もたっぷり。
エレキ論争
ディランのキャリア初期の1961年から1965年までを描く。ギター1本を手に故郷ミネソタからニューヨークに到着するところからスタート。フォーク界の巨星となった後、1965年のアルバムで電子楽器(エレキギターなど)を採用したことをめぐる大論争 が、物語の一つの焦点となる。原題「A Complete Unknown(全くの無名人)」は、ディランの代表曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」のサビの一節。
音楽センスの良さ
監督は「ウォーク・ザ・ライン」(2005年)、「フォードvsフェラーリ」(2019年)などで手堅いスキルを見せ続けてきたジェームズ・マンゴールド。「ウォーク・ザ・ライン」で見せた音楽センスの良さが再び全開となった。ボブ・ディラン役を演じ、自ら歌唱もこなしたティモシー・シャラメら役者陣の奮闘も見どころ。
北米だけ100億円を突破
興行成績はたいへん良好で、北米だけ100億円を突破。観客の反応も良く、劇場公開時のリアルな評価を集計するシネマスコアで「ウィキッド」と同じ「A」が付いた。
批評家の評価は劣るが
評論家のレビューは際立って良いわけではなく、ロッテン・トマトの批評家支持率は81%。メタクリティックのスコアも70%で、作品賞ノミネート10本の中で最低。「革新性や野心の不足」が指摘された。それでも前哨戦のノミネート段階では予想以上の大善戦。英国アカデミー作品賞候補5枠、SAG(俳優組合賞)アンサンブル・キャスト賞5枠、DGA(米監督組合賞)候補5枠に入った。
無冠に終わる
巧みな賞レース・キャンペーンで知られる配給会社「サーチライト」の後押しもあって、オスカーでも8部門の候補に。「オスカーのマイナー路線化」を懸念する層から猛プッシュする声が出たが、結局無冠に終わった。
【ノミネート部門】
ノミネート部門
作品賞
監督賞
主演男優賞 ティモシー・シャラメ
助演男優賞 エドワード・ノートン
助演女優賞 モニカ・バルバロ
脚色賞
衣装デザイン賞
音響賞
監督:ジェームズ・マンゴールド(「ウォーク・ザ・ライン」「グレイテスト・ショーマン」など)
主演:ティモシー・シャラメ
助演:エドワード・ノートン、エル・ファニングほか
公開日:2025年2月28日(日本)
製作国:アメリカ
配給:サーチライト
長さ:2時間1分
【評点】
ロッテン・トマト
81% (観客96%)最新→
IMDB
7.5 最新→
メタクリティック
70% 最新→
【興行収入】
北米:1億1000万ドル
【製作費】
5000万~7000万ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<ライク・ア・ローリング・ストーンbyシャロメ▼>
<特別映像▼>
<デュエット「It Ain't Me, Babe」シーン▼>
<サントラ再生リスト▼>
VIDEO
<ティモシー・シャラメのSAGアワード主演男優賞スピーチ▼>
<バブル前夜の日本でディランが踊る「タイト・コネクション」(1985年)。なんと、あの偉大なポール・シュレイダー監督が唯一撮った音楽ビデオだという▼>
「エミリア・ペレス」
独創的な異色ミュージカル
異色ミュージカル。メキシコ麻薬組織のボスが逃亡のために性転換手術を受けるという奇抜な物語を、キャスト陣の実直な演技や個性豊かな歌の数々、詩的なビジュアルで魅せる。独創的で大胆。
外国語作品として史上最多ノミネート
フランス製作(言語はスペイン語)で、監督のジャック・オーディアール氏はフランス人。外国語の作品としてはオスカー史上最多となる13個(12部門)ノミネートを獲得した。2番手の「ブルータリスト」「ウィキッド」(いずれも10個)に水を開けた。
極端な賛否に二分
世界的に賛否が大きく分かれた。欧州の批評家は強く支持。米国以外 の評論家が選ぶゴールデングローブ賞で作品賞(コメディ・ミュージカル部門)を受賞し、最有力候補と見られていた「アノーラ」「ウィキッド」を破った。
クリエイターや表現者に響く
評論家以上に好意的だったのが、クリエイター層や表現者(俳優など)たち。斬新でラディカルな表現方法や自分たちの美意識を貫く徹底ぶり、そして感情・感性を揺さぶるシーンの連続に、世界の右脳が反応した。
メキシコで反発
一方、物語の舞台となったメキシコ及び周辺諸国では「マフィアに殺された人たちの現実を軽視している」「欧州人の上から目線」などと強い反発が出た。米国の観客も支持派と嫌悪派の真っ二つに割れ、トランスジェンダーの描き方についても賛否の論争が起きた。
観客支持率が急落
賞レースで脚光を浴びるにつれて、Netflixで鑑賞した人たちが厳しいレビューを続々と投稿。ロッテントマトの観客支持率が20%以下に急落した。さらに、主演カルラ・ソフィア・ガスコンの過去の反イスラム的なネット投稿が明るみに出て、印象が悪化。当初有力視されていたオスカー国際映画賞の争いでブラジルの「アイム・スティル・ヒア」に敗れた。
助演女優賞と歌曲賞の2冠
それでも助演女優ゾーイ・サルダーニャの演技は最後まで称賛一色で、助演女優賞を獲得。ユニークな楽曲への称賛もとだえず、歌曲賞にも輝いた。受賞曲「エル・マル」の作詞を自ら手掛けたジャック・オーディアール監督も、72歳で初のオスカー像をゲット。
Netflixは「最多候補」でも作品賞逃す傾向
北米の配給権はNetflixが取得。「ROMA/ローマ」「アイリッシュマン」「パワー・オブ・ザ・ドッグ」「Mank/マンク」など、Netflix配給作品が最多ノミネートを獲得しながら作品賞は逃す例が多いが、本作も同じパターンになった。
【エミリア・ペレス全結果】
受賞部門
助演女優賞 ゾーイ・サルダーニャ
歌曲賞 「エル・マル」
他の候補部門
作品賞
監督賞
主演女優賞 カルラ・ソフィア・ガスコン
脚色賞
国際映画賞
歌曲賞 「ミ・カミーノ」
作曲賞
撮影賞
編集賞
メイク&ヘア賞
音響賞
監督:ジャック・オーディアール
主演:カルラ・ソフィア・ガスコン
助演:ゾーイ・サルダーニャ、セレーナ・ゴメスほか
脚本:ジャック・オーディアール
公開日:2025年3月28日(日本)
製作国:フランス
言語:スペイン語
配給:Netflix(北米)
長さ:2時間10分
【前哨戦での受賞】
・ゴールデングローブ賞(コメディ・ミュージカル作品賞)
【評点】
ロッテン・トマト
75% (観客42%)
最新→
IMDB
6.8 最新→
メタクリティック
71% 最新→
動画集を開く▼
<予告編▼>
<挿入歌「エル・マル」byゾーイ・サルダーニャ&カルラ・ソフィア・ガスコン▼>
<挿入歌「ミ・カミーノ」byセレーナ・ゴメス▼>
「ウィキッド ふたりの魔女」
「オズの魔法使い」の前日談
アメリカの国民的童話「オズの魔法使い」の前日談。「良い魔女」と「悪い魔女」としてお馴染みとなる2人が少女時代に出会い、葛藤を乗り越えて友情を育む過程を描く。ニューヨーク・ブロードウェーの定番ミュージカルに、映画ならではの壮大なスケール感と豪華さを持ち込み、興行面・批評面ともに大成功を収めた。2部作の前半。
ミュージカルファンも納得
原作となるブロードウェー劇は2003年が初演。魅力的な歌の数々に加え、精緻(せいち)な台本や見せ場たっぷりの演出が称賛され、長年にわたり熱烈な支持を集めてきた。それだけに映画化のハードルは高いと思われていたが、「クレイジー・リッチ」「イン・ザ・ハイツ」のジョン・チュウ監督(45歳)が持ち前のセンスの良さで巧妙に映像化。舞台劇ファンからも「期待以上」との好反応が相次いだ。米国では劇場で思わず歌い出してしまう観客が続出。本年度ナンバー1のお祭りイベント的映画となった。
配役が大成功
なんといってもキャスティングが大当たり。緑の魔女役シンシア・エリーボの演技と歌唱は圧巻で、観客を高揚感や感動へと導く。そのルームメイト女子役に抜擢された歌手アリアナ・グランデも、トゲがあり高飛車なコミカル演技でキャラクターにどんぴしゃりハマった。
映像技術に高評価
背景映像、舞台装置、衣装などのテクニカルな面も超高評価。絢爛(けんらん)な世界観を構築し、美術賞と衣装デザイン賞の2冠に輝いた。
実写映画として年間トップの興収
北米興収は「デューン 砂の惑星2」を上回り、実写映画として年間トップ。オスカー前哨戦では、序盤の米映画評議会議賞(NBR)で作品賞を獲得し、「アノーラ対ブルータリスト」の2強争いに割って入るかに見えたときもあった。
悪い意味で漫画的
2部作のパート1という点で不利だった。クライマックスに大いに盛り上がるため消化不良感はないが、「続編も見ないと正当な評価が下せない」との声も。また、「冗長」との批判も出た。前半部分の「ミーン・ガールズ」的な学園イジメ劇などはやたらくどい。そもそも主人公の肌の色(緑)に対する周囲のリアクションがあまりに大げさで、みんなの態度が突如180度変わる点も含めて、悪い意味で漫画的。
【ウィキッド全結果】
他の候補部門
作品賞
主演女優賞 シンシア・エリーボ
助演女優賞 アリアナ・グランデ
メイク&ヘア賞
視覚効果賞
音響賞
作曲賞
編集賞
監督:ジョン・M・チュウ
主演:シンシア・エリーボ
助演:アリアナ・グランデ、ミシェル・ヨー、ジョナサン・ベイリー、ジェフ・ゴールドブラムほか
公開日:2025年3月7日(日本)
配給:ユニバーサル
長さ:2時間40分
【前哨戦での受賞】
・米映画評議会議賞(NBR)
・ワシントン批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
88% (観客95%)最新→
IMDB
7.6 最新→
メタクリティック
73% 最新→
【製作費】
1億4500万ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<アリアナ・グランデ「ポピュラー」▼>
※善魔女(グランデ)が、人気者になるコツを悪魔女に教える歌
<アリアナ・グランデ&シンシア・エリーボ「What Is This Feeling」フル▼>
<サントラ(再生リスト)▼>
<特別映像▼>
<ウィキッドとは(解説)▼>
<総まとめ(舞台版について)▼>
<オズの魔法使いとは▼>
<オズの魔法使いのあらすじ▼>
<撮影風景▼>
<オリジナル舞台版のサントラ▼>
<劇団四季の公演プロモ▼>
「デューン 砂の惑星 2」
SFの裾野を広げる
前作「パート1」で2022年オスカーで最多6部門を受賞したSF大作の続編。技術面が評価された「1」よりも娯楽性と物語性が格段に高まり、より幅広い層に響いた。日本を除く世界中で大ヒット。SFに馴染みのない人たちからも大歓迎され、批評家レビューもSFとして異例の高さ。
現代版「帝国の逆襲」
