上記の小説(Hitomi AI物語)の参考となる歴史的な背景

チリのピノチェト政権(1973年9月~1990年3月)の経済政策

チリのピノチェト政権(1973年〜1990年)下での経済政策は、いわゆる「シカゴ・ボーイズ」(シカゴ大学で学んだ新自由主義経済学者たち)の主導により、市場原理を重視した劇的な転換を遂げた。

法人税

税率35%から15%へ下げ。さらに10%に

社会主義者だった前任のアジェンデ大統領の高い法人税率「35%」を、ピノチェト大統領は就任後の1974年に「15%」へと引き下げた。

15%という法人税率は、当時の南米の軍事政権の中でも突出して低い数値だった。ブラジル軍政は30%前後、アルゼンチン軍政は33%前後だった。1970年代、ブラジルやアルゼンチンの軍事政権は「開発独裁」として国家主導の工業化を推し進めており、法人税率を高く維持して国家財政を潤わせるのが一般的だった。

それに対し、チリは極端な新自由主義(自由放任)へ舵を切ったため、税率に大きな差が生まれた。1984年に税制改革を断行し、10%に引き下げた。

所得税

アジェンデ政権下(1970年〜1973年)の中間所得層(中堅の公務員、専門職、熟練労働者などが該当)に対する所得税率は、おおよそ20%〜45%の範囲だった。 ピノチェト政権の前半期(1974年~1983年)中間所得層への税率が10%〜35%となった。

さらに、1984年に5%〜25%に引き下げられた。 1988年には5%〜20%に引き下げられた。 なお、日本のように地方税(住民税)が上乗せされる制度はない。

法人と資本家個人を一体化

1984年の税制改正では、富裕層に課される最高税率も、60%から50%に引き下げられた。 同時に、自分がオーナーとなっている会社が法人税を支払った場合、そのオーナー個人の所得税から、会社が払った法人税額を控除できる、という仕組みを導入した。控除は永久に繰り越せる。

この制度は「完全統合型税制」と呼ばれた。法人税を、「オーナー(株主)個人の所得税」とみなす考え方だ。

企業の投資欲を一気に高める

資本家の立場にすれば、自分の会社でいくら利益が出ても、税率はわずか10%。 しかも、後で配当として受け取るときも、高額な所得税(最高税率50%)からごっそり控除できる。

また、工場などの設備投資に投じた金額を、すみやかに「経費」として計上しやすくした。 企業買収の税制上のメリットも大きく拡大した。 この結果、企業の投資欲が一気に高まった。


ピノチェト政権関連のアカデミー賞映画(ノミネート含む)

チリのピノチェト独裁政権を題材にした映画のうち、アカデミー賞で受賞またはノミネートを果たした作品の一覧です。

「ミッシング」(1982年/アメリカ)

ピノチェトによる軍事クーデターの混乱の中で行方不明になった息子を探す父親の姿を通し、米国の関与や独裁政権の冷酷さを暴く社会派ドラマ。1983年(第55回)アカデミー賞にて脚色賞を受賞。作品賞、主演男優賞、主演女優賞にもノミネート。

「エル・コンデ」(2023年/チリ)

独裁者ピノチェトが250年間生き続ける吸血鬼だったという設定で、彼の晩年をシュールかつ辛辣に描いたブラックコメディ。Netflixオリジナル作品。2024年(第96回)アカデミー賞にて撮影賞にノミネート。

「No」(2012年/チリ、フランス、アメリカ)

1988年の信任国民投票を舞台に、ピノチェト独裁を終わらせるために広告クリエイターたちが仕掛けた革新的なキャンペーンを描く。2013年(第85回)アカデミー賞にて外国語映画賞(現・国際長編映画賞)にノミネート。


上記以外で、ピノチェト独裁政権(及びその前のアジェンデ政権)を題材にした映画

「社会主義リアリズム」(2023年/チリ)

1973年に撮影されながら50年を経て完成。アジェンデ政権下の労働者とインテリ層のギャップを実験的・シニカルに描く。

「チリ'76」(2022年/チリ、アルゼンチン、アメリカ)

独裁政権下のチリを舞台に、政治犯を匿うことになった主婦の恐怖と勇気、静かな抵抗の決意を描いたサスペンス。

「私の想う国」(2022年/チリ、フランス)

2019年の大規模デモから新憲法制定への動きを追い、ピノチェト時代の呪縛から逃れようとする現代チリのうねりを描く。

「ビクトール・ハラ リマスター」(2019年/アメリカ、チリ)