原作の世界観の壮大さや複雑さゆえに、「パート1」はお膳立てに時間をとられ、ストーリーが大きく進展しなかった。そらに比べて本作はテンポ良く話が進み、アクションの見せ場も急増した。「オッペンハイマー」のクリストファー・ノーラン監督は、パート2としての出来の良さに対する賛辞を込めて「現代における『スター・ウォーズ帝国の逆襲(初期3部作の2作目)』」と形容した。映像化の試みが何度も頓挫・失敗してきた伝説のSF小説を、巧みにまとめ挙げたビルヌーブ監督の手腕に称賛が集まった。
映像世界
鮮烈で緻密な映像美は圧巻。パート1では全体の約40%がIMAXカメラで撮影されたが、本作では全編で使用。IMAX劇場体験の到達点として称賛された。主役ティモシー・シャラメと、サイコ・キラーぶりが際立つオースティン・バトラーの決闘シーンなど見どころ満載。ただし、続編シリーズの途中であることと、そもそもSFだという点で、作品賞争いは不利だった。
【デューン2全結果】
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
主演:ティモシー・シャラメ
助演:オースティン・バトラー、ハビエル・バルデムほか
公開日:2024年3月15日(日本)
配給:ワーナー
長さ:2時間46分
【前哨戦での受賞】
・ラスベガス批評家賞
・セントルイス批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
92% (観客95%)最新→
IMDB
8.5 最新→
メタクリティック
79% 最新→
【興行収入】
北米:2億8214万ドル
世界:7億1184万ドル
日本:4170万ドル(約6億円)
動画集を開く▼
<予告編▼>
<劇伴(ハンス・ジマー)▼>
<悪役フェイドについて▼>
「教皇選挙」
大人向け娯楽ミステリー
スリリングな展開が楽しめる大人向けの知的ミステリー。アカデミーのベテラン会員の本流に響きやすい一作。
政治工作の行方
カトリックの教皇の死去に伴う後任選びの選挙(コンクラーベ )の舞台裏を描く。教皇に次ぐナンバー2だった主人公(レイフ・ファインズ)が選挙を取り仕切るなか、保守派、中道派、リベラル派が入り乱れて政治工作を展開。宗教家たちの本音と建前のギャップや、物静かで穏健な主人公が緊迫状態に置かれたときの行動などが見どころ。
4冠「西部戦線異状なし」の次作
監督は、2023年オスカーで4部門(国際映画賞、撮影賞、美術賞、作曲賞)の受賞に輝いた「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー(ドイツ人)。英・米合作。
下馬評が高いが
一般観客の間では、終盤の展開をめぐり「オチがあまりに突拍子もない」「Woke的カトリック攻撃」という批判も一部で出たが、おおむね高評価が優勢となった。とはいえ、分かりやすい感動をもたらすようなタイプの作品ではなく、作品賞レースを勝ち抜くにはややパンチ力不足。下馬評が高いわりには前哨戦での勝利は英国アカデミー賞くらいだった。
中間に位置する良作
製作費30億円にして興行収入150億円(うち北米50億円)を稼いだ優等生。ブロックバスター(ウィキッド、デューン2)と小規模作(アノーラ、ブルータリスト)の中間に位置する良作として、古典的なオスカーファンたちからも期待を集めた。原作は2016年刊行のベストセラー小説。
【教皇選挙の全結果】
他の候補部門
作品賞
主演男優賞 レイフ・ファインズ
助演女優賞 イザベラ・ロッセリーニ
作曲賞
編集賞
美術賞
衣装デザイン賞
監督:エドワード・ベルガー(「西部戦線異状なし」など)
主演:レイフ・ファインズ
助演:スタンリー・トゥッチ、イザベラ・ロッセリーニほか
脚本:ピーター・ストローハン
公開日:2025年3月20日(日本)
製作国:英米
配給:フォーカス
長さ:2時間
【前哨戦での受賞】
・英国アカデミー賞
・SAGアワード(俳優組合賞)キャスト賞
【評点】
ロッテン・トマト
93% (観客86%)最新→
IMDB
7.4 最新→
メタクリティック
79% 最新→
【製作費】
2000万ドル
動画集を開く▼
<予告編▼>
<劇伴(再生リスト)▼>
「サブスタンス」
ジャンル映画ファン熱狂
グロテスクだが上質感もあるホラー。「見た目至上主義(ルッキズム)」の成れの果てを描くブラックコメディでもある。全米のジャンル映画ファンが熱狂し、年間ベストに挙げる人が相次いだ。
攻撃的な意欲作
人気に陰りが見えてきた中年女性タレントが、危ない「若返り薬」に手を出し、狂気へ発展する。フランスの女性監督コラリー・ファルジャの2作目。デミ・ムーアらハリウッドスターを起用しながらも、インディー作家として新境地に挑もうとする監督の攻撃的な姿勢がみなぎる。
おぞましいけどハイセンス
カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したことが示すように、衝撃性だけに依存しないユニークな物語性が特徴。映像面も、非常におぞましい場面の連続ながら、美術、メイク、視覚効果などの点で優れた美的センスを感じさせると好評。
ホラーへの偏見を乗り越える
米国の賞レースでは、シアトルやカンザスシティなどのローカル批評家賞で作品賞をサプライズ受賞。ホラー映画という決定的に不利な条件をはねのけてオスカー作品賞ノミネート入りを果たした。
デミ・ムーア敗れる
主演デミ・ムーアの怪演が絶賛され、SAGアワード(俳優組合賞)やクリティック・チョイス賞で主演女優賞を獲得。最有力候補へと躍り出たが、オスカーではマイキー・マディソン(アノーラ)に惜しく敗れた。
【サブスタンス全結果】
他の候補部門
作品賞
監督賞
主演女優賞 デミ・ムーア
脚本賞
監督・脚本:コラリー・ファルジャ(仏)
主演:デミ・ムーア
助演:マーガレット・クアリーほか
公開日:2025年5月16日(日本)
製作国:仏、英、米
配給:英Mubi(ムービ)
長さ:2時間21分
【前哨戦での受賞】
・カンヌ国際映画祭 脚本賞
・シアトル批評家賞
・カンザスシティ批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
90% (観客75%)最新→
IMDB
7.4 最新→
メタクリティック
78% 最新→
動画集を開く▼
<メイキング▼>
<予告編▼>
<サントラ▼>
「ニッケル・ボーイズ」
差別と虐待に苦しむ黒人青年の試練を、詩的な映像と独特のカメラワークで描いたアート系作品。1960年代の米南部フロリダ州に実在した少年院が舞台。批評家の評価は極めて高いが、一般観客の支持率はそれほどではない。
無実の罪で施設に収容された青年と、そこで出会う青年の友情がドラマの軸。原作は、ピューリッツァー賞を受賞したフィクション小説。
共同脚本と監督を務めたラメル・ロス氏は2018年のデビュー作「Hale County This Morning, This Evening」でいきなり長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた注目株。本作が初の実写作。1982年生まれ。
多くのシーンが、主人公の一人称視点(主観カメラ)で撮られているのが特徴。人種差別の一端を体験しているかのような恐怖感や没入感が味わえる。ただ、会話相手のカメラ目線が気になって落ち着かない、集中できないという人もいる。
【動画配信:アマゾン→ 】
【ノミネート部門】
監督:ラメル・ロス
主演:イーサン・エリセ
助演:アーンジャニュー・エリス・テイラーほか
公開日:2024年2月27日(日本/Amazonプライム独占配信)
製作国:アメリカ
配給:アマゾンMGM
長さ:2時間
【前哨戦での受賞】
・ニューヨーク映画批評家賞 監督賞
【評点】
ロッテン・トマト
91% (観客75%)最新→
IMDB
7.1 最新→
メタクリティック
91% 最新→
動画集を開く▼
<予告編▼>
<監督インタビュー▼>
「アイム・スティル・ヒア」
ブラジル映画として初の作品賞ノミネート。1964年からブラジルを支配した軍事独裁政権によって幸せな日々を奪われた家族の実話。夫を軍部に連れ去られた妻が、夫を探しつつも一家の大黒柱となり、残された5人の子供たちを懸命に支える。
主人公の息子が書いた伝記(2015年刊)を、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス監督(ブラジル人)が映画化。
主役のフェルナンダ・トーレスが主演女優賞にノミネートされた。
【アイム・スティル・ヒア全結果】
他の候補部門
作品賞
主演女優賞 フェルナンダ・トーレス
公開日:2025年8月(日本)
製作国:ブラジル、フランス合作
配給:ソニー・ピクチャーズ・クラシックス(北米)
長さ:2時間15分
【前哨戦での受賞】
・ベネチア国際映画祭 脚本賞
【評点】
ロッテン・トマト
97% (観客97%)最新→
IMDB
8.7
最新→
メタクリティック
85%
最新→
動画集を開く▼
<予告編▼>
<フェルナンダ・トーレスのゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)受賞スピーチ▼>
※歴代の作品賞→
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監督賞
実績豊かなベイカー監督の逆転勝ち
前哨戦では、作品賞こそ「アノーラ」がリードしていたが、監督賞は「ブルータリスト」のブレイディ・コーベット監督がトップを走っていた。しかし、終盤になって最も重要なDGA(米監督組合賞)でショーン・ベイカー監督が勝利。勢いに乗ってそのままオスカーを制した。過去の作品でも証明されてきた確かな手腕やインデペンデント作家としての実績も加味されたのだろう。
部門
受賞
監督賞
ショーン・ベイカー
「アノーラ」
現代社会の周縁の人たちをリアルに描いてきた米国インディー映画界の俊英が、ポップ性や緻密さなどの面で異次元レベルの秀作を生み出した。撮影時53歳。初のオスカーノミネートながら、監督賞だけでなく作品賞、脚本賞、編集賞まで獲り、個人として1回のオスカーで単独作により4冠という史上初の偉業を達成した。
自称「indie film lifer(生涯インディー映画人)」。売れっ子監督になった後も決して大手スタジオの資本を受け入れず、「独立系(インディー)」の立場を貫いてきた。自分が世に伝えたい物語を、自分が選び抜いたキャストとスタッフだけで作る、というのが信条。
本作でも、脚本を書く前の段階で抜擢した主演マイキー・マディソン(主演女優賞)をはじめ、知名度が低い俳優たちを起用。その才能・魅力を最大限に引き出した。従来作よりもリズム感やメリハリが良くなり、ドタバタ劇が目の前で現実に起こっているかのような没入型喜劇で、世界をあっと言わせた。
1971年ニュージャージー州生まれ。名門ニューヨーク大学の大学院(芸術学部)で映画を学んだ。
庶民目線のコメディ一筋。iPhoneのカメラだけで撮影した「タンジェリン」でインディー・スピリット賞の監督賞に初ノミネート。「フロリダ・プロジェクト」(2017年)では、ニューヨーク批評家賞やロンドン批評家賞を獲得。前作「レッド・ロケット」(2021年)は米国映画批評会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー)の年間トップ10に入り、着実に評価を高めてきた。
妻のスマンサ・クァンはNY大学の後輩でアジア系カナダ人。本作の共同プロデューサー。
【前哨戦の受賞(監督部門)】
・DGA(米監督組合賞)
・ボストン批評家賞
・シアトル批評家賞
・ダラス批評家賞
・アイオワ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・オースティン批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
監督賞ノミネート
ブレイディ・コーベット
「ブルータリスト」
36歳(公開時)の若手の3作目。15億円という予算規模とは決して思えない壮大・重厚で上質な映像作品を実現した。前哨戦では途中までトップを走ったが、終盤で失速した。
米南部アリゾナ州の母子家庭で育ち、12歳から子役俳優としてテレビ出演。ホリー・ハンターが助演女優賞にノミネートされた「サーティーン」(2003年)で銀幕デビュー。監督デビュー作となった「シークレット・オブ・モンスター」(2015年)で評論家から高い評価を得た。2作目「ポップスター」ではナタリー・ポートマンを主役に起用し、再び玄人筋に称賛された。
【前哨戦の受賞】
・英国アカデミー賞
・ベネチア国際映画祭
・ゴールデングローブ賞
・国際プレスアカデミー
・ワシントン批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ネバダ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ユタ批評家賞
・ベイエリア批評家賞
・米南東部批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・ポートランド批評家賞
コラリー・ファルジャ
「サブスタンス」
過剰なアンチエイジングがもたらす狂気の世界を、優れた美的センスで滑稽に映像化。恐れを知らない表現方法やテーマ選択の勇敢さに称賛が集まった。デミ・ムーアの一世一代の熱演を引き出したことも高評価ポイント。
1976年パリ生まれ。17歳ごろに映画監督になることを決意。2003年に初の短編を制作。徹底的に質にこだわる寡作派とされ、今回でようやく長編2作目。前作「リベンジ」(2017年)は仏製復讐スリラー。
【前哨戦の受賞】
・インディアナ批評家賞
・オンライン批評家賞
ジャック・オーディアール
「エミリア・ペレス」
フランスを代表する名監督の一人。世界的な映画賞に30年にわたってコンスタントに絡んできた。父親は脚本家で、自身も監督になる前の20年間はひたすら脚本家に専念してきた。今作は、長いキャリアの中でもひときわ「冒険的」と評価された。すさまじい成長を続ける驚異の72歳。
ジェームズ・マンゴールド
「名もなき者」
「17歳のカルテ」「ウォーク・ザ・ライン」「ローガン」「フォードvsフェラーリ」など、長年にわたり質の高い娯楽映画を撮り続けてきた職人。アンジェリーナ・ジョリーにオスカー助演女優賞を獲らせ、リース・ウィザースプーンにオスカー主演女優賞をもたらすなど、演技指導にも定評がある。
音楽センスも抜群。ホアキン・フェニックスにジョニー・キャッシュを歌わせ、ウィザースプーンにジューン・カーターを歌わせて世界を熱狂させた「ウォーク・ザ・ライン」に続いて、今作では、ティモシー・シャラメに伝説の歌手ボブ・ディランの名曲の数々を歌わせたのをはじめ、出演者たちをかたっぱしからプロ歌手に変えてしまった。
これまで監督個人としてはメジャーな賞には恵まれてこなかったが、本作ではドゥニ・ビルヌーブ監督(デューン2)らの強豪をさしおいて初のオスカー監督賞ノミネート。1963年ニューヨーク生まれ。今作での優れた60年代のニューヨーク描写には、子供の時の記憶が反映されているという。
※歴代の監督賞→
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主演男優賞
最年少記録保持者の交代ならず
エイドリアン・ブロディ(ブルータリスト)対ティモシー・シャラメ(名もなき者)の事実上の一騎打ちと見られた。ブロンディが受賞すれば2度目の受賞。シャラメが受賞すれば29歳での受賞で、ブロディが保持する最年受賞少記録(29歳)を、誕生月の差で数か月分上回るとして注目された。
終盤でシャラメ猛追
前哨戦では、ブロディがほぼ連戦連勝。それに辛うじて対抗していたのが、コールマン・ドミンゴ(シンシン)だった。だが、配給会社サーチライトの巧みなキャンペーンもあって「名もなき者」が賞レースをにぎわせるようになると、主演であるシャラメも勢いづいた。「デューン 砂の惑星」シリーズでも堂々たる主演を張るシャラメは時代の寵児。世論の盛り上がりも後押しして、前哨戦の最後を飾るSAGアワード(俳優組合賞)では、シャラメが勝った。
演技の芸術性が勝る
しかし、そう簡単に世論になびかないのがオスカーだ。無名の俳優たちが山ほど加盟するSAGとは違い、一流の実績を持つ映画人だけが投票するのがオスカーであり、とりわけ主要部門ともなれば、芸術的観点からの厳しい精査にさらされる。シャラメによるボブ・ディラン像の造形は確かに素晴らしいが、波乱万丈の移民の半生を満身創痍でグロテスクに演じきったブロディの生々しさには及ばなかった。
それにしても、ブロディのオスカー受賞スピーチはあまりにも長く、評判が悪かった。
部門
受賞
主演男優賞
エイドリアン・ブロディ
「ブルータリスト」
※2度目の受賞。2003年にオスカー主演男優賞を史上最年少(29歳)で獲って以降、映画賞から遠ざかっていた男が、51歳で再び運命的なハマリ役に出会った。ナチスの虐殺から逃れてきたユダヤ系移民の苦悩と挑戦を、自らの一族のルーツを重ねながら表現。トラウマを抱えた孤独な移民の脆弱さ、革新的な建築家としての気概や狂気性、持たざる者としての反骨精神などを、華奢な体と繊細で訛りの強い語り口で伝えた。その個性は、本作の特異な映像世界と一体化し、野放図になりかねないストーリーの説得力を高めた。
1973年ニューヨーク生まれ。
【前哨戦の受賞】
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ニューヨーク映画批評家賞
・シカゴ批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・ネバダ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ハワイ批評家賞
・ポートランド批評家賞
・米南東部批評家賞
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
主演男優賞ノミネート
ティモシー・シャラメ
「名もなき者」
※ハリウッド若手ナンバー1の超売れっ子が、伝説のシンガーソングライター、ボブ・ディランを演じた。
全ての歌唱シーンを、自身の声で歌い上げた。その数なんと40曲。特有の鼻声、ハーモニカの吹き方、しぐさなどを習得。往年のディラン・ファンをも納得させた。
見た目以上に凄いのが、醸し出す空気感。別格のカリスマ性、作家としての鋭敏さ、人間としての無頓着ぶりなどを、セリフのないシーンでもひしひしと伝える。それでいてティモシー・シャラメという俳優の存在が消えるのでなく、むしろ若きディランと思わず重ね合わせてしまう。プロデューサーの1人に名をつらね、役作りに5年という歳月を費やした成果が出た。
1995年ニューヨーク生まれ。2018年オスカーで「君の名前で僕を呼んで」により初ノミネート。それ以降、「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」「デューン 砂の惑星」などの大作でも引っ張りだこ。
【前哨戦の受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・ボストン批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
コールマン・ドミンゴ
「シンシン」
※刑務所内で演劇プログラムをつくるリーダー役。キャリアベスト級の迫真の演技により、実話をベースにしたドキュメンタリー的な物語に特別な高揚感をもたらした。本物の元囚人が出演者の85%を占めるアマチュア役者陣を引っ張り、熱度を高めた。前哨戦ではエイドリアン・ブロディに次ぐ勝率。
1969年11月フィラデルフィア生まれ。前年オスカーでも「ラスティン」により主演男優賞ノミネート。
【前哨戦の受賞】
・NSFC(全米映画批評家協会賞)
・米IPA(国際プレスアカデミー)
・ワシントン批評家賞
・シアトル批評家賞
・セントルイス批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ユタ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ベイエリア批評家賞
レイフ・ファインズ
「教皇選挙」
※新教皇の選考プロセスを取り仕切るカトリック教会の大幹部を演じた。ふだん穏やかで物静かだが、時折見せる大胆な行動や芯の強さがドラマを一気に盛り上げる。抑制された演技でサスペンスに一級の緊張感をもたらし、にじみ出る誠実性で親近感を覚えさせ、闊歩シーンだけでハラハラさせるベテラン技。
1962年英国生まれ。オスカーでは1993年「シンドラーのリスト」で助演ノミネート、1996年「イングリッシュ・ペイシェント」で主演ノミネート。
【前哨戦の受賞】
・オンライン批評家賞
・ダラス批評家賞
・ヒューストン批評家賞
セバスチャン・スタン
「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」
※ドナルド・トランプ大統領の若きビジネスマン時代を演じた。多くの米コメディアンらが行ってきたトランプの物まねとは明らかに一線を画す本物志向の演技。しぐさや表情などはそっくりだが、あくまで自身の役者としての存在感を残し、滑稽なパロディではないキャラクターを造形した。
トランプ支持者からもアンチからも批判されやすい難しい役柄を引き受け、最終的に双方をある程度納得させた技量はすごい。
※歴代の主演男優賞→
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主演女優賞
ベテラン大スター、デミ・ムーアの初栄冠ならず