クーデター直後に虐殺された伝説的歌手ビクトール・ハラの生涯と、犯人追及の長い道のりを追ったドキュメンタリー。Netflixオリジナル作品。

「夢のアンデス」(2019年/チリ、フランス)

チリを象徴するアンデス山脈を「記憶の証人」として、過去の独裁の爪痕と現在のチリ社会の歪みを見つめ直す。

「スパイダー」(2019年/チリ、アルゼンチン、ブラジル)

クーデター前夜に政権打倒を狙った極右過激派の若者たちの過去と、現代の彼らの姿を交錯させながら歴史の影を炙り出す。

「サンティアゴ、イタリア」(2018年/イタリア、チリ、フランス)

クーデター直後、多くの市民を保護しイタリアへの亡命を助けたイタリア大使館の外交官たちの決死の行動を描く。

「真珠のボタン」(2015年/チリ、フランス、スペイン)

広大な海岸線を舞台に、先住民の迫害の歴史とピノチェト政権による海への遺体投棄という二つの悲劇を重ね合わせる。

「コロニア」(2015年/ドイツ、ルクセンブルク、フランス)

実在した拷問施設「コロニア・ディグニダ」を舞台に、独裁政権と結託したカルト教団の恐ろしさを描いた脱出サスペンス。

「アジェンデ・イン・ヒズ・ラビリンス」(2014年/チリ、ベネズエラ)

1973年9月11日、クーデターが発生した大統領府内でのアジェンデ大統領の最後の7時間を描いたフィクション。

「ポスト・モーテム」(2010年/チリ、メキシコ、ドイツ)

クーデター発生時、検死所に勤めていた公務員の視点から、静かに押し寄せる国家暴力の恐怖を淡々と描き出す。

「光のノスタルジー」(2010年/フランス、ドイツ、チリ、スペイン)

アタカマ砂漠で星を探す天文学者と、軍に処刑され埋められた家族の遺骨を探し続ける女性たちを対比させた映像詩。

「島、10番目の地獄」(2009年/チリ、ブラジル、ベネズエラ)

クーデター直後、極寒のドースン島に収容されたアジェンデ政権の閣僚たちが過酷な強制労働に耐える姿を描いた実話。

「トニー・マネロ」(2008年/チリ、ブラジル)

1978年、独裁政権下のサンティアゴ。映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の主人公に執着する中年男の狂気を通して、暴力が日常化した社会の不気味さを描く。

「マチューカ きみのしあわせ」(2004年/チリ、スペイン、フランス、イギリス)

1973年、政権崩壊前夜の緊張する社会情勢を、私立学校に通う富裕層の少年と貧困層の少年の友情を通して描く。

「サルバドール・アジェンデ」(2004年/チリ、フランス、ドイツ、ベルギー、スペイン、メキシコ)

アジェンデ大統領の生い立ちから理想、そして最後の日までを、貴重なアーカイブ映像と関係者の証言で綴ったドキュメンタリー。

「11'09''01/セプテンバー11」(2002年/フランス、イギリス、チリ他)

11人の監督によるオムニバス。ケン・ローチ監督が、ロンドンに亡命したチリ人の視点からもう一つの「9月11日」を描く。

「死と乙女」(1994年/イギリス、フランス、アメリカ)

かつて自分を拷問した男が目の前に現れたら……。民主化直後の設定で、過去の傷と正義のあり方を問う密室サスペンス。

「精霊たちの家」(1993年/ドイツ、デンマーク、ポルトガル、アメリカ)

ある一族の数世代にわたる物語を通し、平和な日常が政治の波に飲み込まれ、クーデターに至るまでを大河ドラマ的に描く。

「チリの闘い」(1975-78年/チリ、キューバ、フランス)

アジェンデ政権崩壊の瞬間を現場でとらえた、3部構成の伝説的なドキュメンタリー。世界で最も重要な記録映画の一つ。

「サンチャゴに雨が降る」(1975年/フランス、ブルガリア)

アジェンデ政権の誕生からクーデターの凄惨な現場までを、重厚な群像劇として描いたチリ・クーデター映画の金字塔。

「最初の年ー民衆が生んだ、社会主義アジェンデ政権」(1972年/チリ)

世界初の選挙による社会主義政権誕生後の最初の1年間を記録。当時の人々の熱狂と希望を今に伝えるグスマン監督のデビュー作。