作品賞以外では、本年度オスカーで最も注目を集めた部門となった。前哨戦を通じてベテランのデミ・ムーア(サブスタンス)と若手のマイキー・マディソン(アノーラ)がデッドヒートを展開。還暦を過ぎてついに演技派として認められた大スター、ムーアの初オスカーに期待が集まった。
SAGはムーア、BAFTAはマディソン
SAGアワード(俳優組合賞)やクリティック・チョイス賞はムーアが制し、英国アカデミー賞(BAFTA)はマディソンが勝利。最後のオスカーでムーアが逃げ切るかと思われたが、作品の全般にわたって多彩な喜怒哀楽表現で見せ場を作り続けたマディソンに軍配が上がった。
最後は演技自体への評価
作品内で見せた演技の幅の広さやキャラ造形力ではマディソンに分があったことは、多くが認めていた。マディソンなくしてはアノーラが成立し得なかったことは間違いない。俳優本人の人生のストーリー性や過去の実績は、オスカーでもそれなりに重視されるが、やはり一義的には対象作品における演技への評価が勝負の分かれ目となる、ということを再認識させられた。
部門
受賞
主演女優賞
マイキー・マディソン
「アノーラ」
※大富豪の息子と恋に落ちるストリッパー役。
マフィア相手に物おじしない強さと、バカ男子を信じてしまう無垢さなどが混在した等身大キャラを、現実味たっぷりに演じた。喜怒哀楽を伝える目つき・しぐさから、派手に暴れまわるコミカルアクションまで、エネルギッシュかつ自然体。ダンスは未経験だったが特訓を重ねてプロ級に。
1999年LA生まれのユダヤ系。両親は心理学者。14歳で演技の仕事を開始。タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019年)に犯罪カルトのメンバー役として出た後、より目立つ脇役となった「スクリーム」(2022年)でショーン・ベイカー監督の目に留まる。監督は当時、本作の大筋を固めていたが、主演が見つからずに企画がストップしていた。マディソンを発掘してからスラスラと脚本を書き上がったという。
【前哨戦の受賞】
・英国アカデミー賞
・ロサンゼルス批評家賞
・ボストン批評家賞
・ワシントン批評家賞
・シアトル批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・オースティン批評家賞
・米南東部批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・オンライン批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
主演女優賞ノミネート
デミ・ムーア
「サブスタンス」
※若さへの執着から危ない美容術に手を出し、狂気の世界へと堕ちていく芸能人を怪演。自己嫌悪、嫉妬、執念といった負の感情の深化と、そこから生まれる破壊的行為をスリリングに表現した。61歳にして自らの心身をすべてさらけ出すような迫真ぶりで、「反加齢主義の歪み」という作品テーマに重みをもたらした。
1990年代の世界トップ級スター。「ゴースト」(1990年)、「ア・フュー・グッドメン」(1995年)といった傑作に次々と出演し、1990年代半ばには「世界一稼ぐ女優」に認定された。しかし映画賞とは無縁で、近年は役にも恵まれていなかった。
1962年生まれ。飲酒運転や放火の常習犯だった母親と、職を転々とする不安定な養父に育てられた苦労人。高校を中退して20世紀フォックスの受付係として働き始め、22歳で青春映画「セント・エルモス・ファイアー」(1985年)に抜擢されて大ブレイクした。
ブルース・ウィリスと結婚・離婚後、16歳年下のアシュトン・クッチャーと再婚し、2013年に離婚。
【前哨戦の受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・クリティック・チョイス賞
・ミネソタ批評家賞
・ユタ批評家賞
・ハワイ批評家賞
・ポートランド批評家賞
・インディアナ批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
・国際プレスアカデミー(コメディ部門)
フェルナンダ・トーレス
「アイム・スティル・ヒア」
※1998年の「セントラル・ステーション」で主演女優賞にノミネートされた母親フェルナンダ・モンテネグロに続いて、ブラジル人として史上2人目の主演部門ノミネート。
【前哨戦の受賞】
・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
・国際プレスアカデミー(ドラマ部門)
シンシア・エリーボ
「ウィキッド ふたりの魔女」
強い魔力と緑色の肌を持って生まれた少女を演じた。圧巻の演技と歌唱力。前半の繊細な感情表現で観客の心をつかみ、終盤に向けて躍動へと導く。ちょっとしたロマンスシーンでの切なさも絶妙。
1987年英ロンドン生まれ。映画初主演となった2019年の「ハリエット」でいきなりオスカー主演女優賞にノミネート。歌曲賞の候補にもなった。超本格派。
【前哨戦の受賞】
・ネバダ批評家賞
カルラ・ソフィア・ガスコン
「エミリア・ペレス」
公表済みトランスジェンダーとして初のオスカー俳優部門ノミネートとなった。
性転換手術を希望する麻薬マフィアのボス役。凄みたっぷりのマッチョな荒くれ者から、母性あふれる市民活動家への転換を見事に表現した。
1972年スペイン生まれ。いくつかのテレビドラマに出演した後、2009年にメキシコに転居。2018年に女性への転換手術を終え、名前も変えた。これまで脇役専門の地味な俳優だったが、本作で世界的に有名に。仏教徒。
※歴代の主演女優賞→
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助演男優賞
カルキン独走
キーラン・カルキン(リアル・ペイン)が独走。リアル・ペインは作品賞ノミネートを逃したが、カルキンへの支持は不変だった。ブロードウェイの舞台のリハーサルが重なったため、大半の前哨戦の授賞式に出席できなかったが、ようやく出られたSAGアワードでのスピーチの巧さやコミカルさは秀逸。オスカーでも手際よく喜びを語り、スマートさを感じさせた。
部門
受賞
助演男優賞
キーラン・カルキン
「リアル・ペイン~心の旅」
※チャーミングで社交的な一方で、自己中な行動で周囲を振り回す不安定な中年男を演じた。言動にフィルターがかからない傍若無人キャラは、強烈だが天然。テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」で変態的な三男を演じたときの奔放さにも通じるが、本作ではメンタル面の脆弱性がより繊細に表現されている。黙って座っている冒頭シーンだけでやばさがにじみ出る。突出した存在感で終始物語を引っ張っており、実際は「助演」でなく「主演」だろう。
「ホーム・アローン」の子役スター、マコーレー・カルキンの弟。1982年ニューヨーク生まれ。兄の映画に子役として登場した後、20歳で出演した「17歳の処方箋」でゴールデングローブ賞の主演男優賞(コメディ部門)にノミネートされる。その後映像作品からは遠ざかり、主に舞台で活動していたが、2018年から始まったテレビドラマ「メディア王」で再度メジャー路線に。メディア王の最終シーズンではエミー賞(2023年)主演男優賞に輝いた。
本作の出演には当初難色を示したが、プロデューサーの一人である女優エマ・ストーンが説得にあたったという。
【前哨戦の受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・米映画評議会議(NBR)
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・ニューヨーク批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・ゴールデングローブ賞
・アトランタ批評家賞
・セントルイス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・アイオワ批評家賞
・フィラデルフィア批評家賞
・ハワイ批評家賞
・フロリダ批評家賞(主演枠)
・ヒューストン批評家賞
・オンライン批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
助演男優賞ノミネート
ジェレミー・ストロング
「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」
※20代後半だったドナルド・トランプ氏(後の大統領)に対して非倫理的なビジネス流儀を教え、師匠的な存在となった辣腕弁護士ロイ・コーンを演じた。冷酷で攻撃的、野獣的なキャラクター造形に成功。作品の面白味を何倍にも高めた。
1978年生まれ。テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」の長男役としてシーズン2でエミー賞主演男優賞を受賞。「マネー・ショート」「シカゴ7裁判」「ゼロ・ダーク・サーティ」「グローリー」といった多数のオスカー作品賞候補に出演してきた名わき役。自身は初オスカー・ノミネート。
【前哨戦の受賞】
・フロリダ批評家賞
エドワード・ノートン
「名もなき者」
反戦歌「花はどこへ行った」などで知られる米フォーク界の先駆的歌手ピート・シーガーを演じた。ディランの才能にいち早く気づいた人物で、本作のストーリーでもカギを握る。
田舎から出てきたディランを迎え入れ、そっと押し上げる懐の深い兄貴のようキャラクターを、おおらかな表情とソフトな語り口で表現。古き良き米国の良心のようなものを伝えた。いぶし銀の演技。
オスカーノミネートは4回目。映画デビュー作となった「真実の行方」(1996年)で殺人容疑がかけられた少年を演じ、いきなり助演男優賞にノミネート。「アメリカン・ヒストリーX」(1998年)で狂った差別主義者を演じて主演男優賞ノミネート。「バードマン」(2014年)で助演男優賞ノミネート。
製作陣に遠慮なく意見をぶつける「物言う俳優」として名を馳せてきた。マーベル映画「インクレディブル・ハルク」主演の際には撮影前に自ら脚本を大幅に書き換えたことで監督らと対立。シリーズ1作目で早々に降板となった。
知日派としても有名。イエール大学時代に日本文化に興味を持ち、一年半日本語を勉強。建築家の祖父が滞在していた大阪に4か月間住んだ経験もあるという。
【前哨戦の受賞】
・ボストン批評家賞
ガイ・ピアース
「ブルータリスト」
建築家としての成功を夢見る主人公(エイドリアン・ブロディ)にお金を出す富豪を演じた。
1967年イギリス生まれ。「L.A.コンフィデンシャル」(1997年)の若手刑事役としてあまりにも有名。キャリアは長いが、これまで個人としてはメジャー映画賞とは無縁だった。
【前哨戦の受賞】
・国際プレスアカデミー
・ダラス批評家賞
・ネバダ批評家賞
・ミシガン批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・米南東部批評家賞
・ポートランド批評家賞
ユーラ・ボリソフ
「アノーラ」
ロシア富豪の息子の見張り番を演じた。経済マフィアの一味でありながら、真っ当な労働者階級としての良識やプライドをにじませ、静かながら強烈な印象を残す。
【前哨戦の受賞】
・ロサンゼルス批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ベイエリア批評家賞
※歴代の助演男優賞→
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助演女優賞
波乱の中でも勝ち続けたサルダーニャ
本年度最多ノミネートとなった「エミリア・ペレス」だが、主演カルラ・ソフィア・ガスコンの過去の問題発言を筆頭に、様々な角度から論争を巻き起こした。助演ゾーイ・サルダーニャにとっても大きな逆風になりかねなかったが、彼女への厚い支持は変わらず、むしろレース終盤ではライバルのアリアナ・グランデを突き放した感があった。それだけ演技力と存在感は圧倒的だった。
部門
受賞
助演女優賞
ゾーイ・サルダーニャ
「エミリア・ペレス」
※主人公のマフィアに雇われる弁護士役。交渉人としての有能な仕事師ぶりや、犯罪者を手伝うことへの葛藤を、生々しく表現した。
一つ一つの場面ごとの巧みな感情表現で観客の心をつかむ。日々の勤労の疲労感・挫折感から始まり、経済的苦悩から解放された喜び、修羅場での緊迫感、メキシコ社会の矛盾に対する怒りまで、いずれも実在感や共感性がたっぷり。絵空事へと上滑りしかねない奇抜なストーリーを、現実目線へとつなぎとめる重要な役割を果たした。
元ダンサーなだけあって劇中に何度も見せる踊りは極めてハイレベル。ラップから抑揚のあるバラードまで多岐にわたる歌唱パフォーマンスも超一流。その技術力の高さは、世界中で増殖した過激なアンチ・エミリアペレス勢力も認めざるをえなかった。
1978年ニュージャージー生まれのヒスパニック(ドミニカ共和国系)。一般的には「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズの緑色の戦士(ガモーラ)役や「アバター」のヒロイン役として有名。SF大作でしか彼女を知らなかった大半の人たちは、その本格派ぶりに驚いた。
【前哨戦の受賞】
・SAGアワード(俳優組合賞)
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞
・ダラス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・ネバダ批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・フロリダ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
助演女優賞ノミネート
アリアナ・グランデ
「ウィキッド ふたりの魔女」
※自己陶酔的な女子をコミカルに演じ、しぐさや立ち回りで観客を爆笑させた。ふだんのポップスとは大きく異なる歌唱法を特訓でマスター。大方の期待をはるかに上回る名演として喝采を浴びた。前哨戦でトップを走るゾーイ・サルダーニャを追撃。
2011年の歌手デビュー以来、出したアルバム7枚がほぼすべて全米チャート1位という世界トップ級シンガーとして知られている。ただ、歌手になる前にテレビドラマに出ており、実は俳優歴のほうが長い。
1993年フロリダ生まれのイタリア系。
【前哨戦の受賞】
・国際プレスアカデミー
・アトランタ批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・米南東部批評家賞
・ポートランド批評家賞
モニカ・バルバロ
「名もなき者」
米国フォーク音楽の先駆者の一人ジョーン・バエズを演じた。抜群の歌唱力を発揮し、透き通った声やカリスマ性を再現した。ティモシー・シャラメ演じるボブ・ディランとの出会いと関係構築、共演ステージでの感情表現は見事。
1990年桑港生まれ。NY大学バレエ専攻。「トップガン マーヴェリック」の女性パイロット役で世界的に有名に。本作で本格的な演技派としても名をとどろかせた。
イザベラ・ロッセリーニ
「教皇選挙」
カトリック総本山で実務を担う修道士チームのリーダー役。出演時間が短くセリフも少ないが、緊張感あふれる立ち振る舞いや重みのある言い回しで絶大な存在感を示した。並み居るベテラン俳優陣の中でも作風への溶け込み具合は秀逸。
大女優イングリッド・バーグマンの一人娘。父親は「戦火のかなた」などの巨匠監督ロベルト・ロッセリーニ。キャリアは長いが、メジャーな映画賞に絡むのは今回が初めて。
1952年6月、イタリア・ローマ生まれ。イタリア国営放送のレポータなどを経て、1976年に母バーグマンと共演した地元映画「ザ・スター」で女優デビュー。マーティン・スコセッシ監督の3人目の妻(1979年~1982年)だったことも。
1985年にハリウッド映画「ホワイトナイツ」で、グレゴリー・ハインズの妻役としてメジャーデビュー。デビッド・リンチ監督の怪作「ブルーベルベット」で主演を務め、高い評価を得た。
フェリシティ・ジョーンズ
「ブルータリスト」
「博士と彼女のセオリー」(2014年)でホーキング博士の妻を演じて主演女優賞ノミネートされて以来、10年ぶりのオスカー候補入り。
この間、スター・ウォーズ映画「ローグ・ワン」(2016年)の主役として、巨大な銀河帝国との対決に挑む戦士を演じたことでも有名になった。2018年には米最高裁判事ルース・ギンズバーグの伝記「ビリーブ」で主演。
英国生まれの41歳。11歳で芸能界デビューした後、オックスフォード大学で英文学を専攻した勉強家。
※歴代の助演女優賞→
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脚本賞
前哨戦では「アノーラ」と「リアル・ペイン」が互角の戦いだったが、クリティック・チョイス賞で「サブスタンス」が勝つという波乱が発生。続く英国アカデミー賞を「リアル・ペイン」が、WGA(米脚本家組合賞)を「アノーラ」が獲り、最後まで目が離せない部門となった。
部門
受賞
脚本賞
「アノーラ」
脚本:ショーン・ベイカー
【前哨戦の受賞(脚本部門)】
・WGA(米脚本家組合賞)
・ニューヨーク批評家賞
・ボストン批評家賞
・サンフランシスコ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ジョージア批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・オンライン批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ベイエリア批評家賞
・シアトル批評家賞
・北テキサス批評家賞
【受賞スピーチ▼】
部門
ノミネート
脚本賞ノミネート
「リアル・ペイン~心の旅」
脚本:ジェシー・アイゼンバーグ
現代人コメディ。「ソーシャル・ネットワーク」の主役として有名な俳優ジェシー・アイゼンバーグの2本目の監督作。
子供のころ兄弟同然に親しかった米国の従兄弟2人(ユダヤ系)が、先祖の故郷ポーランドで一緒に旅をする物語。亡き祖母が殺されかけたナチスの収容所跡地などを旅行ツアーで巡りながら、自分たちのルーツと向き合う。アイゼンバーグが自身のポーランド旅行に触発されて書いたオリジナル戯曲が元になっている。
物語の軸となるのは、性格が対照的な従兄弟2人の関係。真面目で常識的なデビッド(アイゼンバーグ)と、奔放で自己中心的なベンジー(キーラン・カルキン)がすれ違いを見せながらも、「おばあちゃんの追悼」という一つの目的に向けて行動を共にする姿が印象的。メンタル的なトラブルを抱えるカルキンをどう扱うか、他のツアー参加者が見せる大人の対応も、現代的で面白い。
評論家から全方位的な高評価を受け、ロッテン・トマトの批評家支持率は96%。そのわりに観客支持率は81%にとどまる。IMDbでも「7」「8」が中心で「9」「10」を与える人はあまり多くない。「教皇選挙」や前年の「アメリカン・フィクション」のレビュー得点構成を全体的に少し弱くしたような「マイルドな支持」を集めた。
【前哨戦の受賞(脚本部門)】
・英国アカデミー賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・豪州アカデミー賞
・ワシントン批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ハリウッド批評家賞
・ハワイ批評家賞
・フェニックス批評家賞
・バンクーバー批評家賞
・サテライト賞
・インディー精神賞
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<予告編▼>
<監督のトークショー出演▼>
「サブスタンス」
脚本:コラリー・ファルジャ
【前哨戦の受賞(脚本部門)】
・カンヌ国際映画祭
・クリティック・チョイス賞
・カンザス批評家賞
「セプテンバー5」
脚本:ティム・フェールバウム
1972年ミュンヘン五輪の選手村を襲った人質テロ事件を報道するテレビクルーの姿を追う。
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<予告編▼>
<予告編(コメント入り)▼>
<助演リオニー・ビネッシュのインタビュー(ドイツ語)▼>
「ブルータリスト」
脚本:ブレイディ・コーベット&モナ・ファストボールド
【前哨戦の受賞(脚本部門)】
・ポートランド批評家賞
※歴代の脚本賞→
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脚色賞
「教皇選挙」が前哨戦から安定した戦いぶり。他の部門では事前の期待にこたえられなかったが、脚色賞だけは最後まで死守した。
部門
受賞
脚色賞
「教皇選挙」
脚本:ピーター・ストローハン
【前哨戦の受賞(脚色・脚本部門)】
・英国アカデミー賞
・クリティック・チョイス賞
・ゴールデングローブ賞
・南カリフォルニア大学(USC)スクリプター賞
・オンライン批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ワシントン批評家賞
部門
ノミネート
脚色賞ノミネート
「シンシン」
脚本:グレッグ・クウィダー&クリント・ベントリー
刑務所の囚人たちが施設内で劇団をつくり、芝居に挑戦する物語。凶悪犯が収容される「シンシン刑務所」の実在の劇団から着想を得た。
監督兼脚本家グレッグ・クウィダー(39歳)と脚本家クリント・ベントリー(38歳)によって自主制作的にプロジェクトが進行した。2人は刑務所内の劇団の物語に惹きつけられ、リハーサルや発表会に同行。劇団の出身者らにも丹念に取材しながら脚本を書き上げたという。
制作費も公開規模も小ぶりだが、骨太の感動作として絶賛された。本年度の主なノミネート作品の中で、ロッテン・トマト集計の支持率が批評家(97%)と観客(96%)ともにトップ。
企画段階で、キャスト(出演者)とクルーの全員が同じ日給で働く仕組みで合意。初期コストが抑えられたことで、「ダム・マネー」などの実績がある制作会社「ブラック・ベア社」が全額出資を申し出た。2023年秋のトロント国際映画祭で特別上映されて好評を博すと、すかさずA24が配給権を買い取った。
物語のモデルとなった実際の元囚人たちが加わったキャスト陣の演技も高評価。
【前哨戦の受賞(脚色・脚本部門)】
・米国映画批評会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー/NBR)賞
・サンディエゴ批評家賞
・オースティン批評家賞
・ベイエリア批評家賞
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<予告編▼>
<挿入歌「ライク・ア・バード」▼>
<SIFF2024のインタビュー▼>
「ニッケル・ボーイズ」
脚本:ラメル・ロス&ジョスリン・バーンズ
【前哨戦の受賞(脚色部門)】
・WGA(米脚本家組合賞)
「名もなき者」
脚本:ジェームズ・マンゴールド&ジェイ・コックス
「エミリア・ペレス」
脚本:ジャック・オーディアール
※歴代の脚色賞→
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ジャンル別映画3部門
アニメ賞 、国際映画賞 、ドキュメンタリー賞
アニメ賞
「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」が日本の「君たちはどう生きるか」に敗れた前年に続いて、ハリウッド大作が敗北を喫した。ドリームワークス・アニメーション製「野生の島のロズ」は、近年のハリウッド産アニメ中でも突出した高評価を集め、批評家や一般観客の間の支持率も満点に近かった。それでも、唯一無二の独創的な輝きを放った東欧産「Flow」にはかなわなかった。Flowのシンプルな動物劇は、日頃アニメには無縁の大人たちの心にも響いた。
部門
受賞
アニメ賞
「Flow(フロウ)」
【国:ラトビア、フランス、ベルギー合作】
黒猫の漂流記
大洪水の世界を漂流する一匹の黒猫とその仲間たち。そのサバイバル劇を、ひたすら人間の言葉(セリフ)なしで描く。手作り感があふれる秀作。様々な動物たちの表情やしぐさが愛おしく、お互いを補完しあう異業種連携も感動的。東欧ラトビアで初のアカデミー賞となった。
東欧ラトビアの若手
ラトビアの若手アニメ作家ギンツ・ジルバロディス(30歳)の長編2作目。一人だけで作った無声アニメ映画「Away」(2019年)が国際的に高い評価を得た後、チームを組み、製作に5年半を費やして丹念に作り上げたのが本作。製作費5億円。ラトビア、ベルギー、フランス合作。
没入感・臨場感
動物たちの挙動、水、光などの自然を美しくリアルに描いた映像に加えて、鳴き声などの繊細な音作りにより、最高級の没入感・臨場感を実現した。自然に対する愛情と畏怖がたっぷり。オープンソースの無償2Dアニメソフト「Blender(ブレンダー)」だけで動画化したという。
NY&LA批評家賞を奪取
本年度の長編アニメ賞レースは当初「野生の島のロズ」の独走と思われていたが、海外から「Flow」が参戦し、権威のあるニューヨーク批評家賞とロサンゼルス批評家賞のアニメ部門を奪取。ゴールデングローブ賞もFlowに軍配を挙げ、激戦区となった。国際映画賞にもノミネートされた。
【ノミネート部門】
公開日:2025年3月14日
製作国:ラトビア、ベルギー、フランス合作
長さ:1時間25分
【前哨戦の受賞】
・ゴールデングローブ賞
・米国映画批評会議(NBR)
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・シカゴ批評家賞
・ボストン批評家賞
・ネバダ批評家賞
・サンディエゴ批評家賞
・ベイエリア批評家賞
・ラテン系批評家賞
・オンライン批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
97%
最新→
IMDB
7.9
最新→
メタクリティック
86%
最新→
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<予告編▼>
<短編アニメ「アクア」▼>
<ゴールデングローブ賞受賞スピーチ▼>
部門
ノミネート
アニメ賞ノミネート
「野生の島のロズ」
(ドリームワークス)
最高レベル評価を得た感動作
本年度最高レベルの高評価を得た感動作。美しいストーリー、愛らしいロボットのキャラクター、綺麗で優しい絵作りが称賛された。手描きの背景美術も目をみはる。音楽も好評。
シリーズものでないのにヒット
「シュレック」などのドリームワークス・アニメーションが、米作家ピーター・ブラウンの童話「野生のロボット」シリーズを映画化。嵐の夜に無人島に漂着したお手伝いロボットのロズが、野生動物たちと交流しながら、孤児の雁(がん)の親として成長していく。シリーズものや定番キャラクターものではないのに商業的な成功を収めたことが、今日の映画界にとって貴重だ。
監督は「スティッチ」の生みの親
監督は、ドリームワークスの代表作「ヒックとドラゴン」(2010年)で知られるクリス・サンダース氏。62歳のベテラン。1987年にディズニー入社し、「美女と野獣」(1991年)の絵コンテを担当。「ライオン・キング」(1994年)などの制作にかかわった。2002年には自ら創造した怪物キャラクター「スティッチ」が登場する「リロ&スティッチ」で初監督。手描きアニメーションによるシンプルなファンタジーで、オスカー長編アニメ賞にもノミネートされた(受賞はジブリの「千と千尋の神隠し」)。その後ディズニーからドリームワークスに移籍し「ヒックとドラゴン」「クルードさんちのはじめての冒険」などを成功させたたが、初めて挑戦した実写映画「野性の呼び声」で商業的に失敗。再びアニメに戻り、今作「野生の島のロズ」を大当たりさせた。
【ノミネート部門】
監督:クリス・サンダース
脚本:クリス・サンダース
公開日:2025年2月7日
製作国:アメリカ
配給:ユニバーサル
【前哨戦での受賞】
・PGA(全米プロデューサー組合賞)
・クリティック・チョイス賞
・アニー賞
・ワシントン批評家賞
・シアトル批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ダラス批評家賞
・ラスベガス批評家賞
・セントルイス批評家賞
・フェニックス批評家賞
・ミシガン批評家賞
・アイオワ批評家賞
・ミネソタ批評家賞
・ユタ批評家賞
・ノースダコタ批評家賞
・ハワイ批評家賞
・オースティン批評家賞
・米南東部批評家賞
・ヒューストン批評家賞
【評点】
ロッテン・トマト
97%
最新→
IMDB
8.2
最新→
メタクリティック
91%
最新→
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<予告編▼>
<挿入歌「キス・ザ・スカイ」▼>
<メイキング映像▼>
<サントラ再生リスト▼>
「ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!」
(Netflix)
【前哨戦の受賞】
・英国アカデミー賞
・米国際プレスアカデミー
・ポートランド批評家賞
「かたつむりのメモワール」
【国:オーストラリア】
※クレイ・アニメ。2024年のアヌシー賞で最高賞を獲得。
【前哨戦の受賞】
・フィラデルフィア批評家賞
「インサイド・ヘッド2」
(ピクサー)
※歴代のアニメ賞→
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国際映画賞
候補作5本のうち2本が作品賞にもノミネートされるという初の事態に。その2本である「エミリア・ペレス」(フランス)、「アイム・スティル・ヒア」(ブラジル)の一騎打ち。前哨戦では「エミリア・ペレス」が圧勝していたが、軍事政権による暴挙という負の歴史に正面から向き合った「アイム・スティル・ヒア」に軍配が上がった。それぞれの国の知らざれる史実や実情を誠実に伝えてくれる作品こそ、本部門の栄誉にふさわしいということだろうか。
部門
受賞
国際映画賞
「アイム・スティル・ヒア」
国:ブラジル
※ブラジル映画として初のアカデミー賞に輝いた。
1964年からブラジルを支配した軍事独裁政権によって幸せな日々を奪われた家族の実話。夫を軍部に連れ去られた妻が、夫を探しつつも一家の大黒柱となり、残された5人の子供たちを懸命に支える。
主人公の息子が書いた伝記(2015年刊)を、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス監督(ブラジル人、68歳)が映画化。
主役のフェルナンダ・トーレスが主演女優賞にノミネートされた。
同じく南米の軍事政権を題材にした「アルゼンチン1985」(2023年国際映画賞ノミネート)のように、軍部への責任追及や真相究明を描く作品とは趣が異なる。一つ中流家庭の悲劇とそこからの長い旅路を、生活者的な視点で温かくも淡々と伝える。この一家と幼いころから知り合いだったというサレス監督ならではの緻密な描写が光る。
部門
ノミネート
国際映画賞ノミネート
「エミリア・ペレス」
国:フランス(スペイン語)
「聖なるイチジクの種」
国:ドイツ
※ある一家の住居内から突如消えた護身用の銃をめぐるサスペンス。イラン政府から弾圧を受けるモハマド・ラスロフ監督が秘密裏に製作した。
市民に対する政府側の暴力が描かれる。インターネットの動画共有サイトなどにアップされた数々の弾圧映像が差し込まれ、問題の切実さが伝わる。
ラスロフ監督は本作の公開前に、イラン政府を批判したとして有罪判決(禁固8年とむち打ち)を受けた。徒歩で国外に脱出し、フランスのカンヌ国際映画祭に出品。特別賞を受賞した。アカデミー賞では「ドイツ代表」として参加。
「Flow」
国:ラトビア
※洪水の中を漂う一匹の猫の冒険。
「The Girl with the Needle」
※歴代の国際映画賞→
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ドキュメンタリー賞
イスラエル政府によるパレスチナ人支配の残酷さを伝える「ノー・アザー・ランド」が、不利な条件をはねのけて受賞した。もともと映画評論家などからは圧倒的に高い評価を得ていた。しかし、ユダヤ系の影響力が強い米映画業界から冷遇され、オスカー投票日までに劇場公開が実現しなかった。重要な前哨戦であるPGA(全米プロデューサー組合賞)やDGA(米監督組合賞)ではノミネートすらされず。それでも、会員用サイトや特別試写会などで鑑賞したアカデミー会員が、票を投じたようだ。
部門
受賞
ドキュメンタリー賞
「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」
国:ノルウェー、パレスチナ合作
イスラエル人とパレスチナ人の共同監督による実録映画。ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人居住地区をイスラエル軍が占拠し、民家や学校を破壊していく。この地域で生まれ育ったパレスチナ人青年と、立場上敵対するはずのイスラエル人ジャーナリストが協働し、現地の惨状を撮った。
メタクリティックが集計した批評家レビューのスコアは「93」で、本年度のオスカー候補作品で群を抜いてトップ。
【前哨戦の受賞】
・ニューヨーク批評家賞
・ロサンゼルス批評家賞
・国際ドキュメンタリー協会賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
・シカゴ批評家賞
・ボストン批評家賞
・ゴッサム賞
部門
ノミネート
ドキュメンタリー賞ノミネート
「ポーセリン・ウォー」
※ロシアに侵略されたウクライナの芸術家たちが、国防軍に参加しつつ、磁器人形などの創作活動に取り組む。祖国を守るとともに、芸術を守ろうとするアーティストたちの生き様。
国:米、豪、ウクライナ
【前哨戦の受賞】
・DGA(米監督組合賞)ドキュ部門
・サンダンス映画祭 審査員賞(ドキュ部門)
「シュガーケイン」
※カナダ政府が19世紀から20世紀半ばに設置した悪名高き「先住民寄宿学校」をめぐる調査記録。先住民(インディアン)の子供たちを強制的に収容し、キリスト教文化や西洋文化への同化を強いた制度。その犠牲者たちにスポットをあてる。
【配信:ディズニープラス 】
配給:ナショナル・ジオグラフィックほか
国:米、カナダ
【前哨戦の受賞】
・米国映画評議会議(NBR)
「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」
※伊藤詩織氏の初監督作品。安倍晋三首相の友人だった山口敬之・元TBS記者から受けた性暴行被害事件と、その後の裁判闘争の記録。日米英の合作。山崎エマ氏が編集を手掛けた。制作会社はスターサンズ(日本)など。
被害現場となったホテルの防犯カメラ映像を「裁判以外で使用しない」との誓約書を交わしたうえで提供してもらったのに無断使用した、と元担当弁護士から批判された。また、事件について重要な証言をしたタクシー運転手や警察官の映像・音声が使用された点についても、人権上の問題点を指摘する声が出ている。
「サウンドトラック・トゥ・ア・クーデター」
※歴代のドキュメンタリー賞→
本年の賞レースでは、年初に行われたゴールデングローブ賞の結果を受けて、「ブルータリスト」が先頭ランナーであるという錯誤あるいは幻想が、長期にわたって浸透することとなった。一方で、ゴールデングローブ賞で無冠だった「アノーラ」は、弱者というイメージが広がった。
例年であれば、ゴールデングローブ賞の後に間隔をあけずにクリティック・チョイス賞が開催される。これによってゴールデングローブ賞の結果が生み出す賞レースの戦況観を、クリティック・チョイス賞がすみやかに軌道修正することとなる。
クリティック・チョイス賞は米国内の批評家が投票するため、アメリカ国民の空気感がダイレクトに反映される。外国人が選ぶゴールデングローブ賞と比べて、オスカーとの共通性が格段に高い。例えば2023年「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」、2016年「スポットライト 世紀のスクープ」はゴールデングローブ賞で敗北したが、クリティック・チョイス賞で勝ち、位置づけが上書きされた。両作ともアカデミー賞でも作品賞に輝いたのは言うまでもない。
ところが本年度は、ロサンゼルスの山火事の影響で、クリティック・チョイス賞は数週間にわたって結果発表(授賞式)が延期された。投票が締め切られた後に棚上げ状態になったのだ。この間、米国のオスカー予想屋さんの多くが「ブルータリスト」を有力度1位として掲げ続けることとなった。
この状況下でアノーラは「アンダードッグ(負け組)」とのイメージが定着する。実はこれがアノーラの追い風だった。アノーラは下世話なインディー映画であり、オスカー的な風格はない。王座にまっすぐ進むフロントランナーというポジションに置かれると、大きな違和感が生じ、逆風も起きやすくなる。
山火事が落ち着いた後に発表されたクリティック・チョイス賞は、蓋をあけてみると、「アノーラ」が作品賞だった。つまりそもそもアンダードッグではなく、最初から先頭ランナーだったわけだ。
クリティック・チョイス賞の翌日、アノーラはPGA(全米プロデューサー組合賞)とDGA(米監督組合賞)をダブルで勝ち取る。商売人で構成されるPGAでは、観客へのサービス精神が乏しいブルータリストへの反対票をアノーラが取り込んだに違いない。ゴールデングローブ賞以降、ブルータリストの上映時間の長さ、映画ビジネスとしての合理性の欠如、後半のシナリオの脱線に対する不満が高まっていた。
PGAとDGAの連勝によってアノーラが一気に勢いづいたタイミングで、アカデミー賞の投票受付がスタートする。負け犬から鮮やかに這い上がってきたとされたアノーラへの好印象は頂点。もっと早くから先頭走者だとバレていたら、必然的にバックラッシュ(逆風)が起こっていただろうが、もはやその時間もないまま投票締め切り日を迎えた。
結果はアノーラが作品賞を含む5冠の圧勝。前哨戦で「ブルータリスト」に負けがちだった監督賞、「サブスタンス」がリードしていた主演女優賞、「教皇選挙」が優勢とされた編集賞までとった。一方のブルータリストは、主演男優賞と技術系2部門の計3冠にとどまった。
オスカーは「頭でなくハートで勝つ」と言われる。「技術的に優れている」といった理屈だけでは不十分で、心に響かなければ票が集まらない。そういう意味で、ブルータリストは2019年の作品賞レースで「グリーンブック」に敗れた「ROMA/ローマ」の再来となった。
配給会社別では、「アノーラ」を擁する小規模業者「ネオン」が圧勝した。韓国映画「パラサイト」を担いだ2020年冬に続いて鮮やかな勝ちぶりだった。小規模のインディー映画であるアノーラを、細々とではあるが長期にわたって映画館で流し続けた。金銭的にはネット配信に早めに回したほうがメリットが大きいが、「地域のミニシアターを大事にして欲しい」というショーン・ベイカー監督ら製作陣の期待にこたえ、粘り強く劇場公開を継続した。この姿勢は、ベイカー監督らがオスカーキャンペーン展開する際にも効果的な「大義」になった。
ネオンは、キャンペーンのボルテージを高めるタイミングを絶妙だった。ゴールデングローブ賞やオスカーのノミネート段階では控えめにしておいて、終盤で一気にヒートアップ。オスカーの本投票が始まるタイミングでメイカー監督や主演マイキー・マディソンらのメディア露出度を一気に高めた。アンダードッグの立場から這い上がるというシナリオを事前に描いていたどうかは不明だ。しかし、Netflixの「エミリア・ペレス」や、サーチライトの「名もなき者」がノミネートの段階でピークを迎えたのとは対照的に、開票締め切りに向けて尻上がりでアノーラ熱が盛り上がっていった。
「アノーラ」のショーン・ベイカー監督は、個人として作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞の4個を受賞した。これまで1回のアカデミー賞で受賞した個数の最高記録は、ウォルト・ディズニー氏が1953年に達成した4個だった。ベイカー監督はこの記録に並んだ。ただ、ウォルト・ディズニーの同時4冠は4つの別々の作品による受賞だった。単一作品での同時受賞としては、今回のベイカー監督が新記録となった。
「ウィキッド」の衣装担当ポール・タズウェルは、黒人男性として初めて衣装デザイン賞を受賞した。黒人女性ではルース・E・カーター氏がすでに2度受賞している(「ブラックパンサー」と「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」)。
当サイトでは、アカデミー賞の名前を利用した大げさな宣伝を「誇大広告賞」として毎年選定しています。日本国内での広告が対象です。2025年の受賞者は、東和ピクチャーズが配給した「セプテンバー5」。
作品賞
監督賞
主演
助演
アニメ賞
クリティクス・チョイス賞
アノーラ
ウィキッド
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 デミ・ムーア (サブスタンス)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
野生の島のロズ
英国アカデミー賞
教皇選挙
ブルータリスト
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
ウォレスとグルミット
米映画評議会(NBR)
ウィキッド
ウィキッド
【男優】 ダニエル・クレイグ (クィア)
【女優】 ニコール・キッドマン (ベイビーガール)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 エル・ファニング (名もなき者)
Flow
全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
ニッケル・ボーイズ
私たちが光と想うすべて
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 マリアンヌ・ジャン・バプティスト (ハード・トゥルース)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 ミシェル・オースティン (ハード・トゥルース)
ニューヨーク批評家賞
ブルータリスト
ニッケル・ボーイズ
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マリアンヌ・バプティスト (ハード・トゥルース)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 キャロル・ケイン (Between the Temples)
Flow
シカゴ批評家賞
ブルータリスト
ニッケル・ボーイズ
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マリアンヌ・バプティスト (ハード・トゥルース)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 ナターシャ・リオン (喪う)
Flow
ロサンゼルス批評家賞
アノーラ
聖なるイチジクの種
マリアンヌ・ジャン・バプティスト (ハード・トゥルース)
マイキー・マディソン (アノーラ)
ユーラ・ボリソフ (アノーラ)
キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
Flow
ゴールデングローブ賞 (詳細 )
【ドラマ】ブルータリスト
ブルータリスト
■ドラマ部門
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 フェルナンダ・トーレス (アイム・スティル・ヒア)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
Flow
【喜劇・歌劇】エミリア・ペレス
■喜劇・歌劇部門
【男優】 セバスチャン・スタン
【女優】 デミ・ムーア
米IPA(国際プレスアカデミー)
【ドラマ】ブルータリスト
ブルータリスト
■ドラマ部門
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 フェルナンダ・トーレス (アイム・スティル・ヒア)
【男優】 ガイ・ピアース (ブルータリスト)
【女優】 アリアナ・グランデ (ウィキッド)
ウォレスとグルミット
【喜劇・歌劇】アノーラ
■喜劇・歌劇部門
【男優】 キース・カップフェラー
【女優】 デミ・ムーア
ボストン批評家賞
アノーラ
アノーラ
【男優】 ティモシー・シャラメ (名もなき者)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 エドワード・ノートン (名もなき者)
【女優】 ダニエル・デッドワイラー (ピアノ・レッスン)
Flow
ワシントン批評家賞
ウィキッド
ブルータリスト
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 ダニエル・デッドワイラー (ピアノ・レッスン)
野生の島のロズ
シアトル批評家賞
サブスタンス
アノーラ
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 クラレンス・マクリン (シンシン)
【女優】 マーガレット・クアリー (サブスタンス)
野生の島のロズ
アトランタ批評家賞
アノーラ
ブルータリスト
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 アリアナ・グランデ (ウィキッド)
野生の島のロズ
ダラス批評家賞
アノーラ
アノーラ
【男優】 レイフ・ファインズ (教皇選挙)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 ガイ・ピアース (ブルータリスト)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
野生の島のロズ
ラスベガス批評家賞
デューン砂の惑星2
デューン砂の惑星2
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 デンゼル・ワシントン (グラディエーターII)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
野生の島のロズ
ネバダ批評家賞
ブルータリスト
ブルータリスト
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 シンシア・エリーボ (ウィキッド)
【男優】 ガイ・ピアース (ブルータリスト)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
Flow
セントルイス批評家賞
デューン砂の惑星2
デューン砂の惑星2
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 アーンジャニュー・エリス・テイラー (ニッケル・ボーイズ)
野生の島のロズ
フェニックス批評家賞
ブルータリスト
ブルータリスト
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 マーガレット・クアリー (サブスタンス)
野生の島のロズ
サンディエゴ批評家賞
シンシン
デューン砂の惑星2
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 マリアンヌ・ジャン・バプティスト (ハード・トゥルース)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 アリアナ・グランデ (ウィキッド)
Flow
ミシガン批評家賞
アノーラ
ブルータリスト
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 ガイ・ピアース (ブルータリスト)
【女優】 アリアナ・グランデ (ウィキッド)
野生の島のロズ
アイオワ批評家賞
アノーラ
アノーラ
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 アリアナ・グランデ (ウィキッド)
イザベラ・ロッセリーニ (教皇選挙)
野生の島のロズ
インディアナ批評家賞
サブスタンス
サブスタンス
デミ・ムーア (サブスタンス)
マーガレット・クアリー (サブスタンス)
マーズ・エクスプレス
ミネソタ批評家賞
ブルータリスト
ブルータリスト
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 デミ・ムーア (サブスタンス)
【男優】 ガイ・ピアース (ブルータリスト)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
野生の島のロズ
ユタ批評家賞
野生の島のロズ
ブルータリスト
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 デミ・ムーア (サブスタンス)
【男優】 クラレンス・マクリン (シンシン)
【女優】 ダニエル・デッドワイラー (ピアノ・レッスン)
野生の島のロズ
フィラデルフィア批評家賞
アノーラ
アノーラ
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 マーガレット・クアリー (サブスタンス)
かたつむりのメモワール
ノースダコタ批評家賞
アノーラ
アノーラ
【男優】 ティモシー・シャラメ (名もなき者)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 ユーラ・ボリソフ (アノーラ)
【女優】 マーガレット・クアリー (サブスタンス)
野生の島のロズ
ハワイ批評家賞
ブルータリスト
吸血鬼ノスフェラトゥ
【男優】 エイドリアン・ブロディ (アノーラ)
【女優】 デミ・ムーア (サブスタンス)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 モニカ・バルバロ (名もなき者)
野生の島のロズ
オースティン批評家賞
アノーラ
アノーラ
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 ユーラ・ボリソフ (アノーラ)
【女優】 マーガレット・クアリー (サブスタンス)
野生の島のロズ
ベイエリア批評家賞
アノーラ
ブルータリスト
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 マリアンヌ・ジャン・バプティスト (ハード・トゥルース)
【男優】 ユーラ・ボリソフ (アノーラ)
【女優】 ジョアン・チェン (弟弟)
Flow
米南東部批評家賞
アノーラ
ブルータリスト
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 ガイ・ピアース (ブルータリスト)
【女優】 アリアナ・グランデ (ウィキッド)
野生の島のロズ
フロリダ批評家賞
The Beast
The Beast
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 レア・セドゥ (The Beast)
【男優】 ジェレミー・ストロング (アプレンティス)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
ヒューストン批評家賞
アノーラ
ブルータリスト
【男優】 レイフ・ファインズ (教皇選挙)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 ゾーイ・サルダーニャ (エミリア・ペレス)
野生の島のロズ
ポートランド批評家賞
ブルータリスト
ブルータリスト
【男優】 エイドリアン・ブロディ (ブルータリスト)
【女優】 デミ・ムーア (サブスタンス)
【男優】 ガイ・ピアース (ブルータリスト)
【女優】 アリアナ・グランデ (ウィキッド)
ウォレスとグルミット
バンクーバー批評家賞
アノーラ
デューン砂の惑星2
【男優】 ティモシー・シャラメ (名もなき者)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 マーガレット・クアリー (サブスタンス)
ラテン系批評家賞
シンシン
ブルータリスト
【男優】 コールマン・ドミンゴ (シンシン)
【女優】 フェルナンダ・トーレス (アイム・スティル・ヒア)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 マーガレット・クアリー (サブスタンス)
Flow
オンライン批評家賞
アノーラ
サブスタンス
【男優】 レイフ・ファインズ (教皇選挙)
【女優】 マイキー・マディソン (アノーラ)
【男優】 キーラン・カルキン (リアル・ペイン)
【女優】 マーガレット・クアリー (サブスタンス)
Flow
カンヌ映画祭
(歴代 )
アノーラ
グランド・ツアー
【男優】 ジェシー・プレモンズ (憐れみの3章)
【女優】 カルラ・ソフィア・ガスコン、ゾーイ・サルダーニャほか (エミリア・ペレス)
ベネチア映画祭
(歴代 )
ザ・ルーム・ネクスト・ドア
ブルータリスト
【男優】 バンサン・ランドン (クワイエット・サン)
【女優】 ニコール・キッドマン (ベイビーガール)
トロント映画祭
(歴代 )
ライフ・オブ・チャック